• 更新日 : 2024年12月13日

振替休日は半日や時間単位にできる?代休との違いや給与計算を解説

休日は、従業員が心身を休めるために重要です。休日の付与は企業の義務であり、確実に取得させなければなりません。しかし、休日の出勤が必要となる場合もあるでしょう。そのようなときに利用される制度が振替休日です。当記事では振替休日の意味や代休との違い、振替における注意点などを解説します。

そもそも振替休日とは?

振替休日とは、あらかじめ定められた休日と、通常の勤務日を入れ替える制度です。企業は、原則として週に1日以上の休日を労働者に与える必要があります。このような休日を「法定休日」と呼び、それ以外の休日を「法定外休日」と呼びます。しかし、休日出勤を行った場合には、週に1日の法定休日が取得できなくなる場合もあります。このような場合に法定休日を確保するため、利用される制度が振替休日です。

予定される休日出勤によって法定休日を確保できなくなる場合には、振替休日を取得させなければなりません。週に1日の休日しか定めていない企業が休日出勤を行う場合、必然的に振替休日がセットとなります。週休二日制の企業で法定休日を定めていない場合、2日のうちいずれかの休日が確保されていれば振替は不要です。ただし、法定休日を特定している場合には、その法定休日の出勤によって法定休日の確保ができなくなるため、いずれかの勤務日と振り替える必要があります。

たとえば、土日の週休二日制を採用する企業で、法定休日を日曜日と定めているとします。この場合、土曜日に出勤しても法定休日は確保できるため、休日を振り返る必要はありません。しかし、日曜日に出勤する必要がある場合には、法定休日を確保するため、事前に通常の勤務日と振り返る必要があります。木曜日(勤務日)と日曜日(法定休日)を振り替えた場合は、以下のようになります。

振替前月曜日火曜日水曜日木曜日金曜日土曜日日曜日
勤務日

(出勤)

勤務日

(出勤)

勤務日

(出勤)

勤務日

(出勤)

勤務日

(出勤)

法定外休日

(休日)

法定休日

(休日)

振替後月曜日火曜日水曜日木曜日金曜日土曜日日曜日
勤務日

(出勤)

勤務日

(出勤)

勤務日

(出勤)

勤務日

(振替休日)

勤務日

(出勤)

法定外休日

(休日)

法定休日

(出勤)

本来、木曜日に勤務して日曜日に休むはずでしたが、休日を振り替えたことで木曜日が休日となり日曜日に出勤しています。振替がなければ、日曜日の出勤は法定休日労働となってしまいますが、休日を木曜日に振り替えたことで通常の勤務日による出勤と同様の扱いとなっています。

振替休日を取得させなかった場合には、35%以上で計算した割増賃金の支払いが必要です。しかし、振替休日を利用することで、割増賃金の支払いが不要となります。あらかじめ休日を振り替えたことで法定休日が確保されているからです。この点が後述する代休との大きな違いです。なお、振替休日を利用するためには、就業規則の規定が必要です。そのため、就業規則に振替休日の規定がなければ、従業員が休日の振替に従う義務はありません。

休日出勤届のテンプレート(無料)

以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。

振替休日は半日や時間単位にできる?

振替休日は、原則として半日や時間単位では取得できません。これは、休日の考え方によるものです。

休日は、原則として0時から24時の「暦日」でなければならないとされています。12時から0時の半日単位や13時から15時までのような時間単位の振替では暦日単位での休日取得とはならず、休日の要件を満たしません。

振替休日は休日を振り替える制度であるため、原則として振り替えた後の日も休日の要件を満たす必要があります。ただし、8時間3交替制などの交替制や、自動車運転者、旅館業などは例外として暦日でない休日の取得も許されています。また、例外的に半日や時間単位での振替が許される場合もあります。

【例外】振替休日が半日や時間単位で取得できるケース

休日を振り返ることは、法定休日以外の休日であっても可能です。土日の週休二日制を採用する企業において、法定休日を日曜日と定めている場合に、法定外休日である土曜日をいずれかの勤務日と振り替えることもできます。なお、法定休日は、暦日単位であることが必要なため、半日や時間単位の取得は不可能です。

半日や時間単位での振替休日の取得
可能法定外休日
不可能法定休日

たとえば、法定休日を日曜日とする土日週休二日制を採用する企業で考えてみましょう。この場合、法定外休日の土曜日を木曜日と金曜日に半日単位で振り替えることは許されます。しかし、法定休日である日曜日を木曜日と金曜日に半日単位で振り替えることは、暦日の要件を満たさないため認められません。同じ休日であっても、法定休日か法定外休日かで扱いが変わることに注意が必要です。

振替休日と代休との違い

振替休日と似た制度として、「代休」が存在します。しかし、両者は大きく異なった制度であるため、混同してはなりません。大きな違いは、振替休日が事前に振り替える休日を特定するのに対して、代休は休日出勤を行った後に代わりとなる休日を与える制度であることです。この違いは、割増賃金の支払いに大きく関わります。

両者の違いは以下の通りです。

振替休日代休
休日の特定事前事後
割増賃金の支払い原則不要必要
半日単位等での取得原則不可可能

週休一日制の企業で、法定休日である日曜日に休日出勤を行い、事後に水曜日を代休とした場合は以下のようになります。

本来の勤務日曜日月曜日火曜日水曜日木曜日金曜日土曜日
法定休日(休日)勤務日(出勤)勤務日(出勤)勤務日(出勤)勤務日(出勤)勤務日(出勤)勤務日(出勤)
代休を付与日曜日月曜日火曜日水曜日木曜日金曜日土曜日
法定休日(出勤)勤務日(出勤)勤務日(出勤)勤務日(代休)勤務日(出勤)勤務日(出勤)勤務日(出勤)

休日と勤務日が入れ替わっていることは、振替休日と変わりません。しかし、代休では法定休日に出勤した後に別の勤務日に代わりとなる休日を与えています。この場合には、仮に代休を取得したとしても、休日出勤を行った事実は変わらないため、割増賃金の支払いが必要です。代休と振替休日を混同している場合、給与計算の誤りにもつながってしまうため注意しましょう。

振替休日を取得する場合の給与計算

振替休日を取得した場合の給与計算は、状況によって異なった処理が必要です。振替休日を取得した場合の給与計算について解説します。

通常の労働日の休日振替は割増賃金は発生しない

通常、振替休日を取得した場合に割増賃金は発生しません。振り替えることによって、割増賃金の支払い対象となる法定休日が確保されているからです。また、同一週内の振替であれば、法定労働時間を超過することもありません。そのため、この場合には、特別な処理は不要です。

週またぎで振替休日を取得する場合

週をまたいで振り替える場合には、労働時間に注意が必要です。翌週に振り替えたことで、その週の労働時間が週40時間を超える事となった場合、その部分について時間外手当を支払わなければなりません。

たとえば、週休二日制(法定休日は日曜日、労働時間8時間)の企業で、法定外休日(土曜日)を翌週の月曜日に振り替えたような場合です。この場合には、週に1日の法定休日は確保されています。しかし、振替によって、月曜日から土曜日までの勤務時間が48時間となってしまいました。週40時間の法定労働時間を超過しているため、その時間について25%以上で計算した時間外手当の支払いが必要です。

月またぎで振替休日を取得する場合

月をまたいで振り替えた場合には、一旦休日出勤を行った分の賃金を支払う必要があります。後から休日を付与するからといって、賃金と相殺することはできません。同一の賃金計算期間内に休日を取得していないからです。期間内に、未取得の休日と相殺するような扱いは認められません。

その後、振替休日を取得した後に、賃金から控除することになります。ただし、月をまたいだ場合でも、同一賃金計算期間内であれば、このような処理は不要となります。

振替休日を取得させる際のポイントや注意点

振替休日を正しく運用するためには、押さえるべきポイントや注意点が存在します。誤りがあれば割増賃金の未払いなどの法違反にもつながるため、しっかりと把握してください。

就業規則に振替休日について明記する

振替休日を制度として導入するためには、就業規則にその旨の規定を設けることが必要です。就業規則上の根拠がなければ、従業員に対して振替休日を適用することはできません。制度の対象者など、振替に関するルールをしっかりと整備し、従業員に周知しましょう。

振替休日の取得期限を設ける

振替休日に関しては、明確な法律上のルールは存在しません。そのため、明確な取得期限も存在しないことになります。ただし、労働基準法上の時効として2年の期間が定められているため、その期間内に取得させる必要があります。休日は労働者の心身のリフレッシュのための制度であるため、できる限り振替日に近い日の取得が望ましいでしょう。

法定休日のルールを理解する

振替休日は、法定休日を確保するための制度です。法定休日を正しく理解しておかなければ、正しく振替休日を運用することができません。暦日単位での付与が必要なことや、原則として週に1日以上の確保が必要となることなどを押さえておきましょう。

「週40時間」を超えると割増賃金が発生する

振替休日の運用に当たっては、法定休日だけでなく、法定労働時間の理解も欠かせません。週をまたいで振り替えた場合には、その週の労働時間が法定労働時間である40時間を超過することもあるため注意しましょう。超過した場合には、その部分について割増賃金が発生します。

休日労働が発生する場合は36協定の締結が必要

「36協定」とは、労働者に法定労働時間を超える労働や休日出勤を行わせる場合に、締結および届出が必要となる労使協定です。休日を振り替えた場合でも、法定休日が確保できていなかったり、法定労働時間を超過したりする場合もあります。そのため、事前に36協定を締結し、労働基準監督署長に届け出ておいたほうがよいでしょう。

振替休日を理解して正しく利用しよう

振替休日を正しく利用すれば、休日出勤に対する割増賃金を支払うことなく、柔軟に勤務スケジュールの変更が可能です。しかし、正しく運用するためには、法定休日や法定労働時間、代休との違いなどについて理解する必要があります。当記事を参考に正しい知識を身につけて、振替休日を適切に利用しましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事