- 更新日 : 2025年7月30日
青色事業専従者に給与明細は必要?テンプレートをもとに書き方を解説
青色事業専従者に給与明細の発行義務はありませんが、税務署への説明責任や正確な給与管理を考えると、発行するのがおすすめです。
給与明細を作成すれば、経費計上の証拠となり、税務調査の際にも信頼性が高まります。
本記事では、青色事業専従者の給与明細の書き方や、よくある質問などを分かりやすく解説します。
給与明細の作成に役立つ無料テンプレートの紹介もしているので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
青色事業専従者に給与明細の発行は必要?
青色事業専従者に給与明細を発行することは、法律上必須ではありません。
しかし、さまざまな観点から給与明細を作成した方が良いでしょう。
たとえば、青色事業専従者給与は、家族に支払う給与を全額経費として計上できますが、税務調査時には「給与が適正に支払われているか」がチェックされます。
その際に、給与明細があると、支払い内容を明確に説明できます。
さらに、家族間でも支払った給与額や内訳を明確にしておけば、金額の誤解やトラブルを防げるでしょう。
そもそも青色事業専従者給与とは?
青色事業専従者給与とは、自分の事業を手伝ってくれる家族や親族に対して支払う給料のことです。
青色事業専従者給与は、一定の条件を満たせば、事業の必要経費として扱えるため、節税効果が期待できます。
次項で、青色申告を選択することで家族への給与を全額経費にできる具体的な仕組みや、事業専従者控除との違いについて詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
青色申告では家族への給与を全額経費にできる
青色申告を行っている個人事業主は、一定の条件を満たせば、家族や親族に支払う給与を全額経費として計上できます。
この制度は、家族や親族が事業に専念している場合に限り、その対価として支払われた給与であれば、事業の経費として認められるという考えに基づいています。
具体的な条件は、下記の通りです。
- 申告する年の6か月以上、専ら事業に従事している
- 支払われる給与額が妥当である
- 生計を共にする配偶者または親族である
- 申告年の12月31日時点で年齢が15歳以上である
- 期限までに税務署へ「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出している
これらの条件を満たした場合、家族や親族に支給された給与全額を必要経費に計上できます。
ただし、不相応な金額は、税務署から否認される可能性があるため注意しましょう。
「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出期限
青色事業専従者給与を必要経費として計上するためには、その給与を支払う年の3月15日までに、所轄の税務署へ「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要です。
提出期限が土日祝日の場合は、翌平日が提出期限となります。
ただし、下記のようなケースでは、上記の提出期限とは異なります。
| ケース | 提出期限 |
|---|---|
| 事業開業が1月16日以降の場合 | 事業開業日から2か月以内に提出 |
| 専従者を新たに雇用する場合 | 専従者が新たに事業に参加した日から2か月以内に提出 |
提出期限に遅れると、その年の給与を必要経費に計上できなくなる可能性があるため注意しましょう。
なお、届出書は、郵送、持参、e-Tax(オンライン申請)などで提出できます。
青色事業専従者給与と事業専従者控除との違い
青色事業専従者給与と事業専従者控除は、どちらも家族に支払った給与を経費に計上できますが、控除できる金額が異なります。
青色事業専従者給与は、青色申告を行っている個人事業主が、一定の条件を満たせば、実際に支払った給与の全額を経費にできる制度です。
一方、事業専従者控除は、白色申告を行っている個人事業主が、家族に支払った給与の一部を所得から控除できる制度です。
控除できる金額には上限があり、事業専従者の数や事業所得の金額によって異なります。
つまり、青色申告の方が、家族に支払う給与を経費として認められる金額が大きいという点が違いです。
白色申告の事業専従者控除について、さらに詳しく知りたい方は、「白色申告の事業専従者控除とは?条件や計算方法までわかりやすく解説!」をご覧ください。
青色事業専従者の給与明細の書き方
青色事業専従者の給与明細の書き方は、一般的な従業員に作成する給与明細と同じような形式で構いません。
実際の記入例は、下記の通りです。

税務調査に備えて、正確な金額を記載し、保管しておきましょう。
青色事業専従者の給与明細にも使える無料テンプレート
マネーフォワード クラウドでは、青色事業専従者の給与明細にも使えるテンプレートをご用意しております。無料でダウンロードできますので、ぜひお気軽にご利用ください。
青色事業専従者の給与に関するよくある質問
青色事業専従者の給与に関するよくある質問は、下記の通りです。
次項で、それぞれ詳しく解説します。
現金支給の場合も青色事業専従者の給与明細が必要?
現金支給であっても、青色事業専従者への給与明細の発行はしておきましょう。
給与明細は、支払った給与の金額や内容を記録するものであり、税務調査の際に重要な証拠となります。
特に青色申告では、家族に支払った給与を全額経費として認めてもらうために、明確な給与明細を用意しておく必要があります。
そのため、銀行振込の場合と同様に給与明細を作成し、保管しておきましょう。
青色事業専従者の給与支払報告書は必要?
青色事業専従者であっても、給与支払報告書の提出は必要です。
給与支払報告書は、従業員ごとの支払額を地方自治体に報告するための書類です。
青色専従者も対象となるため、支払った給与がある場合は、他の従業員と同様に提出する義務があります。
未提出の場合、罰則や税務調査の対象となる可能性があるため注意しましょう。
青色事業専従者の源泉徴収票は必要?
青色事業専従者に対しては、原則として源泉徴収票を発行する必要はありません。
青色事業専従者の所得税は、事業主がまとめて申告するため、専従者自身が確定申告を行う必要がないからです。
そのため、源泉徴収票を発行する必要もないのです。
ただし、専従者が他の所得と合わせて確定申告を行う場合など、例外的に源泉徴収票が必要になるケースもあります。
青色事業専従者給与を正しく管理して税務リスクを回避しよう!
青色事業専従者給与を正しく管理することは、税務リスクを回避するために重要です。
給与明細の発行や届出書の提出を怠ると、必要経費として認められないだけでなく、税務署からの指摘を受ける可能性があります。
そのため、下記の点に注意しましょう。
- 妥当な給与額の設定
- 給与明細の作成と保管
- 「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出
- 給与支払報告書の提出
上記の点に注意すれば、税法を遵守しつつ、青色事業専従者の給与を経費として計上できます。
本記事で解説した内容を参考に、青色事業専従者の給与明細の作成や申請書の提出期限を守り、青色申告のメリットを最大限に活用しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
定額減税における新入社員の扱い- 扶養の対象かどうかなど解説!
新入社員が親の扶養控除対象になるかどうかは、企業の人事担当者にとって重要な問題です。特に、定額減税の適用に関しては、扶養控除の適用範囲を正確に把握することが求められます。 本記事では、定額減税における新入社員の扶養控除の扱いについて、親が勤…
詳しくみるコロナの影響で住民税納税が難しい人向け 徴収猶予の「特例制度」
新型コロナウイルスの影響で事業に支障が出ている個人事業者の方、中小企業の経営者の方もおられるでしょう。政府のコロナ対策としては、中小企業者や個人事業者向けの持続化給付金、フリーランスを含む個人事業者向けの実質無利子・無担保の融資など、金銭的…
詳しくみる大阪府の給与計算代行の料金相場・便利なガイド3選!代表的な社労士事務所も
大阪府でビジネスを展開する企業にとって、給与計算は正確さと効率性が求められる重要な業務です。しかし、内部で対応するには専門知識や時間が不足しがちで、多くの企業が給与計算代行サービスの利用を検討しています。 大阪府内には多様な業種や規模の企業…
詳しくみる育休中の給与は?賞与・ボーナス、もらえるお金を解説
育休・産休期間中はほとんどの場合、給与が支払われません。この記事では、収入減を補うために支給される「育児休業給付金」について、給与の何割程度が支給されるのか、支給期間はいつまでかといった内容を解説します。給与の実質10割程度が支給される「出…
詳しくみる埼玉県の給与計算代行の料金相場・便利なガイド3選!代表的な社労士事務所も
埼玉県は東京近郊のベッドタウンとしての側面とともに、大規模な工業地帯や先進的なIT企業が集積するなど、非常に多様なビジネスが展開されています。多忙な企業環境では、給与計算の正確性と迅速な処理が重要ですが、中小企業にとっては負担が大きくなりが…
詳しくみる経費精算を担当する部署は?労務それとも経理?
働き方改革に伴い、経費精算の簡素化が求められています。特に、事業活動の際に従業員が一時的に立て替えた「立替経費」は払い戻すための手続きに手間や時間がかかり、大きな負担となっているのが現状です。この記事では、経費精算の概要や担当部署、労務部門…
詳しくみる