• 更新日 : 2023年2月16日

有給消化とは?消化義務や退職時の対応など

労働者は、一定の条件を満たした場合に年次有給休暇が付与されます。有給休暇は、用事を済ませるため、心や体の疲労を回復させてリフレッシュするためなどで利用されることが多いです。

今回は有給消化について、法改正による取得の義務化、有給消化のメリット、デメリットや退職時の有給消化についての注意事項などについて解説していきます。

有給消化とは?

年次有給休暇は労働基準法で労働者に与えられた権利で、要件を満たした労働者に付与されます。

有給消化とは、会社が労働者に付与した年次有給休暇を取得することを言います。

最初に、年次有給休暇とはどのような休暇かについて見ていきましょう。

有給(有給休暇)とは?

年次有給休暇とは、一定の期間勤務した労働者に対して法律上付与される休暇のことです。

付与される要件として、下記の2つを満たしている必要があります。

  1. 雇入れの日から6カ月経過していること
  2. その期間の全労働日のうち8割以上出勤していること

初めて年次有給休暇が付与された後は、その付与日(基準日という)から1年を経過した日ごとに勤続年数に応じて法律に定められた日数が付与されます。

継続勤務年数
0.5年
1.5年
2.5年
3.5年
4.5年
5.5年
6.5年
以上
付与日数
10日
11日
12日
14日
16日
18日
20日

有給の取得条件

年次有給休暇は、労働者が請求することにより権利が発生し取得できますが、本人が本来労働すべきだった日にしか取得することができません。

労働契約で休日と定められている日(例:日曜日、祝日など)に年次有給休暇を取得することはできませんので注意してください。また、退職日後も取得することはできません。

有給の付与日はいつ?

年次有給休暇を付与する日は入社日によって決まるため、労働者ごとに付与日が異なります。有給休暇の付与についてのルールの詳細については下記の記事を参考にしてください。

有給消化は義務?

労働基準法が改正され、2019年4月からは全ての会社において、1年に10日以上の年次有給休暇を付与される労働者(管理監督者や有期契約労働者を含む)には、年次有給休暇のうち5日間は、会社が時季を指定して取得させることが義務づけられました。

ですので、労働者は年次有給休暇を10日以上付与された場合には、1年のうちに最低5日は年次有給休暇を消化する必要があります。

義務化の背景

年次有給休暇は、働く人の心身のリフレッシュを図ることを目的に、原則として、労働者が請求する時季に与えなければならないとされています。しかし、同僚に気兼ねして請求できない、また、請求することをためらってしまう等の理由から、取得率が低く推移していたため取得促進が課題となっていました。

そこで、「働き方改革」の推進の意味合いもあり、年5日の年次有給休暇の確実な取得を進めるために義務化の動きになりました。

義務化の内容および関連する法律

労働基準法第三十九条では、

10日以上の年次有給休暇を付与される労働者(管理監督者や有期契約労働者を含む)について、会社は年次有給休暇を付与した日から1年以内に、付与した日のうちの5日間については、取得時季を指定して取得させなければならない
(参考:労働基準法三十九条|e-Gov法令検索

と規定されています。

また、会社は時季指定を行うにあたっては、労働者の意見を聴取し、できるだけ希望に沿った取得ができるよう、また、取得した意見を尊重するよう努める必要があります。

義務化によって何が変わる?

年次有給休暇の年5日取得の義務化により、会社の中で年次有給休暇を取得しやすい雰囲気づくりや年次有給休暇に対する意識改革を行うことができるのではないでしょうか。

また、義務化によって年次有給休暇が取りやすい環境になれば、労働者のパフォーマンスも高めることができます。また、年次有給休暇の取得率が高い会社は働きやすい会社だということで、離職者数の減少や求人の採用時に他の会社より有利になるかもしれません。

有給消化のメリット

年次有給休暇を取得することは、労働者の疲労を回復させてリフレッシュさせる効果もあり、ゆとりある生活を実現させるために付与される休暇と言えます。

年次有給休暇の消化率が上がると、下記のようなメリットが考えられます。

  • 会社の生産性の向上につながります。
  • 労働者にとっても労働意欲の向上や労働能力を高めることにつながります。

有給消化のデメリット

次に、有給消化のデメリットについて解説しますが、デメリットは主に会社側に問題が出ます。

まず、年次有給休暇を取得する労働者については、休みを取って労務の提供をしていない(働いていない)にも関わらず、会社は給料相当額を支払わなければならないため、会社にとっては人件費の負担が発生します。中小企業クラスの会社にとっては、労働者が休むと仕事の進捗に大きな影響が出る場合もあるでしょう。

さらに、会社にとっては労働者が年次有給休暇の年5日取得の義務を達成できなかった場合に罰則の発生リスクがあります。罰則内容:6カ月以下の懲役か30万円以下の罰金

有給消化に関する注意点

年次有給休暇を請求する際に注意する点がいくつかありますので見ていきます。

退職時に有給消化を行う場合

退職の申し出をする際に、残っている年次有給休暇を消化する場合には、退職の申し出の前に正確な有給残日数を事前に把握しておいて退職日を決めておく必要があります。

正確な有給残日数が把握できていないと、退職日までに有給残日数を消化しきれないなど、問題が出てくる可能性もあります。

有給消化を拒否された場合

労働者が年次有給休暇の取得を請求した際に会社から請求を拒否された場合、その拒否行為は労働基準法39条違反になる可能性があります。

ただし、労働基準法違反になるのは、年次有給休暇を請求して拒否された日に実際に休暇を取り、後日、その日の分の給与相当額が支払われなかった場合です。その場合、労働者は有給休暇取得分の給与相当額が支払われなかったと労働基準監督署に申告の手続きに行くことがあります。

有給取得義務を従業員が果たせなかった場合

1年に10日以上年次有給休暇を付与された労働者が付与されてから1年以内に5日間の取得ができなかった場合、会社は前述したように罰則の発生リスクがあります。(罰則内容:6カ月以下の懲役か30万円以下の罰金

有給消化をする場合は早めに連絡を行う

有給残日数を退職日までにすべて消化したい場合には、なるべく早く上司に申し出を行うようにしましょう。自分では余裕を持って退職日を設定したにもかかわらず、自分が思っていたよりも引き継ぎに時間がかかることがわかって有給消化が思ったように進まなかったという話も聞きます。

また、退職に関しては了承しても有給消化の話が会社となかなか進まないという話もあります。退職時は気持ちよく手続きを進めたいと思っていると思いますので、期間には余裕を持たせて、なるべく早く上司に申し出を行うようにしましょう。

有給は法改正や退職時の取扱いを正確に理解しよう

年次有給休暇の消化に関する取得の義務化やメリット、デメリットや退職時に有給消化する際の注意点について見てきました。

労働者から問い合わせがあった時には正しい説明ができるように法改正の部分や退職時の取り扱いについて、厚生労働省から出ているリーフレットなどで再確認しておきましょう。

よくある質問

有給消化とは何か教えてください

有給消化とは、一定の要件を満たした労働者に会社が法律に基づいて付与した年次有給休暇を労働者が時季を指定して請求のうえ取得することを言います。 詳しくはこちらをご覧ください。

有給消化は義務ですか

1年に10日以上の年次有給休暇が付与された労働者(管理監督者や有期契約労働者を含む)には、年次有給休暇のうち5日間については、会社が時季指定して確実に取得させることが義務づけられています。 詳しくはこちらをご覧ください。


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