- 作成日 : 2022年11月11日
外国人雇用の注意点 – 関連する法律や手続きを解説
少子高齢化による労働人口の減少に歯止めが効かないなか、外国人の雇用を検討している人事担当者もいることでしょう。外国人労働者の受け入れ状況は、現時点では増加傾向で推移しています。一方で、外国人を就労させるには法律に則った手続きが必要となるため注意が必要です。この記事では外国人を雇用する際の注意点やメリット・デメリットを紹介します。
目次
外国人雇用に関連する法律
外国人雇用は「出入国管理及び難民認定法」いわゆる「入管法」に定められた「在留資格」の範囲内において認められています。
外国人を雇用した事業主は、雇入れおよび離職の際に氏名・在留資格・在留期間等をハローワークに届け出なければなりません。届け出を受けたハローワークは「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」いわゆる「労働施策総合推進法」に基づき、雇用環境改善のための助言や指導、ならびに離職した外国人に対し再就職支援を行います。
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
第八章 外国人の雇用管理の改善、再就職の促進等の措置(外国人雇用状況の届出等)第二十八条 事業主は、新たに外国人を雇い入れた場合又はその雇用する外国人が離職した場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その者の氏名、在留資格(出入国管理及び難民認定法第二条の二第一項に規定する在留資格をいう。次項において同じ。)、在留期間(同条第三項に規定する在留期間をいう。)その他厚生労働省令で定める事項について確認し、当該事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。
引用:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(第二十八条)|e-Gov法令検索
さらに、雇用した外国人が能力を遺憾なく発揮できるよう、事業主が対処しなければならない措置については「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」いわゆる「外国人指針」に具体的に定められています。
外国人を雇用するメリット
少子高齢化に伴い労働人口が減少するなか、外国人を雇用することで労働力を確保することができます。単なる労働力の確保だけでなく、異国の地で働きたいという外国人労働者はモチベーションも高く、積極的で優秀な人材を確保可能です。就労意識の高い外国人労働者は、他の従業員にも良い影響を及ぼすでしょう。
異なる文化を持った外国人は、日本人では思いつかないような柔軟な発想で新たなアイデアを生み出してくれるかもしれません。
さらに、海外進出を計画している場合は、現地の言語や文化を熟知した外国人労働者は大きな戦力となります。進出を計画している国の労働者を率先して雇用するのも一つの戦略です。
対外的に見ると、様々な国籍の人材を雇用することでグローバルな印象を与えることができるため、顧客や取引先、株主などのステークホルダーに開かれた企業イメージを抱かせることができるのもメリットでしょう。
外国人雇用の注意点
外国人を雇用する際には、法律に則り手続きを進めなければなりません。特に在留資格と在留期間の確認は必須で、これらを怠ると不法就労や不法滞在で罰せられる可能性があります。外国人労働者が不法就労によって罰せられるだけでなく雇用主も不法就労助長罪で罰則が科されるため気を付けましょう。ここでは、外国人雇用の注意点を紹介します。
在留資格を持っているか
まずは、外国人の日本滞在に必須となる「在留資格」を確認しましょう。在留資格は大きく分けて「就労が認められるもの」「身分・地位に基づくもの」「就労可否は指定された活動によるもの」「就労が認められないもの」の4つに分類可能です。各分類の在留資格を紹介します。
就労が認められるもの
在留資格 | 該当例 |
---|---|
外交 | 外国政府の大使、公使等及びその家族 |
公用 | 外国政府等の公務に従事する者及びその家族 |
教授 | 大学教授等 |
芸術 | 作曲家、画家、作家等 |
宗教 | 外国の宗教団体から派遣される宣教師等 |
報道 | 外国の報道機関の記者、カメラマン等 |
高度専門職 | ポイント制による高度人材 |
経営・管理 | 企業等の経営者、管理者等 |
法律・会計業務 | 弁護士、公認会計士等 |
医療 | 医師、歯科医師、看護師等 |
研究 | 政府関係機関や企業等の研究者等 |
教育 | 高等学校、中学校等の語学教師等 |
技術・人文知識・国際業務 | 機械工学等の技術者等、通訳、デザイナー、語学講師等 |
企業内転勤 | 外国の事務所からの転勤者 |
介護 | 介護福祉士 |
興行 | 俳優、歌手、プロスポーツ選手等 |
技能 | 外国料理の調理師、スポーツ指導者等 |
技能実習 | 技能実習生 |
この分類に属する在留資格には活動制限があり、各在留資格に定められた範囲内で就労が可能です。その範囲は産業および国民生活等に与える影響を総合的に勘案して個々の職種ごとに決定されます。
これらに加え、2019年4月に「特定技能」という新たな在留資格が設けられました。特定技能は、特定産業分野の深刻な人手不足を解消する目的で設けられた在留資格です。特定技能1号と特定技能2号に分かれており、それぞれ下記の分野での就労が認められています。
- 特定技能1号(14分野)
介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用産業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業 - 特定技能2号(2分野)
建設、造船・舶用産業
身分・地位に基づくもの
在留資格 | 該当例 |
---|---|
永住者 | 永住許可を受けた者 |
日本人の配偶者等 | 日本人の配偶者・実子・特別養子 |
永住者の配偶者等 | 永住者・特別永住者の配偶者、 我が国で出生し引き続き在留している実子 |
定住者 | 日系3世、外国人配偶者の連れ子等 |
この分類に属する在留資格には活動制限がなく、日本人と同様に様々な分野で就労することが可能です。
就労可否は指定された活動によるもの
在留資格 | 該当例 |
---|---|
特定活動 | 技能実習(特定技能1号へ移行準備中の方) EPA(経済連携協定)に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者 外交官等に雇用される家事使用人 ワーキングホリデー等 |
特定活動は、多様化する活動内容に対応するために設けられた在留資格です。活動内容は、個々人ごとに法務大臣が指定します。指定された活動はパスポートに添付された指定書で確認可能です。指定書により指定された就労活動のみ可といったような記載になっているため、必ず指定書を確認しましょう。
なお、技能実習生については、入国時は雇用関係のない「研修」の在留資格で入国し、1年経過後に雇用関係のある「技能実習」に移行します。さらに、所定の技能実習を修了後「特定技能1号」への移行を希望する場合、就労予定機関で働きながら移行の準備ができるよう「特定活動」へ在留資格を変更することが可能です。また、新型コロナウイルス感染症の拡大によって本国への帰国が困難な技能実習生についても「特定活動」への変更が認められています。
就労が認められないもの
在留資格 | 該当例 |
---|---|
文化活動 | 日本文化の研究者等 |
短期滞在 | 観光客,会議参加者等 |
留学 | 大学、専門学校、日本語学校等の学生 |
研修 | 研修生 |
家族滞在 | 就労資格等で在留する外国人の配偶者、子 |
この分類に属する在留資格は就労が認められません。ただし、留学生のアルバイトなど、資格外活動許可を受けた場合は一定の範囲内で就労が認められます。
在留資格は在留カードで確認できるため、外国人を雇用する際は条件を満たしていることを必ず確認しましょう。
参考:在留資格一覧表|法務省
在留期間を確認する
在留期間は在留資格ごとに定められているため、あわせて確認しましょう。在留期間は在留カードで確認可能です。なお、在留期間を過ぎて日本国内に滞在し続けることは不法滞在となります。不法滞在状態で就労すると不法就労で罰せられるため気を付けましょう。不法就労外国人を雇用した場合、雇用主は入管法の定めによる「不法就労助長罪」に問われます。3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科されるため注意が必要です。
外国人雇用の手続き
外国人雇用は、日本人を雇用する時とは異なる手続きが必要です。在留資格の変更手続きや、就労が認められない在留資格については資格外活動の許可を得なければなりません。さらに、雇用契約に伴う届け出や、社会保険・労働保険への加入手続きも必要です。ここでは、外国人を雇用する際の手続きについて解説します。
在留資格の手続き
前章で紹介した通り、外国人を雇用する際は、まず在留資格を確認しましょう。就労が認められる在留資格であっても、資格に応じて就ける仕事は限られています。取得済みの在留資格と採用予定の職種が異なる場合は、在留資格の変更手続きを行わなければなりません。在留資格の取得・変更には、在留資格ごとに学歴や職歴などの要件が定められているため、採用予定者が要件を満たしていることを確認してください。在留資格を変更するには住居地を管轄する地方出入国在留管理官署に「在留資格変更許可申請」を提出しましょう。手続きには通常2週間から1ヶ月程度の処理期間がかかるため注意が必要です。
資格外活動の許可
就労が認められない在留資格を有する外国人が報酬を得る活動を行う場合は、資格外活動の許可を得なければなりません。また、就労が認められる在留資格であっても、認められた範囲外の活動を行う場合は資格外活動許可が必要です。
許可を得るには、実際に在留資格に関わる活動を行っており、就労することによってその活動が阻害されない必要があります。資格外活動許可は包括許可と個別許可の2つに分類可能です。一つずつ紹介します。
- 包括許可
1週間に28時間以内の就労が認められる資格外活動許可です。入管が就労先を個別に特定することはなく、いわゆるアルバイト的な活動が想定されています。ただし、風営法に規定されている活動に従事することはできません。複数事業所で就労する場合は、すべての労働時間を合算して28時間以内である必要があります。留学生については、夏季休暇や冬期休暇などの長期休業期間に限り1日8時間以内の就労が可能です。卒業後は在留資格に関わる学生としての活動が終了するため、資格外活動は認められないので注意しましょう。 - 個別許可
個別許可は、入管が就労先の名称や事業内容、その他必要な事項を個別に特定して行う資格外活動です。包括許可の制限範囲外の活動を行う場合や、就労資格を有する外国人が、他の就労資格に関わる活動を行う場合などに申請しなければなりません。例えば、留学生が職業体験を目的にインターンシップに参加し、週28時間以上の資格外活動に従事する場合などです。
資格外活動を行う場合は、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署に資格外活動申請を行ってください。資格外活動の可否は、資格外活動許可証もしくは在留カードの裏面で確認可能です。
参考:資格外活動許可について|出入国在留管理庁
参考:資格外活動許可申請|出入国在留管理庁
引用:資格外活動許可書|東京外国人雇用サービスセンター
雇用契約の取り結び
在留資格や資格外活動許可を確認し外国人を雇用する場合、賃金や職務内容などの労働条件を必ず書面で確認しましょう。労使双方の合意に基づく「雇用契約書」は、万が一トラブルが起こった際の証明書になります。なお、労働基準法では契約期間や賃金等を定めた「労働条件通知書」の作成・交付が義務付けられているため、雇用契約書とともに発行しましょう。さらに、外国人を雇用する場合は、採用者の氏名・在留資格・在留期間等をハローワークに届け出なければなりません。雇用契約と併せて、忘れずに届け出てください。
社会保険・労働保険関連の手続き
健康保険・厚生年金保険からなる社会保険については、加入条件を満たした外国人を雇用した場合は日本人と同様、加入手続きを行わなければなりません。雇用後5日以内に「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」と「厚生年金保険被保険者 ローマ字氏名届」を日本年金機構に提出してください。
基礎年金番号を有していない場合は、マイナンバーのみを記載しましょう。短期在留外国人や海外居住者などでマイナンバーも有していない場合は、本人確認書類の写しを併せて提出してください。なお、年金保険については、国籍を有する国と日本との二重負担を防止し、加入期間を通算することで将来確実に年金を受給できるよう、諸外国との間で社会保障協定の締結が進められています。締結国から来日している外国人を雇用する場合は、日本の社会保障制度への加入が免除されることがあるため留意しましょう。免除を受けるには締結国で発行された「社会保障協定 適用証明書」を日本年金機構に提出してください。
労災保険・雇用保険からなる労働保険についても、加入条件は日本人と同様です。労災保険については、保険関係成立の翌日から10日以内に所轄の労働基準監督署に「保険関係成立届」を提出してください。
雇用保険の加入条件も満たしている場合は、資格取得日の翌月10日までに所轄の公共職業安定所(ハローワーク)に「雇用保険被保険者資格取得届」を提出しましょう。
なお、雇用保険被保険者資格取得届は労働施策総合推進法に定められた雇用状況の届け出も兼ねているため、短時間労働などで雇用保険への加入条件を満たしていない場合は、代わりに「外国人雇用状況届出書」を提出してください。
引用:従業員を採用したとき|日本年金機構
引用:ローマ字で氏名を登録(変更)するとき|日本年金機構
引用:日・米社会保障協定 申請書一覧(加入免除手続き)|日本年金機構
引用:保険関係成立届(様式第1号)|福岡労働局
引用:雇用保険被保険者資格取得届|ハローワークインターネットサービス
引用:届出様式について |厚生労働省
参考:社会保障協定とは|厚生労働省
参考:社会保障協定に関する各種申請書・添付書類一覧|日本年金機構
注意点に留意し外国人労働者を雇用しよう
外国人を雇用する際の注意点を解説しました。労働人口の減少が続くなか、外国人労働者は貴重な労働力です。外国人を雇用する際は、在留資格と在留期間を確実に確認してください。不法滞在者を雇用すると不法就労となり、雇用主は不法就労助長罪で罰せられます。日本人とは手続き等に若干の違いはあるものの、法の定めに従い適切に雇用すれば心配はいりません。注意点に留意し、外国人労働者を雇用しましょう。
よくある質問
外国人雇用をするメリットについて教えてください。
若くモチベーションの高い労働者を雇用することができます。就労意欲の高い外国人労働者は周りにも良い影響を与えることでしょう。さらに、日本人とは異なる発想で新たなアイデアを生み出してくれるかもしれません。詳しくはこちらをご覧ください。
外国人雇用における注意点はありますか?
在留資格と在留期間を必ず確認してください。不法滞在者を雇用すると、雇用主は不法就労助長罪で罰せられるため注意しましょう。雇用時には雇用契約書を書面で残し、確実に労使合意を得ることが重要です。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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