• 更新日 : 2024年3月27日

ジョブディスクリプション(職務記述書)とは?目的や書き方を解説!

ジョブディスクリプションは職務記述書とも呼ばれ、職務内容、求められるスキル等をまとめた書類のことです。ジョブ型雇用という雇用システムで活用されるもので、経団連の提言などでジョブ型雇用の導入機運が高まり、注目を集めています。この記事ではジョブディスクリプションの定義、メリット・デメリット、書き方などについて解説します。

ジョブディスクリプション(職務記述書)とは?

ジョブディスクリプション(job description)とは、職務の内容、責任や権限の範囲、求められる成果やスキルなどをまとめた書類のことです。日本語では「職務記述書」と呼ばれます。ジョブ型雇用と呼ばれる雇用システムにおいて人材採用や人事評価などに利用されています。

ジョブ型雇用が広く普及している欧米諸国で利用されていますが、メンバーシップ型雇用が中心の日本では、IT業界など一部の業界を除き利用が進んでいませんでした。

ところが、最近になりジョブ型雇用が注目を集めるとともに、ジョブディスクリプションの導入が増えています。その理由については次章で解説します。

ジョブディスクリプションの導入が増えている理由は?

これまで日本ではメンバーシップ型雇用と呼ばれる雇用システムが多く採用されていました。メンバーシップ型雇用は、勤務地や職務内容などを限定せずに新卒者を一括採用し、企業内でジョブローテーションにより経験を積ませ、ゼネラリストを養成する仕組みです。採用した人材に対して職務を割り当てる仕組みとも言えるでしょう。

一方、ジョブディスクリプションが利用されるジョブ型雇用の場合は、採用時に職務内容を明確に定義し、その職務内容にふさわしい人材と雇用契約を結ぶ仕組みです。こちらはスペシャリストの採用や養成に適しているとされ、職務に対して人材を割り当てる仕組みと言えるでしょう。

最近、このジョブ型雇用が日本でも注目を集めており、その結果ジョブディスクリプションの導入が増えています。主な理由は以下の4点です。

経団連によるジョブ型雇用導入に向けた提言

経団連は「2020年版経営労働政策特別委員会報告」で、メンバーシップ型雇用に基づく日本型雇用システムのメリットを活かしつつ、適切にジョブ型雇用を取り入れた「自社型」雇用システムの確立が必要であることを提起しました。これを受けて雇用システムの見直しの機運が高まったと言われています。

参考:2020年版経労委報告を公表(2020年1月23日 No.3439) | 週刊 経団連タイムス

大企業を中心にジョブ型雇用導入の動き

経団連の提言を受けて、ジョブ型雇用を導入する動きが大企業を中心に見られるようになりました。日立製作所、富士通、KDDI、カゴメや資生堂など有名な企業が、すでに導入していたジョブ型雇用制度の対象を拡大する、或いは制度自体を新設することを発表しています。

2020年12月にパーソル総合研究所が実施した「ジョブ型人事制度に関する企業実態調査」の結果によると、ジョブ型雇用制度を導入済みの企業が全体の18%、導入予定あるいは導入検討中の企業が全体の39.6%でした。これらの合計がジョブ型雇用制度導入に前向きであるとすると、調査対象企業の約6割が該当するという状況です。

参考:ジョブ型人事制度に関する企業実態調査 | パーソル総合研究所

人材のダイバーシティ化とスペシャリストへのニーズの高まり

少子高齢化の進展に伴う生産年齢人口減少により、人材確保が難しくなっている中、人材のダイバーシティ化が進んでいます。これに伴い、外国人労働者を含む多様な人材の確保が必要になっています。

働き方改革の進展により、育児介護との両立支援等従業員の多様な働き方への配慮も求められています。また、企業がグローバルな事業展開を進める中、国際競争力を高めるためにスペシャリストを求める動きも増えています。

多様な人材、働き方への対応やスペシャリストの養成に適しているジョブ型雇用制度導入の必要性が高まっていると言えるでしょう。

同一労働同一賃金の広まり

2020年4月(中小企業は2021年4月)のパートタイム・有期雇用労働法の施行により、正社員と非正規雇用の労働者との間の不合理な待遇差を設けることが禁じられました。

業務内容や配置変更の範囲が同じ場合、正社員と非正規雇用の労働者との間で待遇差を設けられません。言い換えれば、同一労働同一賃金の考え方に基づく人事が義務付けられたということになります。この同一労働同一賃金の考え方に基づく人事と、職務に対する成果を評価するジョブ型人事制度が馴染みやすいため、注目を集めるきっかけになりました。

参考:同一労働同一賃金特集ページ |厚生労働省

ジョブディスクリプションを導入するメリットは?

以下では、ジョブディスクリプションを導入するメリットを4つ紹介します。

生産性が向上する

ジョブディスクリプションにより、その職務に最適なスキルや経験を持った人材を配置できるため、適材適所の人事が可能になります。また、職務内容や達成目標が明確になるため、従業員各人がやるべきことを明確に意識して職務に取り組むことが可能です。

職務内容や責任範囲のあいまいさが排除され、認識のズレに起因する非効率やトラブルも避けられます。これらは生産性の向上につながると言えるでしょう。

評価の公平性・透明度高める

ジョブディスクリプションにより具体的な職務の内容や職務ごとに求められる成果、スキルなどが明らかになり、評価される従業員の現状との差が明確になります。これは人事評価の客観的な基準となるため、評価の公平性や透明度を高めることにつながります。

採用要件の明確化・入社後のミスマッチ減らせる

採用の際にジョブディスクリプションを明示することで、応募者は職務の内容や自身に求められるスキルなどが分かります。これにより自社のニーズにマッチしない者の応募を避けることが可能です。

また、人事担当者側はジョブディスクリプションを利用して、応募者のスクリーニングを効率的に行ったり、面接官による評価のバラツキを回避したりすることも可能になります。

従業員はジョブディスクリプションを理解した上で入社しているため、入社後のミスマッチ発生を防ぐことができ、早期離職を避けることにもつながるでしょう。

スペシャリストを養成できる

ジョブディスクリプションにより、職務に合った経験やスキルなどを持つ人材を採用することができます。入社後は基本的にはその職務に従事し、さらに専門的なスキルを高めていくよう育成するため、スペシャリストを養成することができます。

ジョブディスクリプションを導入するデメリットは?

以下では、ジョブディスクリプションを導入するデメリットを3つ紹介します。

ゼネラリストの育成が難しい

前章でジョブディスクリプションの導入によりスペシャリストが養成できることをメリットとして挙げました。

一方で、ジョブディスクリプションに基づく職務を行う従業員は、その範囲内での職務に特化するため、全社的な視点を養ったり、社内の様々な業務を幅広く経験したりすることができません。したがって、ゼネラリストや幹部候補として育成することは難しいと言われています。

新卒者の採用に利用できない

新卒の応募者を採用する場合、ジョブディスクリプションで定義されるスキルや経験を持っていないことが多いため、ジョブディスクリプションを利用できない点もデメリットと言えるでしょう。

新卒採用者は、中途採用のような即戦力採用とは異なり、ポテンシャルを見込んで入社後に育成することが前提のため、メンバーシップ型雇用システムに位置付ける必要があります。

円滑な業務遂行が難しくなる

ジョブディスクリプションにより、職務内容や責任範囲などが明確に定義されるため、各従業員はその範囲でのみ職務を遂行すればよいという考えに陥る可能性があります。ジョブディスクリプションに定義されない業務が発生した場合に、その業務を押し付け合うなどのトラブルになり、円滑な業務遂行が難しくなることもあるでしょう。

ジョブディスクリプションの書き方・記載事項は?

ジョブディスクリプションの作成方法および記載事項について、以下に解説します。ジョブディスクリプションを作成する際は、概ね以下の手順によります。

対象職務の情報収集とヒアリング

ジョブディスクリプションの作成対象となる各職務に関する情報を収集します。その上でジョブディスクリプションへの記載事項を中心に情報を整理します。

机上での情報整理とともに、現場でのヒアリングも欠かせません。情報が偏らないように対象となる職務の担当者を含め、複数名からヒアリングするのがよいでしょう。

集約した情報の精査

人事部や対象職務に関する部門の管理職などとともに集約した情報を精査し、対象職務に必要なタスクの必要性や優先度などを確認します。確認結果を踏まえて職務内容やスキルなどを取りまとめます。

ジョブディスクリプションの作成

対象職務について精査した情報を基にジョブディスクリプションを作成します。1つの職務につきA4サイズの用紙1枚程度で作成します。作成後は対象職務に関わる部門責任者などにもチェックを受けるようにしましょう。

ジョブディスクリプションの記載事項

ジョブディスクリプションには主に以下の項目を記載します。項目は自社の実情に合わせて決定します。

  • 職務の名称
  • 職務等級・職種・職位・配属部署名
  • 職務内容・職務内容の比重
  • 期待されるミッション
  • 責任・権限の範囲
  • 組織に関すること(指揮命令系統、上司・部下の数など)
  • 必要な知識・能力・経験・スキル・資格・学歴など
  • 雇用形態・勤務地・待遇など

ジョブディスクリプション(職務記述書)の無料テンプレート・ひな形

ジョブディスクリプションを記載する際は、専用のテンプレートをご利用いただくことをお勧めします。ジョブディスクリプションには、職務の詳細や要件を明記します。

マネーフォードクラウドでは、今すぐ実務で使用できる、テンプレート(エクセル・ワード)を無料でダウンロードいただけます。ベースを保ちつつ、自社の様式に応じてカスタマイズすれば使い勝手の良い書類を作成できるでしょう。この機会にぜひご活用ください。

ジョブディスクリプションを導入する時の注意点は?

ジョブディスクリプションを導入する際の注意点を4つ紹介します。

現場の実態とズレがないものにする

ジョブディスクリプションを導入する際は、対象職務の現場での実態とズレがないようにする必要があります。現場の実態とズレがあると正しい人事評価につながりません。また、求職者への正しい情報提供ができないため、採用後のミスマッチによる早期離職を招いてしまいます。

様々な立場の意見を取り入れる

対象となる職務を行っている従業員だけでなく、経営幹部、関係部署の管理職や人事部担当者など様々な立場の意見を取り入れて導入することが重要です。様々な立場の意見を踏まえて作成したジョブディスクリプションは客観性が高まり、信頼されるものになります。

人事評価に活用する

ジョブディスクリプションを導入することで、職務内容や求められる成果、スキルなどが明確に定義されるため、その内容を人事評価に活用することが重要です。基準が客観化されており、公平な評価にもつながります。

定期的な見直しを行う

企業を取り巻く環境が大きく変化すると、経営目標や経営戦略もそれに合わせて変化し、必要な業務や求められる成果、スキルなども変化します。ジョブディスクリプションを作成した後も、関係者との意見交換を行いながら定期的な見直しを行いましょう。

ジョブディスクリプションの導入により多様な人材が働きやすい企業に

ジョブディスクリプションの導入により、職務内容や求められる成果、スキル等を明確に示すことが可能になります。これにより採用や人事評価などによい効果を生み、入社前後のミスマッチを防ぐことで早期離職防止にもつながるでしょう。また、スペシャリストの採用や養成も進めやすくなり、同一労働同一賃金の考えに基づく人事にも活かすことができます。

企業間の競争が厳しさを増し、人材確保も難しくなる中で、スペシャリストの確保や、多様な働き方の従業員への正しい処遇などはますます重要になるでしょう。この記事を参考にして、ジョブディスクリプションのデメリットにも留意しながら、導入を検討してみてはいかがでしょうか。


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