• 更新日 : 2024年2月16日

無断欠勤とは?従業員が無断欠勤する理由は?対応方法を解説!

無断欠勤とは?従業員が無断欠勤する理由は?対応方法を解説!

無断欠勤の従業員だからと言っても、解雇は簡単にはできません。なぜ無断欠勤しているのかを突き止め、基本的には出勤するように促さなければならないからです。どうしても連絡が取れなければ解雇もやむを得ませんが、できるだけ自然退職で進めます。解雇とする場合は労働基準法に則って手続きし、証拠もきちんと揃える必要があります。

無断欠勤とは?定義はある?

無断欠勤とは、会社が求める休業の手続きを踏まずに、従業員が勝手に勤務を休むことを指します。欠勤するときは、前日や当日に具合が悪くなったような場合でも始業時間までに連絡を入れるのが社会人の常識とされています。会社に対して連絡をせずに休業する行為が、無断欠勤です。法律などで定義づけはされていませんが、会社から了承を得ずに従業員が労働を休む行為が、一般的に無断欠勤と呼ばれます。

従業員が無断欠勤をする理由

なぜ従業員の無断欠勤は起こるのでしょうか?従業員が無断欠勤する代表的な理由は、以下の通りです。

単純なミスによる遅刻の事実を隠すため

寝坊をして始業時間に間に合わず、そのまま会社に連絡を入れずに休むケースが、単純なミスによる遅刻の事実を隠すための無断欠勤に該当します。遅刻によって業務に支障を生じさせて多くの人に迷惑をかけたり、上司から叱責を受けたりするのを免れるための無断欠勤です。

うつ病等の精神疾患の影響

うつ病等の精神疾患による影響として、朝決まった時間に起きられない、会社に行こうとすると体調が悪くなるといった症状が挙げられます。こうしたケースでは連絡するタイミングを逃しやすく、結果として無断欠勤になることが少なくありません。

セクハラ・パワハラを受けている

会社でセクハラやパワハラを受けていて、恐怖心から会社に行けない場合も無断欠勤になりがちでしょう。会社に休みの電話をしたくても加害者が出ることに恐怖を感じたり、休みたい理由を告げられなかったりすることが、連絡できないケースにつながることが多く見られます。

なんらかの事件・事故に巻き込まれている

単身者が自宅で事件に巻き込まれたり、出勤途中に交通事故に遭遇し、無断欠勤になることもあります。とくに一人暮らしの従業員は自宅で倒れていたり、死亡していたりするケースがあるので注意が必要です。

退職するために連絡を絶っている

退職を希望する従業員が、申し出や手続きを面倒に感じて無断欠勤するケースです。退職理由を聞かれたり、退職届の提出を求められたり、退職を引き留められたりせずに辞める意思で行われます。ブラック企業の場合にこのケースの無断欠勤が起こる可能性が高くなっています。

無断欠勤が続く場合の対応方法

従業員が連続して無断欠勤している場合、会社はどう対応すべきでしょうか?無断欠勤が続いているときの対応方法には、以下があります。

① 本人と連絡を取る

従業員の無断欠勤があった場合、まずは本人と連絡を取ることが何より大切です。最初に試みるべき連絡手段は電話やメール、LINEなどのSNSといった非対面のものですが、一人暮らしの場合は事件や事故に巻き込まれている可能性もあるため、自宅は行ってみることも選択肢に入ります。本人と連絡取る際は、欠勤の原因がうつなどの精神的症状やハラスメント被害によることも想定し、十分に配慮する必要があります。

➁ 無断欠勤を行った理由を聞く

従業員本人と連絡が取れたら、次にやるべきは事情の聴取です。どうして無断欠勤したのかを尋ね、理由を明らかにします。会社側に非・落ち度がある場合は改善が必要です。またセクハラ・パワハラ被害を受けていた場合も、会社にはハラスメントをなくさなければならない責務を負っています。以降に無断欠勤が起こらないようにするため、しっかりと理由を聞く必要があります。

③ 契約違反に繋がることを厳重注意する

理由がどうであれ、無断欠勤は社会人に相応しくない行為です。会社と従業員の間で締結した労働契約に反する行動で、許されるべきではありません。従業員が無断欠勤すると業務に滞りが生じ、製品の生産が納期に間に合わなくなるといった問題が発生します。対外的に大きな問題が生じ、社会的信用を失う、違約金が発生するといった損害を会社に与える可能性があります。こうした損害・リスクに繋がる行為であることを認識させ、厳重注意する必要があります。

④ 酷い場合には懲戒処分を行う・もしくは退職を相談する

厳重注意をしても従業員が無断欠勤をやめない、しばらくすると繰り返すなどの場合、処分を検討することも致し方ありません。懲戒処分には減給や降格、出勤停止、そして解雇といったものがあります。ただし懲戒処分はトラブルとなることも少なくありません。就業規則の確認を怠ることなく、慎重に行いましょう。懲戒処分とせずに、従業員に退職を促すことも選択肢の一つです。

無断欠勤を防ぐための仕組み

従業員に無断欠勤をさせないようにするには、どうしたらよいのでしょうか?無断欠勤を防ぐ仕組みには以下のものが考えられます。

タイムカードの打刻や日報を徹底する

従業員の無断欠勤を防ぐため、タイムカードや日報の使用を徹底させましょう。従業員が無断欠勤をする理由の1つには、会社の勤怠管理がルーズである点が挙げられます。勤怠がきちんと管理されていないと、従業員も欠勤の連絡を軽視するようになり、無断欠勤してもあまり罪悪感を抱かなくなってしまいます。またタイムカードや日報で日々の始業時刻や終業時刻が記録されていれば明らかに欠勤した日が分かり、その日の連絡の有無によって無断欠勤をしたという証明にも使えます。無断欠勤でトラブルが起きた場合の記録としても使えるため、タイムカードの打刻や日報の記入は徹底しましょう。

出勤を妨げる会社側の要因を排除する

セクハラやパワハラといったハラスメント被害を受けている場合、いじめを受けている場合、職場環境で何か不都合な出来事がある場合は、それらを取り除くことで無断欠勤が解消されることもあります。ただしハラスメントやいじめは一時的に改善が見られても、再び起こる場合も少なくない点に注意が必要です。根本的に問題解決が行われているかをきちんと確認し、無断欠勤をしている従業員に出社を促すことが大切です。

無断欠勤の従業員を解雇する手順

どのような理由があっても、無断欠勤が社会人に相応しくない行為であることに変わりはありません。セクハラやパワハラ、いじめなどを会社が容認していた場合など、帰責事由が会社側にある場合を除けば、適切な手続きを取ることによって、無断欠勤を続ける従業員を解雇できる場合もあります。無断欠勤の従業員を解雇する手順を説明します。

従業員にメールや電話で出勤を呼びかける

無断欠勤をしている従業員に対しては、解雇をする前にまず出勤するように呼びかける必要があります。会社が出社を呼びかけずに解雇した場合は、従業員を出社させようとする努力義務を怠っていると見なされて、不当解雇とされる恐れがあります。解雇を検討する前にメールや電話で連絡を取り、出勤を呼びかけましょう。なお、無断欠勤であっても欠勤日数が少ない場合、呼びかけていても不当解雇となることがあります。過去の判例からは、2週間以上の無断欠勤であることが一つの基準と言えるでしょう(開隆堂出版事件・東京地裁平成12年10月27日判決など)。また、精神疾患による無断欠勤なども不当解雇と判断される可能性が高いと考えられます。

解雇の予告を行う

会社が従業員の解雇を行う際、労働基準法に基づく手続きが必要です。労働基準法では解雇は次の通り、予告を行うように規定されています。

労働基準法第20条

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。

無断欠勤の社員であっても解雇は労働基準法に規定されている手順で行わなければなりません。

解雇通知書の送付

解雇通知書とは従業員に解雇を伝える書類です。無断欠勤者には手渡しできないため送付しますが、証拠を残すために内容証明郵便とすることが必要です。先に述べた解雇予告を行う際に解雇予告通知書、解雇予告手当を支払う場合に解雇通知書を作成・交付し、従業員に解雇を告げます。解雇の告知手段はとくに労働基準法で触れられていないため、解雇通知書や解雇予告通知書を必ず作成しなければいけないわけではありません。しかしトラブル防止のため、書面で解雇の通告をすることが大切です。

解雇の理由を記載する解雇理由証明書は、従業員から求めがあれば必ず交付しなければならない書類です。以下の違いに注意した準備が必要です。

  • 解雇通知書・解雇予告通知書:従業員の請求の有無に関係なく、会社から交付する
  • 解雇理由証明書:従業員の請求に応じる形で交付する

解雇を行う

解雇予告や解雇通知書送付を行った後は、解雇日の到来をもって解雇とします。ここまでは普通解雇の流れを説明しましたが、解雇には懲戒解雇もあります。懲戒解雇とは、従業員が会社の秩序を乱すような行為をした場合に、会社が懲戒権の行使として一方的に労働契約を解約することを言います。懲戒解雇の場合は即時解雇ができ、ペナルティを与えることも可能です。しかし無断欠勤で懲戒解雇はあまりにも重罰で、一般的には成立しません。

無断欠勤する従業員に対応する場合の注意点

無断欠勤の従業員への対応は、どのような点に気をつけなければいけないのでしょうか?解雇する場合の注意点を説明します。

解雇の条件について

従業員を無断欠勤の理由で解雇するには、2週間以上続いていることが判例上の一つの基準とされます。過去には日数の短い(6日)無断欠勤での解雇が不当とされたケースがあります(長野地方裁判所松本支部昭和54年6月13日判決など)。

解雇を行う場合の証拠

労働基準法では、解雇予告義務や業務上の傷病による休業期間などの解雇制限が定められているほか、労働契約法では解雇権濫用を無効とする規定があります。

法的には、無断欠勤であっても解雇は適切に行われている必要があり、裁判になった場合、それを証明しなければなりません。タイムカード・日報・出勤簿などの勤怠状況を示す書類の他、連絡がないことの証拠が必要になります。職場内での証言を集めるなど、証拠を集めておきましょう。

無断欠勤の原因が企業側にないかどうか

セクハラやパワハラ、いじめなどがあると、会社に責任が問われて無断欠勤での解雇が認められません。従業員の無断欠勤に対しては解雇を検討する前に、会社側に原因がないことを確認しましょう。本人からは本当の事情を聞き出せない可能性があることを考慮して、周囲の人からも話を聞くことが大切です。

無断欠勤の場合の給料

労働基準法では、賃金とは労働の対償として使用者が労働者に支払うものとしています(第11条)。また、労働契約法では、労働契約は労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立するとしています(第6条)。つまり、無断欠勤では、労務が提供されていないため、労働者には賃金請求権は発生しません。これを「ノーワーク・ノーペイの原則」と言います。

解雇した従業員の失業保険

無断欠勤で解雇された従業員でも、本人が雇用保険の被保険者であった場合、雇用保険法による基本手当は支給されます。他の事由で退職する従業員と同じように、雇用保険の被保険者資格喪失届や離職証明書などをハローワークに提出する必要があります。

無断欠勤の証拠がなく解雇してしまった場合

無断欠勤を理由として解雇を行う場合、従業員が連絡なしに欠勤したことを会社が証明しなければなりません。証拠のないまま解雇を実行してしまうと不正な解雇として訴訟を起こされた場合に裁判に負け、損害賠償請求される可能性があることに注意しましょう。

無断欠勤していても従業員の解雇は慎重に行おう

無断欠勤は社会人に相応しくない行為で、許されるべきものではありません。業務に支障が出たり、他の従業員に悪影響が及んだりと、会社としてもさまざまな問題に発展するでしょう。解雇も視野に入れて対応しなければなりませんが、無断欠勤でも簡単には解雇できません。とくにセクハラやパワハラ、いじめが理由で無断欠勤した場合には、会社に責任が問われます。会社に責任がなく、解雇処分が相当な場合でも証拠が必要です。

無断欠勤の証拠にはタイムカードや日報といった、勤怠状況を示す書類が挙げられます。日々の勤怠管理をきちんと行い、無断欠勤には慎重に対処しましょう。


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