- 更新日 : 2023年11月7日
年末調整における配偶者控除・配偶者特別控除と申告書の書き方
配偶者控除とは、「控除対象配偶者」に該当する配偶者を家族にもつ納税者に対し、年末調整から一定額の控除ができる制度をいいます。
扶養する配偶者がいる納税者は、いない場合に比べて食費、衛生費など、さまざまな生活費がかかります。そのため、配偶者控除を設けることにより、税金の負担を軽くしています。いわば、国の家庭応援サポートのようなものです。
目次
年末調整でよく聞く、103万円の壁とは?
年末調整での配偶者控除と聞いて、まず思い浮かべるのが「103万円」という数字です。
特に、女性パート社員のなかには「103万円」に固執している方も多く、「主人の配偶者控除を受けたいので、年間の給与が103万円以下になるような働き方を希望します」と会社に要望する場合もあるようです。
このように、一般的には年末調整において配偶者控除を受けるボーダーラインが103という数字のため、これを「103万円の壁」と呼ぶ人もいます。
しかし、この「103万円の壁」については、間違った解釈をしている方が意外にも多いのです。実際には、配偶者控除の該当要件に103万円という数字は表示されていません。
それでは、どうしてそのような解釈をしてしまうのでしょうか? また、配偶者控除とは一体どんなものなのでしょうか。それらを詳しく見ていきましょう。
年末調整の配偶者控除とは
年末調整において配偶者控除を受けるためには、納税者、配偶者がともに以下の要件をすべて満たした場合に適用されます。
納税者自身にかかわる要件
- 年間の合計所得金額が1,000万円以下であること
配偶者にかかわる要件
このように、控除対象配偶者の要件には「103万円」ではなく、「48万円以下」とあるだけですが、1年間の収入が48万円以下の配偶者しか控除されないということではありません。
給与所得においては、その給与を得るために必要な経費(給与所得控除)は、自動的に一定の金額が差し引かれます。その給与所得控除額は、収入によって異なりますが、最低55万円と決められています。
つまり配偶者控除の要件である48万円、これに給与所得控除額の最低限度額である65万円を加えた金額、それが103万円であることが分かります。
結果的に、給料のみの収入で、年間103万円以下であり、かつ、納税者の合計所得金額が1,000万円以下であれば、配偶者控除の対象になります。
しかしここで注意したいのが、納税者の合計所得金額が900万円以下なら38万円の控除があり、合計所得金額が900万円から1,000万円の場合は段階的に引き下げられる点です。
103万円という数字は、必要経費分55万円を逆算して求められた数字なのです。
配偶者特別控除
それでは、合計所得金額が48万円超となり、年収103万円を超えてしまったら、年末調整において控除を受けることができないのでしょうか。
こうした配偶者控除の対象要件から外れた配偶者をもつ納税者のために、「配偶者特別控除」という制度があります。
「配偶者特別控除」は、納税者、配偶者がともに以下の要件をすべて満たした場合に適用されます。
納税者自身にかかわる要件
- 年間の合計所得金額が1,000万円以下であること
配偶者にかかわる要件
- 納税者と正式に籍を入れている(内縁の妻は対象外)
- 納税者と同じ生計で生活をしている(別居でも可)
- 合計所得金額が48万円を超え、かつ133万円以下であること
- 青色申告を行っている個人事業主の配偶者として、給与を支給されていないこと、あるいは、白色申告者の事業専従者に該当しないこと
- 納税者以外の人物の扶養親族に該当しないこと
実際の控除額は、最高で38万円です。納税者や配偶者の合計所得金額によって段階的に引き下げられ、配偶者の合計所得金額が133万円を超える場合は0円になります。
したがって、配偶者の年収が103万円を超える場合でも、年末調整にて一定の金額に対して控除を受けることは可能です。
給与所得者の配偶者控除等申告書とその書き方
配偶者控除又は配偶者特別控除を受ける場合に提出が必要な書類が、「配偶者控除等申告書」です。
なお、以前は「給与所得者の配偶者控除等申告書」として、独立した申請書でしたが、現在は基礎控除申告書や所得金額調整控除申告書とひとまとめになった「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」となっています。
ここでは配偶者控除等申告書の具体的な書き方と記入の際のポイントを確認しましょう。
参考:令和5年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与租特者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書|国税庁
配偶者の所得金額を決定する際には注意が必要な点があります。配偶者の収入が給与収入だけであれば、前述した金額を根拠に配偶者控除と配偶者特別控除を受けることができます。
しかし、給与所得とは別に配当所得や不動産所得、事業所得などがあるならば、すべてを合計した金額によって配偶者の所得金額は決定されます。
そのため、配当所得や不動産所得がある場合は、所得の総額を計算し、配偶者特別控除の適用範囲内かどうかを判断することがポイントです。
加えて、計算する際には、納税者本人の所得の金額によって配偶者控除及び配偶者特別控除額が変わるため、「配偶者控除額及び配偶者特別控除額の一覧表」を参照して確認しましょう。
配偶者控除を正しく理解しよう
たしかに、配偶者が多く働いた分だけ納税者の所得税の控除額は減少します。しかしその分、配偶者の給与額が増加するため、一概にどちらが得とは言えないというのが本当のところです。年末調整があるからといって、数字にこだわり過ぎることはありません。
ベストの解決策は「年収103万円の壁」に固執しすぎず、配偶者控除・配偶者特別控除についてもう一度確認し、夫婦でよく話し合うこと。そのうえで、税制の恩恵をもっとも受けられるように、お互いの働き方をじっくり考えてみる必要がありそうです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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