- 更新日 : 2024年11月1日
休日出勤の代休は必ず取得すべき?ルールや賃金計算、振替時の注意点
「代休」とは、休日出勤によって休むことができなかった日の代わりにとして、出勤日に休日として仕事を休むことです。振替休日は休日が前もって振替えられるのに対し、代休はあとから変更されます。ただし、給与面においては相違点があり、振替休日では割増賃金が発生しないのに対して、代休は後日に休んでも休日出勤をしたことは事実であるため、割増賃金が発生します。
目次
休日出勤の代休とは
休日出勤の代休とは、休日出勤により休日に休むことができなかった場合に、代わりとして出勤すべき日に仕事を休む日のことです。
同じような意味で使われる言葉に振替休日がありますが、代休と振替休日はどのように違うのでしょうか。代休の意味を振替休日や有給休暇との違いから考えると、次のとおりです。
そもそも休日出勤とは
休日出勤とは会社が休日と定めた日に従業員が出勤して働くことです。休日には法律で設けることが定められた「法定休日」と、会社が独自に定める「法定外休日(所定休日)」があります。法定休日、法定外休日にかかわらず、休日に出勤すれば休日出勤ということになります。
労働基準法第35条において休日は「1週につき1日以上、4週につき4日以上」と定められており、これに基づいて設定されるのが法定休日です。例えば、完全週休2日で土日、祝日が休日の場合、日曜日を法定休日とし、土曜日と祝日を法定外休日とするケースが多いようです。
基本的に会社は従業員に休日出勤を命じる場合、労働組合や従業員の過半数を代表する者との間に、いわゆる36協定を締結し、就業規則に休日出勤がある旨を記載するなどの要件を満たす必要があります。
休日出勤を命じた場合、休日出勤手当として法定休日では基本給の35%以上、法定外休日では25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
また、従業員は休日出勤の命令を拒むことが可能です。
振替休日と代休の違い
振替休日と代休は、意味合いが似ている部分もあるため、混同して使う方も見受けられます。代休が「代わりの休日」であるのに対して、振替休日は「振替える休日」であり、どちらも働いた休日の代替として休む日のことを指しています。これらの違いは「振替え」であるか「代わり」であるか、ということになります。
振替休日とは、休日出勤をする前に違う日に休みとする場合の休日です。あらかじめ休日を異なる日に「振替え」ておくため、振替休日となります。前もって振替えておくため、振替休日が休日出勤日より先である場合もあります。
代休は、休日出勤をしたあとに、違う日に休日の代わりとして休む日のことです。休日出勤が先にあって、後日に代休を取ることになります。このため振替休日とは違い、代休が休日出勤日より先である場合はありません。
有給と代休の違い
有給休暇とは労働基準法に基づいて労働者に与えられる、給与が支払われる休暇のことです。労働基準法第39条の規定により、雇入れの日から起算して6カ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、勤続年数に応じた日数の有給休暇が付与されます。
労働基準法上、代休の付与義務はなく、有給休暇とは別に与える休暇です。就業規則に規定すれば無給とすることができます。有給休暇が法律上有給である点が異なります。
休日出勤による代休は取得しなければならないか
前述のとおり、休日出勤手当の支給は企業が守るべき義務ですが、代休の付与は義務付けられていません。そのため、従業員も代休を必ず取得しなければならないというわけではないのです。つまり、代休を取得するのもしないのも自由ということになります。
ただし、会社によっては代休の取得に期限を設けているケースや代休を有給としているケースもあります。代休を取得しないことで権利を放棄してしまうことにもなるのは念頭に入れておきましょう。
休日出勤届のテンプレート(無料)
以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。
休日出勤による代休を取得させないと違法になるケース
企業には代休を取得させる義務はないものの、代休を取得させなかったことで違法行為に問われる場合もあります。
まず挙げられるのは休日出勤を命じて法定休日を取得させなかったケースです。1週間に1回または4週間を通じて4日以上の休日を与えるという週休制の原則や変形休日制のルールを下回った状態で代休を取得させなかった場合、労働基準法違反に問われる可能性があります。特に法定休日に休日出勤を命じる場合は十分に注意が必要です。
また、就業規則で代休の取得を認めているのにもかかわらず代休の取得を拒んだ場合、それが違法行為に該当する恐れがあります。就業規則で代休のルールを定めている以上は、それを遵守しなければなりません。
管理職は休日出勤による代休を取得できる?
管理職は労働基準法による労働時間や休憩、休日に関する規制の対象外となります。そのため、企業には管理職が休日出勤をしても代休を取得させる義務はありません。そのため、管理職の健康管理やモチベーションを維持するためにも、代休を取得させた方が望ましいといえるでしょう。
就業規則で管理職が休日出勤した場合の代休について定められている場合は、それに従って取得させる必要があります。
なお、部下がいない、権限が与えられていない、実務のみを担当している、いわゆる「名ばかり管理職」という状態である場合、労働者とみなされて代休を取得させない行為が違法となる場合もあるので、注意が必要です。
休日出勤による代休の割増賃金の計算方法
先ほどもご紹介したとおり、会社が休日出勤を従業員に命じた場合、割増賃金を支払わなければなりません。割増賃金の額は休日出勤をしたのが法定休日なのか、法定外休日なのかによって異なります。それぞれについて計算方法を見ていきましょう。
法定休日に休日労働したケース
労働基準法に定められた法定休日に出勤をした場合、通常の賃金に最低でも35%を割増して支払う必要があります。割増賃金は以下のような計算式で求めることができます。
時給2,000円の賃金を得ている従業員が法定休日に出勤して8時間働いた場合、その日の賃金は(2,000×1.35)×8=21,600円ということになります。
法定外休日に休日労働したケース
企業が独自に定める法定外休日に出勤した場合、通常の賃金に加え、少なくとも25%以上の割増賃金を支払う必要があります。計算式は以下のとおりです。
時給2,000円の従業員が法定外休日に出勤して8時間働いた場合、その日の賃金は(2,000×1.25)×8=20,000円ということになります。
休日出勤による代休を取るときの注意点
休日出勤をした場合には、別の日に代休を取って休日とします。代休には、いくつかの気をつけなければならない点があります。代休取得の注意点は以下のとおりです。
代休における給与、振替休日の給与との違い
代休とは、休日出勤後に、代わりに取得した休日のことです。代休日に賃金を支払うかどうかは就業規則などの規定によります。一方、振替休日の場合は、振替えられた休日に賃金を支払う必要はありません。
代休でも時間外労働に割増賃金が発生する
代休取得日の賃金の支払いは就業規則などの定めによりますが、労働させた休日は休日のままであり、休日労働させたことに変わりはありません。それが法定休日であった場合には割増賃金が発生します。
割増賃金で割り増しされた部分は、代休を取得しても相殺されないため、給与として支払われます。
休日出勤によって生じる時間外労働の割増賃金率は、35%、または25%です。労働基準法に定められている「1週につき1日以上、4週につき4日以上」の休日は法定休日にあたり、35%の休日の時間外労働割増賃金率で割増賃金が計算されます。法定休日以外の休日、具体的には週休2日制の場合のどちらかの休日には25%の時間外労働割増賃金率が適用されます。
休日出勤した日の賃金は「1.35」、あるいは「1.25」をかけて計算され、代休の取得によって「1」にあたる部分が相殺されます。結果として「0.35」か「0.25」のどちらかが代休を取っても休日出勤についての割増賃金として支給されることになります。
代休で未消化の休日を残さないようにする
代休を取らないと、未消化の休日が残ってしまうので、注意が必要です。代休は休日出勤をしたあとに取得するため、業務が忙しい、他の社員が働いているなかで自分だけ休むのは気が引ける、といった事情から後回しになってしまい、そのままになってしまうことがあります。
しかし、代休を取らないでいると、休日は未消化のまま残ってしまい、好ましくありません。
代休には「いつまでに取らなければならない」という明確な期限はありませんが、性質上、休日出勤後できるだけ早く取取得することが望ましいでしょう。
また、会社によっては代休取得のルールが就業規則などで定められていることもあります。会社に就業規則がある場合は、定められた通りに代休を取る必要があるため、確認してみましょう。
欠勤を許可なく代休にできない
欠勤を会社が勝手に代休とすることは認められていません。病気などでした欠勤を代休として処理すること自体は可能ですが、従業員の合意が必要になります。会社が労働者の許可を得ずに代休とすることはできないため、注意が必要です。
代休を正しく知って取り損ねを防ごう
労働基準法は、労働者の権利を守るための法律です。労働時間や給与など多くのことを定めているなかで、休日を「1週間のうちに1日以上、4週間のうちに4日以上」と、休日付与の方法について週休制の原則や変形週休制のルールを定めています。
休日出勤をした場合の休日確保のため、代休はきちんと取るようにすることが大切です。
代休に関しては、代休取得日を無給にするには就業規則の規定が必要なこと、代休を取っても時間外労働に対する割増賃金は支払われるべきであること、未消化分を残さないようにすること、会社の勝手な欠勤との相殺はできないことに注意しましょう。
よくある質問
代休と振替休日の違いについて教えてください。
休日出勤の前にあらかじめ休日を振り替えるのが振替休日、あとで代わりの休日を取得するのが代休です。詳しくはこちらをご覧ください。
代休を取るうえでの注意点を教えてください。
割増賃金は支払われているか確認すること、未消化分を残さないようにすること、会社は欠勤と勝手に相殺できないことが注意点になります。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
有休申請のペーパーレス化でどのくらい効率化できるか?進め方や成功事例を解説
企業で働くにあたっては、手当や休暇の申請など様々な手続きが必要です。しかし、紙で申請すると、非効率的なだけでなくミスも増えてしまいます。当記事では、有給休暇の申請におけるペーパーレス化について解説します。ペーパーレス化のメリットだけでなく、…
詳しくみる介護休暇とは?同居していない場合や取得条件、介護休業との違いを解説
介護休暇は、介護を要する必要な家族を持つ従業員が取得できる法定休暇です。従業員が申し出れば、会社は原則として断ることができません。家族の世話や入院の付き添いをしながら働く従業員にとって、介護休暇制度は重要なサポートです。 こちらの記事では、…
詳しくみる年間労働日数の平均は?年間休日との関係や日数の決め方を解説
従業員は、年間で何日程度働くべきなのでしょうか。また、その日数はどのように決めればよいのでしょうか。平均して、どの程度の日数働いているのかも気になるところです。 当記事では年間労働日数について解説します。年間労働日数の平均や目安、決定方法、…
詳しくみる残業時間上限規制の適用猶予・適用除外業種を解説!
時間外労働の上限規制とは? 一般的な企業については、2019年4月(中小企業では2020年4月)より、時間外労働の上限規制が始まります。(以下、「一般則」といいます。) 原則の時間外労働の上限時間は現行の制度と変わらず、月45時間かつ年36…
詳しくみる法定労働時間とは?月の労働時間の上限や36協定、残業代の計算方法を解説!
法定労働時間とは、法律で定められた労働時間の上限です。1日・1週間の法定労働時間を超える労働があった場合には、時間外労働として割増賃金が発生します。ここでは、法定労働時間や所定労働時間の違いを解説するとともに、基本の残業代の計算方法について…
詳しくみる裁量労働制における「みなし労働時間」とは?
裁量労働制における「みなし労働時間」の意味 裁量労働制とは、特定の業務に就労した労働者の労働時間について、実際の労働時間にかかわらず一定の労働時間働いたものとみなす制度です。働いたものとみなされる時間のことを「みなし労働時間」といいます。 …
詳しくみる