- 更新日 : 2024年11月1日
労働基準法改正の変更点【2024年】企業の取り組み、2025年の予定を解説
労働基準法は、制定されてからこれまでに数回の法改正を経て現在に至っています。
この記事では、労働基準法の概要を説明した後、労働基準法改正の履歴を一覧で確認します。また、2024、2025年に施行される予定の法改正について説明するため、参考にしてください。
労働時間に関する法改正が多いため、内容を正しく理解して手続き漏れのないように対応しましょう。
目次
労働基準法とは
労働基準法は、昭和22年に制定された労働条件に関しての最低基準を定めた法律です。
労働基準法では、労働者の生存権の保障を目的として、下記のような労働者の労働条件についての最低基準を定めています。
内容 | |
賃金支払の5原則 | 直接払いの原則、通貨払いの原則、全額払いの原則、毎月払いの原則、一定期日払いの原則 |
労働時間の原則 | 1日8時間、1週40時間 |
時間外労働・休日労働 | 労使協定(36協定届)の締結 |
割増賃金 | 時間外労働・深夜労働25%以上、・休日労働35%以上 |
解雇予告 | 労働者を解雇しようとする際は、30日以上前の解雇予告または30日分以上の解雇予告手当の支払いが必要 |
有期労働契約 | 原則3年、専門的労働者は5年 |
その他 | 年次有給休暇、就業規則など |
労働基準法の改正とは?
労働基準法の改正とは、企業や労働者との間で最低限満たすべき労働条件を定めた法律を、時代の変化に伴い、変更することです。
例えば、時間外労働の上限を決めたり、固定時間で働くのではなく、フレックスタイム制を導入したり、働く時間を柔軟にするなど改正が行われています。
2019年から「働き方改革」によって、大きく変更されました。近年では、法改正が多くなっているため、人事担当者は毎年確認しましょう。
2019年~2024年:労働基準法の主な改正一覧
2019年〜2024年までの主な改正一覧です。
改正した内容 | |
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2019年 |
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2020年 |
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2021年 |
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2022年 |
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2023年 |
(中小企業の月60時間超の時間外労働割増賃金率が50%へ)
|
2024年 |
|
このように、労働基準法改正だけでなく、育児介護休業法や派遣法なども変更されています。
月60時間を超える時間外労働の割増賃金率アップは大企業にのみ適用されていましたが、猶予期間の終了により現在は中小企業にも適用されています。
有期雇用労働法、育児・介護休業法では、育休取得状況の公表が義務化されました。育休取得率が目に見える形となり、取得できている企業が分かりやすくなったのが大きく変わった点です。
時間外労働の上限規制により、残業が減って労働者の働く環境が改善され、離職率低下にもつながっているでしょう。
2024年までの労働基準法の改正による変更点
2024年までの労働基準法の改正による変更点として、重要なところを11点挙げます。
- 時間外労働の上限を規制
- 時間外労働の上限を規制(建設業・運送業・医師等を含む)
- 時間外労働の割増賃金率を引き上げ
- 有給休暇の取得を義務化
- フレックスタイム制の清算期間の延長
- 高度プロフェッショナル制度を創設
- 労働者名簿、賃金台帳などの保存期間を延長
- 割増賃金未払いの請求期間を延長
- 賃金請求の消滅時効の期間を延長
- 雇用形態の待遇による格差をなくす
- 男性の育児休業の取得状況を公表義務化
- 労働条件の明示事項の追加
労働基準法が改正されて、働きやすい環境づくりが進められています。
時間外労働の上限を規制(建設業・運送業・医師等を含む)
2024年に建設業・運送業・医師等を含む、時間外労働の上限を規制しました。
上限を規制したことで、企業側は上限を超えないようにするのではなく、残業を減らすことに力を入れる必要が出てきました。
労働者側は、残業を減らすことができたり、仕事量の調整をしたりして、1人ひとりの負担が減ることにつながっています。
時間外労働の割増賃金率を引き上げ
2010年から始まった時間外労働の割増率50%以上への引き上げは、当初大企業のみが対象でした。しかし、猶予期間の終了により2023年からは中小企業も50%の割増賃金率が適用されています。
引き上げにより、長時間にわたる時間外労働を減らそうという目的があります。
有給休暇の取得を義務化
有給休暇は上司が取らないと取ってはいけない、有給休暇は取れないという風潮があった時代がありました。しかし、法改正により、有給休暇の取得を義務化されたことで、年に10日以上有給休暇が付与される労働者は、年5日以上、有給休暇を取得しなければならなくなりました。
会社側は労働者を休ませるように、シフトの調整をしましょう。休ませられない場合は、労働基準法違反となってしまうことに注意が必要です。
フレックスタイム制の清算期間の延長
フレックスタイム制とは、労働者が働く長さや始業時間などを自由に決められる制度です。
2019年にフレックスタイム制の拡大で、1ヶ月だった清算期間が、3ヶ月へ延長されました。
引用:フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き|厚生労働省
この図の通り、月を跨いで労働時間の過不足調整を清算できるようになりました。
自社に合わせて柔軟に働く時間など変えられるため、労働者のパフォーマンス向上が期待されています。
高度プロフェッショナル制度を創設
2019年に高度プロフェッショナル制度が創設されました。この制度は、高度な専門知識を持った労働者が対象です。労働基準法に定められた労働時間や休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しないというルールを設けました。
- 金融商品の開発業務
- 研究開発業務
- アナリスト業務
上記のような業務は専門知識を要するため、高度プロフェッショナル制度が該当します。
就業時間に制限されないため、より柔軟な働き方ができることで、より生産性が高まると期待されています。
労働者名簿、賃金台帳などの保存期間を延長
労働者名簿、賃金台帳などの保存期間を延長することが、2020年に改正されました。
これまで、労働者名簿と賃金台帳などの記録簿は保存期間が3年でしたが、5年へと延長されました。ただし、経過措置として当面の間は3年の保存期間で足りるとされています。
民法の定めでは債権(未払い賃金など)を5年まで遡って請求できます。それに対して、労働基準法では2年までしか遡れないとなると、矛盾が生じてしまうため、改正されたという背景です。
改正によって、未払い賃金など5年間遡って請求が可能となり、証拠となる賃金台帳などの保存も5年となりました。
賃金請求の消滅時効の期間を延長
2020年に賃金請求の消滅時効の期間が、2年から3年へと延長されました。よって、2022年4月以降に支払った賃金に未払い分がある場合、請求が可能となりました。
労働基準法と民法の間にねじれが生じ、労働者の権利を損ねてしまうという観点から、延長が決定したとされています。労働者は、未払い賃金があった場合、3年前までの賃金を請求できます。
雇用形態の待遇による格差をなくす
パートタイム・有期雇用労働法が2021年から中小企業でも適用されました。これまで、正社員と非正規社員の待遇格差が問題となっている企業が多くありました。
雇用形態は異なりますが、正社員と非正規社員は同じ働き方をしていたのに、賃金に差があるなど、待遇が異なっている現状です。
改善すべく、法改正を行い「同一労働同一賃金」を定めました。非正規社員が待遇差別を受けていると感じた場合、基準となる正社員との待遇の差額相当分について、損害賠償を請求できるようになりました。
男性の育児休業の取得状況を公表義務化
男性の育児休業の取得状況を公表義務化されたのは、2023年4月です。従業員1000人超の会社が対象で、年1回公表する義務が定められました。
公表の目的は、男性の育児休業取得を推進するためです。また、女性の雇用継続や少子化対策にもつなげようとする目的もあります。
男性も女性と同様に育児休業を取得することで、仕事へのモチベーションアップや、業務にもよい影響があるとみられています。
労働条件の明示事項の追加
2024年4月に労働条件の明示事項の追加が改正されました。
- 従事すべき業務の変更の範囲
- 就業場所の変更の範囲
- 有期労働契約を更新する場合の基準
- 無期転換の申し込みの機会
- 無期転換後の労働条件
上記が追加されたため、これまで以上に労務管理に注意しなければなりません。
労働基準法の改正で企業が取り組むこと
労働基準法の改正で企業が取り組むこととして、2つ挙げます。
- 業務効率の見直し
- 就業規則の見直し
業務効率を見直すことで、労働者の負担を減らすことにつながります。就業規則を見直しして労働基準法に違反しないように変えましょう。
業務効率の見直し
時間外労働や休日出勤などを減らし、割増賃金を支払わなくてよい状況にするためには、業務改善の見直しが必要です。
1人ひとりの業務量を調整することで、負担を減らせます。欠勤者が出た場合、負担が増えないように、人員をあらかじめ増やしておくことも重要です。また、業務のマニュアル化を行い、誰でもできる状態にしておくと、業務効率がアップするでしょう。
就業規則の見直し
法改正が行われた際は、就業規則の見直しを行いましょう。労働基準法は労働者が働くための最低限のルールです。規則を修正することで、法令を遵守するために会社がとるべき対応を検討する効果が得られるでしょう。
また、労働環境を時代にあったものにするため、トラブル防止のためにもしっかり明記して労働者に周知する取り組みを行いましょう。
就業規則のテンプレート(無料)
以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。
1987年~2008年:労働基準法改正のこれまでの流れ
これまでどのように法改正が行われたのか、1987年までさかのぼり、改正内容をまとめます。
時代とともに働き方が変わっていく様子が伺えます。
改正した内容 | |
---|---|
1987年 (昭和62年) |
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1993年 (平成5年) |
|
1998年 (平成10年) |
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2003年 (平成15年) |
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2008年 (平成20年) |
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2025年:労働基準法改正の今後の予定
今までに改正された内容をまとめました。この章では、労働基準法改正の今後の予定として2025年に改正される内容を記載します。
育児している労働者や、障がい者の働き方の見直し、手続き緩和などが挙げられています。
以下に1つずつ見ていきましょう。
養育や介護に関する法改正
育児休業、介護休業等育児または家族介護を行う労働者の福祉に関する法律が施行されます。
介護を理由に働けなくなるということを避けるべく、会社は介護休暇やテレワークの導入などして、家庭生活と就業生活の両立が図られるようにするためのものです。2025年10月に施行されます。
概要として、妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前の時期の仕事と育児の両立に関する労働者の意向の聴取と配慮を行います。そして、「柔軟な働き方を実現するための措置」の具体的な内容の制定です。
障がい者雇用に関する法改正
障害者の雇用の促進等に関する法律が施行されます。企業では、障害者の就業機会の安定化のために、除外率制度を設けて、障害者の雇用人数を調整しています。
法定雇用率を満たしていなければ納付金の徴収があり、雇用率を満たしていれば調整金が給付される仕組みです。
厚生年金、雇用保険に関する法改正
厚生年金では、3歳に満たない子を養育する場合、保険料減額の特例申し出ができます。その申請には、これまで申出者と扶養する子の身分を確認する書類が必要でした。しかし、改正によって、それらの書類の添付が必要なくなります。
雇用保険に関しては、高年齢雇用継続給付が改正されます。60歳以上65歳未満の被保険者が対象で、雇用を継続していて、被保険期間が5年以上の場合に支給される制度です。
法改正によって、賃金がみなし賃金の64%未満の場合、給付率が10%に引き下げられることが決定しました。
労働基準法は働くうえでの最低限のルールです
この記事では、これまでの労働基準法改正内容や、2025年に施行される労働基準法の改正について解説しました。
時代によってどんどん働き方が変わり、法改正も頻繁に行われていることが分かります。
これまで、残業時間の規制や、同一労働同一賃金、フレックスタイム制の導入などの改正がありました。
法改正によって、労働者は働きやすい環境となり、企業の生産性アップにもつながったでしょう。
労働基準法は、働くうえで最低限のルールです。守ることで、労働者と企業共に働く環境を整えましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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