• 作成日 : 2022年9月9日

雇用保険とは?加入条件と申請方法について

失業したときに受け取る失業手当(求職者給付)は、雇用保険の制度から給付されます。雇用保険は労働者の生活の安定や就職促進を図るための公的保険制度です。また、失業時だけでなく、教育訓練を受ける際などにも雇用保険は労働者の助けとなります。
ここでは、雇用保険の給付の種類やどんな方が加入するのかなど、基本知識について解説します。

雇用保険とは?

雇用保険とは、労働者が失業したときや雇用継続困難となる事情が発生したときに備える公的保険制度です。そのなかでも、失業時や求職活動中に受け取れる失業手当は、正式には「求職者給付」と呼ばれるもので、失業したときに雇用保険で支払われる給付の一種です。そのほかに、育児や介護を理由に勤務することができず、給与が減少または支払われない労働者に対して支払われる育児休業給付金や介護休業給付もあります。

雇用保険の目的

雇用保険の目的は、労働者の「生活および雇用の安定」と「就職の促進」です。雇用保険に加入する労働者は、一定の条件を満たしていれば失業時などに給付金を受け取れます。一般的に失業手当とよばれるこれらの給付は、新たな職を得るまでの生活の支えになります。

また、雇用の安定や就職の促進という目的に沿って、労働者が再就職に向けたスキル獲得やキャリア形成のための教育訓練給付や、安定した職業への早期再就職を支援するために支払われる就職促進給付などもあります。

雇用保険における給付の種類

雇用保険の給付の種類には、失業時の支援として支払われるもの(求職者給付)や雇用継続を支援するもの(雇用継続給付)として支払われるものなど、目的に応じたさまざまな制度があります。

求職者給付の代表的なものは、失業時に受けられる基本手当です。しかし、求職者給付には、基本手当以外にもさまざまな種類の給付があります。以下に、雇用保険の給付の種類を見てみましょう。

求職者給付(一般求職者給付)

いわゆる失業手当です。失業時や、再就職を目指して就職活動をする求職者に対して支払われ、これを基本手当といいます。それ以外に、ハローワークの指示した公共職業訓練を受講中の方に支払われる「技能習得手当」や、病気やケガを理由に一定期間以上求職活動ができない方に対して支払われる「傷病手当」もあります。

  • 基本手当
  • 技能習得手当(受講手当、通所手当)
  • 寄宿手当
  • 傷病手当

高年齢の被保険者が受給できる求職者給付

65歳以上の被保険者が失業した場合に、雇用保険の被保険者であった期間に応じて支給される「高年齢求職者給付金」があります。基本手当とは異なり、被保険者期間が1年以上あった場合には基本手当相当額の50日分、1年未満の場合には基本手当相当額の30日分が、基本手当に代えて一時金で支給されるのが特徴です。

その他の求職者給付

求職者給付には、企業で常用雇用される労働者に対する給付金以外にも、季節的に雇用される労働者や日雇の労働者に対して支給される給付金があります。

  • 特例一時金(短期雇用特例非保険者)
  • 日雇労働求職者給付金(日雇労働被保険者)

就職促進給付

就職促進給付とは、求職中の方が安定した職業へ早期再就職を図ることを目的とした制度です。失業中に受給した基本手当の給付日数に一定以上の残日数がある方が再就職した場合に、「再就職手当」などの給付金が支払われます。就職促進給付として支給される給付金の種類には、他にも条件に応じて「就業促進定着手当」「就業手当」「常用就職支度手当」があります。

  • 再就職手当
  • 就業促進定着手当
  • 就業手当
  • 常用就職支度手当

教育訓練給付

教育訓練給付とは、労働者の主体的な能力開発支援を目的に厚生労働省が指定する教育訓練を修了した方に対して、受講料の一部が支給される制度をいいます。給付の対象となる教育訓練は、そのレベルに応じて「専門実践教育訓練」「特定一般教育訓練」「一般教育訓練」と3つあり、それぞれ支払われる給付は受講料の50%(最長4年で1年間最大40万円・一定の条件に該当すると70%で1年間最大56万円)、40%(最大20万円)、20%(最大10万円)となっています。

参考:教育訓練給付制度|厚生労働省

雇用継続給付

雇用継続給付とは、労働者が特定の理由で雇用継続が困難な事情が発生した場合に、労働者の生活と雇用を守るための制度です。雇用継続給付には「高年齢雇用継続給付」と「介護休業給付」があり、「育児休業給付」も同様の目的があるといってよいでしょう。高年齢雇用継続給付には2種類あり、いずれも一定の条件を満たした60歳以上65歳未満の労働者が60歳時点の賃金と比べて賃金が低下した際に、働きながら受給することが可能です。育児休業期間中や介護休業期間中の賃金が低下した際に受給できる育児休業給付や介護休業給付も、利用頻度の高い制度といえるでしょう。

  • 高年齢雇用継続基本給付金
  • 高年齢再就職給付金
  • 介護休業給付金
  • 育児休業給付金

参考:雇用保険制度の概要|ハローワーク

雇用保険の加入条件

雇用保険は法律で定められた政府が運営する強制加入の保険制度です。労働者を雇用していることが適用条件となっており、労働者を一人でも雇用する事業所は、原則として雇用保険加入が義務付けられています。ただし、一部例外が認められる業種もあることに注意が必要です。以下で、雇用保険の適用を受ける企業と、対象となる労働者について見てみましょう。

雇用保険に加入できる企業

原則として、労働者を一人でも雇用している企業は、雇用保険の加入手続きが必要です。業種や従業員規模を問わず、適用事業所となった事業主は、従業員の雇用保険加入の手続きを行わなければいけません。

ただし、例外もあります。一部の農林水産業を営む個人経営の事業は、常時雇用する労働者が5人未満の場合、「暫定任意適用事業」として任意加入となります。ただし、その事業所の2分の1以上の労働者が雇用保険の加入を希望する場合には、労働局に任意加入の申請をしなければならないことになっています。

雇用保険に加入できる労働者

上述の雇用保険に加入している企業(適用事業所)に雇用されている労働者は、本人の意思に関係なく、雇用保険に加入します。ただし、例外として週の労働時間数が少ない短時間労働者や、雇用期間が一定に満たない者、会社代表者や取締役など労働者に該当しない者は対象には含まれません。

【雇用保険の適用が除外される労働者の代表例】

  • 「1週間の所定労働時間(就業規則や労働条件通知書などで勤務しなければならないこととされる通常の週の1週間の労働時間)が20時間未満である場合」または「31日以上雇用されることが見込まれない場合」のいずれかに該当する者
  • 会社の取締役、会社役員(労働者としての身分を持つ場合は例外あり)
  • 個人事業主や法人代表者と同居の親族(一定の条件を満たす場合は加入可能)
  • 学生(夜間や定時制課程の学生などを除く)

雇用保険の手続き – 各フェーズごとに解説

現在働いている企業で「雇用保険の申し込みをしたかどうか記憶にない」という方もいるのではないでしょうか。企業は、労働者を雇用した段階、つまりは入社時の手続きとして雇用保険への加入手続きを行うのが一般的です。そして、退職と共に資格喪失の届出がなされます。

雇用保険の加入等の手続き自体は、企業の人事や総務部が行うものですが、受け取る書類の中には、失業中に受ける給付金の手続きに必要なものもあります。雇用保険の手続きの基本的な流れをおさえておきましょう。

入社時の手続き

企業は、労働者を雇い入れた場合は、雇用日(又は雇用保険の加入条件を満たした日)が属する月の翌月10日までに手続きを行います。試用期間中や研修期間中であったとしても、適用事業所に雇われれば手続きが必要です。手続きでは、事業所の所在地を管轄するハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。

このとき、ハローワークから企業に対して「雇用保険被保険者証」と「雇用保険資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」が交付されます。これらは、雇用保険への加入手続きが完了したことを証明する書類です。

「雇用保険被保険者証」と「雇用保険資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」は、企業から従業員に交付されます。退職を考えたときや、教育訓練を受けるときなど、雇用保険の給付金を受給する可能性がある際、自身の加入月などを確認するために役に立ちますので、大切に保管しましょう。

もし企業に雇用されているにも関わらず、事業主が雇用保険の加入手続きを行わなければ、育児休業給付金の受給や失業時の基本手当の受給に際して、労働者に不利益が生じます。入社後、企業から雇用保険保険者証等が交付されない場合には、ハローワークで加入の確認照会をすることも可能です。

参考:雇用保険の加入手続の有無の確認|厚生労働省

退職時の手続き

雇用者が退職する場合、企業は「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」をハローワークに提出し、離職後、本人に「雇用保険被保険者離職票」が交付されるのが一般的な流れです。離職票は、従業員が交付を希望するときに作成されますが、59歳以上の従業員が退職する場合には、本人が希望しない場合であっても必ず交付されることになっています。

この離職票は、基本手当など失業時の給付を受ける際の手続きで必要です。再就職先が決まっていない場合など、再就職までに失業期間がある方が基本手当などの給付を受けるには、離職票に必要書類を添えてハローワークで手続きをする必要があります。給付開始までには、いくつかの手続きがありますので、早めに行動しましょう。

雇用保険に関する注意点

求職活動中や、キャリアアップの教育訓練受講、育児休業中など、さまざまな場面で労働者の生活を支援する雇用保険ですが、制度を利用するには、正しく制度を理解する必要があります。

たとえば、雇用保険に加入していたからといって、退職後即、給付を受けられるわけではありません。以下に、雇用保険制度を理解する上での注意点を解説します。

入社して1ヵ月以内に退職した場合でも、雇用保険の適用対象になる?

企業は、労働者を雇用した日が属する月の翌月の10日までに雇用保険の加入手続きを終えなければなりません。たとえば、4月1日に新入社員が入社した場合、5月10日までに所轄のハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する必要があります。

この原則は、たとえ在職期間が短い場合でも変わりません。入社して2週間後など、なんらかの事情があって短期間で退職したケースでも、通常の流れに従い加入手続きと資格喪失の手続きがなされるのが一般的です。

週の労働時間が20時間未満のパートタイムでも雇用保険に加入できる?

雇用保険は、「週の所定労働時間が20時間以上」「31日以上の雇用見込みがあること」という2つの要件を満たす労働者に適用されます。この要件を満たしていれば、正社員やアルバイト、パートタイムといった雇用形態の名称に関わらず、企業は雇用保険加入の手続きをしなければなりません。

そのため、「パート」や「アルバイト」のなかで、週20時間以上の所定労働時間があるかどうかで雇用保険の加入状況がわかれることになります。

週の所定労働時間が20時間未満の労働者の場合は、雇用保険の適用除外となるため、雇用保険には加入できません。ただし、これまで雇用保険に加入していた方が、なんらかの理由で週の労働時間が20時間を切った場合、それが概ね6ヵ月以内の一時的な変更であったり、子が小学校に就学するまでの育児による時短勤務であったりする場合は、資格喪失手続きの必要はないとされています。

参考:Q19 所定労働時間が週20時間未満となった場合|東京ハローワーク
 

雇用保険に加入していたら、失業時にすぐに給付金をもらえる?

失業後、基本手当を受給するには一定の条件を満たす必要があります。まず、重要なのは雇用保険に加入していた期間です。この期間が基準に満たなければ失業後の給付金は受け取れません。

  • 自己都合での退職:離職日以前の2年間で、通算して12ヵ月以上の加入期間
  • 会社都合などによる退職:離職日以前の1年間で、通算して6ヵ月以上の加入期間

基本手当を受けるには、ハローワークで手続きをしたあと、指定された日程の雇用保険受給者説明会に参加します。その後、失業認定を受けたのち給付金の支給がはじまります。会社都合の退職の場合はおよそ1ヵ月半ほど、自己都合の退職の場合は3ヵ月〜4ヵ月ほど、初回の給付金の振込までに時間がかかります。

2020年10月1日以降に離職した場合は、自己都合で退職 した場合の給付制限期間が3ヵ月から2ヵ月(5年間で2回まで)に短縮される法改正が行われました。しかし、それでも雇用保険に加入していたからといって、失業後すぐに給付金が支払われるわけではないので注意しましょう。また、雇用保険の給付金は、あくまでも就職する意思があるのに就職先が決まらない方のためのものです。退職時にすでに再就職先が決まっているケースなどでは、支給されません。

いざというときのために雇用保険制度の理解を深めよう

雇用保険は、労働者のためのものです。加入している期間に保険料をおさめることで、失業時などの生活の支えとなります。また、雇用保険は失業時だけでなく、在職中にキャリアアップを考えるときにも活用できます。教育訓練給付や育児休業給付など、活用できる雇用保険制度の理解を深め、いざというときのために役立てましょう。

よくある質問

雇用保険とはなんですか?

労働者の生活の安定や就職の促進のための公的保険制度です。雇用保険に加入している(していた)労働者は、失業したときや育児休業・介護休業などで働けないときに給付金を受けることができます。 詳しくはこちらをご覧ください。

雇用保険の加入条件について教えてください。

原則として一人でも労働者を雇用している企業は適用事業所となり、条件に合致する労働者の加入手続きを行う義務があります。「週の所定労働時間が20時間以上」「31日以上の雇用見込み」の労働者の加入条件です。詳しくはこちらをご覧ください。


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