• 更新日 : 2024年12月3日

被保険者整理番号とは?健康保険・厚生年金の確認方法と必要な場合を解説

被保険者整理番号とは社会保険の加入手続きの際に発行され、登録内容を変更する際に必要となる番号です。

本記事では、自分の被保険者整理番号が不明という方や人事部の方へ被保険者整理番号についてわかりやすく解説します。被保険者整理番号が変わる場合や協会けんぽなどの保険証で確認できる被保険者整理番号についてもご紹介します。

健康保険の被保険者整理番号とは?

健康保険の被保険者整理番号とは、社会保険に加入している従業員に割り当てられる個別の番号であり、健康保険・厚生年金保険だけではなく、国民健康保険にも存在します。

以下では、社会保険の被保険者整理番号の特徴や確認方法などについて解説します。

被保険者整理番号の定義と役割

健康保険の被保険者整理番号とは、健康保険の被保険者を識別するために用いられる個別の番号です。

健康保険の被保険者整理番号の主な役割は以下の通りです。

  • 健康保険の資格取得後の各種社会保険手続きの際の識別
  • 個人の特定(治療や育児休暇、採用・退職、扶養家族の変更などに使用)
  • 各種申請時(保険者証の再交付、傷病手当の請求、出産手当の請求、高額医療費の請求、医療費の払戻請求、被扶養者の異動手続き)の使用

被保険者整理番号を設ける目的は、社会保険制度にのっとって個人を正確に識別するためのものです。適切な各種手続きや給付を行うために用いられます。

被保険者整理番号の構成と特徴

被保険者整理番号は一定の規則性を持っています。

  • 数字で構成されている
  • 数字の桁数に厳密な決まりはない
  • 被保険者が資格取得時に日本年金機構から振り出される

また、被保険者整理番号には3つの特徴があります。

  • 事業所ごとに被保険者資格を取得した順番で振り出される
  • 一度使用された番号が再利用されることはない
  • 新規加入者には直前の資格取得者の次の番号が振り出される番号が割り振られる

被保険者整理番号は、社会保険手続きにおいての適切な管理と使用に欠かせない重要な数字です。

被保険者整理番号の確認方法

健康保険の被保険者整理番号を確認する方法は、主に2つあります。

  1. 健康保険被保険者証を確認する
    (健康保険被保険者証の上部「番号」の欄に記載)
  2. 会社の人事労務担当者に確認する
    (人事労務者は従業員の健康保険被保険者整理番号を台帳などで管理していることが多い)

上記の2つ以外にも、必要に応じて管轄の年金事務所へ問い合わせることも可能です。

健康保険証における被保険者整理番号の位置

手元の保険証やコピーの上部に記載されている「番号」が、健康保険の被保険者整理番号です。また、この下部の「保険者番号」は、加入している健康保険の運営主体を識別するための番号となっています。社会保険の場合は8桁で表示されることが一般的であり、被保険者整理番号とは別物です。

厚生年金の被保険者整理番号とは?

厚生年金にも被保険者整理番号の記載があります。ここでは、厚生年金の被保険者整理番号について詳しく解説しましょう。

厚生年金における被保険者整理番号の意義

厚生年金の被保険者整理番号の意義は主に以下の5つです。

  • 個人の識別

厚生年金保険制度内で個々の被保険者を識別するために被保険者整理番号が必要

  • 厚生年金手続きの効率化

厚生年金保険に関する手続きを円滑に進めるために被保険者整理番号が用いられる

  • 事業所内での管理

事業所は従業員の厚生年金保険の被保険者整理番号によって、情報の管理がしやすくなる

  • 他の制度との区別

厚生年金保険の被保険者整理番号によって基礎年金番号との混同が防げる

  • 長期的な記録の管理

退職者の番号を再利用しないため長期的な情報の管理や後追いがしやすくなる

厚生年金の被保険者整理番号の構成

実は、厚生年金保険の被保険者整理番号は、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を年金事務所に提出することによって振り出されるため、健康保険と同じ番号になります。したがって、番号の構成も同じです。

被保険者整理番号の確認方法

厚生年金の被保険者整理番号は、年金手帳や基礎年金番号通知書には記載されていません。

厚生年金の被保険者整理番号の主な確認方法は健康保険の被保険者整理番号と同じ数字が資格取得時に振り出されるため、上記の健康保険の場合と同じ方法です。また、毎年、健康保険とともに行う標準報酬月額の定時決定で年金事務所から事業所に送付される「算定基礎届」には、被保険者ごとに番号が印字されています。

通常、従業員が自分の厚生年金の被保険者整理番号を把握していることは少ないため、必要に応じて会社に問い合わせましょう。

被保険者整理番号と基礎年金番号との違い

厚生年金の被保険者整理番号と基礎年金番号には、主に5つの違いがあります。

【管理主体と番号の目的】

  • 被保険者整理番号:事業所と日本年金機構が被保険者を管理する番号、事業所内の厚生年金保険についての手続きや管理に使用される
  • 基礎年金番号:日本年金機構が管理する国民年金の基礎年金の番号、全ての公的年金制度で使用される

【番号の使用範囲】

  • 被保険者整理番号:標準報酬月額の定時決定や随時改定の手続きの際に使用
  • 基礎年金番号:国民年金・厚生年金保険、共済組合など全ての公的年金制度で使用

【番号の確認方法】

  • 被保険者整理番号:会社の人事部や総務部に問い合わせが必要
  • 基礎年金番号:年金手帳や基礎年金番号通知書、ねんきんネットオンラインなどでの確認が可能

【番号の構成】

  • 被保険者整理番号:健康保険・厚生年金の資格取得によって所管の年金事務所によって振り出される
  • 基礎年金番号:4桁数字、ハイフン、6桁の数字で構成

例)○○○○-○○○○○○

【変更の有無】

  • 被保険者整理番号:転職すると変更される
  • 基礎年金番号:生涯にわたって変更なし

厚生年金の被保険者整理番号と基礎年金番号は、どちらも日常的に個人が使用する数字ではないため、それぞれの使用目的や具体的な数字について把握していない人は多いようです。そのため、こちらの2つの番号は、目的や使用範囲が異なるため混同しないように注意しましょう。

年金手帳と被保険者整理番号の関係

厚生年金の被保険者整理番号と混同しやすい基礎年金番号は、年金手帳とひもづいています。そのため、年金手帳と厚生年金の被保険者整理番号の違いについても混同してしまいがちです。

  • 年金手帳:日本年金機構が発行していた手帳型の小型冊子、基礎年金番号が記載
  • 厚生年金の被保険者整理番号:所属する事業所が管理するための独自の番号

なお、冊子型の年金手帳は2022年3月末に廃止され、基礎年金番号通知書に変更されています。ただし、2022年4月以前に発行されていた年金手帳は引き続き有効です。

被保険者整理番号が必要な場合や手続き

健康保険や厚生年金の被保険者整理番号は、主に各種手続きの際に必要となります。ここでは被保険者整理番号が必要な場面や手続きについて解説します。

健康保険の場合

健康保険の被保険者整理番号が必要な手続きとして、以下の7つがあります。

  • 退職関連の手続き
  • 被扶養者の異動手続き(被扶養者の追加や削除)
  • 氏名や住所変更の手続き
  • 標準報酬月額の定時決定手続き
  • 健康保険証の再発行手続き
  • 各種給付金の申請手続き
  • 事業所の合併・統合時の手続き

なお、労務担当者は、退職者を含めた被保険者整理番号を連続性を適切に管理し、手続きに応じて正確に使用することが求められます。

厚生年金の場合

先述の健康保険と被っていますが、厚生年金の被保険者整理番号が必要な手続きは、主に以下の7つです。

  • 入社関連の手続き
  • 退職関連の手続き
  • 被扶養者の異動手続き(被扶養者の追加や削除)
  • 氏名や住所変更の手続き
  • 標準報酬月額の定時決定手続き
  • 事業所の合併・統合時の手続き
  • 育児休業などの手続き

健康保険の被保険者整理番号との違いは、育児休業関連の手続きの有無です。育児休業の手続きは事業所を通して行いますが、手続きの際には厚生年金の被保険者整理番号が用いられます。

日常生活で被保険者整理番号が必要な場面

被保険者整理番号自体が、事業所と年金事務所の社会保険業務で使用されるため、通常、被保険者本人が日常生活で被保険者整理番号が必要な場面はありません。

ただし、万が一の場合に備え、事前に会社の人事部や年金事務所に問い合わせて確認しておくと安心です。

被保険者整理番号が変わるケース

先述の通り、被保険者整理番号は、退職時の被保険者資格を喪失した場合に変更されます。例えば、退職後に新たな雇用先で社会保険に加入する際、転職前と異なる別の番号が付与されるのです。

以下では、雇用先が変更となったケースと、被保険者整理番号の変更が行われるケースについて解説します。

退職した場合

退職・再就職は、被保険者整理番号が変更されるケースの一つです。健康保険・厚生年金保険の被保険者である従業員が退職すると、被保険者資格喪失届の提出によって資格喪失し、付与された整理番号は欠番となります。その後、別の会社に再就職をして健康保険・厚生年金に加入すると、新しい被保険者整理番号が付与されるのです。

結婚や改姓による番号の変更有無

結婚や改姓を理由として被保険者整理番号が変更されることはありません。2018年3月のマイナンバー制度導入前まで、結婚による姓の変更や改姓を行う際には「健康保険・厚生年金被保険者氏名変更(訂正)届」の提出が必要でしたが、制度導入後は日本年金機構への変更届の提出が原則不要となりました。

60歳以上の同日得喪の場合の被保険者整理番号の取り扱い

60歳以上の従業員が退職し、同日に再雇用される場合の被保険者整理番号の取り扱いについて解説します。

同日得喪の定義と特徴

60歳以上の被保険者が定年退職や契約更新で給与が下がる場合に、同じ日付で健康保険や厚生年金保険の資格喪失と資格取得の手続きを行うことを「同日得喪」といいます。

同日得喪のメリットは、60歳以上の被保険者の社会保険の負担を迅速に調整できる点です。定年後の再雇用や契約更新時に活用することで、収入減額に伴う社会保険料の負担額を軽くすることができます。

同日得喪時の被保険者整理番号継続使用の条件

同日得喪時の被保険者整理番号継続使用には7つの条件があります。

  • 60歳以上の被保険者が対象

60歳以上の被保険者を対象としている

  • 退職と再雇用の連続性

退職後、1日の空白もなく同一の事業所で継続して再雇用されなければならない

  • 事業主の判断

被保険者整理番号を継続使用するかどうかは、基本事業主の判断に委ねられている

  • 手続きの方法

被保険者整理番号を継続して使用する場合、資格喪失届と資格取得届の両方に同じ被保険者整理番号を記入しなくてはならない

  • 添付書類の提出

退職と再雇用を証明する書類(就業規則、退職辞令のコピー、雇用契約書のコピーなど)または事業主の証明書が必要

  • 健康保険組合への確認

健康保険組合によっては、被保険者整理番号の継続使用に関する独自の規定がある場合、事前に確認が必要

  • システム対応

社会保険手続きのシステムが、同日得喪時の被保険者整理番号継続使用に対応していなければならない

60歳以上の従業員が知っておくべき同日得喪の注意点

60歳以上の再就職や契約更新時の選択肢として活用される同日得喪には、いくつかの注意点があります。

  • 保険証の変更

同日得喪によって保険証の番号が変わるため、保険証の差し替えが必要

扶養家族がいる場合は、扶養家族の保険証も差し替えとなる

  • 健康保険の切り替え

労働時間が大幅に減少する場合は、国民健康保険や健康保険の任意継続制度への切り替えが必要となる場合がある

  • 在職老齢年金への影響

在職老齢年金を受給している場合、同日得喪によって年金額が上がる可能性がある

自分の置かれている立場と注意点を理解し、不明点がある場合は会社の人事部や年金事務所へ相談しましょう。

同日得喪における手続きの流れ

同日得喪には、主に8つの手続きが必要です。

  1. 資格喪失届の作成
    60歳以上の従業員の定年退職や契約更新に伴い、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を作成
    喪失日は退職日の翌日(再雇用開始日)を設定する
  2. 資格喪失届の提出
    作成した資格喪失届を年金事務所に提出する、電子申請の場合は、システムを通じて送信する
  3. 従業員情報の更新
    再雇用に伴う労働条件の変更を従業員情報に反映させる
    給与、勤務時間などの変更点を更新する
  4. 資格取得届の作成
    「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を作成する
    取得日は喪失日と同じ日付(再雇用開始日)を設定する
  5. 資格取得届の提出
    作成した資格取得届を年金事務所に提出する
    電子申請の場合は、システムを通じて送信する
  6. 添付書類の準備と提出
    退職と再雇用を証明する書類(就業規則や退職辞令の写し、再雇用の雇用契約書など)を添付する
    これらの書類がない場合は、事業主の証明書の作成が必要
  7. 保険証の差し替え
    新しい保険証が発行されたら、従業員に配布し、旧保険証と交換する
  8. 被扶養者がいる場合の手続き
    被扶養者がいる場合は、「被扶養者(異動)届」を提出する

これらの手続きを行うことで、60歳以上の従業員は再雇用された月から新しい給料に応じた標準報酬月額が適用されます。

被保険者整理番号は社会保険手続きで必要な数字

健康保険の被保険者整理番号、厚生年金の被保険者整理番号はいずれも被保険者資格を取得後の手続きにおいて必要となる大切な数字です。

通常、被保険者本人が使用することはありませんが、事業所が各種の社会保険手続きをする際、申請書などの種類に記載が求められます。事業所の人事・総務の担当者は、大切な従業員の保険にかかわる重要な情報として正しく理解しておきましょう。


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