• 更新日 : 2025年1月28日

産休・育休は誰でも取れる?雇用の違いや男性の場合、給付金まとめ

産前産後休業(産休)と育児休業(育休)は、労働形態や職場への勤務期間にかかわらず、誰でも取得が可能です。

産休は、女性労働者が妊娠した際、親子の健康と安全を守るために労働基準法により休業が義務付けられている制度で、職場や企業は産休の申請を拒否できません。

育休は、休業することで子育てに専念するための制度で、企業は育休の請求を原則拒否できません。

産休と育休を取得すれば、休業できるだけではなく、生活費や養育費への負担を軽減するための制度や支援が受けられます。

産休(産前産後休業)・育休(育児休業)とは?

産休(産前産後休業)は、出産や育児のために仕事を休業できる制度です。産前休業と産後休業をあわせたもので、労働基準法にもとづいて、取得が義務付けられています。

また育休(育児休業)は、子どもを養育するために労働者が取得できる休業制度です。育休は、育児・介護休業法にもとづいており、主に1歳未満の子どもを持つ親が対象となります。育休は産休とは異なり、育児に専念するための長期的な休業です。

産休・育休はいつからいつまで

産休は、産前休業と産後休業に分かれています。

産前休業は出産予定日の6週間前から取得可能で、多胎妊娠の場合は、14週間前からの取得が認められています。産前休業が取得できる期間は、妊婦が出産に向けて身体を整えるための重要な期間です。

産後休業は出産日の翌日から始まり、原則として8週間の休業が認められています。産後休業の期間は、母体が出産後の回復を図るために必要であるため、産後休業中における就業は禁止されています。ただし、本人が請求し、医師が就労に支障がないと判断した場合には、産後6週間経過後であれば、就労可能です。

育児休業の取得期間は、原則として子どもが1歳になるまでです。ただし保育所に入所できない場合や、やむを得ない理由がある場合は、育休を1歳6か月まで、また最大で子どもが2歳になるまで延長できます。

産休・育休は誰でも取れる?

産休は、産前休業・産後休業ともに、雇用形態や就業期間にかかわらず妊娠したすべての女性労働者が取得できます。また職場や企業も、産休の申し出を拒否することはできません。とくに産後休業は、本人からの申し出の有無にかかわらず、就業禁止とされています。

一方で育休も、基本的には雇用形態や就業期間、性別にかかわらず、子どもをむかえたすべての労働者が取得できます。ただし、育休明けに職場へ復帰する意思がない場合には、育児休業給付金は支給されません。

育休を取得する際は、職場により取得期間や申請方法が異なる場合があるため、あらかじめ確認しておくと安心です。

産休・育休中は無給?

産休中および育休中は、基本的に無給です。

ただし育休中は、最大で10日間は就業できます。11日以降は育休中に受け取れる給付金の支給対象から外れるおそれがあるため注意が必要です。また産休中は、産前休業と産後休業中ともに就業禁止です。

職場や企業にとっては、育休中の給与の支払い義務は法律上ないため、無給とされる場合があります。そのため、短時間のみ就業する際は、給料が発生するかどうかをあらかじめ確認すべきです。

産休・育休でもらえるお金

産休や育休中には、下記のようなさまざまな手当や給付金が支給されます。

出産手当金
  • 産休取得中に収入がない場合に受け取れる
  • 出産日の42日前から出産日の56日後までの期間が対象
  • 本人が加入している健康保険にもとづき支給される
  • 支給額は標準報酬月額の12月間の平均額の30分の1の3分の2に相当する
育児休業給付金
  • 育休取得中に支給される
  • 育休取得前の6か月間における賃金日額をもとに算出される
  • 加入している雇用保険にもとづき支給される
  • 育休取得日から180日間は67%、その後は50%が支給される
出産育児一時金
  • 出産時に一度だけ支給される
  • 加入している健康保険をもとに支給される
  • 50万円または48.8万円が支給される
  • 多胎妊娠の場合は、子どもの数だけ受け取れる

そのほか、職場やお住まいの自治体によっては独自の支援を設けている場合があります。支援の有無により家計への負担が大きく異なるため、自身が受けられる支援について確認しておきましょう。

パート・アルバイトの産休・育休は?

パートやアルバイトでも、産休・育休を取得できます。労働基準法および育児・介護休業法では、正社員だけでなく、パートやアルバイト、契約社員など雇用形態に関係なく産休・育休を取得する権利があります。ただし育児休業給付金は、職場へ復帰する意思がある場合のみ受給可能です。

正社員と同様に、産休は出産予定日の6週間前から取得可能で、産後は原則8週間の休業が義務付けられています。育休は、子どもが1歳になるまで取得でき、最長で1年6か月または2歳まで延長可能です。

ただし、産前休業と育休を取得するためには、あらかじめ職場へ届け出が必要です。申請の仕方や書類の形式は職場により異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。

パート・アルバイトの産休・育休でもらえるお金

パートやアルバイトが産休中および育休中に受け取れるお金は、主に下記があります。

  • 出産手当金
  • 育児休業給付金
  • 出産育児一時金

出産手当金は出産後に支給される手当で、健康保険に加入している場合に受け取れます。

育児休業給付金は育休中に受け取れる手当で、雇用保険に加入し、休業開始日前の2年間に11日以上働いた月が12か月以上あることが条件です。

出産育児一時金は出産前後の休業期間中に支給され、加入している健康保険から支給されます。

扶養内でも産休・育休はとれる?

パートナーまたは親族の扶養内で働いている場合でも、現在の職場の就業日数や就業時間にかかわらず産休や育休を取得できます。ただし育児休業給付金は、職場へ復帰する意思がある場合でのみ受給可能です。

正社員と同様に、産休は出産予定日の6週間前から取得可能で、産後は8週間の休業が義務付けられています。育休は、子どもが1歳になるまで取得でき、最長で1年6か月または2歳まで延長可能です。

産前休暇と育休を取得するためには、あらかじめ職場へ届け出が必要です。申請の仕方や書類の形式は職場により異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。

ただし雇用保険へ加入していたとしても、休業開始日前の2年間に11日以上働いた月が12か月以上ない場合は、休業は可能でも給付金等が受け取れなくなる可能性があるため注意が必要です。

扶養内の産休・育休でもらえるお金

扶養内で働く労働者が、産休中および育休中に受け取れるお金は、主に下記があります。

  • 育児休業給付金
  • 出産育児一時金

育児休業給付金は育休中に受け取れる手当で、雇用保険に加入し、休業開始日前の2年間に11日以上働いた月が12か月以上あることが条件です。

出産育児一時金は出産前後の休業期間中に、配偶者または親族の健康保険から支給されます。

正社員やアルバイトの人などが受け取る出産手当金は、あくまで被保険者の休業補償を目的としているため、受け取れません。

雇用保険に入っていなくても産休・育休はとれる?

雇用保険に加入していない場合でも、産休や育休を取得することは可能です。

産休は労働基準法にもとづいており、すべての労働者が取得できる権利があります。したがって、雇用保険に加入していないパートタイムやアルバイトの労働者でも、産休が取得できます。

育休は、育児・介護休業法にもとづくもので、下記の条件に当てはまっていれば雇用保険への加入の有無にかかわらず育休の取得が可能です。

  • 1歳未満の子どもを養育する必要があること
  • 子どもが1歳6ヵ月になる日まで雇用見込みがあること

ただし、雇用保険へ加入していない場合、休業はできますが一部の給付金が受け取れない場合があります。

雇用保険に入っていない場合の産休・育休でもらえるお金

雇用保険へ加入していない場合、育休・産休中に受け取れる給付金には下記があります。

  • 出産手当金
  • 出産育児一時金

出産手当金は出産時に支給される手当で、自身が健康保険に加入している場合に受け取れます。

出産育児一時金は出産前後の休業期間中に支給され、職場またはパートナーの健康保険に加入している場合に受け取れます。

育休中に受け取れる支援のひとつに育児休業給付金がありますが、当給付金は、雇用保険に加入し、休業開始日前の2年間に11日以上働いた月が12か月以上あることが条件です。そのため、雇用保険へ加入していない場合は育児休業給付金が受け取れません。

男性の場合の産休・育休は?

産休は、あくまで女性が妊娠した際に親子の健康と安全を守るための制度です。そのため、男性は産休が取得できません。

育休は、育児・介護休業法にもとづき、男性も取得する権利があります。

育休は出産日から取得でき、育休の取得期間は原則子どもが1歳になるまでとされています。保育施設が見つからなかったりやむを得ない事情があったりする場合は、最大で子どもが2歳になるまで延長が可能です。

育休を取得する際は、あらかじめ職場に申し出て、職場ごとに決められた方法での申請が必要です。

男性が育休を取得した場合にもらえるお金

男性が育休中に受け取れるおもな給付金は下記があります。

  • 育児休業給付金
    育児休業給付金の支給率は、休業開始から最初の180日間は休業前の賃金の67%、その後は50%が受け取れます。

2025年4月1日から、出生後休業支援給付とよばれる新しい制度がはじまり、夫婦そろって育休を取得した場合に受給が可能です。出生後休業支援給付が上乗せされる形で給付され、かつ育休中は社会保険料が免除されるため、実質的には、これまでの賃金と同じ金額の給付金が受け取れることになります。

個人事業主の産休・育休は?

個人事業主の場合は、休業するタイミングは自身の裁量により決定する必要があります。取引先と相談しながら、早めに休業するための準備を整えましょう。

ただし受け取れる給付金に関しては、一部対象外となる可能性があります。個人事業主は雇用保険へ加入していないため、正社員やアルバイトなどが受け取れる育児休業給付金などが受け取れません。

個人事業主の産休・育休でもらえるお金

個人事業主の場合は、出産育児一時金のみ受け取れます。

正社員やアルバイトの人が受け取れる手当のうち、出産手当金は出産後に支給される手当ですが、会社が加入している健康保険からのみ受け取れます。そのため、個人事業主は受け取れないため注意が必要です。

また個人事業主は雇用保険へ加入していないため、育児休業給付金も受け取れません。ただし、個人事業主でも、出産前後の社会保険料が免除される制度が利用できるため、経済的な負担を軽減することが可能です。

産休・育休でもらえる、もらえない給付金一覧

産休・育休の取得や、休業に伴う給付金の受け取りの可否は、業務形態や状況に応じて下記のようになります。

アルバイト扶養内雇用保険

未加入

男性個人事業主
産休の取得
育休の取得
出産手当金
育児休業給付金
出産育児一時金

育児休業給付金は、雇用保険に加入しており、かつ休業開始日前の2年間に11日以上働いた月が12か月以上あることが条件です。

また出産手当金は、出産される人自身が、職場の健康保険へ加入している必要があります。

表内で給付金が受け取れるとされていても、条件によっては受け取れない可能性もあるため注意が必要です。

従業員の産休・育休で企業がもらえる助成金

日本は毎年、出生数の最低数を更新しており、少子高齢化問題が深刻化しています。

そのため国や自治体では、積極的に産休・育休が取得できるよう助成金やサービスを提供しています。

また労働者も、福利厚生が充実しており出産や育児において柔軟な働き方ができる職場や仕事を選ぶようになりました。

産休・育休を積極的に取得できるような働きやすい職場にできるよう、提供されている助成金やサービスについて把握しましょう。

育休取得と職場復帰

育休を取得した労働者が円滑に職場復帰できるように、両立支援等助成金が設けられています。

両立支援等助成金の育児休業等支援コースは、育児休業を取得した労働者が職場復帰しやすい環境を整備した企業に対して支給される助成金です。支援を受けるには、育児休業を取得した従業員の業務を代替するための人材を雇用したり、職場復帰後の育休復帰支援プランを策定したりすることが求められます。

育休復帰支援プランは、中小企業が自社の従業員の育児休業取得および職場復帰を支援するために策定するプランです。プランを実施することで、助成金の申請が可能です。

男性が育休を取得した場合

男性の労働者が育児休業を取得した場合も、両立支援等助成金が受けられます。両立支援等助成金は、男性労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境を整備するための支援を目的としています。

両立支援等助成金のなかでも、中小企業向けに設けられたものが出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)です。出生時両立支援コースでは、男性従業員が育児休業を取得するために必要な環境整備を行った企業に対して助成金が支給されます。

助成金を受け取るためには、企業が以下の条件を満たす必要があります。

  • 男性従業員が育児休業を取得するための制度を整備していること
  • 実際に育児休業を取得した男性従業員がいること

両立支援等助成金の第2種は1事業主につき1回限りの支給となるため、助成金の申請は1回に限られます。

男性育休取得率が上昇した場合

男性育休取得率が上昇した場合、企業は両立支援等助成金が受け取れます。両立支援等助成金は、男性労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境を整備するための支援が目的です。

助成金にはいくつかのコースがあり、とくに出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)と育児休業等支援コースが利用できます。双方のコースとも、男性が育児休業を取得した場合や、企業が育児休業を取得しやすい環境を整備した場合が対象です。

たとえば、出生時両立支援コースでは、男性が育児休業を取得した時点で、企業に対して助成金が支給されます。また、出生時両立支援コースの第1種を受給したのであれば、男性の育休取得率向上を条件とする第2種も支給される場合があります。

育休取得者の業務を代替する体制の整備

育児休業を取得する従業員の業務を代替できるよう体制を整備した中小企業は、両立支援等助成金の「育休中等業務代替支援コース」が利用できます。

育休中等業務代替支援コースは、労働者が育休や育児のための短時間勤務を選択しやすくなるような体制整備を促進する目的で設けられました。

育休中等業務代替支援コースには下記の3種類があり、それぞれ助成金が受け取れる条件が異なります。

手当支給等(育児休業)
  • 育休取得者の代わりに業務に携わる従業員へ、特別に手当を付与するなど好待遇を施した場合
手当支給等(短時間勤務)
  • 時短勤務を選択した本人の代わりに、業務に携わる従業員へ、特別に手当を付与するなど好待遇を施した場合
新規雇用(育児休業)
  • 従業員が育休や時短勤務を選択しやすいよう、業務を代わってくれる従業員を新しく雇用した場合

育休中等業務代替支援コースは、中小企業を対象としている制度なため、利用の際は注意が必要です。

法改正【2025年4月~】育休手当の給付額が実質10割に

2025年4月1日から施行される改正雇用保険法により、これまで受け取っていた育児休業給付金が、67%から80%に引き上げられます。

社会保険料が免除される制度もあわせて利用すれば、実質、育休取得前の賃金と同様の支援が受けられる仕組みです。つまり、育休手当の給付額が実質10割になるのです。

出生後休業支援給付

出生後休業支援給付は、子どもの出生直後に、生活費の負担軽減や両親がそろって育休を取得しやすくする目的で、2025年4月から施行される給付金です。

出生後休業支援給付を受けるには、下記の条件が必要です。

  • 両親がそれぞれ14日以上の育児休業を取得すること
  • 男性は子どもの出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内に育休を取得すること

支給額は、休業開始前の賃金の13%相当額で、育児休業給付金に上乗せされる形で最大28日分が支給されます。

つまり最大28日間、現行の67%に出生後休業支援給付の13%が上乗せされて、支給率が67%から80%引き上げられます。

さらに社会保険料の免除と非課税をあわせることで、実質的な手取り10割が実現する仕組みです。

産休・育休に関わる申請書類のテンプレート

産休・育休を取得するには、はじめに職場へ取得する旨を伝えたうえで、産休申請書または育児休業申請書の提出が必要です。

多くの職場では、企業が指定した形式および用紙に必要事項を記載して提出します。

とくに指定がない場合は、Money Forward クラウド給与の公式サイトで公開しているテンプレートに必要事項を記載して、ダウンロード・印刷する方法がおすすめです。

産休申請書テンプレート

産休を取得するためには、職場へ産休申請書を提出します。産休申請書には下記の事項を記載します。

  • 所属部署名
  • 社員番号
  • 氏名
  • 出産予定日
  • 産休の開始予定日
  • 産休の終了予定日

職場によっては、医師または助産師による妊娠証明書の添付が求められることもあるでしょう。

職場に指定の産休申請書がなければ、下記からテンプレートをダウンロードして印刷し、必要事項を記載したうえで職場へ提出しましょう。

産休申請書テンプレート

育児休業申請書テンプレート

育休を取得するためには、職場へ育児休業申請書を提出します。育児休業申請書には下記の事項を記載します。

  • 所属部署名
  • 社員番号
  • 氏名
  • 子の氏名
  • 子の生年月日
  • 申請書本人と子の続柄
  • 育休の開始予定日
  • 育休の終了予定日
  • 育休中の連絡先

職場に指定の育児休業申請書がなければ、下記からテンプレートをダウンロードして印刷し、必要事項を記載したうえで職場へ提出しましょう。

育児休業申請書テンプレート

産休・育休中にもらえる給付金は就業形態や状況により異なる

産休は、雇用形態や就業状況にかかわらず、妊娠したすべての女性労働者に対して取得が義務付けられている制度です。職場や企業も、申し出に対して拒否できません。

一方で育休は、休業自体はすべての労働者が取得できますが、育休中に受け取れる給付金は、雇用保険へ加入しているかどうかで受け取れるかどうかが異なります。

とくに育児休業給付金は、雇用保険へ加入した期間が少ない場合は受け取れないため注意が必要です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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