- 更新日 : 2021年11月29日
社会保険の産前産後休業保険料免除制度とは

育児と仕事の両立を促すための制度のひとつに、育児休業中における健康保険料や厚生年金保険料といった社会保険料の免除制度があります。
社会保険料は、会社と本人が折半で負担をするものですが、育児休業中は会社負担分・本人負担分がともにかかりません。社会保険料を免除することにより、育児休業中の社員を抱える会社の負担を軽くし、また育児休業中で無収入となる社員のサポートをすることがねらいです。
さらに、この免除制度が平成26年4月より改定され、育児を行うための休業中にプラスされ出産前後の休業期間の社会保険料も全額免除の対象となりました。
今回は、社会保険の産前産後休業保険料免除制度について説明します。
産前産後休業とは
産前産後休業期間とは、以下の期間をいいます。
単胎妊娠の場合
出産日以前42日(実際に分娩した日が予定日を過ぎていた場合は、出産予定日以前42日)から、出産日後56日
多胎妊娠の場合
出産日以前98日(実際の出産日が予定日より後である場合は、出産予定日以前98日)から、出産日後56日
出産手当金
産前産後休業の中で仕事をしなかった期間、たとえば労働基準法において就業が完全に禁止されている産後6週間の間などは、社会保険の健康保険法により出産手当金が支給されます。
なお、この場合の出産日当日は産前期間に含まれ、出産が遅れたときには遅れた日数分も出産手当金が支給されます。
また、仕事をしなかった期間内に公休日が含まれている場合は、公休日にあたる日の出産手当金も支給されます。
産前産後休業保険料免除制度の概要
産前産後休業保険料免除制度を受けるためには、免除を希望する被保険者自身が申し出を行う必要があります。自動的に免除処理が行われるわけではありません。
免除対象者
産前産後休業保険料免除制度の対象者は、社会保険の被保険者であり、産前産後休業を取得する女性です。育児休業は男性が取得する場合もありますが、産前産後休業は妊娠をし、出産を迎える女性特有の休業のため、男性が申し出ることはできません。
免除期間
出産前後の休業中は、事業主が届け出た場合、社会保険料は被保険者・事業主の両方の負担分が免除されます。
保険料の徴収が免除される期間は、出産前の休業をはじめた月から出産後の休業が終わった日の翌日が属する月の前月(産前産後休業の終了日が月末の場合、産前産後休業終了月)までです。これらに日割りの概念はなく、つねに月単位の計算となります。
免除期間中の被保険者期間
産前産後休業保険料免除制度により保険料が免除されていても、社会保険の資格を喪失するわけではなく、被保険者期間としてみなされます。
将来の年金額への影響
産前産後休業保険料免除制度により保険料が免除されている期間は社会保険の被保険者期間のため、将来給付される年金額の計算においては、「保険料を納めた期間」の扱いとなります。
産前産後休業取得者申出書
産前産後休業保険料免除制度を受けるには、まず免除を希望する被保険者自身が申し出を行い、事業主が「産前産後休業取得者申出書」を提出しなければなりません。
提出時期
産前産後休業取得者申出書は、被保険者の産前産後休業期間中に提出します。
産前に提出した場合の手続き
産前産後休業取得者申出書を出産日より前(産前休業の間)に提出した場合は、実際に出産をした日により今後の対処方法が変わってきます。
・出産予定日より前に出産した場合当初の申出日よりも出産する前の休業をはじめる日・出産したあとの休業が終わる日が前倒しになるため、出産後に「産前産後休業取得者変更(終了)届」を提出する必要があります。
・出産予定日通りに出産した場合
産前産後休業期間として当初申し出た内容に変わりがないときは「産前産後休業取得者変更(終了)届」を届け出る必要はありません。
・出産予定日より後に出産した場合
出産予定日から出産日までの日数が産前休業に追加されるため、最初に届け出た日よりも出産したあとの休業が終わる日が繰り下げられるので、「産前産後休業取得者変更(終了)届」を届け出ないといけません。
まとめ
産前産後休業保険料免除制度や養育期間標準報酬月額特例の利用は申し出をする必要があり、自動的に免除が行なわれるわけではありません。事業主は、従業員が出産・育児のために休業するとき、事前に休業期間中の保険料の取り扱いなどを本人にも案内し、手続きを円滑に進められるよう準備しましょう。
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