- 更新日 : 2024年12月13日
入社書類をペーパーレス化は義務?進め方や電子保存の注意点を解説
入社手続きには、雇用契約書など多くの書類が必要です。しかし、紙の書類は回収の手間が掛かるだけでなく紛失等のリスクもあります。そこで必要となるのがペーパーレス化です。
当記事では、入社書類のペーパーレス化について解説します。導入の手順なども紹介しますので、適切な方法で入社書類のペーパーレス化を目指しましょう。
目次
入社書類のペーパーレス化は義務?
入社に必要な雇用契約書や労働条件通知書などの書類は、通常紙によって作成し、当事者に交付されています。しかし、これらの書類は紙ではなく、電子ファイルなどで作成することも可能です。このような電子的方法による紙媒体からの転換を「ペーパーレス化」と呼びます。
2019年4月から、メールやSNSなどを利用した電子的方法による「労働条件通知書」の交付が認められるようになりました。そのため現在では、雇用契約書だけでなく労働条件通知書も併せた「雇用契約書兼労働条件通知書」を電子化する企業も少なくありません。ただし、これらの書類の電子化は義務ではありません。
入社に必要な書類には、雇用契約書や労働条件通知書のほかにも、入社誓約書や身元保証書など多くの種類があります。しかし、電子的な方法による作成を義務付けた書類はなく、入社書類のペーパーレス化は義務ではありません。
入社書類でペーパーレス化できる主な書類
ペーパーレス化できる主な入社書類としては、以下が挙げられます。
- 就業規則
- 雇用契約書
- 労働条件通知書
- 採用内定通知書
- 身元保証書
- 入社誓約書
- 秘密保持契約書
上記のような入社書類は、多くの企業でペーパーレス化されています。これらの書類は、様式に定めがないため、紙媒体による必要はありません。
なお、労働条件や職場における規律を定める就業規則は、入社する従業員が希望すれば閲覧させる必要があります。電子ファイルなどの形式であれば、いつでも閲覧可能となり、交付も容易に行えます。
一方で、ペーパーレス化できない入社書類もあります。以下のような書類は、紙による提出が必要です。
- 身元保証人の印鑑証明書
- 住民票記載事項証明書
- 健康診断書
- 卒業証明書
印鑑証明書は、身元保証人の実在を証明するために提出する書類です。住民票記載事項証明書は、入社する従業員の正確な情報や、通勤手当額の根拠を知るためなどに利用されます。これらの書類は、公的機関から発行されるものであり、通常発行された書類をそのまま企業へ提出します。コピーや電子ファイルの形式では原則提出できません。
従業員を雇い入れる際には、健康診断の実施が必要です。ただし、3か月以内に実施された健康診断書を提出する場合、雇入れ時の健康診断を省略できます。この際に提出する健康診断書は、通常医療機関が発行した診断書そのものであることが一般的で、ペーパーレス化できません。
卒業証明書は、新卒採用時に学歴を確認するために、提出が求められることが多い書類です。このような証明書は、改ざんされていないことを明らかにするため、大学等が発行した原本を提出します。
入社書類をペーパーレス化するメリット
本項では、入社書類をペーパーレス化するメリットについて解説します。
書類記入の手間が減る
入社書類をペーパーレス化すると、パソコンで必要事項を入力できるので、書類を手書きで記入する手間が減少します。自動チェック機能なども利用できるため、確認や修正の手間も省くことが可能です。紙の書類を修正する場合には汚損による再交付が必要なこともありますが、ペーパーレス化によって、そのような手続きも不要となります。
契約更新管理が効率化できる
社内には無期雇用の正社員だけではなく、有期雇用の契約社員やパートの従業員もいます。システムの導入などによって、ペーパーレス化を図れば、契約状況を一覧で確認することが可能です。いつ契約更新が必要なのか一目でわかるようになり、契約更新の管理を効率化できます。
多様な働き方に対応できる
現在では、オフィスに出社する以外にも、テレワークやリモートワークといった多様な働き方があります。しかし、テレワーク等を行う従業員に書類を届ける際、いちいち郵送していたら非効率です。入社書類をペーパーレス化できる環境が整えば、ほかの書類をペーパーレス化することも可能です。紙の書類によるやり取りが不要になれば、テレワーク等の多様な働き方を大きく推進することが可能となるでしょう。
書類の保管スペースを削減できる
入社に関係する書類は数が多く、保管スペースが必要です。しかし、ペーパーレス化すれば、書類をデータとしてパソコンやクラウド上に保管できます。これまで必要であった書類の保管スペースを大幅に削減することが可能です。
コスト削減につながる
入社書類のペーパーレス化によって、紙の書類で発生する紙やインク代、印刷費などのコストを削減できます。メール等での送付や社内ネットでの閲覧も可能となるため、郵送コストも掛かりません。
入社書類をペーパーレス化するデメリット
入社書類のペーパーレス化には、デメリットも存在します。デメリットを把握し、メリットの最大化を図りましょう。
セキュリティ上のリスク
入社書類には、氏名や住所、生年月日など、入社する従業員の個人情報が多く含まれています。そのような書類をペーパーレス化する際には、セキュリティに考慮する必要があります。権限のある者以外は閲覧できない体制を構築しなければ、個人情報の流出事故にもつながりかねません。
セキュリティソフト等を導入したうえで、自社におけるネットワーク環境を整備し、担当者を決めて運用を任せましょう。従業員を対象に、セキュリティ研修を行うことも効果的な方法です。
ITリテラシーが必要
入社書類を扱う従業員が、ITやデジタル技術に明るいわけではありません。ITリテラシーが低ければ、ウィルス感染による個人情報流出なども起こりかねません。ペーパーレス化する際に、特別講習の実施やサポート担当者の選任などが必要です。
システム導入コスト
ペーパーレス化に用いられるシステムには様々な種類があり、それぞれ異なる機能や特色を有しています。しかし、導入の際に大なり小なりのコストが掛かることには変わりません。導入後の運用についても同様です。コストに見合った機能を有するシステムを導入するためにも、トライアル期間などを利用し、自社とのマッチ具合を確認しておきましょう。
入社書類をペーパーレス化する方法
入社書類をペーパーレス化するには、いくつかの方法が存在します。以下に3つ紹介しますので、自社の状況に合った方法を選択してください。
電子契約サービスの導入
電子契約サービスは、インターネット上で様々な契約を締結できるサービスです。インターネット上で契約締結を行う関係上、紙の書類は不要です。契約書への押印は、電子署名に置き換えられており、確かに契約を締結したことを証明できます。ネット環境さえあれば、いつでもどこでも契約を締結可能となるため、採用業務に柔軟性が生まれます。
電子ファイルとして保存
これまでWordやExcelで作成し、紙で出力していた書類をそのまま電子ファイルの形式で保存します。WordやExcelにはエクスポート機能が備わっており、簡単にPDF形式にすることも可能です。ほかにも、アップロードしたファイルをPDF形式に変換するWebサービスの利用などが考えられます。
書類スキャンによる電子化
契約書や通知書、誓約書などの入社書類をスキャナー等で取り込む方法です。スキャンした書類は、PDFなどの電子ファイルとして扱えるため、そのままメールに添付して送信したり、チャットツールでやり取りしたりすることが可能となります。ただし、一部の書類は、ただ取り込むだけでなく、要件を満たしたうえで保存しなければなりません。
入社書類をペーパーレス化する進め方
入社書類をペーパーレス化するには、以下のステップを踏む必要があります。
- 現状の把握と改善点をまとめる
- 自社に合ったシステムを検討する
- 無料トライアルで試験導入する
- 従業員に周知とサポートを行う
- システムの効果検証を進める
以下で、ステップごとに解説します。
1.現状の把握と改善点をまとめる
闇雲にペーパーレス化を行っても効果は期待できません。ペーパーレス化のためのシステム導入にあたって、自社の現状と改善点をまとめる必要があります。たとえば、郵送に掛かるコストや時間が問題であれば、電子化したファイルをメール等で送信することで解決できます。自社が必要とする改善点をリストアップし、優先順位の高いものを解決できるシステムを選びます。
2.自社に合ったシステムを検討する
ペーパーレス化のためのシステムは数多くあり、機能や価格も千差万別です。単に高機能なシステムを選べばよいわけではなく、自社が必要な機能を備えたうえで、導入や運用のコストが低いものを選択する必要があります。複数を比較検討し、自社に最適なシステムを見つけましょう。
3.無料トライアルで試験導入する
システムによっては、無料トライアル期間を設けています。無料トライアルで試験導入すると、自社とのマッチ具合や、どれだけ効率化を図れるかを確認することが可能です。積極的に活用して、自社に合ったシステムを見つけましょう。
4.従業員に周知とサポートを行う
システムを導入したら、従業員に周知してペーパーレス化を促進します。システムの利用に不慣れな従業員がいる場合には、サポート担当者を選任して利用方法のレッスンなどを行うことが必要です。
5.システムの効果検証を進める
システムを導入しただけでは、ペーパーレス化による効果が最大化されません。ペーパーレス化によって、どの程度の効果がもたらされたかを検証し、検証データを基にさらなる業務効率化を図る必要があります。
入社書類をペーパーレス化のポイント
入社書類をペーパーレス化するためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。効果的なペーパーレス化のために、押さえるべきポイントを解説します。
労働条件通知書からなど段階的に導入する
いきなり全ての入社書類をペーパーレス化すると、入社書類に関わる従業員が混乱します。まずは、近時解禁された労働条件通知書の電子化などから導入してみましょう。段階的にペーパーレス化を進めることで、従業員も抵抗なくスムーズに移行できます。
電子帳簿保存法への対応をする
雇用契約は、電子契約による締結も可能です。ただし、その場合は電子帳簿保存法が定める電子取引に該当するため、「真実性の確保」「可視性の確保」などの要件を満たしたうえで保存しなければなりません。
適切なセキュリティ対策を行う
入社書類の電子化によってペーパーレス化を行う際には、ファイルに対する閲覧権限を設定するなど、適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。自由にアクセス可能であれば、入社書類に含まれる個人情報が流出する恐れもあるでしょう。企業の評価も大きく落としてしまうため、適切なセキュリティ対策を講じましょう。
従業員が交付内容を確認できているかチェックする
従業員が、電子的方法で交付した書類の内容を把握できているか確認することも重要です。それまで紙で交付していた書類を電子化すると、閲覧方法がわからず内容を確認できていない場合もあります。ペーパーレス化の担当者などを選任し、サポートに当たってもらいましょう。
入社書類に関する無料テンプレート
労働条件通知書などは、通知すべき労働条件について定められており、正しく通知できなければ法違反となります。しかし、正しい形で入社書類を用意できるか不安な担当者もいるでしょう。そのような場合に活用できるのがテンプレートです。
下記のリンクから、入社書類に関する無料のテンプレートをダウンロードできます。雇用契約書や労働条件通知書といった代表的な書類だけでなく、就業規則のテンプレートも用意していますので、ぜひご利用ください。
参考:
雇入通知書_労働条件通知書(ワード)|マネーフォワード クラウド給与
入社書類のペーパーレス化はマネーフォワードがサポート
入社書類は種類が多く、全てを自社でペーパーレス化するのが難しいと感じる担当者もいるでしょう。そのような場合には、マネーフォワードのサポートを受けられることをおすすめします。
「マネーフォワード クラウド人事管理」では、入社手続きを容易にする各種機能を提供しています。Web上で入社書類の提出依頼から回収までできるため、ペーパーレス化の促進を図れます。入社後も常に人事情報を最新の状態に保つことが可能です。
「マネーフォワード クラウド社会保険」は、入社時に必要な社会保険手続きをサポートするシステムです。各種届出書の作成から電子申請までクラウド化することで、社会保険手続き担当者の負担を大幅に軽減できます。また、従業員ごとに対応状況や申請状況、公文書の受領状況などを確認可能なため、手続きの漏れやミスの削減を期待できるでしょう。
ぜひ、「マネーフォワード クラウド人事管理」と「マネーフォワード クラウド社会保険」を導入し、入社書類の効率的なペーパーレス化を進めてください。
参考:
入社退社手続き、人事異動を簡単に すべての労務手続きをシームレスに|マネーフォワード クラウド人事管理
書類作成から電子申請まで 社会保険手続きをかんたんに|マネーフォワード クラウド社会保険
入社書類のペーパーレス化で採用業務の効率化を
入社書類は種類が多く、入社予定者とのやり取りにも大きな労力を要します。多くの書類を作成しなければならない関係上、紙ベースでの手作業では記入漏れや記入ミスなどが起きてしまいがちです。しかし、入社書類をペーパーレス化すれば、そのようなミスを大幅に削減できます。当記事の解説を参考にして自社に合ったシステムを導入し、入社手続きの効率化を図ってください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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