- 作成日 : 2022年8月5日
労働基準法改正の予定 – 2023年・2024年で決まっていること

労働基準法は、制定されてからこれまでに数回の法改正を経て現在に至っています。
今回は、まず労働基準法の概要を説明した後、労働基準法改正の履歴を一覧で確認し、2023年、2024年に施行される予定の法改正について説明します。
労働時間に関する法改正が多いので、内容を正しく理解して手続き漏れのないように対応していきましょう。
目次
労働基準法とは
労働基準法は、昭和22年に制定された労働条件に関しての最低基準を定めた法律です。
労働基準法では、労働者の生存権の保障を目的として、下記のような労働者の労働条件についての最低基準を定めています。
内容 | |
賃金支払の5原則 | 直接払いの原則、通貨払いの原則、全額払いの原則、毎月払いの原則、一定期日払いの原則 |
労働時間の原則 | 1日8時間、1週40時間 |
時間外労働・休日労働 | 労使協定(36協定届)の締結 |
割増賃金 | 時間外労働・深夜労働25%以上、・休日労働35%以上 |
解雇予告 | 労働者を解雇しようとする際は、30日以上前の解雇予告または30日分以上の解雇予告手当の支払いが必要 |
有期労働契約 | 原則3年、専門的労働者は5年 |
その他 | 年次有給休暇、就業規則など |
労働基準法改正のこれまで
これまでの労働基準法改正を順に一覧にして見ていきます。
昭和62年(1987年)の改正
- 週の法定労働時間の短縮(週48時間制から週40時間制への段階的な短縮)
- 変形労働時間制(フレックスタイム制、1か月単位、3か月単位の変形労働時間制)の導入
- 事業場外及び裁量労働についての労働時間の算定に関する規程の整備
平成5年(1993年)の改正
- 週の法定労働時間の短縮(週40時間制を平成6年4月1日から実施。一部の業種につい ては猶予)
- 1年単位の変形労働時間制の導入
- 時間外労働及び休日労働についての法定割増賃金率の制定
- 裁量労働制の規程の整備(対象業務を規定)
平成10年(1998年)の改正
- 時間外労働に関して、労働大臣(現在の厚生労働大臣)が限度基準を定め、労使協定を定めるにあたっては、これに適合するものでなければならないこととした。
- 企画業務型裁量労働制の導入
平成15年(2003年)の改正
- 専門業務型裁量労働制導入時の労使協定の決議事項の項目追加
- 企画業務型裁量労働制の導入・運用の要件・手続きの緩和
平成20年(2008年)の改正
- 1か月に60時間を超える時間外労働についての割増賃金率の50%以上への引上げ(中小企業は当分猶予)
- 上記の割増賃金の支払いに代えて代替休暇を与えることができる改正
働き方改革関連法に伴う変更
「働き方改革」の一環として、平成30年(2018年)には下記の改正がなされました。
- 時間外労働の上限規制の導入
- 中小企業における1か月に60時間を超える時間外労働についての割増賃金率の50%以上への引上げの施行
- 有給休暇の年5日の取得義務の導入(対象者の条件あり
- フレックスタイム制における清算期間の1か月から3か月への延長
- 「高度プロフェッショナル制度」の創設
パートタイム・有期雇用労働法
同じ会社内の正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差をなくして、どのような雇用形態であってもその待遇に満足して働くことができるように改正された法律です。
中小企業には猶予期間が設定され、2021年4月1日から施行されました。
この改正のポイントは、以下のような内容になります。
- 不合理な待遇差を禁止する
同じ会社内の正社員と非正規社員の間で、基本給や賞与などをはじめとしたあらゆる待遇について不合理な差を設けることが禁止されました。- 均衡待遇規定について、個々の待遇(基本給、賞与、役職手当など)ごとに、その性質・目的に対して適切と認められる事情を考慮して判断されるべきであることを明確化しました。
- 均等待遇規定について、有期雇用労働者も新たに対象としました。
- ガイドライン(指針)を策定して、待遇ごとに判断することを明確化しました。
- 待遇に関して労働者に説明する義務の強化
正社員との待遇差の内容や理由について、非正規社員は会社に対し説明を求めることができるようになりました。 - 行政による会社への助言・指導等や裁判外紛争解決手続き(行政ADR)の整備
行政による助言・指導等や行政ADRを整備し、都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続きを行います。
育児・介護休業法
労働基準法とは直接関係ありませんが、育児・介護休業法についても改正が行われます。
今回の改正は、男性の育児休暇制度に焦点があてられており、改正も2022年4月、10月、2023年4月に分けて行われます。
詳細は下記の「育児・介護休業法の改正ポイントを解説!2022年4月から順次施行」を参考にして下さい。
労働基準法改正の予定
ここからは、今後、労働基準法改正が予定されている内容について一覧で見ていきます。
月60時間超割増率引き上げ
これまで、月60時間を超える時間外労働の法定割増賃金率50%以上とする規定は大企業でのみ行われていました。
これは中小企業については、経営体力や支払い能力を考慮して当面の間、猶予されていましたが、法改正により2023年4月1日より中小企業に対しても施行されます。
参考:月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます|厚生労働省
建設業における時間外労働の上限規制
大企業においては2019年4月から、中小企業においても2020年4月から時間外労働の上限規制が適用されています。これは、36協定で定める時間外労働の上限が原則として月45時間、年360時間となり、特別な事情がなければこれを超えることができないという法改正でした。
ただし、建設業は高齢化や慢性的な長時間労働が行われているという背景があり、すぐに働き方を変更するのは困難だという事情で、5年間の時間外労働の上限規制の猶予期間が設けられていました。
この5年間の猶予期間が2024年3月で終了するため、2024年4月より建設業にも他の企業と同様、時間外労働の上限規制が適用されることになります。
労働基準法の法改正を正しく理解して対応しましょう
今回は、労働基準法の改正に関して、過去に改正のあった内容から、来年、再来年に法改正が予定されている内容まで解説しました。
労働基準法は、働き方改革に関する法改正が数多く施行されていますので、それらを正確に理解して、会社が法律違反を起こさないように対応していきましょう。
よくある質問
労働基準法改正はこれまでどういったものがありますか?
これまでに、法定労働時間の短縮、変形労働時間制の導入、裁量労働制の整備、割増賃金に関する割増率の引き上げ、時間外労働の上限時間の規制、有給休暇の年5日の取得義務などの法改正が行われてきました。詳しくはこちらをご覧ください。
労働基準法改正の今後の予定について教えてください
中小企業が猶予中の月60時間超の時間外労働の割増賃金率を50%以上とする法改正が2023年4月1日から適用されます。また、建設業の時間外労働の上限規制も、2024年4月1日から規制が撤廃されます。詳しくはこちらをご覧ください。
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