• 更新日 : 2022年5月27日

年末調整と年金受給者の関係 – 確定申告が必要なケースも解説!

年末調整と年金受給者の関係 - 確定申告が必要なケースも解説!

会社勤めの人の場合、会社で年末調整を行い、他に特別なことがなければ確定申告は行いません。ただ、年金を受給するようになると、年金は年末調整で扱わないため、確定申告が必要かどうかの判断が必要になってきます。
今回は、年末調整と年金受給者の関係性や確定申告が必要なケースの紹介、確定申告が不要になる制度について解説していきます。

増加する「年金受給者という立場の労働者」

定年退職の年齢の引き上げによって注目されているのが、働き続けながら年金を受給している労働者の存在です。

原則として老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は、支給開始年齢の65歳に達した時から受給が始まります。

請求を行うことにより年金を60歳から繰り上げて受給することも可能です。

この年金は、老後の生活保障のために設定され、勤務していた会社を定年退職して悠々自適な生活を送るという状況を想定されています。しかし、現在は平均寿命が延び、超高齢化社会がすぐそこまで迫ってきています。そんな中、今どきの65歳は元気な方が多く、定年退職の年齢を迎えても再雇用や再就職を望むケースが当たり前というのが現実です。

そのため、最低でも老齢年金の支給開始年齢までは働くという方が増加しています。
では、今後もさらなる増加が見込まれる「年金受給者という立場の労働者」の年末調整や確定申告はどのように行えばよいのでしょうか。詳しく解説していきます。

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年末調整では扱えない年金による収入は「雑所得」

年末調整は、年調年税額(納めるべき所得税額)を算出し、すでに毎月の給与や賞与などから給料天引きにより徴収されている税額の合計と比較した上で過不足となる金額がないか、確認して精算する手続きのことです。

収入の内訳が、給与・賞与のみ、つまり給与所得に限られる場合は、年末調整を行えばその年に納めるべき所得税額が確定するため、確定申告を行う必要はありません。

もちろん、年末調整は年金を受給しながら働いている社員のためにも行われます。ただし、年末調整を行うだけで終わりではなく、その後、確定申告が必要となります。なぜなら、年金による収入は「給与所得」ではなく、「雑所得」に区分されるため、年末調整の対象外であるからです。

給与所得分の年末調整が終わり、源泉徴収票が交付されたら、年金受給者自身で確定申告を行わなければなりません。

この雑所得に区分される年金は、「公的年金等」と「公的年金等以外」に分けられます。
公的年金等

  1. 老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金・退職共済年金など)
  2. 恩給
  3. 企業年金・個人型の確定拠出年金など
  4. 国民年金基金・適格退職年金・確定給付企業年金・企業型の確定拠出年金など
    ※障害年金・遺族年金は非課税扱いのため除外されます。

公的年金等以外の年金

  1. 保険型の個人年金(生命保険契約・生命共済により受給する年金)
    ※財形年金貯蓄の場合は非課税扱いのため除外されます。

「雑所得」の計算方法

雑所得の金額の計算方法は、公的年金等と公的年金等以外で異なります。
公的年金等の場合、65歳に満たない人は、年金による収入額が70万円以下の場合、全額控除の対象となり結果的に雑所得の金額は0円となります。

65歳以上の場合は、ほとんどの人に老齢年金の受給が開始されるため、雑所得がかからない年金による収入額のボーダーラインが120万円に引き上げられます。

具体的な計算方法は以下の通りです。

公的年金等に係る雑所得の金額 = 公的年金等の収入金額の合計額 × 割合 – 控除額

令和2年より公的年金等の収入金額の合計額に変更があります。国税庁HP「公的年金等に係る雑所得の速算表」にてご確認ください。

公的年金等以外の場合は、次の数式を利用して求めます。

年金による収入額 – 年金による収入額 × (支払った保険料の総額 ÷ 年金の支払額総額)

上記の式によりそれぞれ求められた金額の合算が雑所得の金額です。
雑所得は、その範囲が年末調整では計算することができないため、確定申告で精算を行い、金額を確定させる必要があります。

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年金受給者が年末調整ではなく確定申告が必要なケース

年金受給者で確定申告を行う義務がない方でも、次のようなケースでは確定申告を行うことにより源泉徴収された所得税や復興特別所得税が還付対象になる場合があります。

  1. 公的年金等の収入額の合計(2ヶ所以上から受給している場合はその合計額)が400万円を超えた場合
  2. 公的年金等を含む雑所得以外の所得の金額が20万円を超えた場合
  3. 一定の金額以上の医療費を支払った場合
  4. 住居を住宅ローンを利用して購入、あるいはリフォームをした場合
  5. 生命保険料控除地震保険料控除社会保険料控除などを受けた場合
  6. ふるさと納税などの寄付金控除を受けた場合
  7. 年の途中で退職し、再就職していない場合
  8. 災害や盗難にあった場合

よく分からない場合には、税務署などに確認しましょう。

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確定申告不要制度

年金受給者である労働者でも、確定申告が不要になる場合があります。これを「確定申告不要制度」といい、一定の要件を満たせば確定申告を行う必要がありません。これは年金受給者の負担を軽減するための制度です。

確定申告不要制度の対象になる人は、以下の1、2のいずれの要件にも該当する人です。

  • 公的年金等の収入額の合計が400万円以下であり、かつ、その全部が源泉徴収の対象である
  • 公的年金等以外の所得金額が20万円以下である

ただし、確定申告不要制度を利用することを選択した場合でも、住民税の申告は必要なため、居住する市町村に確認してください。

また、公的年金等により所得税が源泉徴収されていても、住居を住宅ローンを利用して購入した場合や、一定額以上の医療費を支払った場合には、所得税や復興特別所得税の還付を受けられる場合があります。

このようなケースについては、確定申告不要制度を利用できる場合でも還付を受けるためには確定申告を行います。

年金受給者の所得税について再度確認しておきましょう

今回は、会社勤めをしていて年金を受給している人が所得税の税額を確定させる際に年末調整だけでよいのか、確定申告も必要なのかについて見てきました。

また、確定申告が必要になる場合の「雑所得」の考え方についても説明しました。

確定申告不要制度なども参考にして、正しい所得税を納付できるように、事前に年末調整や確定申告について確認しておきましょう。

よくある質問

年金受給者の場合、年末調整で「雑所得」はどういった扱いになりますか?

雑所得は年末調整で扱う対象になっていませんので、年金受給者の雑所得については、その額が確定申告を行う条件を満たしていれば確定申告する必要があります。 詳しくはこちらをご覧ください。

年金受給者で、年末調整ではなく確定申告が必要になるケースについて教えてください

公的年金等で受けた収入の金額が400万円を超える場合や、400万円以下であっても公的年金以外の所得が20万円を超える場合には確定申告が必要になるケースがあります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:山本 務(特定社会保険労務士/AFP/2級FP技能士/日商簿記2級/第一種衛生管理者)

山本 務(特定社会保険労務士/AFP/2級FP技能士/日商簿記2級/第一種衛生管理者)
やまもと社会保険労務士事務所所長
大学卒業後、システム開発技術者、上場企業情報システム部&人事部を経て2016年に開業。
独立後も労働局の総合労働相談員として200件以上のあっせん事案に関与。労働相談は民間委託事業の電話相談も含めて1,000件以上の実績あり。
労務相談、就業規則、給与計算を中心に、各種手続きや労使問題対応など、外部人事部員として活動。システムのことも分かる社会保険労務士です。

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