• 更新日 : 2023年5月30日

年末調整と年金受給者の関係 – 確定申告が必要なケースも解説!

年末調整と年金受給者の関係 - 確定申告が必要なケースも解説!

会社勤めの方は会社で年末調整を行いますので、他に特別なことがなければ確定申告は行いません。ただし、年金を受給するようになると、年金収入は年末調整で扱わないため、確定申告が必要となるケースがあります。
今回は、年末調整と年金受給者の関係性や、確定申告が必要なケースと確定申告が不要になるケースについて解説します。

増加する「年金受給者という立場の労働者」

定年年齢の引き上げによって注目されているのが、働き続けながら年金を受給している労働者の存在です。

原則として老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は、65歳に達したときから受給が始まります。ただし、受給開始年齢が65歳に引き上げられた際に経過措置として、段階的に受給開始年齢を引き上げる特別支給の老齢厚生年金の制度が設けられたことにより、性別・生年月日に応じて65歳未満でも老齢年金が受給できる方がいます。また、繰り上げ請求を行うことにより年金を60歳から受給することも可能です。

老齢年金は、老後の生活を保障するためのものであり、勤務していた会社を定年退職した方にとっては大切な収入源です。しかし、平均寿命が延び、定年退職後も元気に働いている方は大勢います。また、年金収入だけでは将来の生活に不安を感じて、定年退職の年齢を迎えても再雇用や再就職を望む方も多くいます。

そのため、従業員が働きながら年金を受給するケースが増えています。従業員の厚生年金保険は70歳まで加入義務がある上に、高年齢者雇用安定法の改正による「70歳までの定年引上げ」「定年廃止」「70歳までの就業機会の確保」などの努力義務もあり、今後は益々働きながら年金を受給する従業員が増加していくことでしょう。

今後もさらなる増加が見込まれる「年金受給者という立場の労働者」の年末調整や確定申告はどのように行えばよいのでしょうか。詳しく解説していきます。

年末調整では扱えない年金による収入は「雑所得」

年末調整は、年調年税額(納めるべき所得税額)を算出し、すでに毎月の給与や賞与などから天引きにより徴収されている税額の合計との過不足を確認して、精算する手続きのことです。

収入の内訳が、給与・賞与のみ、つまり給与所得に限られる場合は、年末調整を行えばその年に納めるべき所得税額が確定するため、原則として確定申告を行う必要はありません。

当然、年末調整は従業員であれば、年金受給者であっても行わなければなりません。ただし、年金を受け取りながら働く従業員は、給与以外に年金収入があるため、年末調整を行うだけではなく、その後、確定申告も必要です。年金収入は給与所得ではなく、「雑所得」です。したがって、会社で行う年末調整で年金に対する税金を精算することはできません。

年末調整後源泉徴収票が交付されたら、年金を受給する従業員は、自分自身で確定申告を行わなければなりません。

確定申告をする際には、「雑所得」は「公的年金等」と「公的年金等以外」に分けて計算します。

公的年金等は以下のものが該当します。

  1. 老齢基礎年金・老齢厚生年金・退職共済年金など
  2. 恩給
  3. 確定給付企業年金・確定拠出年金(個人型・企業型)、国民年金基金・適格退職年金、一定の外国年金など

なお、障害年金・遺族年金は非課税となるため公的年金に含める必要はありません。

公的年金等以外の年金には以下のものが該当します。

  1. 生命保険契約・生命共済により受給する個人年金(財形年金貯蓄は非課税となるため除かれます)
  2. 営利を目的とした継続的な副業・副収入による所得(原稿料、講演料、デザインの報酬、シルバー人材センターの報酬など、事業所得や山林所得に該当しないもの)

「雑所得」の計算方法

雑所得の金額の計算方法は、公的年金等と公的年金等以外で異なります。
公的年金等の場合、65歳に満たない方は、年金による収入額が60万円以下の場合、全額控除の対象となり結果的に雑所得の金額は0円となります。ただし、合計所得金額によって公的年金控除額は異なります。

なお、65歳以上の場合は、ほとんどの方に老齢年金の受給が開始されるため、雑所得がかからない年金による収入額のボーダーラインが110万円(合計所得金額に応じて異なる)に引き上げられています。

具体的な計算方法は以下の通りです。

公的年金等に係る雑所得の金額 = 公的年金等の収入金額の合計額 × 割合 – 控除額

令和2年分より公的年金等の収入金額の合計額に変更があります。以下の国税庁HPの「公的年金等に係る雑所得の速算表」を利用して計算しましょう。

公的年金等の課税関係

引用:公的年金等の課税関係|国税庁

公的年金等以外の場合は、次の数式を利用して求めます。

(個人年金)

個人年金の雑所得の金額=年金による収入額 – 年金による収入額 × 支払った保険料の総額 ÷ 年金の支払総(見込)額

(業務に係る雑所得)

業務に係る雑所得の金額=総収入金額-必要経費

公的年金、個人年金、業務に係る雑所得の計算式でそれぞれ求められた金額の合算が雑所得の金額です。

雑所得は、その範囲が年末調整では計算することができないため、確定申告で精算を行い、金額を確定させる必要があります。

年金受給者が年末調整ではなく確定申告が必要なケース

年金受給者で確定申告を行う義務がない方でも、次のようなケースでは確定申告を行うことにより源泉徴収された所得税や復興特別所得税が還付対象になる場合があります。

  1. 公的年金等の収入額の合計(2ヶ所以上から受給している場合はその合計額)が400万円を超えた場合
  2. 公的年金等の雑所得以外の所得(給与所得、個人年金や業務にかかる雑所得、配当所得一時所得など)の金額が20万円を超えた場合
  3. 一定の金額以上の医療費を支払った場合
  4. 住居を住宅ローンを利用して購入、あるいはリフォームをした場合
  5. 生命保険料控除地震保険料控除社会保険料控除などを受けた場合
  6. ふるさと納税などの寄付金控除を受けた場合
  7. 年の途中で退職し、再就職していない場合
  8. 災害や盗難にあった場合

計算方法などがよくわからない場合には、税務署などに確認しましょう。

確定申告不要制度

年金受給者である労働者でも、確定申告が不要になる場合があります。これを「確定申告不要制度」といい、一定の要件を満たせば確定申告を行う必要がありません。これは年金受給者の負担を軽減するための制度です。

確定申告不要制度の対象になる方は、以下の1、2のいずれの要件にも該当する方です。

  • 公的年金等の収入額の合計が400万円以下であり、かつ、その全部が源泉徴収の対象である
  • 公的年金等以外の所得金額が20万円以下である

ただし、確定申告不要制度を利用することを選択した場合でも、住民税の申告は必要なため、居住する市町村に確認してください。

また、公的年金等により所得税が源泉徴収されていても、住居を住宅ローンを利用して購入した場合や、一定額以上の医療費を支払った場合には、所得税や復興特別所得税の還付を受けられる場合があります。

このようなケースについては、確定申告不要制度を利用できる場合でも還付を受けることができますので、確定申告を行うことをおすすめします。

年金受給者の所得税について再度確認しておきましょう

今回は、会社勤めをしていて年金を受給している方が所得税の税額を確定させる際に年末調整だけでよいのか、確定申告も必要なのかについて見てきました。

また、確定申告が必要となる場合の「雑所得」の考え方についても説明しました。

確定申告不要制度なども参考にして、正しい所得税を納付できるように、事前に年末調整や確定申告について確認しておきましょう。

よくある質問

年金受給者の場合、年末調整で「雑所得」はどういった扱いになりますか?

雑所得は年末調整で扱う対象になっていませんので、年金受給者の雑所得については、その額が確定申告を行う条件を満たしていれば確定申告する必要があります。 詳しくはこちらをご覧ください。

年金受給者で、年末調整ではなく確定申告が必要になるケースについて教えてください

公的年金等で受けた収入の金額が400万円を超える場合や、400万円以下であっても公的年金以外の所得が20万円を超える場合には確定申告が必要になるケースがあります。詳しくはこちらをご覧ください。


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