• 更新日 : 2023年9月15日

年功序列とは?メリット・デメリット、維持や廃止へのポイントを解説

年功序列とは?メリット・デメリット、維持や廃止へのポイントを解説

年功序列制度とは、年齢や勤続年数で賃金が上昇していく長期雇用を前提とした賃金制度をいいます。勤務年数が長いほど賃金が高くなる制度であり、従業員にとっては賃金上昇による安心感が得られ、企業も長期的な人材育成が可能です。

ただし、人件費の高騰や企業競争力の低下が問題となり、近年、年功序列制度を見直す流れが増えてきています。

年功序列とは?

年功序列とは、社員の年齢や勤続年数を評価基準に加え、役職・賃金を決定する人事制度をいいます。年功序列は、勤続年数が長いほど、仕事へのノウハウや社風への理解度が深く、会社への貢献度が高いという考えに基づいて成り立っています。

年功序列が生まれた背景

日本企業に年功序列が定着したのは、高度経済成長期といわれています。当時は企業の業績拡大に伴い人材の確保が急務であり、労働者の将来の生活の安定にもメリットがある人事制度として年功序列が広まりました。そこから、定年まで勤め上げるという「終身雇用」と、勤務年数が長くなるに従いほぼ自動的に昇給・昇進する「年功序列」というシステムが、日本の経済発展を長く支えてきました。

成果主義との違い

成果主義とは、従業員のスキルや目標達成度合いを評価の主な基準とする人事制度です。年功序列との違いは、重視する評価基準にあります。年功序列では、勤続年数や年齢を重視するため、同じ成果を上げたとしても、勤務歴の浅い若手が、勤務歴の長い中堅層を追い抜いて昇進することは難しくなります。

バブル崩壊後は、年功序列の生産性低下や人件費の高騰を危惧した日本企業のなかで、成果主義を導入する流れがみられました。成果主義は、若手や能力の高い人材が高い賃金やポストを得られるメリットがある一方、成果主義に重きを置きすぎると、管理職本来の人材育成やマネジメント業務が職種によっては適正に評価されなかったり、高いスキルを持つ社員が好待遇を求めて他社へ転職したりするリスクがあります。

年功序列制度のメリット

年功序列制度は、人件費を長期的な視野で計画できることからコスト管理がしやすくなるほか、自社への帰属意識の上昇、長期的な人材育成による生産性の向上、離職率の低下などのメリットが期待できます。

従業員が定着しやすく組織の連帯意識が高まる

年功序列の場合、勤続年数が長くなるほど昇給・昇進が期待できるため、社員の定着率が高まる効果が期待できます。長く在籍する社員が多くなれば、組織の連帯意識が高まり、一体感が強まります。一緒に働くメンバー同士の絆が深まり、チームワークがよくなることで、生産性の向上が期待できます。

長期プランでの人材育成ができる

年功序列制度の場合、社員の在籍年数が長くなるため、長期的なプランによる人材育成が可能です。複数の部署をジョブローテーションし、若手人材を将来の幹部候補に育成するといった中長期的な視野で人材育成計画を立てることが可能となり、社員を自社で育て上げることができます。ベテラン社員も多く在籍しているため、若手社員の育成も余裕を持って行えるでしょう。

人材の採用や育成コストの削減につながる

社員の離職率が低くなれば、人材採用や人材育成に掛かる費用を削減することが可能です。中途採用や新卒採用など、自社の採用戦略に沿った形で予算を分配することもできるでしょう。

人事評価がしやすい

勤続年数という基準で評価をするため、人事評価がしやすくなります。人件費の管理も長期的な視野で計画できることから、事業計画も立てやすくなるでしょう。従業員に対してもキャリアプランを掲示しやすくなるほか、一人ひとりの適性やスキルを把握し、適材適所への人材配置も行いやすくなります。

年功序列制度のデメリット

年功序列制度には、企業の業績と人件費が連動しないといった問題点も指摘されています。

社員の高齢化により人件費が高くなる

勤続年数が長くなるほど、給与が高くなるため、年功序列制度を用いている会社の場合、組織の高齢化と人件費の高騰が問題となります。団塊の世代の高齢化による人件費の高騰が多くの企業で課題となったこともあって、人件費を最適化させるために、従業員のスキルや目標達成度合いを評価する成果主義を取り入れる企業が増加しました。

若手社員の離職につながる

若手社員のモチベーションも、年功序列制度で注意しなければいけない問題です。能力が高く労働意欲を持っていたとしても、在籍年数のみで評価をすれば不公平感を生み、優秀な若手から離職するリスクが高くなります。

業務のマンネリ化につながる

年功序列制度の場合、成果主義とは異なり、業務の成果に対する評価割合が低くなります。最低限の業務に注力すればよいという考えから、新たなチャレンジをしなくなり、生産性の低下や組織全体のマンネリ化につながる恐れがあります。

企業の成長を妨げる場合がある

個人が成長を目指さなくなった組織では、企業全体の成長が妨げられる恐れがあります。変化や競争が激しい現代において、従業員が新たな業務や目標にチャレンジしなくなれば、企業としての競争力が低下してしまうでしょう。

年功序列を廃止する企業が増えている理由

長年、日本企業で導入されていた年功序列制度ですが、現在は見直されつつあります。公益財団法人日本生産性本部の2019年の発表によると、日本での非管理職層の年齢・勤続給の導入割合は、2018年時点で47.1%。1999年の78.2%から比較すると、実に31.1%低下しています。多くの企業で、賃金体系の見直しが行われていることがわかります。

参考:プレスリリース 報道機関各位 同一労働同一賃金への対応、300 人以上企業の約 3 割「まだ検討|公益財団法人日本生産性本部

年功序列制度が見直されてきた背景の一つには、バブルの崩壊があります。社員の高齢化に伴う人件費の高騰を企業が背負う体力がなくなったというのは、賃金体系を見直す大きなきっかけとなりました。また、リーマンショックなどによる不景気を境に企業の新卒採用が縮小し、人材育成や採用への予算が削減されたことも、年功序列制度が衰退した理由となっています。終身雇用で若手人材を長期間育成するよりも、成果主義を導入し、即戦力を雇用するほうが、企業にとってメリットがあると考えられるようになったのです。

変化が激しく、予測不可能な時代と呼ばれる現代においては、グローバル化とともに、短期的な成果を重視する傾向が強くなっています。年功序列制度は、スピード感を求める環境とは相性がよいとはいえません。さらに、人手不足により転職市場が活発になったことで、年功序列制度の採用における訴求力が弱まったことも、衰退の原因の一つといえるでしょう。

年功序列の維持や廃止に向けてのポイントとは?

年功序列制度を維持するポイントと、廃止するポイントについて解説します。

年功序列を維持する上でのポイント

年功序列を維持する場合、賃金格差の是正がまず重要になります。若手が成果を出しても昇給できないという状況を解消するために、成果への評価割合を強めるなど、可能な範囲で賃金格差を是正することが求められます。

また、組織の成長を促すための人材育成制度を構築することも必要です。新入社員・中堅社員・新任管理者などの段階的な研修の実施や、ジョブローテーションの活用は、人材育成の選択肢の一つといえるでしょう。スキルや知識を、長いスパンで吸収できる年功序列のメリットを生かし、人材育成に役立てましょう。社員はさまざまな業務を経験することで、従業員のモチベーションが刺激され、成長を促すことができます。

年功序列の廃止に向けてのポイント

年功序列を廃止する場合は、新たな評価基準を構築する必要があります。それには、人材戦略・経営戦略を明確にすることから始めましょう。また、何をもって評価をするのか、どのような人材を必要とするのかなど、自社の職種や企業特性、組織体制に適した評価基準を明確にすることも重要です。管理職、営業職、技術職など、職種に合わせた評価基準を検討しましょう。

さらに、移行の際には、就業規則の変更などの手続きも必要です。従業員への説明の時間を十分にとり、制度刷新の目的や、新たな賃金体系の変更点などを説明し、理解が得られるようにしなければなりません。もし、制度変更によりベテラン社員の賃金が低下する場合、労働条件の不利益変更に該当する恐れがあります。本人の同意なしに変更を行うことはできないため、個別の説明の場を設けることも忘れずに行いましょう。

年功序列制度を見直す場合は慎重に行おう

人手不足の現在、優秀な社員を外部から引き抜くには多額の報酬を保障する必要があり、コストがかかります。企業の発展のために、自社で優秀な人材を育成するのか、社外から優秀な人材を採用するのかは、企業にとって悩ましい問題といえるでしょう。

年功序列は、勤続年数に合わせて賃金が増加するという長期雇用を前提とした制度であり、長期的なプランで人材を育成することが可能です。一方で、長期育成に合わせた企業体力も求められます。

自社の賃金体系が適していないと感じる場合でも、変更するには従業員の理解が欠かせません。賃金体系の移行の目的や、新たな制度の内容について十分に説明する時間を取り、自社の経営戦略・採用戦略に沿った制度を確立しましょう。


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