• 更新日 : 2023年11月6日

ダブルワークの年末調整はどうする?パートやアルバイトで年末調整の対象となる人

ダブルワークの年末調整はどうする?パートやアルバイトで年末調整の対象となる人

年末に会社員や公務員の方が必ず行う手続きといえば「年末調整」です。なんとなく正社員が対象というイメージを持たれがちですが、年末調整はパートやアルバイトといった人々も対象となります。

ここでは、パートやアルバイトが年末調整の対象となる場合とならない場合の条件を解説するとともに、ダブルワークの確定申告についても説明します。

パートやアルバイトでも年末調整する必要がある?

パートやアルバイトで働く人々も、原則として年末調整の対象になります。

そもそも年末調整とは、会社が給与支払いをする従業員を対象に、給与から源泉徴収している所得税額を精算するために行うものです。会社は、年末調整で1年間の所得を計算し、各種所得控除を適用して所得税を算出し、源泉徴収している分の差額を、還付もしくは徴収します。

年末調整ときくと、「正社員を対象としたもの」というイメージがあるかもしれませんが、給与として賃金が支払われているパートやアルバイトも、月々の給与から源泉徴収されていることには変わりありません。そのため、原則的には、年末調整の対象に含まれると考えます。

パートやアルバイトで年末調整の対象になる人は?

パートやアルバイトは「原則的に」年末調整の対象となると説明しました。「原則的に」ということは、条件によって年末調整の対象になる場合とならない場合があるということです。以下では、年末調整の対象となるパート・アルバイトの条件とならない場合のケースについて解説します。

年末調整の対象になるには「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出が必要

年末調整は、従業員が提出した必要書類をもとに会社が従業員に代わって1年間の正確な所得税を計算し、国に納付するものです。会社は、所得税法に基づき、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(以下、扶養控除等申告書)を提出した従業員に対して、年末調整を行います。したがって、この申告書を勤務先に提出していないパート・アルバイトに対しては、会社は年末調整の対象とすることはできません。

また、年末調整はその名の通り年末の12月に行うものです。そのため、上記申告書を提出している前提として、「1年を通じて勤務している従業員」を対象とする条件があります。それ以外に、年の途中で退職した場合など、以下のいずれかの条件に当てはまる場合は年末調整の対象になります。

【年末調整の対象となる人】

  1. 1年を通じて勤務している人
  2. 年の途中から入社して、年末まで勤務している従業員
  3. 著しい心身の障害を理由に年の途中で退職した人で、年内の再就職が見込まれない人
  4. 年の途中で退職したアルバイト、パートなどの人で、本年の年収が103万円以下の人
  5. 海外転勤などで非居住者となった人

参考:No.2665 年末調整の対象となる人|国税庁

年末調整の対象とならないパート・アルバイトとは

以下の条件に当てはまるパート・アルバイトは、年末調整の対象となりません。

  1. 本年中の主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人
  2. 災害減免法の規定に基づいて、所得税などの源泉徴収の納税猶予や還付を受けている人
  3. 2か所以上から給与の支払いを受けており、他の勤務先に扶養控除等申告書を提出している人
  4. 年の中途で退職した人(年末調整の対象となる人に該当しない場合)
  5. 非居住者
  6. 年末調整を行う時期までに、勤務先に扶養控除申告書を提出していない人
  7. 継続して同一の雇用主に雇用されない日雇労働者など

参考:令和5年度版 源泉徴収のしかた|国税庁

年収103万円以下のパート・アルバイトの年末調整は?

パートやアルバイトで働いている人は、「年収103万円以下なら税金がとられない」という話を耳にしたことがあるでしょう。これは、基礎控除給与所得控除の関係から、給与所得が103万円以下の場合、所得税額がゼロとなることを意味します。

といっても、単純に「年収103万円以下だから」という基準で、月々の給与から所得税が引かれないわけではありません。また、年収103万円以下のパート・アルバイトが、自動的に年末調整の対象から外れるということとも違います。

毎月の給与から天引きされる所得税を源泉所得税といい、この源泉所得税は、源泉所得税額表に照らし合わせて概算額を算出します。上述の扶養控除等申告書を提出した従業員は、その月の社会保険料等を控除した金額が8万8,000円未満である場合に源泉所得税が0円となり、給与から天引きされる所得税がありません。

もし、年間の収入が103万円以下であっても、給与が8万8,000円以上の月があれば、その月は源泉所得税が引かれます。ただ1年間の合計では本来の所得税額はゼロですので、年末調整を行ったあと、源泉所得税は全額還付されます。これが、「年収103万円以下なら税金がとられない」仕組みです。

注意しなければならないのは、扶養控除等申告書を提出した従業員で、上述の年末調整の対象となる人の条件に合致する場合は、年収額に限らず年末調整の対象となる点です。年収103万円以下であっても、毎月の給与が8万8,000円未満で源泉所得税がゼロのパート・アルバイトであっても、扶養控除等申告書を提出していれば年末調整を行い、源泉徴収票を交付する義務が企業にはあります。

よって、パート・アルバイトで働く人は、年収103万円という基準が年末調整の対象条件になるのではなく、扶養控除等申告書の提出の有無が大前提となる点を覚えておきましょう。

ダブルワークのパート・アルバイトの年末調整

仮に複数の勤務先を持つパートやアルバイトであっても、年末調整の対象となるのは、いずれか1か所の勤務先のみです。

なぜかというと、扶養控除等申告書は1つの勤務先にしか提出できないからです。複数の勤務先において年末調整を行うと、控除が重複してしまい、適正な課税額が計算できなくなってしまいます。

ダブルワークに該当する場合の年末調整は、一般的に給与支払額の多い方の勤務先で行います。そのため、勤務先を複数持つ場合には、給与額の多い勤務先を「本業」とすることで、扶養控除等申告書を提出し、そこで年末調整を行います。

ダブルワークで確定申告が必要な場合

扶養控除等申告書の提出を受けた勤務先は「本業」として扱われ、それ以外の勤務先は「副業」として扱われます。副業に該当する部分の所得について、合計金額が20万円を超えるのであれば、別途確定申告が必要となります。

副業所得が20万円を超えているにもかかわらず、確定申告を行わない場合には、ペナルティとして無申告加算税が課される恐れがあります。また、延滞税が発生する可能性もあるため、注意が必要です。

ただし、次のいずれにも当てはまる場合は、副業分の確定申告は必要ありません。

  1. 給与収入の金額の合計から、雑損控除医療費控除寄付金控除、基礎控除以外の各種所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下
  2. 給与所得および退職所得以外の所得金額が20万円以下

また、「副業」にあたる収入が、フリーランスと呼ばれるような働き方で個人で得る事業所得に該当する場合には、確定申告の基準となる20万円は、諸経費を差し引いた額で考えます。

年末調整の手続きに必要な書類

会社は一般的に12月の給与の支払いに合わせて年末調整を実施します。12月分の給与計算に間に合わせる必要性から、毎年11月下旬には年末調整の準備をはじめます。

勤務先から「給与所得者の保険料控除申告書」「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」と「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が配布されますので、必要事項を記入したら、12月初めころには会社にこれらの書類を提出しなければなりません。

「給与所得者の保険料控除申告書」

年末調整において、保険料控除を受ける際に必要な書類です。
生命保険や地震保険に加入している場合は、この用紙に必要事項を記入して証明書類を添付することで保険料控除が受けられます。

令和5年分 給与所得者の保険料控除申告書

引用:令和5年分 給与所得者の保険料控除申告書|国税庁

「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」

年末調整で、基礎控除や配偶者(特別)控除、所得金額調整控除を受けるために必要な書類です。

配偶者の所得が給与所得のみで、所得金額48万円超133万円以下の場合は、この用紙に必要事項を記入することで配偶者特別控除が受けられます。

令和5年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書

引用:令和5年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書|国税庁

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」

次の年の給与所得について扶養控除や障害者控除などを受けるために必要な書類です。扶養家族がいなくても提出する必要があります。

令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

引用:令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書|国税庁

副業の収入は確定申告する

ダブルワークをしている場合、本業の給与で年末調整をしても副業の給与収入は所得税の計算に正確に反映されません。副業の給与収入がある場合には、本業の給与と合計した給与収入を確定申告をすることによって、所得税を正しく計算し直す必要があります。

源泉徴収票は確定申告まで保存する

確定申告をするためには副業の源泉徴収票だけでなく、本業の源泉徴収票も必要になるので、確定申告のときまで保存しておきましょう。

確定申告の方法

確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの所得とそれに応じた税額を計算するものです。

申告書は自分で作成するか、税理士に作成を依頼することになります。税理士に依頼すると報酬の支払いが発生するので、費用をかけたくない場合は自分で作成するのがおすすめです。なお、たとえ無償であっても、税理士資格のない人が他人の申告書を作成してはならないので注意しましょう。

自分で作成とはいうものの、知識がなければ申告書を作成するのは難しいでしょう。そこで、国税庁ではインターネットで申告書が作成できる「確定申告書等作成コーナー」を設けています。画面の案内に従って金額等を入力すると、申告書が作成され、税額も自動計算されます。

それでも難しい場合は、確定申告の期間中に税務署や市町村役場などに相談窓口が設けられるので、職員に相談しながら作成することもできます。
計算した税額が源泉徴収された税額より多ければ、不足している分を確定申告の期限までに納付しましょう。源泉徴収された税額より少なければ、納めすぎた分が還付されます。

確定申告の期日は翌年の2月16日から3月15日までです。期限が土曜日や日曜日で税務署の閉庁日となる場合は、次の開庁日まで期限が延長されます。なお、税額が還付される場合は、翌年の1月1日から5年の間に申告すればよいことになっています。

ダブルワークで年末調整の対象にならない副業は確定申告を

パートやアルバイトといった働き方に関わらず、扶養控除等申告書を提出した勤務先の給与所得は、年末調整の対象となります。年末調整の必要書類について勤務先からお知らせがあった場合は、期日までに提出しないと、本来受けられるはずの所得税の還付を逃してしまう可能性がありますので、忘れずに提出しましょう。

もし、自分が扶養控除等申告書を提出しているかどうか、年末調整の扱いについて不明確な点がある場合は、勤務先に確認してみるとよいでしょう。

また、年末調整の対象にならない「副業」先での給与が20万円を超える場合は確定申告を行わなければなりません。なにかと難しいイメージがつきまとう確定申告ですが、税金を正しく納めるほか、自身の所得税額を精算する意味でも重要となる手続きです。確定申告の必要がある人は、この記事で説明した方法を参考に、期日までに申告しましょう。

よくある質問

パートやアルバイトでも年末調整は必要ですか?

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を勤務先に提出しており、1年を通じて働いている場合は年末調整の対象になります。年収103万円以下のパート・アルバイトでも年末調整が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。

パートやアルバイトで年末調整の対象になる人を教えてください

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を勤務先に提出し、1年を通じて勤務している人、12月の給与が支給されるまで勤務して退職した人、途中で退職した人で、本年の年収が103万円以下の人などが該当します。詳しくはこちらをご覧ください。


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