• 更新日 : 2022年10月18日

労働基準法違反に注意!罰則や責任について解説!

労働基準法違反に注意!罰則や責任について解説!

労働基準法は、罰金や懲役などの刑事罰が適用される可能性がある法律です。特に残業代の未払いなどがあると、労働基準監督署からの行政指導のほか、裁判で訴えられるなどの訴訟リスクも抱えることになります。

この記事では、どのようにして労働基準法違反が発覚するのか、労働基準法にはどのような罰則があるのかについて解説します。

労働基準法を守ることは義務?

労働基準法は労働条件の原則や最低基準を定めた最も基本的なルールであり、この法律を守ることは、企業の義務であり責任でもあります。労働基準法は強制法規であり、知らなかったでは済まされません。労働基準法に違反する労働条件を定めたとしても、労働基準法に反する労働条件は無効となり、労働基準法に定める基準に引き上げられます。

また、労働基準法における「使用者」とは、会社経営者だけではなく、経営担当者のほか、管理職など企業のために行為をするすべての者を指します。したがって、「使用者」の立場にある従業員が労働基準法に違反する行為をすれば、違反をした者ばかりか事業主(代表者)まで罰則を受ける可能性もあるのです。

労働基準法を守ることは企業の義務であり、労使のトラブルを回避し、企業を発展させるためにも、企業全体で違反がないように取り組む責任があります。もしも労働基準法に反するような行為があれば、企業として事業の継続が困難になることもあり得ます。法律違反が認められた場合には労働基準監督署による是正指導を受けるばかりか、刑事責任を追及されたり、従業員から損害賠償を請求をされたりすることもあるのです。

労働基準法違反があれば、従業員の信頼を損なうばかりか、対外的な信用を失い、企業経営に支障をきたすこともあります。経営者や人事労務担当者などの企業経営に携わる者は、労働基準法をよく理解し、自社の信用を高めることが大切です。

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労働基準法に違反するとは?

労働基準法第1条(労働条件の原則)において、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきもの」でなければならず、「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない」と規定されています。

引用:労働基準法|e-Gov法令検索

つまり、労働基準法に定められていることは、最低限度のもので、たとえ会社が就業規則等で独自のルールや労働条件を定めていたとしても、その規定は労働基準法で定める基準を下回ることができないということです。

労働基準法を守らない会社には、労働基準法違反に対する罰則が与えられる可能性があります。そして、ひとたび労働基準法の違反が認められれば、罰則が適用されないまでも、労働基準監督署から是正を指導されることになります。これが、労働基準法に違反するという意味です。

そして特に注意すべきは、労働基準法では、実質的な権限をもって違反行為を行った者(行為者)のみならず、その違反行為が会社(事業主)のためにしたものであれば、その事業主(個人事業主の場合は事業主個人、法人企業の場合は法人)に対しても罰金刑を科すこととしている点です(労働基準法第121条)。これを両罰規定といい、法違反があれば、行為者である従業員ばかりでなく、事業主も罰せられることになります。なお、事業主が違反の計画を知り、その防止や是正に必要な措置をとらず、あるいは違反をそそのかした場合は、事業主も行為者として罰せられます。

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労働基準法違反した場合の罰則 その1

労働基準法に違反した場合、どのような罰則が科されるのでしょうか。

労働基準法第37条第1項は、次のように規定されています。

使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない

引用:労働基準法|e-Gov法令検索

要約すると、労働基準法上の時間外労働や休日労働に対しては、「通常の労働時間または労働日の賃金の2割5分以上5割以下の範囲内(60時間を超えた場合、その超えた部分の労働に対しては5割以上)」で、「政令の定める率以上の率で計算した割増賃金」を支払わなければならないとされています。

この労働基準法第37条に違反すると、労働基準法第119条の規定により、「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」に処せられる可能性があります。

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労働基準法違反した場合の罰則 その2

労働基準法に定められる中で最も重い罰則が定められているのは、第5条「強制労働の禁止」です。

労働基準法5条では、以下のように定められています。

使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない

引用:労働基準法|e-Gov法令検索

これは、かつてみられた、宿舎の出入り口に鍵をかけ強制的に重労働を課すという「タコ部屋労働」などの封建的な悪習を排除しようとした規定です。

労働基準法第5条に違反すると、労働基準法第117条の規定により、「1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金」に処せられます。

労基法に違反した場合の主な罰則をまとめると下記のようになります。

労基法違反の内容罰則
強制労働の禁止1年以上10年以下の懲役
または20万円以上300万円以下の罰金
中間搾取の排除 最低年齢 坑内労働の禁止1年以下の懲役
または50万円以下の罰金
均等待遇 男女同一賃金の原則 公民権行使の保障 賠償予定の禁止 前借金相殺の禁止 強制貯金 解雇制限 解雇の予告 労働時間 休憩 休日 割増賃金 年次有給休暇 年少者の深夜業 年少者・妊産婦等にかかる危険有害業務の就業制限 産前産後 育児時間 療養補償 休業補償 障害補償 遺族補償 葬祭料 寄宿舎の設備および安全衛生 など6カ月以下の懲役
または30万円以下の罰金
契約期間 労働条件の明示 貯蓄金の返還命令 退職時の証明 金品の返還 賃金の支払い 非常時払い 休業手当 出来高払制の保障給 変形労働時間制協定の届け出 みなし労働時間制・裁量労働時間制協定の届け出 年5日の年次有給休暇取得義務 年少者の証明書 未成年者の労働契約 帰郷旅費 生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置 就業規則の作成および届け出の義務 制裁規定の制限 法令等の周知義務 労働者名簿 賃金台帳 記録の保存 など30万円以下の罰金

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労働基準法に違反した場合、逮捕されることはある?

労働基準法に違反した場合には、逮捕されることもあるのでしょうか。

労働基準法102条には、以下のような規定があります。

労働基準監督官は、この法律違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う

引用:労働基準法|e-Gov法令検索

労働基準監督署は単なる役所ではありません。労働基準監督官には司法警察官としての職務を行う役割もあり、重大で悪質な事案では、違反した事業主に対して、捜索・差押えや逮捕などの強制捜査を行い、逮捕する権限があることも知っておいたほうがよいでしょう。

労働基準法違反が認められた場合には、労働基準監督官から是正指導を受けるのが一般的です。通常の場合、そこで法違反の是正に取り組んで改善を図れば問題ありません。また、法律違反があったからといって、よほど重大な事案でない限り直ちに逮捕されるということはないでしょう。しかし、度重なる指導があったにもかかわらず法律違反の是正を行わないでいると、悪質なものと判断されかねません。刑事事件として送検されれば、懲役や罰金などの刑事罰が適用される可能性があります。

また、各都道府県労働局では労働基準法違反に係る事案を公表しています。企業名が公表されることは、風評リスクにもつながり、事業継続が危ぶまれるほどの大問題です。労働基準法違反には真摯に向き合い、労働基準監督署から指導があった場合には、直ちに改善を図るようにしましょう。

労働基準法違反はどのようなときに発覚する?

労働基準法違反が発覚するのはどういったときでしょうか。

多くの場合、労働者が、管轄労働基準監督署に通報(申告)したり、都道府県労働局や管轄労働基準監督署の総合労働相談コーナーに相談に行ったことがきっかけで労働基準法違反が発覚します。もちろんそれ以外にも、会社内で労働者から会社の労働基準法違反を指摘されて発覚する場合もあります。

労働者が管轄労働基準監督署に通報(申告)した場合、労働基準監督官が会社への立ち入り調査(いわゆる「臨検」と言われます。)を行います。実際に調査した結果、法違反を指摘されるようなことがあれば、労働基準監督官は、会社の現況への是正のための勧告や改善に関する指導など、労働基準法違反を是正するための行政指導をします。多くの場合、文書によってこの指導が行われ、会社側が指導の内容を把握し、状況に改善がみられるまで指導が続きます。

労働基準法違反といわれないために

これまでみてきたように、労働基準法に違反するということは懲役刑が科される可能性もある大変な問題です。特に賃金に関する労働基準法違反などは、労使トラブルに発展する可能性があり、注意が必要となるでしょう。

企業の責任として、日ごろから労働基準法違反が発生していないかどうか、しっかりとチェックすることが大切です。その際には、労働基準法チェックリストを活用したり、外部の専門家(労働法に詳しい社会保険労務士や弁護士等)に相談することで、より正確な判断に近づくでしょう。

よくある質問

労働基準法に違反した場合の主な罰則について教えてください。

労働基準法に定められた違反の内容によって罰則の種類は異なります。法違反が適用されるものの中で多いものとして、「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」や「30万円以下の罰金」などがあげられます。詳しくはこちらをご覧ください。

労働基準法に違反した場合、逮捕されることはありますか?

労働基準監督官は、司法警察官としての職務も行います。したがって、労働基準法の違反が重大で悪質な場合には、違反した事業主に対して、捜索・差押えなどの強制捜査を行い、逮捕することもあります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:加治 直樹(経営労務コンサルタント)

銀行に20年以上勤務し、融資融資から資産運用、年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。中小企業の決算書の財務内容のアドバイス、資金調達における銀行対応までできるコンサルタント。退職後、かじ社会保険労務士事務所として独立。現在は行政で企業及び労働者の労働相談業務を行いながら、セミナー講師など幅広く活動中。

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