- 更新日 : 2024年1月19日
育児休業とは?育児休暇との違い、取得可能な期間を解説
育児休業は、1歳未満の子どもを育てるために取得することができる休業です。育児・介護休業法に定められており、女性労働者だけではなく、男性労働者にも育児休業の取得が推奨されています。
今回は、育児休業の解説、育児休暇や産前・産後休業との違い、育児休業の申請書類、手続き方法、申請期限などについて解説します。
目次
育児休業とは?
育児休業は、1歳未満の子どもを育てるための休業で、育児・介護休業法に定められています。育児休業と似た言葉に「育児休暇」「産前・産後休業」があります。これらと育児休業はどこが違うのでしょうか。
育児休暇との違い
「育児休業」が法律で定められた制度であるのに対して、「育児休暇」は会社ごとに社員のために独自につくる制度です。育児休暇制度を設けるかどうか、育児休暇をどのようなときに取得させるのかなどのルールは、すべて会社ごとに決めることができます。
産休・産後休業との違い
産前・産後休業は、女性従業員が子どもの生まれる前の期間と出産後の体を回復させる期間に休業できる制度です。育児休業が男性労働者も取得できるのに対して、産前・産後休業は女性労働者のみ取得できる点が違います。
育児休業の取得条件
育児休業を取得するためには、取得条件を満たしている必要があります。どのような条件を満たせばよいのか見ていきましょう。
同一の事業主に過去1年間以上雇用されている
有期雇用労働者に関して、以前は育児休業の取得要件に「同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること(入社1年以上であること)」がありましたが、2022年4月1日から、その条文は撤廃されました。
ただし、労使協定で「雇用期間が1年未満である場合には、育児休業を認めない」と協定している場合には、例外的に育児休業は取得できません。
子どもが1歳6ヵ月になる日までに雇用契約がある
前述のように「同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること」という育児休業の取得要件が2022年4月1日から撤廃されましたので、現在は「子どもが1歳6ヵ月になる日までに、雇用契約が満了することが明らかでないこと」という要件だけになっています。
子どもが2歳になるまで期間を延長した場合は2歳になる日まで雇用契約がある
子どもが1歳6ヵ月になるときに、保育所に入れないなどの特別な事情がある場合には、延長申請することにより、子どもが2歳に達する日まで育児休業を延長できます。なお、有期雇用労働者の場合は、子どもが1歳6ヵ月になる日の翌日の時点で、子どもが2歳になるまでの間に雇用契約が満了しないことが必要です。
育児休業を取得できる期間および各期間の条件
育児休業を取得できる期間として、「1歳になるまで」「1歳6ヵ月になるまで」「2歳になるまで」という期間を耳にします。この育児休業を取得できる期間とどのような条件でその期間が決まっているのかについて見ていきます。
1歳になるまで
育児休業は、子どもが1歳になるまでが基本です。育児・介護休業法で、労働者が育児休業を取得できるのは、原則、子どもが1歳になるまでの間とされています。
① 延長する場合:1歳6ヵ月になるまで
育児休業を取得できるのは、原則、子どもが1歳になるまでの間です。しかし、例外的な措置として、子どもが1歳になるときに、雇用を継続するためには保育所などに入所する必要があると認められる場合に限り、1歳6ヵ月まで育児休業を延長することができます。
➁ 延長する場合:2歳になるまで
子どもが1歳6ヵ月になるまで延長してもまだ雇用を継続するためには保育所などに入所する必要があると認められる場合には、2歳まで育児休業を延長することができます。
育児休業の申請に必要な書類
社員が育児休業を取得したい場合には会社に申し出を行いますが、その際は、育児・介護休業法に基づき、原則として書面での提出が必要になります。提出する書類は、「育児休業申出書」です。
育児休業を取得した場合、育児休業期間中の社会保険料の免除を申し出ることができます。免除申請に必要な書類は「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書」です。
また、育児休業を取得した場合には、雇用保険から育児休業給付金を受給できます。育児休業給付金を申請するために必要な書類は以下のとおりです。
- 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 母子手帳のコピー
- 支給申請期間の賃金台帳と出勤簿
- 育児休業申出書(男性の場合、または、女性で育児休業開始日と法定日が異なる場合)
育児休業の申請に必要な手続き
育児休業給付金の申請に必要な手続きについて解説します。
必要書類をまとめる
育児休業給付金を受給するためには、まず会社が受給資格確認手続きを行う必要があります。受給資格確認手続きに必要な書類は以下のとおりです。
- 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
添付書類をまとめる
必要書類の作成が終わったら、申請時に添付する以下の書類を被保険者から受け取ります。
- 母子手帳のコピー
- 支給申請期間の賃金台帳と出勤簿
- 育児休業申出書(男性の場合、または、女性で育児休業開始日と法定日が異なる場合)
事業所の所在地を管轄するハローワークに提出する
すべての書類が揃ったら、事業所の所在地を管轄するハローワークに提出してください。なお、この手続きは電子申請での支給申請も可能です。
育児休業の申請期限
育児休業の申請期限は、子どもの年齢によって異なります。
■1歳までの育児休業の場合
休業開始予定日の1ヵ月前までに書面で申し出る必要があります。
■1歳から1歳6ヵ月までの育児休業の場合
休業開始予定日の2週間前までに申し出る必要があります。
■1歳6ヵ月から2歳までの育児休業の場合
休業開始予定日の2週間前までに申し出る必要があります。
育児休業期間中の社会保険料の免除を日本年金機構に申し出る場合の申請期限は、育児休業期間中、または育児休業等終了後の終了日から1ヵ月以内の期間中です。
育児休業給付金の申請を行う場合は、育児休業を開始した日を起算日として、1ヵ月ごとの期間が申請単位になります。育児休業終了などで申請単位が1ヵ月に満たない月がある場合は、その月の月末の日までとします。
育児休業の期間延長申請に必要な手続き
育児休業の取得中は、育児休業給付金を受給できます。しかし、何らかの理由により、育児休業給付金を受給し続けることができなくなった場合でも、延長事由に該当していれば育児休業給付金の支給対象になります。どのような場合に該当するのか見ていきましょう。
子どもが保育所に入れなかったケース
育児休業を申し出た対象の子どもについて、市町村に保育所への入所の申し込みを行ったものの、その子が1歳または1歳6ヵ月に達する日の後に入所できないケースです。この事由に該当する場合は、市町村から発行された証明書等を添付して延長申請手続きを行ってください。
子どもの養育者が死亡やケガ、病気等によって育児が困難になった場合
子どもを常態として養育していた配偶者が、死亡や怪我、病気等で引き続き育児をすることが困難になった場合です。この事由に該当する場合は、以下の確認書類を添付して延長申請手続きを行ってください。
- 配偶者の死亡:住民票の写しと母子健康手帳
- 配偶者の疾病・負傷等:医師の診断書
- 配偶者との別居:住民票の写しと母子健康手帳
- 配偶者の産前産後:産前産後に関わる母子健康手帳
育児休業を取得する上での注意点・ポイント
従業員が育児休業を取得する上ではどのようなことに注意しておけばよいのでしょうか。男性の育児休業の観点も含めて、注意点やポイントについて解説します。
男性も育児休業を取得できる
育児・介護休業法では、育児休業は男性も取得できると定められています。男性の育児休業に関しても、社会保険加入者は育児休業期間中の社会保険料の免除制度、雇用保険加入者は育児休業給付金を受給できます。
産後パパ育休とは?
産後パパ育休は、出生時育児休業の通称です。産後パパ休業は、出生後8週間以内の子どもを養育している労働者が4週間(28日)を限度に2回までの分割で取ることができる休業です。
産後パパ育休と育児休業は同じ制度?
産後パパ休業は、男性の育児休業を促進するために、取得の必要な可能性が高い子どもの出生直後の時期(出生後8週間以内)に、今までよりも柔軟で取りやすい休業として制度化されました。
産後パパ休業と育児休業は、「育児のための休業」という目的は同じです。しかし、産後パパ休業は1歳までの育児休業とは別に取ることができる制度で、産後パパ休業とは異なります。
育児休業中に退職した場合
育児休業中に退職しても法律違反などにはなりません。ただし、育児休業給付金はその時点でストップします。ストップする理由は、育児休業給付金は職場復帰することが前提で支給される給付金だからです。
退職日以降ではなく、退職日を含む「支給対象期間」の単位で育児休業給付金が支給されなくなり、日割り計算はされませんので注意してください。
育児・介護休業法の改正によって変わったことは?
育児・介護休業法が2022年4月に法改正があり、その後も、2022年10月、2023年4月と段階的に改正されました。この育児・介護休業法の改正によって変わったことについて見ていきます。
出産手当金
出産手当金は、育児・介護休業法の改正とは関係なく、健康保険の給付として支給されます。出産手当金は、健康保険の被保険者であることが支給の要件です。出産日(出産日が出産予定日後になった場合は、出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降の56日までの期間で、産前産後休暇を取得したために給与の支払がなかった期間について、健康保険から支払われます。
出産手当金は、下記の計算で求めます。
出産育児一時金
出産育児一時金については、育児・介護休業法とは別の法律である健康保険法施行令が2023年4月1日に改正されました。改正により、2023年4月1日出産分から、出産手当一時金の額が50万円に引き上げられています(産科医療補償制度に未加入の医療機関などで出産した場合や、妊娠週数22週未満で出産した場合の出産育児一時金は48.8万円)。
育児休業給付金
育児・介護休業法では、2022年10月の改正で「産後パパ育休(出生時育児休業)」がスタートしました。
これまでも、父親が子どもの出生後8週間以内に育児休業を取得すると、子どもが1歳までの間に2回目の育児休業の取得が可能になる「パパ休暇」がありました。今回は、さらに男性の育児休業の取得を推進する目的で産後パパ育休がスタートしています。
育児休業給付金は、下記の計算式で求められます。
・通常の育児休業給付金
育児休業開始後6ヵ月以降:休業開始時賃金日額×支給日数×50%
・出生時育児休業給付金
※休業開始時賃金日額:休業開始前の6ヵ月の額面賃金を180日で除した金額
育児休業制度を有効に利用して子育てを進めていきましょう
近年、国も本腰を入れて、男女が共に育児休業を取得できるようにさまざまな支援をしています。子育て世代も、夫婦で協力して子育てをする環境が整いつつあり、会社の理解も得ながら育児を行っています。
育児休業給付金などの制度を有効に利用して、夫婦で安心して子育てができるように、会社もサポートしていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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