• 更新日 : 2024年1月26日

2022年10月から変更!育休中の社会保険料の免除要件について

社会保険は毎月の給与から保険料が控除されますが、育児休業期間中は免除されます。育児休業とは、育児・介護休業法に定められた満3歳未満の子を養育するための休業期間です。育休中は事業主が日本年金機構に申請することで保険料の免除を受けることができます。2022年10月から免除要件が変更されたので、当記事で詳しく解説しましょう。

育休におけるこれまでの社会保険料免除について

育休期間中の社会保険料免除要件は2022年10月1日に変更されました。まずは従来の免除要件を紹介します。2022年9月30日以前は、育児休業等の開始日が属する月から、終了日の翌日が属する月の前月までの保険料が免除対象でした。例えば、10月5日に育休を開始し、11月15日に終了した場合は、10月分の社会保険料が免除されます。一方、10月5日に育休を開始し10月25日に終了した場合は、免除は受けられません。

  • 10月5日に育休を開始し11月15日に終了した場合
    社会保険料免除(10月5日に育休を開始し11月15日に終了した場合)
  • 10月5日に育休を開始し10月25日に終了した場合
    社会保険料免除(10月5日に育休を開始し10月25日に終了した場合)

あわせて、毎月の給与にかかる社会保険料だけでなく、賞与にかかる保険料の免除要件も変更となっています。2022年9月30日以前の免除要件では、育休期間に月末が含まれる月に支給された賞与にかかる保険料が免除対象でした。例えば、10月5日に賞与を受け取り10月15日から11月5日まで育休を取得した場合は、賞与にかかる社会保険料は免除されます。

  • 10月5日に賞与を受け取り10月15日から11月5日まで育休を取得した場合
    (社会保険料免除)10月5日に賞与を受け取り10月15日から11月5日まで育休を取得した場合

これらの社会保険料免除要件は、2022年9月30日以前に開始した育児休業等が対象なのでご注意ください。なお、育休による社会保険料免除期間は年金額を計算する際に保険料納付済み期間として扱われます。将来の年金受給額が減ってしまうことはないので安心してください。

2022年10月からの育休における社会保険料免除について

続いて、2022年10月1日以降の社会保険料免除要件を紹介します。従来の免除要件である育休開始日が属する月から、終了日の翌日が属する月の前月までの保険料に加え、育休開始日の属する月内に14日以上の育児休業を取得した場合も当該月の社会保険料が免除されます。ただし、育休期間中に就業予定がある場合は、当該就業日は除外となるため気を付けましょう。一方、土日祝日等は期間に含まれます。免除要件をまとめると下記の通りです。

  • 育休開始日の属する月から終了日の翌日が属する月の前月までの社会保険料
  • 育休開始日の属する月内に14日以上育児休業を取得した際の当該月の社会保険料

例えば、10月5日に育休を開始し10月25日に終了した場合、従来は社会保険料の免除を受けられませんでしたが、2022年10月1日以降は免除対象となります。

  • 10月5日に育休を開始し10月25日に終了した場合
    社会保険料免除対象期間(10月5日に育休を開始し10月25日に終了した場合)

ただし、連続して複数の育児休業を取得した場合は、まとめて1つの育児休業と見なして扱われるため注意しましょう。例えば、10月5日に育休を開始し10月25日に終了、さらに10月26日から11月25日まで育児休業を取得した場合、11月分の社会保険料は免除されません。

  • 10月5日に育休を開始し10月25日に終了、さらに10月26日から11月25日まで育児休業を取得した場合
    社会保険料免除対象期間(10月5日に育休を開始し10月25日に終了、さらに10月26日から11月25日まで育児休業を取得した場合)

同時に、賞与にかかる社会保険料の免除要件も変更されています。従来の免除要件では、育休期間に月末が含まれる月に支給された賞与にかかる保険料が免除対象でした。2022年10月1日以降は、賞与を受け取った月の末日を含む、連続した1ヶ月を超える育児休業を取得した場合に限り社会保険料が免除されます。例えば、10月5日に賞与を受け取り10月15日から11月5日まで育休を取得した場合、従来は免除対象でしたが、2022年10月1日以降は免除されません。対して、10月5日に賞与を受け取り10月15日から11月25日まで育休を取得した場合などは免除対象となります。

  • 10月5日に賞与を受け取り10月15日から11月5日まで育休を取得した場合
    社会保険料免除対象期間(10月5日に賞与を受け取り10月15日から11月5日まで育休を取得した場合)
  • 10月5日に賞与を受け取り10月15日から11月25日まで育休を取得した場合
    社会保険料免除対象期間(10月5日に賞与を受け取り10月15日から11月25日まで育休を取得した場合)

参考:育児休業等期間中の 社会保険料免除要件が見直されます。|日本年金機構
参考:令和4年10月から育児休業等期間中における社会保険料の免除要件が改正されました|日本年金機構

新制度における育休の社会保険料免除はいくら?

ここからは、新制度で社会保険料がいくら免除されるのか具体的に計算してみましょう。まず、社会保険料の計算方法は下記の通りです。

  • 健康保険
    給与にかかる健康保険料=標準報酬月額×保険料率÷2(労使折半)
    賞与にかかる健康保険料=標準賞与額×保険料率÷2(労使折半)
  • 厚生年金保険
    給与にかかる厚生年金保険料=標準報酬月額×18.3%(保険料率)÷2(労使折半)
    賞与にかかる健康保険料=標準賞与額×18.3%(保険料率)÷2(労使折半)
  • 社会保険料
    社会保険料=健康保険料+厚生年金保険料

標準報酬月額と標準賞与額は保険料算定の基礎となる値です。健康保険の保険料率は都道府県ごとに異なっており、全国健康保険協会(協会けんぽ)や健康保険組合から毎年提示されます。厚生年金の保険料率は全国一律18.3%です。
それでは、下記の条件の方が育児休業を取得した場合、いくら社会保険料が免除されるのかを計算してみましょう。

  • 東京都内在住の20代
  • 1月5日から12月25日まで育休取得(社会保険料免除対象期間11ヶ月)
  • 報酬月額25万円(標準報酬月額24万円)
  • 賞与30万円(標準賞与額30万円)
  • 賞与は5月30日と11月30日に支給

まず、毎月の給与と賞与にかかる社会保険料を計算してみます。

  • 健康保険
    給与にかかる健康保険料=240,000円×(9.81%/100)÷2=11,772円
    5月賞与にかかる健康保険料=300,000円×(9.81%/100)÷2=14,715円
  • 11月賞与にかかる健康保険料=300,000円×(9.81%/100)÷2=14,715円

  • 厚生年金保険
    給与にかかる厚生年金保険料=240,000円×(18.3%/100)÷2=21,960円
    5月賞与にかかる厚生年金保険料=300,000円×(18.3%/100)÷2=27,450円
    11月賞与にかかる厚生年金保険料=300,000円×(18.3%/100)÷2=27,450円
  • 社会保険料
    給与にかかる社会保険料=11,772円+21,960円=33,732円
    5月賞与にかかる社会保険料=14,715円+27,450円=42,165円
    11月賞与にかかる社会保険料=14,715円+27,450円=42,165円

社会保険料の免除対象期間は1月から11月までの11ヶ月です。12月は免除対象外なので気を付けましょう。さらに、5月30日と11月30日に支給される賞与にかかる社会保険料も免除対象です。すなわち、休業期間中に免除される社会保険料の総額は下記の通りです。

免除総額=(33,732円×11ヶ月)+42,165円+42.165円=455,382円

新制度における育休の社会保険料免除
参考:令和4年度保険料額表(令和4年3月分から) | 協会けんぽ | 全国健康保険協会

育休における社会保険料免除の手続き方法

社会保険料の免除を受けるには、事業主を通して日本年金機構に申請しなければなりません。そのため、出産や育児休業の予定が決まったら事業主に申し出ましょう。

その際、出産予定日や休業予定期間を必ず伝えるようにしてください。出産・休業の申し出を受けた事業主は、事業所を管轄している年金事務所に申請書を提出します。

産前産後休業を取得する場合は「産前産後休業取得者申出書」、育児休業を取得する場合は「育児休業等取得者申出書」の提出が必要です。提出時期は、休業中もしくは休業終了後1ヶ月以内となっています。

終了予定日前に休業等を終了する場合は「産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届」や「育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届」を提出しましょう。 各種申出書は、窓口持参・郵送・電子申請などで提出可能です。なお、社会保険料は労働者と事業主が半額ずつ負担する労使折半ですが、免除申請の手続きすることで労働者負担分だけでなく事業主負担分も免除されます。

参考:従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が産前産後休業を取得したときの手続き|日本年金機構
参考:従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が育児休業等を取得・延長したときの手続き|日本年金機構
参考:従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が産前産後休業を変更・終了したときなどの手続き|日本年金機構
参考:従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)の育児休業等が終了したときの手続き|日本年金機構

新制度の概要を理解し社会保険料の免除を受けよう

2022年10月から変更された、育児休業における社会保険料の免除要件について紹介しました。通常社会保険料は毎月の給与と賞与から控除されますが、育児休業取得中は免除されます。給与と賞与それぞれに要件が定められていますが、2022年10月以降は免除要件が変更されています。

給与にかかる社会保険料については、14日以上連続して育児休業を取得した場合、当該月の社会保険料も免除対象となりました。要件が緩和されたことで、短期間の育休も取得しやすくなったでしょう。一方、賞与にかかる社会保険料については、支給後1ヶ月以上継続して育休を取得している場合に限り免除対象となり、要件が厳しくなっています。当記事を参考に新制度の概要を理解し、適切に社会保険料の免除を受けましょう。

よくある質問

2022年10月から適用された、育休における社会保険料免除の変更点について教えてください

給与にかかる社会保険料は、14日以上連続して育児休業を取得した場合、当該月の社会保険料も免除対象となりました。賞与にかかる社会保険料は、支給後1ヶ月以上継続して育休を取得した場合に限り免除対象です。詳しくはこちらをご覧ください。

新制度において、社会保険料はおおよそどの程度免除されますか?

東京都在住の20代の方で、月給25万円、5月30日と11月30日に各30万円ずつ賞与を受け取った方が1月5日から12月25日まで育休を取得した場合、免除期間11ヶ月で免除総額は413,217円です。詳しくはこちらをご覧ください。


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