• 更新日 : 2024年7月5日

人事労務とは?仕事内容・法律・資格の違い、向いている人を解説

人事労務とは、従業員に関する業務全般のことです。業務内容は、人事と労務に大別されます。労働関係法に基づいて業務を行い、正確性や迅速性も必要です。

本記事では、人事と労務の違いや仕事内容、関連する法律・資格について解説します。人事や労務に向いている人の特徴や業務を効率化する方法も紹介しますので、自分の仕事に役立ててください。

人事労務とは?

人事労務とは、従業員に関する業務全般のことです。業務内容は、人事と労務に大別されます。人事と労務の違いについて解説します。また、業務内容が紛らわしい総務との違いも確認しておきましょう。

人事と労務の違い

人事と労務はどちらも従業員に関する業務ですが、業務内容は異なります。人事は主に人材の採用や育成、活用に関する業務を行うのに対し、労務は給与の支払いや職場環境の整備など従業員が安心して働けるように労働環境を整えることが業務の中心です。

考えてもよいでしょう。

労務と総務の違い

労務と総務は、社内の業務を支え企業活動を円滑に進めるためのバックオフィスとして幅広い業務を担当しています。ただし、労務の対象は従業員に限定されるのに対して、総務の対象は施設や備品、社外の関係者など、広い範囲に及びます。

総務の主な業務内容は以下の通りです。

  • 会社施設や備品の管理
  • 来客や入電に対する初期対応
  • 社内の行事や施策の運営 など

人事の仕事内容、法律、資格

人事の業務について、具体的な仕事内容や関連する法律、役立つ資格などについて解説します。

人事の仕事内容

人事の主な業務内容は以下の通りです。

  • 人材の採用と育成
  • 人材の配置
  • 人事評価 など

人事の目的は、組織を支える「人材」として従業員を管理し活用することです。優秀な人材を採用して企業戦略に沿って育成し、適材適所に配置して戦力化を図ります。

また、従業員のモチベーションを高め成長を促すために、公平で納得感のある人事評価をすることも重要な仕事です。企業の人材戦略を支える役割を担っています。

人事に関連する法律

人事と労務に関連する法律は基本的に共通していますが、ここでは特に人事担当者に関連する法律を紹介します。人事に関連する法律は、採用に関するものや働き方に関するものが代表的です。

女性や障害者、高年齢者など就職に不利な労働者を守るため、企業に採用や雇用確保を義務づける以下の法律が設けられています。法律に抵触しないように要員計画を立てるとともに、人材のダイバーシティー化も検討してみましょう。()内は、主な目的です。

  • 男女雇用機会均等法(性別による差別の禁止)
  • 障害者雇用促進法(法定雇用率の遵守)
  • 高年齢者雇用安定法(65歳までの雇用確保と70歳までの就業機会の確保)

パート社員や派遣社員を活用する場合、以下の法律について理解が必要です。正社員だけでなく多様な働き方を希望する人材も増えています。

  • パートタイム・有期雇用労働法(パート社員や契約社員の権利保護)
  • 労働者派遣法(派遣社員の権利保護)

また、労働関係の法律全般についても関心を持ちましょう。時間外労働(残業)の上限規制(労働基準法の改正)が設けられて人員配置の見直しが必要になるなど、法改正への対応が求められることもあります。

人事に関する資格

人事に関する主な資格は以下の通りです。

  • キャリアコンサルタント
  • コーチング検定
  • ビジネスキャリア検定

キャリアコンサルタントの仕事は、従業員がキャリア形成を考えるときに相談・助言を行うことです。コーチングとはコミュニケーションスキルの1つで、個別面談などで従業員の本音を聞き出すのに役立ちます。

ビジネスキャリア検定にはさまざまな試験分野がありますが、「人事・人材開発・労務管理」を学べば、人事全般や人材開発の基礎知識が身につきます。

労務の仕事内容、法律、資格

労務の業務について、具体的な仕事内容や関連する法律、役立つ資格などについて解説します。

労務の仕事内容

労務の主な業務内容は以下の通りです。

  • 勤怠管理
  • 給与計算や社会保険手続き
  • 従業員の健康管理や安全衛生管理 など

勤怠管理には、長時間労働の是正や有給休暇の取得推進などの業務が含まれます。給与計算では、所得税・社会保険料の計算や年末調整などの業務も必要です。

健康管理や安全衛生管理については、健康診断・ストレスチェックの実施、労災防止対策、職場環境の整備、安全委員会の開催など業務内容が多岐にわたります。

労務に関連する法律

労務に関しては、労働者の権利や健康、安全・衛生を守るために以下の法律があります。

  • 労働基準法(労働条件の最低基準)
  • 労働安全衛生法(労災防止に向けた安全と衛生の最低基準)
  • 労災保険法(労災の被害者救済)

また、社会保険関連や従業員の雇用安定に向けた以下の法律があります。

  • 健康保険法
  • 厚生年金保険
  • 雇用保険法(再就職の支援と雇用の安定)
  • 育児・介護休業法(育児や介護と仕事の両立)

労務に関する資格

労務に関する主な資格は以下の通りです。

  • 社会保険労務士
  • 衛生管理者
  • メンタルヘルス・マネジメント検定

社会保険労務士は、労働基準法や社会保険全般の専門家です。労使関係のさまざまな問題の解決や社会保険手続きに役立ちます。また、衛生管理者やメンタルヘルス・マネジメント検定の知識は、従業員の健康管理や職場の安全衛生に必要です。

人事に向いている人の特徴

人事に向いている人の主な特徴は以下の通りです。

  • コミュニケーション力が高い
  • 観察力がある
  • 経営者としての視点を持つ

採用活動や人材育成研修、人事面接など、人事では採用候補者や従業員など人と関わる機会が多いため、高いコミュニケーション力が必要です。人材を正しく評価し適材適所に配属するために観察力も求められます。

また、企業経営にとって人事戦略は重要な役割を持つため、経営方針に沿った人材の育成と活用ができる人は人事に向いています。なお、人事も労務も個人情報を取り扱うことから、秘密を厳守できることが必須です。

労務に向いている人の特徴

労務に向いている人の主な特徴は以下の通りです。

  • 事務能力が高い
  • 労働関係法に関する知識がある
  • 問題解決能力がある

給与計算や社会保険手続きなど、労務の業務は正確性が求められます。締切厳守の仕事も多いことから、高い事務能力が必要です。労働関係法に基づいて処理すべき業務が中心となるため、法律に詳しい人も労務に向いていると言えるでしょう。

また、従業員全員の給与支給や健康管理、すべての職場の環境整備など業務内容が多岐にわたるため、日常的にさまざまトラブルが発生します。臨機応変に対応して業務を遂行することが求められます。

人事労務の業務を効率化する方法

人事労務の業務は多岐にわたり、正確性や迅速性が求められます。しかし、勤怠管理や給与計算の業務では、全従業員について勤務状況など大量のデータ入力作業が発生し、役職や職務などに応じて煩雑な処理が必要です。

業務負担とミスを減らすために業務を効率化する方法を紹介します。

労務管理システムや給与計算システムを導入する

人事労務の業務を効率化するには、労務管理システムや給与システムの導入が効果的です。

労務管理システムとは、出社時間や退社時間などを自動的に集計して管理するシステムです。従業員がパソコンやスマホで入退社時間を入力したりICカードを読み取ったりして、勤怠を管理します。タイムカードを手作業で転記するより、作業時間や入力ミスを大幅に削減できます。

給与計算システムとは、従業員の勤務状況を入力すると税金や社会保険料などを自動的に計算してくれるシステムです。システムによっては、給与明細の作成や給与口座への振込まで可能です。システムを適切に更新すれば、税金や社会保険に関する法改正にも対応できます。

労務管理システムと給与計算システムを連動させれば、1つのシステムで労務管理と給与計算が完結し、データの管理も簡略化できます。

人事・労務に役立つ無料テンプレート

人事労務の業務では、さまざまな様式の文章を使用します。給与明細や休暇の申請書、出勤簿、賃金台帳など、100種類以上の様式が必要になるケースも考えられます。

すべてを自社で作成するのは負担が大きいため、テンプレート(定型文または雛形)の活用がおすすめです。たとえば、マネーフォワード・クラウド給与では「人事・労務のテンプレート集」をインターネットで提供しています。テンプレートは無料でダウンロードできます。

人事労務の業務を理解して組織の活性化を図りましょう

人事は主に人材の採用や育成、活用に関する業務を行い、労務では従業員の勤怠管理や給与計算、労働環境の整備をします。人事労務の業務を行うには、高い事務能力と法律知識が必要です。
人事労務の業務が従業員を育て安心して働ける環境を提供することで、従業員が能力を発揮し組織が活性化することが期待できます。本記事を参考に、業務に役立つ資格やスキルの取得を目指しましょう。


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