- 更新日 : 2023年6月30日
エニアグラムとは?性格診断をタイ プ別に解説、ビジネスへの応用や導入企業の事例
エニアグラムとは、人の思考や行動パターンを診断し9つのタイプに分類する性格類型です。従来、哲学・人間学・心理学などで研究が行われてきましたが、近年ではビジネスシーンでも積極的に活用されています。採用活動・人材配置・組織運営などの場面で役に立つでしょう。当記事では、エニアグラムの概要やメリット、導入事例などを紹介します。
目次
エニアグラムとは?
エニアグラム(eniaguramu)とは、9つの点を持った円と、点と点を結んだ9つの線から成る幾何学的図形です。哲学・人間学・心理学の分野では、この幾何学的図形を性格診断に応用したものをエニアグラムといいます。ここでは性格診断としてのエニアグラムに着目し、意味・目的・効果などを解説していきましょう。
エニアグラムの意味
「エニアグラム(eniaguramu)」とは、人の思考や行動パターンを診断して幾何学的図形に当てはめ、9つのタイプに分類する性格類型です。正確には「エニアグラム性格論(Enneagram of Personality)」を指し、日本語では「九芒星性格論」というのが適切かもしれませんが、一般的にはエニアグラムと呼ばれています。
エニアグラムの目的
エニアグラムの目的は、自己理解と他者理解です。エニアグラムを理解することで「自分とは何か」「何が得意で何が苦手なのか」「なぜこのような思考や行動を取るのか」などの自己理解が進みます。自己理解は自己成長につながり、ひいては他者に対する理解や寛容につながるでしょう。エニアグラムの考え方は哲学・人間学・心理学だけでなく、ビジネスや仕事に応用することも可能です。適職の把握や適正な人事など、さまざまな目的で活用できます。
エニアグラムの効果
エニアグラムによって自己理解や他者理解が進むと、以下のような効果が期待できます。
- 自己理解によって自己受容が深まる
- 自己受容は他者理解や他者受容につながり、他者との関係性が向上する
- 自分をより良く活かすことができるようになり、自己実現につながる
人間社会の中で生きる私たちが幸せになるには、より良い人間関係の実現が不可欠です。エニアグラムは、より良い人間関係を実現するための実践ツールとなるでしょう。さらに、自己理解が深まることで自分をより良く活かすことができるようになり、自己実現にもつながります。
エニアグラムがビジネスで応用される背景
人の思考や行動パターンを9つのタイプに分類するエニアグラムは、ビジネスの分野でも活用されています。自身の適職を判断したり、社員のやる気を引き出したり、適正な人事を実現したりするためです。ここでは、エニアグラムがビジネスで応用される背景について解説します。
適職を判断する
エニアグラムの性格診断では、物事に対する姿勢や思考パターン・行動パターンなどを9つのタイプに分類します。
例えば、タイプ3の人は何事にもはっきりとした目的や目標を持ち、達成するにはどうすればよいかを考える「達成する人」です。周囲の人の才能を見抜き、皆を励まし目標達成に導く、優れたリーダーとして能力を発揮するでしょう。
一方、タイプ6の人は何事に対しても忠実・誠実で、責任感が強く協力的で一生懸命働く「忠実な人」です。リーダーのもとで、優れたプレイヤーとしての活躍が期待できるでしょう。
このように、エニアグラムでは特性が明確になるため、適職を判断する際に効果を発揮します。
社員のやる気を引き出す
エニアグラムの性格診断を行い、フィードバックを受けることで、社員の自己分析やリーダーシップを見つめなおすきっかけとなります。社員本人や上司が気付かなかったような特性や課題が見えてくるため、さらなる自己成長やモチベーションアップが期待できるでしょう。
適正な人事を実現する
エニアグラムの性格診断を応用することで、適正な人事を実現できます。前述の通り、エニアグラムでは社員の特性が明確になるため、適材適所の人材配置を行うことが可能です。
リーダーとしての資質を持っているのか、プレイヤーとしての活躍が期待できるのかなど、エニアグラムの結果を判断材料の一つにすることで、ミスマッチを最小限に抑えられます。
エニアグラム診断を行うメリット
ビジネスシーンでも活用が期待できるエニアグラムですが、どのようなメリットがあるのでしょうか。まずは、日本エニアグラム学会が提供する90問回答式チェックを実施し、自身のタイプを確認してみましょう。
ここでは、エニアグラム性格診断を行うメリットを解説します。
自己理解が深まる
エニアグラムの性格診断を行う1つ目のメリットは、自己理解が深まることです。エニアグラムを行うことで「自分とは何か」「何が得意で何が苦手なのか」「なぜこのような思考や行動を取るのか」などの自己理解が進みます。
エニアグラム性格診断では9つのタイプごとに適性と課題が明確になり、自身の強みや得意分野、弱点や問題点などを客観的に把握可能です。他者からの指摘などでは受け入れにくいことでも、客観的な診断結果であれば受け入れやすく、改善につなげることができるでしょう。
他者との関係性が向上する
エニアグラムの性格診断を行う2つ目のメリットは、他者との関係性が向上することです。
人は誰しも「自分とはいったい何者なのか?」「なにゆえ自分は悩むのか?」などの疑問を抱きます。このような問いは自己を知る意欲となり、自己理解が深まれば自己成長へとつながるでしょう。自己成長によって、他者への寛容が身に着く可能性が高まります。
さらに、エニアグラム性格診断では、他者をどのように認識し、どのようにコミュニケーションを取る傾向にあるのかを客観的に把握可能です。相性の良いタイプや相性の悪いタイプなども明らかになるため、より良い人間関係を構築するヒントとなるでしょう。
エニアグラムの9つの性格タイプ
エニアグラムでは、9つのタイプで性格を分類しています。タイプごとに優劣や良い悪いなどの区別はないため、単純に数字で呼ぶのが一般的です。研究者によってはタイプの特徴を一言で表すニックネームをつけているため、ここではエニアグラム研究の第一人者であるドン・リチャード・リソ氏が名づけたニックネームとともに各タイプの特徴をご紹介します。
タイプ1:完璧主義者(改革する人)
タイプ1の人は、周りを良くしよう、自分を向上させようと努力を惜しまず、常に公正と正義を心がけている「改革する人」です。あるべき姿を追い求める「完璧者主義者」でもあります。一方、理想を追い求めすぎるあまり独善的になってしまうこともあるでしょう。
仕事においては、持ち前の正義感から顧客や同僚などからの信頼を得やすいタイプですが、他者に対しても過度に公平公正を求める傾向にあるため注意が必要です。
タイプ2:献身家(人を助ける人)
タイプ2の人は、困っている人がいるとすぐに手を貸す、親切で温かく心細やかな「人を助ける人」です。常に人を助けてあげたい、満たしてあげたいと考える「献身家」でもあります。一方、自分の行動が必要とされない、正しく評価されないと強いストレスを感じてしまうこともあるでしょう。
仕事においては、組織の中で潤滑油のような役割を担う一方、他者から頼られると断れず抱え込みすぎてしまう傾向にあるため注意が必要です。
タイプ3:達成者(達成する人)
タイプ3の人は、いつもはっきりとした目的や目標を持ち、達成するにはどうしたらよいかを考えている「達成する人」です。周囲の人の才能を見抜き、皆を励まし目標達成に導く、優れた「達成者」でもあります。一方、失敗することを極度に恐れ、成功の可能性が低いものは極力避けようとするでしょう。
仕事においては、高い積極性や向上心が求められるリーダーやトップに向いたタイプですが、結果を重視するあまり成果を出さないプレイヤーを切り捨てたり、人を道具のように扱ったりする傾向があるため、注意が必要です。
タイプ4:芸術家(個性的な人)
タイプ4の人は、ユニークかつ創造的・独創的で、何よりも感動を大切にする「個性的な人」です。芸術的で感受性が鋭く、人の気持ちに対してとても敏感な「芸術家」でもあります。一方、好き嫌いがはっきりしていて、人から与えられた仕事も自分が気に入らないと投げ出してしまうこともあるでしょう。
仕事においては、興味関心があることはとことん突き詰める性格から専門性の高い分野で力を発揮しますが、自分の感性や能力を過信して大きな失敗を犯してしまう可能性もあるため注意が必要です。
タイプ5:研究者(調べる人)
タイプ5の人は、物事をじっくりと考え、慎重に行動する「調べる人」です。データを集め、いろいろなことを調べる「研究者」でもあります。一方、自分の知識を人に授けたり、自分の考えを積極的に表現したりすることはあまり好まない傾向にあるでしょう。
仕事においては、主観に左右されず客観的に判断する姿勢は評価される一方、他人との情報共有を嫌いコミュニケーションが苦手な傾向があるため、注意が必要です。
タイプ6:堅実家(忠実な人)
タイプ6の人は、何事に対しても忠実・誠実で、責任感が強く協力的で一生懸命働く「忠実な人」です。権力に従順で、命じられたことは忠実に実行しようとする「堅実家」でもあります。一方、自ら積極的に物事を決められず、結論を先延ばしにしてしまうこともあるでしょう。
仕事においては、慎重さが求められる局面では重宝される一方、想定外のトラブルや突発的なアクシデントに弱く、重要な判断や決断がなかなか下せない傾向にあるため注意が必要です。
タイプ7:楽天家(熱中する人)
タイプ7の人は、人生を明るく楽しく過ごしたい、人生には多様性があって欲しいと望んでいる「熱中する人」です。聡明で明るく、ざっくばらんでくつろいだ感じを好み、夢想的な「楽天家」でもあります。一方、辛いことや苦しいことからは目を背け、極力回避しようとするでしょう。
仕事においては、持ち前の好奇心から知識や経験が豊富で、職場のムードメーカーとして親しまれる一方、一つのことに集中することが苦手で、問題が生じても先延ばしにしてしまう傾向にあるため注意が必要です。
タイプ8:統率者(挑戦する人)
タイプ8の人は、自己主張が強く、何事においても第一人者であろうとする「挑戦する人」です。自信と決定力があり、頼ってくる弱い人を助けたいと願う「統率者」でもあります。一方、対立する人や挑んでくる人を排除する傾向にあるでしょう。
仕事においては、有言実行・明朗快活で人を引き付けるカリスマ性のあるタイプですが、自分の意に反する勢力とは敵対し、攻撃的な態度でやり込めるワンマン的な傾向にあるため注意が必要です。
タイプ9:調停者(平和をもたらす人)
タイプ9の人は、落ち着いてゆったりとした安定感のある「平和をもたらす人」です。内面の静けさを重視し、葛藤や不快な状況を解消しようと働きかける「調停者」でもあります。一方、平和かつ円満に過ごすことを好み、積極的に動くことは好みません。
仕事においては、第三者の立場で客観的に判断を下すため調和をもたらしますが、自己表現が苦手で優柔不断や日和見主義と見られがちな傾向にあるため注意が必要です。
エニアグラムで適性、適職を把握する
前章では、エニアグラムにおける9つの性格類型を紹介しました。ビジネスに応用することで、仕事と従業員の適正がどれだけマッチしているのかを判断することができるでしょう。ここでは、エニアグラム性格診断のビジネスシーンへの応用事例を紹介します。
採用活動に応用する
エニアグラムを採用活動に応用することで、ミスマッチを最小限に防ぐことができるでしょう。加えて、求職者の適性を事前に把握することで、会社が求める人材をピンポイントで採用できます。
例えば、リーダーシップを持った人材が不足し組織が機能不全を起こしている場合は、タイプ1やタイプ3のような積極性の高い人材を採用するとよいでしょう。一方、職場のまとまりが悪い場合は、タイプ2やタイプ9のような協調性が高い潤滑油のような人材を採用すべきです。
人材育成に応用する
エニアグラム性格診断では、従業員の得意不得意をある程度把握できます。得意なことを伸ばし、不得意なことを克服できるような育成プログラムを組むことで、効率的に人材育成することができるでしょう。
また、エニアグラムでは思考パターンや行動パターンも明らかになるため、一人ひとりに適した育成手法を採用できます。
組織運営に応用する
エニアグラムの結果を共有することで、従業員同士の相互理解が深まるでしょう。上司・部下・同僚が持つ特性が明確になるため、信頼関係が深まり、より効率的に業務を遂行できます。組織内トラブルのリスク低減にもつながるため、エニアグラム性格診断を応用すれば安定した組織運営を実現可能です。
エニアグラムの導入企業例
エニアグラムには自己理解・他者理解に加え、組織の円滑な運営につながるというメリットがあります。導入企業の一例を示すと、下記の通りです。
- モトローラ
- ヒューレットパッカード
- コダック
- アップル
- IBM
- ソニー
- サイバーエージェント
- トヨタ
- 三菱ふそう
- ゼネラルモーターズ
- ボーイング
- デュポン
- コカコーラ
エニアグラムは国内外のさまざまな企業に採用されており、採用活動・人材配置・人材育成・組織運営などに活用されています。
エニアグラム性格診断で自分の適性・適職を知ろう
今回はエニアグラムについて解説しました。エニアグラムとは、人の思考や行動パターンを9つのタイプに分類する性格類型です。従来、哲学・人間学・心理学の分野で研究が行われてきましたが。近年ではビジネスシーンへの応用が進んでいます。
エニアグラムを理解するメリットには、自己理解が深まることと、他者との関係性が向上することが挙げられます。人間社会の中で生きる私たちに必要不可欠な「より良い人間関係」を構築するため、エニアグラムはより実践的なツールとなるでしょう。
一方、ビジネスへの活用も盛んで、採用活動・人材育成・組織運営などへの応用事例が見られます。
さまざまなシーンで活用されているエニアグラム性格診断を行い、あらためて自分の適性や適職を確認してみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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