• 更新日 : 2024年10月16日

就業規則の作成は怖くない!簡単にできる作り方解説(テンプレート付き)

就業規則を作るのが面倒と感じている方、どう作るか分からなくて困っているという方が多いのではないでしょうか?しかし、一定の条件を満たした企業は、就業規則を作成することが義務付けられています。

そこで、今回は就業規則に関する基本事項から、業種ごとの特性に応じた就業規則の注意点などをご紹介します。

就業規則の概要

就業規則1
Photo by Elvert Barnes

就業規則は、労働条件等を定めた重要な規則集です。また、一定の場合には作成が義務付けられ、行政官庁への届け出も要します。

概要

就業規則とは、労働基準法に基づき、被雇用者の労働時間・賃金・服務規程のような労働条件などを定めた規則のことをいいます。

作成義務が生じる条件

就業規則の作成義務は、事業場(事業所・店舗など)において原則10人以上の従業員がいる場合に生じます。なお、就業規則は企業単位ではなく、事業場単位で作成しなければならないので、注意が必要です。

行政官庁への届け出

作成・変更した就業規則の届け出を労働基準監督署長へ行う際には、以下の点に注意する必要があります。

  • 労働者代表の意見添付が必要
    ここでいう労働者代表は、過半数の労働者によって組織された労働組合がある場合、その労働組合、労働組合がない場合は従業員の過半数により選ばれた方となります。届け出の際には、確かに労働者側の意見も聴いたことを示すために、代表者の意見が記載された意見書の添付が義務付けられています。
    なお、役員や管理監督者は労働者代表になることはできません。
  • 事業場ごとの届け出が一般的
    ただし、複数の営業所や店舗などを展開する企業については、営業所や店舗の就業規則が「本社の就業規則と同じ内容である場合」に限っては、本社所在地を管轄する労働基準監督署長経由で、一括で届け出ることも可能です。なお、この場合であっても意見書は、それぞれの事業場の労働者代表のものを添付しなければなりません。

また、届け出を行った就業規則は、従業員に対して周知することが義務付けられています。

共通で記載する必要がある項目

就業規則を作成する際には、業種など個々の条件に関係なく、共通して盛り込まなければならない項目があります。

就業規則を作成する際に必ず入れる必要がある項目(絶対的必要記載事項)

就業規則には、労働基準法により常に記載しなければならないと決められている事項があります。それを絶対的必要記載事項といいます。この事項を記載しないと、当然受理されないので注意しましょう。

  • 労働時間関係
    始業・終業時刻、休憩時間、また休日・休暇など
  • 賃金関係
    給料の決定・計算・支払い方法、賃金締め切り、支払いの時期、昇給などに関する事項
  • 退職関係
    退職に関する事項(解雇などの理由も含む)

場合によっては入れなくてはならない項目(相対的必要記載事項)

下記に該当する制度を設ける場合に記載しなければならない項目を相対的必要記載事項といいます。

  • 退職手当に関して
    適用される従業員の範囲、手当の決定、計算・支払い方法や時期
  • 臨時の賃金・最低賃金に関して
    臨時の賃金(退職手当はのぞく)・最低賃金額
  • 費用負担に関して
    食費・作業用品などの負担の項目
  • 安全衛生に関して
    安全・衛生の項目
  • 職業訓練に関して
    職業訓練の項目
  • 災害補償・業務外の傷病扶助に関して
    災害や業務外のケガ・病気の扶助
  • 表彰・制裁に関して
    表彰や制裁の種類・程度に関する事項
  • その他
    当該事業場において使用される労働者のすべてに適用される定め

会社が独自に定める項目(任意的記載事項)

就業規則には、絶対的必要記載事項や相対的記載事項のほかにも、「任意的記載事項」を記載することが可能です。

任意的記載事項は、公序良俗に反することのない範囲で、自由に記載することができます。企業の理念や、採用方法、修行規則の適用範囲などを記載することが多いでしょう。働き方の多様化を受けて、副業や兼業に関する規定を置く企業も存在します。

就業規則の作成の流れ

就業規則は、働くうえで大切な規則が定められています。そのため、その作成も適切な手順で進めなければ、思わぬトラブルにつながってしまいかねません。

原案の作成

就業規則の作成においては、まず自社の現状を把握し、必要となる規定は何かを洗い出したうえで、原案を作成する必要があります。厚生労働省のモデル就業規則やテンプレートも利用できますが、自社の実態に合った就業規則を作成するためには、この過程が欠かせません。自社の担当者だけで難しい場合には、社会保険労務士等の外部専門家を活用しましょう。

過半数労働組合または過半数代表者への意見聴取

作成した原案を過半数代表者等に提示し、意見を述べてもらいます。意見を聴くことは義務ですが、仮に過半数代表者等が、就業規則の内容に反対であったとしても、効力には何ら影響を及ぼしません。

しかし、従業員側の意見を取り入れることで、より働きやすい環境整備につながる就業規則の作成が可能となるため、内容のすり合わせを行うことが重要です。

意見書を労働基準監督署に提出

過半数代表者等の意見書は、作成した就業規則とともに所轄労働基準監督署長に提出する必要があります。なお、意見書に様式の定めはないため、自由な形で作成してかまいません。

仮に過半数代表者等が意見書の提出を拒んだ場合には、過半数代表者等に意見を聴いたことを証する「意見書不添付理由書」を作成し、所轄労働基準監督署長に提出する必要があります。意見書不添付理由書を提出することで、意見書がなくても作成の手続きを進めることが可能です。

従業員への周知

労働基準法第106条により、就業規則は、従業員へ周知することが求められています。周知義務に違反した場合には、就業規則が無効と判断される恐れがあるだけでなく、労働基準法第120条により、30万円以下の罰金が科される恐れもあります。忘れずに周知しましょう。周知の方法としては、見やすい場所への掲示や、備え付け、書面による交付などが考えられます。

参考:労働基準法|e-Gov法令検索

就業規則を作成するメリット

一定の企業においては、就業規則の作成が義務付けられていますが、就業規則の作成にはメリットも存在します。メリットごとに見ていきましょう。

労使間・従業員間のルールが明確になる

就業規則を作成することで、働くうえで遵守すべき事項が明確になります。労使間はもちろんのこと、従業員間で守るべきルールも明らかとなるため、従業員にとって働きやすい環境の整備に役立ちます。また、就業規則によって、各種手当の支給条件が明確に示されれば、従業員の納得感も増すことになるでしょう。

労働トラブルの防止につながる

遵守すべき事項が明らかになっていれば、自ずと違反も減り、労働トラブルの発生を防止できます。また、何らかの違反を犯した従業員がいた場合には、就業規則の規定に基づいて処分することが可能です。就業規則の作成によって、仮に従業員から不当な処分であると訴えられても、就業規則に基づく正当な処分であると主張することができます。

就業規則の作成が助成金申請の要件になる場合がある

就業規則を作成していなければ、キャリアアップ助成金などの一部の助成金を申請することができません。そのため、就業規則の作成義務のない企業であっても、就業規則を作成することはメリットとなるでしょう。

参考:キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)|厚生労働省

就業規則を作成する際の注意点

就業規則を作成する際には、守らなくてはならない注意点が存在します。注意点を押さえて、正しく就業規則を作成しましょう。

すべての労働者についての定めをする

就業規則は、企業で働く従業員の労働条件や服務規律等、そこで働くすべての従業員についての定めが必要です。ただし、一部の労働者に対して、異なった定めをする必要があれば、パートタイム就業規則など、特定の従業員にのみに適用される就業規則を作成できます。

法令や労働協約に反する部分は無効になる

労働基準法第92条によって、就業規則の内容は法令や労働協約に反してはならないとされています。そのような内容を定めた就業規則は、その部分について無効となるため注意が必要です。法令等に違反する内容の就業規則に対しては、変更命令が出される場合もあります。また、就業規則の内容に達しない労働条件を定めた労働契約は、就業規則に定める条件が適用されます。

参考:労働基準法|e-Gov法令検索

事業場の実態に合った内容にする

就業規則は、企業の実態に合った内容でなければなりません。実態に合わない就業規則は、企業と従業員双方にとって、運用し辛いものとなってしまいます。実態に合った内容とするためには、過半数代表者等からの意見聴取だけでなく、実際に現場で働く従業員からも意見を聴くことが有効です。

業種ごとに注意が必要な点

ここまで就業規則に関して基本的な内容を見てきましたが、もちろん業種などにより特徴・働き方・環境などは様々です。そこで代表例として以下の3業種に関して、就業規則を作成・変更するうえでの注意点などをご紹介します。

IT業

特に注意が必要な点は、労働時間に関する項目です。IT業では長時間や不規則な労働時間になってしまいがちになり、従業員への負担が考えられます。その問題を解決するためにも労働時間や給与に関する項目、休暇・病気などの健康管理規程に関する項目を記載することが必要となるでしょう。

小売業

小売業は、販売成績などに対する評価制度や成果報酬の内容がポイントになると考えられます。成績に応じた目標管理制度、人事評価制度の導入に関する事項の記載が求められることになります。

飲食業

まず第一に、飲食業にとって最重要となりうる衛生管理に関することが挙げられます。そのため、衛生管理に関する作業手順を就業規則に記載する必要があるでしょう。また、パートタイムの従業員が多い場合は、給与形態や労働時間などに関する規程や評価制度を充実させることも考えられます。

就業規則のテンプレート

就業規則を作成するには、法律や人事労務関連の専門家である弁護士や社会保険労務士に依頼する方法もありますが、事業所内で作成することも可能です。

東京労働局

東京労働局によるもので一般的なものといえるかもしれません。

マネーフォワードで就業規則のテンプレートを公開しています。以下のページから必要情報を記入することでダウンロード可能です。

正しく就業規則を作成しトラブルを防ごう

就業規則は、本記事でご紹介した項目をしっかり押さえていれば、最低限のものを作成することは可能です。また、就業規則を作成することは、労働環境や労働条件などを含め、どのような会社にしていきたいのかを意識する機会にもなります。

就業規則の作成をただの面倒な作業だと捉えずに、どのような会社にしていくのかを考えるための良い機会と捉え、前向きに行うようにしてみてください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事