• 更新日 : 2024年10月30日

コンセプチュアルスキルとは?構成要素や育成方法について解説!

絶え間なく情報が流れ続けている現代では、ビジネス環境も日々目まぐるしく変化しています。そのような環境下では、膨大な情報や知識の中から物事の本質を見極める能力が重要です。

当記事では、物事の本質を理解するコンセプチュアルスキルについて解説します。人材育成に悩んでいる人事労務担当者の方などは、ぜひ参考にしてください。

コンセプチュアルスキルとは?

「コンセプチュアルスキル」とは、情報や知識といった事象を概念化することで、抽象的な考え方や物事の本質を理解するスキルを指します。「概念化能力」とも呼ばれ、個人や組織の持つ可能性を最大化する能力です。

コンセプチュアルスキルを持った人材であれば、ビジネスシーンで起こる様々な出来事から共通点を見出し、正しい判断を下すことが可能です。コンセプチュアルスキルには、「カッツモデル」「ドラッカーモデル」の2種類が存在します。

カッツモデルのコンセプチュアルスキル

コンセプチュアルスキルの概念は、元々アメリカの経済学者であるロバート・L・カッツが、1950年代に提唱した「カッツモデル」を軸としたものです。カッツモデルは、企業の管理職に求められるスキルを体系化しています。体系化によって、マネジメント層である経営者や管理職などは、以下の3つに分類されます。

①トップマネジメント層

経営方針などの重要事項を決定し、企業全体のマネジメントを行う経営者層です。

②ミドルマネジメント層

部長や課長といった企業の管理職が、ミドルマネジメント層に該当します。

③ローワーマネジメント層

現場において、メンバーをまとめる主任などのチームリーダーが、この層に区分されます。

また、マネジメント層に求められるスキルは、以下の3種類が存在します。

  • テクニカルスキル

    職務遂行にあたって必要とされる専門的な知識や技術を指します。主にローワーマネジメント層に重要とされるスキルです。

  • ヒューマンスキル

    周囲との良好な関係を構築し、それを維持可能とする対人関係能力です。ミドルマネジメント層に求められる能力となります。

  • コンセプチュアルスキル

    複雑な情報や知識の中から物事の本質を見抜く能力であり、トップマネジメント層に必要とされています。

トップマネジメント層に近づくほど、コンセプチュアルスキルが必要であるとしています。カッツモデルにおけるコンセプチュアルスキルは、企業のトップである経営者層に必要なスキルであると捉えられていることが特徴です。

ドラッカーモデルのコンセプチュアルスキル

ドラッカーモデルは、経済学者であるピーター・ドラッカーが、カッツモデルを基に提唱した組織モデルです。

ドラッカーモデルも企業などにおける組織構成員を階層ごとに分類し、必要とされるスキルを割り当てる点では、カッツモデルと違いはありません。しかし、ドラッカーモデルでは、コンセプチュアルスキルをどの階層であっても、必要とされる重要なスキルと位置づけています。コンセプチュアルスキルをトップマネジメント層である経営者に必要なスキルと位置づけているカッツモデルとは、この点で大きく異なっています。

現代のビジネス環境は、グローバル化が著しく、IT技術などの発展も目覚ましいものがあります。

グローバル化や技術革新などに伴って、ビジネス環境も絶え間なく変化しています。このような環境下において、従来のトップダウン型では変化への対応が難しく、各人が高いコンセプチュアルスキルを持って、自主的に判断し行動することが必要となるでしょう。そのため、先行きが読めず、複雑な現代のビジネス環境においては、ドラッカーモデルの方が、コンセプチュアルスキルの捉え方として適切であるという意見も多くなっています。

コンセプチュアルスキルの構成要素は?

コンセプチュアルスキルは、複数の要素から構成される能力です。本項では、コンセプチュアルスキルを構成する要素ごとに項目を分けて解説します。

論理的思考

論理的思考は、「ロジカルシンキング」とも呼ばれています。対象となる物事を順序立て、体系的に整理するための能力です。この能力が高い場合には、問題を主観的ではなく客観的に捉えることが可能となるため、課題解決が容易になります。

水平思考

水平思考は、物事に対する先入観を排除し、経験や常識に囚われない自由な発想を可能とする能力です。水平思考は、「ラテラルシンキング」とも呼ばれています。水平思考を持った人材は、広い視野から多角的に物事を捉え、新しい問題解決手段を生み出すでしょう。

批判的思考

批判的思考は、「クリティカルシンキング」とも呼ばれ、物事を分析的に捉えることで思考する能力を指します。前提となる現状を疑うことで、考えに偏りがないかを確認し、正しい結論を導き出します。批判的思考は、既存サービスや商品の質を向上させるために役立つでしょう。

多面的視野

多面的視野は、ひとつの課題に対して、複数のアプローチから解決を図る能力です。批判的思考と組み合わせることで、リスクを軽減させることが可能となります。また、水平思考と組み合わせれば、より斬新なサービスや商品の開発につながります。

受容性

グローバル化などにより、目まぐるしく変化するビジネス環境では、価値観もまた変化し続けています。そのような新しい価値観を拒絶せず受け入れる能力が、受容性です。高い受容性を持っていれば、グローバル化するビジネス環境でも対応可能となるでしょう。

柔軟性

変化し続けるビジネス環境においては、変化を柔軟に受け入れる柔軟性が重要な能力となります。また、柔軟性が高い人材は予測不可能なトラブルに直面しても、臨機応変な対応が可能となるでしょう。柔軟性が高ければ、マニュアル通りではない新しい切り口による解決方法の提案も可能です。

知的好奇心

変化を続けるビジネス環境では、常に新しい知識や技術に関心を持つことが重要です。そのためには、常に新しい知識や技術を求める知的好奇心を持っていることが必要となります。知的好奇心が高い人材であれば、未知の分野への挑戦を恐れることはありません。そのため異分野での新規事業開拓の適任者といえるでしょう。

探求心

探求心は、対象となる事象を納得できるまで深く掘り下げる能力です。探求心を持った人材は、成果が出るまで粘り強く行動し続けます。長期的なプロジェクトや長期的な人材育成計画などに役立つ能力といえるでしょう。

チャレンジ精神

ビジネスにおいては、安定だけを求めず、新しい分野に挑戦することも必要です。新分野であっても果敢に挑戦するチャレンジ精神を持った人材は、企業にとって重要となります。挑戦することを忘れた企業は、衰退を待つだけとなるでしょう。

俯瞰力

ビジネスにおいては、近視眼的なものの見方ではなく、全体像を俯瞰することが必要となります。そのために必要な能力が俯瞰力です。俯瞰力がない人材は視野が狭く、プロジェクトやチーム全体の把握が必要となるリーダーには適しません。リーダーとなる人材には、俯瞰力が必要不可欠となります。

コンセプチュアルスキルが高い人の特徴は?

コンセプチュアルスキルは、物事の本質を捉え、課題解決を容易にする重要な能力です。では、コンセプチュアルスキルが高い人材は、どのような特徴があるのでしょうか。

コンセプチュアルスキルは、すでに解説した通り、複数の要素から構成された能力です。つまり、コンセプチュアルスキルが高い人材とは、これらの各要素を高い水準で備えていることになります。具体的には次のような人材です。

  • 物事の全体像を各部の詳細と並行して把握している
  • 数字に基づいた客観的な判断ができる
  • 問題に対して新しい切り口の解決方法を提案する
  • 報告を鵜呑みにすることなく、自身で調べる
  • 話を要約するだけでなく、たとえて説明することも得意としている
  • 常に目的を持って思考している
  • 不測の事態に対しても冷静に対応できる
  • 多様な価値観を受け入れている
  • 新しい挑戦を恐れず、次々と優れたアイデアを生み出す
  • 貪欲に新しい知識や技術を吸収し、ビジネスに活かしている

上記のような要素を持ったコンセプチュアルスキルが高い人材は、企業のどの役職や部署に配置しても活躍可能です。

コンセプチュアルスキルを高めるメリットは?

コンセプチュアルスキルが高い人材は、企業にとって有益です。コンセプチュアルスキルを高める育成は、企業に次のようなメリットをもたらします。

経営方針の浸透

コンセプチュアルスキルを高める育成過程では、物事を俯瞰的に見る能力や、多面的な視野が培われます。育成により、物事を総合的に把握できるようになれば、企業の全体像を掴むことにもつながります。そのような人材が企業内に増えれば、経営方針や企業理念も浸透しやすくなるでしょう。

イノベーションの可能性が広がる

批判的思考や水平思考は、新しいサービスや商品の開発、既存サービスの改善に役立ちます。コンセプチュアルスキルを高める育成過程で、これらの能力が身につけば、企業におけるイノベーションの機会も広がっていくでしょう。

生産性と業務効率の向上

コンセプチュアルスキルは、経営者層や管理職層だけでなく、企業のあらゆる層において有用な能力です。そのため、育成によって企業のトップから現場までコンセプチュアルスキルが身につくことになれば、生産性や業務効率も大きく向上します。

環境変化によるリスクへ対応可能となる

現代のビジネス環境は、絶えず変化し続けています。そのような状況では、あらゆる層がコンセプチュアルスキルを身につけ、各人が臨機応変に対処することが求められます。コンセプチュアルスキルを持った人材を企業内に増やすことは、環境変化によるリスクへの対応能力を高めることにつながるでしょう。

コンセプチュアルスキルを育成する方法は?

コンセプチュアルスキルを高めるためには、ステップを踏んでいくことが重要です。順を追って解説します。

ステップ1:物事の抽象化

まず、対象となる物事を抽象化することが必要です。一般的には、物事が抽象化されているよりも具体化されているほうが理解しやすいでしょう。しかし、具体例のままでは共通点を見つけることが困難となります。そのため、コンセプチュアルスキルの向上には、いったん物事を抽象化し、共通点を探す思考訓練が必要です。

ステップ2:物事の定義

抽象化された物事から共通点が見つかったら、そこから物事の本質を見出し、自分の言葉で定義するステップが必要です。見出した本質を言語化することで、物事を概念化する能力が養われます。また、自分の言葉で定義することで、より物事の本質が理解できるようにもなるでしょう。

ステップ3:物事の具体化

物事の本質を見出し、定義を言語化できたのであれば、最終段階に進みます。最後のステップでは、見出した物事の本質や共通点を具体的に事例に落とし込むことで実践可能なものとします。この段階を経なければ、せっかく見出した物事の本質や共通点を実際のビジネスに活用することができません。また、落とし込む段階で、マニュアル化などを行うと、より実際の業務に活用できるようになるでしょう。

コンセプチュアルスキルを持った人材育成を

コンセプチュアルスキルは、変化し続けるビジネス環境に対応するために重要な能力です。コンセプチュアルスキルを持った人材を企業内に育成できれば、グローバル化や技術革新などの変化にも対応できるようになるでしょう。

コンセプチュアルスキルを高めるには、ステップを踏んでいくことが必要となるため、当記事の解説を参考に適切な訓練を実施してください。


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