• 更新日 : 2024年10月22日

共働き世帯の子供はどちらの扶養に入れるのがお得?扶養制度を利用するコツを解説

共働きで子どもを育てている家庭は珍しくありません。しかし、そのような場合には、どちらの扶養に子どもを入れることが正解なのでしょうか。また、その判断基準はどこにあるのでしょう。

当記事では、共働き世帯における扶養について解説します。制度を活用して節税を行いたいと考える方は、ぜひ参考としてください。

扶養とは

扶養とは、自ら生計を立てることができない親族などを経済的に援助することを指します。収入がない、もしくは少ない者を対象として、自身の収入で養うことを意味し、扶養する側を「扶養者」、扶養される側を「扶養親族」や「被扶養者」と呼びます。

制度としての扶養には、「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2種類が存在します。それぞれについて見ていきましょう。

税法上の扶養

税法上の扶養親族として扶養控除の対象とされるためには、16歳以上でかつ以下の要件を満たすことが必要です。また、要件はその年の12月31日時点において満たしていなければなりません。

  • 配偶者を除く親族※または、都道府県の知事から養育の委託をされている児童や、市町村長から養護の委託をされている老人であること※6親等以内である血族および3親等以内である姻族
  • 納税者である本人と生計を一にしていること
  • 年間における所得金額の合計が48万円以下であること(給与のみの場合であれば、給与収入103万円以下)
  • 青色申告者が営む事業の専従者として、その年を通じ、一度も給与支払いを受けていないこと、または白色申告者の営む事業の専従者でないこと

税法上、配偶者については「配偶者(特別)控除」の対象となるため、扶養控除の対象となる扶養親族とは区別されています。

社会保険上の扶養

社会保険上の扶養に該当すれば、自ら保険料を負担することなく、健康保険の給付を受けられます。社会保険上の扶養の対象として被扶養者となるためには、原則として日本国内に住所を有し、かつ以下の要件を満たさなければなりません。

  1. 被保険者の直系尊属(両親や祖父母等)、配偶者(事実婚状態の者を含む)、子、孫、および兄弟姉妹
  2. 被保険者の3親等以内の親族に該当する被保険者と同一の世帯に属している者(1に該当する者を除く)
  3. 被保険者の事実婚の配偶者の父母および子であって、被保険者と同一の世帯に属する者
  4. 3の配偶者の死後における被保険者と同一の世帯に属するその父母および子

上記の1〜4全てにおいて、主として被保険者によって、生計を維持されている必要があります。生計維持の判断は、認定の対象となる者が同一世帯か否かで基準が異なるため、注意が必要です。

同一世帯の場合であれば、認定の対象となる者の年間収入が130万円未満であって、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合に要件を満たすとされます。また、認定対象者が、同一の世帯に属していない場合であれば、年間収入が130万円未満であって、かつ被保険者の援助による収入より少なければ要件を満たすとされます。

なお、認定の対象者が60歳以上、または一定の障害者である場合は、130万円未満を180万円未満に読み替える必要があります。

社会保険上の扶養は、共働き夫婦のどちらに入れるか選べない

社会保険上の扶養の場合には、共働き夫婦のどちらの扶養に子どもを入れるか自由に決めることができません。詳しく見ていきましょう。

2021年に共働き夫婦の被扶養者認定基準が明確化

2021年8月より、社会保険上の扶養における共働き夫婦の被扶養者認定の基準が変更されました。夫婦間で収入の差がない場合や、年度ごとの収入が異なる場合には、どちらの扶養に入るかが頻繁に変更され、子どもが無保険になる恐れがあったためです。

基本は年収が多い方が扶養する

基準変更の前後を問わず、年間収入の多いほうが扶養することに変わりありません。ただし、2021年7月までは、前年度の年間収入に基づいて扶養者を判断していました。しかし、2021年8月以降は、過去や現時点、将来の収入などに基づいて、今後1年間の収入を見込んだ額を年間収入として扶養者を判断することになっています。

収入の差が1割以内なら主として生計を維持している方が扶養する

2021年7月までは、夫婦の収入が同程度であれば、主として生計を維持するほうを扶養者としていました。しかし、2021年8月以降は、「年間における収入が多くなる親の年収の額」に対する「夫婦間における年間の収入の差額」の比率に応じて、以下のように判断されます。

差が1割以内:主として生計を維持しているほうの親が扶養者

差が1割超:年間における収入が多い親が扶養者

たとえば、夫の年収が500万円で、妻の年収が440万円であれば、差額は夫の年収の1割である50万を超える60万円のため、年収の多い夫が扶養者となります。一方、夫の年収が450万円で妻の年収は440万円だった場合、年収の差は1割以内です。この場合、年収が多いのは夫ですが、妻が主として生計を維持する親であれば、届出により妻が扶養者となります。

片方が国民健康保険の場合も年収が多い方が扶養する

働き方の多様化が進んだ昨今では、夫婦の一方が自営業やフリーランスとして国民健康保険に加入している場合もあります。そのような場合には、被用者保険(健康保険)の被保険者については年間収入、国民健康保険の被保険者は、直近年間所得で見込んだ年間収入を用いることで判断するとされています。比較の結果として、夫婦いずれかの年間収入が多いほうを主として生計を維持する者とするわけです。

税法上の扶養は、共働き夫婦のどちらに入れるか選べる

税法上の扶養は、社会保険上の扶養と異なり、夫婦のいずれの扶養に子どもを入れるかを自由に選択可能です。この点は大きな違いであるため、社会保険上の扶養と混同せず、しっかりと区別することが必要です。

社会保険上の扶養とは違う扶養者も選択可能

税法上の扶養においては、社会保険上の扶養と異なった扶養者を選択することも可能です。たとえば、社会保険上の扶養では夫を扶養者とする一方で、税法上の扶養では妻を扶養者とすることも可能となります。

また、複数の子どもがいる場合には、子どもごとに異なった扶養者とすることも問題ありません。そのため、長男は夫、長女は妻の扶養に入れるということも税法上の扶養であれば可能です。

同程度の収入であれば所得が高い方の被扶養者にしたほうがお得

税法上の扶養は、誰を扶養者とするかについて自由度が高くなっています。しかし、夫婦間で収入に差がないのであれば、所得が高い側の扶養に入れたほうがお得です。これは、所得税が所得金額に応じて、税率が高くなる累進課税制度を取っているためです。控除額が同じであっても、税率の高い側のほうが減額の恩恵が大きくなります。

共働きの夫婦が扶養制度を利用する際のポイント

扶養制度は、正しく理解したうえで利用しなければ、制度の恩恵を最大限享受することは叶いません。扶養制度を利用する際に押さえるべきポイントを解説します。

扶養手当と税金の控除額を比較する

扶養制度を利用する際には、夫婦どちらの扶養に入れるかで、どれだけ納めるべき税金に差が出るか比較しなければなりません。より税金額が下がるほうの扶養に入れることで節税につなげましょう。

勤め先企業が独自に支給している扶養手当の受給条件も制度利用の際に確認すべきポイントです。妻が子どもを扶養親族にした場合には、夫に扶養手当を支給しないとする企業もあります。勤務先によく確認しておきましょう。

配偶者控除を受ける場合は扶養者選択と収入制限に気をつける

配偶者控除を受ける場合には、夫婦のいずれか一方しか控除を受けられない点に注意が必要です。また、配偶者控除には、配偶者の年間所得48万円以下という条件もあるため、こちらにも注意しなければなりません。

なお、配偶者に48万円を超える所得がある場合であっても、配偶者特別控除が利用できます。しかし、こちらにも年間合計の所得金額が48万円を超え、133万円以下でなければならないという所得制限が課せられています。なお、配偶者特別控除も夫婦間でお互いが受けることはできません。

子供が16歳未満で扶養控除を利用できない場合は?

扶養控除は子どもが16歳以上の場合に利用できる控除制度です。子どもが16歳未満の場合には、扶養控除の対象となりませんが、住民税非課税となる所得の合計を計算する際には、人数として含まれることになります。つまり、16歳未満の子どもは、所得から引かれる所得控除としては0円であるものの、住民税の非課税を判定する際には、その対象となるわけです。

住民税は、扶養親族の数によって、非課税となる額が決定されます。扶養親族がいる場合の計算式は、以下のとおりです。

35万円×本人+同一生計の配偶者+扶養する親族の人数+21万円+10万円

上記式の扶養親族の対象として、16歳未満の子どもが含まれるわけです。そのため、16歳未満の子どもがいる場合には、非課税となる上限額が上がることになります。給与収入200万円で、扶養親族である子どもが2人いる場合を想定して、考えてみましょう。

想定のケースでは、以下のような式となります。

35万円×3+21万円+10万円=136万円(非課税限度額)

給与収入200万円の場合には、所得金額は132万円となります。そのため、136万円を下回っており、住民税は非課税となります。しかし、給与収入が300万円や400万円の場合には、限度額を超えてしまうため、住民税が課税されてしまいます。16歳未満の子どもを扶養に入れる際には、収入の低い側の扶養に入れることで、住民税が非課税となる場合を考慮して、夫婦どちらの扶養に入れるかを考慮しなければなりません。収入の高い配偶者の側の扶養に入れてしまえば、非課税の恩恵を受けられない場合も出てきます。

扶養制度を活用し賢く節税しよう

税金や社会保険料の納付は義務であり、未納や滞納は許されません。しかし、税金や社会保険料の負担は非常に重いため、できる限り減らしたいと考えることが自然でしょう。その際には、扶養制度を正しく理解し活用することが重要です。

共働き世帯の場合には、夫婦どちらの扶養に子どもを入れるかで、非課税になるか否かが決定される場合もあります。また、社会保険においては、扶養に入ることで社会保険料の負担をなくすことができます。当記事の解説を参考に扶養制度を正しく理解し、節税や社会保険料の節約につなげてください。


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