- 更新日 : 2024年9月6日
転職後の住民税の手続きまとめ
一般的に、会社の給料から天引きされているため自分で納付する必要がないのが住民税です。では、転職した場合は住民税をどのように納付すればよいのでしょうか。
ここでは、転職後の住民税の納付の手続きについて解説します。
目次
住民税の特別徴収とは
住民税の特別徴収とは、所得税の源泉徴収のように会社が住民税を地方自治体に支払う制度で、12ヵ月に分割された金額が毎月の給与から天引きされます。
しかし、会社を辞める場合は、給与から天引きして納付してもらうことができなくなるため、状況に応じて以下の3つの方法で納付することになります。
- 新しい勤務先で特別徴収を継続
- 一括徴収
- 普通徴収
転職先でも継続して特別徴収する場合
転職先でもサラリーマンとして働く場合、住民税の徴収方法は転職前と同じ特別徴収です。前の勤務先で特別徴収から普通徴収に切り替え、転職先でまた特別徴収に切り替えるのは、とても手間がかかります。
そこで「給与所得者異動届出書」の特別徴収義務者を前の勤務先から転職先に切り替え、特別徴収を継続する方法があります。
注意点としては、前の勤務先で「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」の必要事項を記入し、その届出書を転職先に送付した上で、転職先で「転勤(転職)等による特別徴収届出書」欄に記入して市区町村へ提出する必要があることです。
なお、「転勤(転職)等による特別徴収届出書」の欄の名称は、各自治体により呼び名が異なることがあります。
上記の方法がとられた場合には、引き続き転職先でも特別徴収され、分割された住民税が給与から天引きされます。
ただし、退職から再就職までしばらく期間が空く場合や、何らかの事情で新旧の勤務先でのやりとりをお願いできない場合は、特別徴収を継続することができません。
その場合は一旦普通徴収に切り替え、新しい勤務先を通じて再度特別徴収に切り替える方法もあります。この場合、退職時期によっては退職時の給与や退職金から一括して残りの期間の住民税が徴収されることがあるため注意が必要です。
住民税の一括徴収とは
住民税の支払期間は毎年「6月から5月」までです。
従業員が1年間で支払う金額(年税額)は、各市町村から住民税の通知が来た時点で決まっています。
継続して特別徴収を行えない、もしくは行わない場合は退職の時期により、以下の通り住民税の徴収が行われます。
退職日が1月1日から4月30日までの場合
転職以外の理由で退職する場合、従業員は特別徴収で納付できなくなる未徴収の住民税を自分で納付するのが原則です。
ただし、退職日が1月1日から4月30日までの場合は、会社が従業員から未徴収の住民税を一括で徴収しなければなりません(地方税法第321条の5第2項)。これを「一括徴収」と呼びます。
なお、退職時点で支給される給与や退職金から一括徴収を差し引きしてマイナスとなる場合、その分の金額を普通徴収で納付することになります。
退職日が6月1日から12月31日まで場合
退職日が6月1日から12月31日までの場合は、退職者の意思で、翌年5月までの住民税の納付方法を一括徴収か普通徴収か選択することができます。
退職日が5月1日から5月31日までの場合
退職日が5月1日から5月31日までの場合は、5月分のみですので、通常通りの住民税額が最後の給与から徴収されます。
住民税の普通徴収とは
住民税の普通徴収とは、会社に勤めていない個人事業主などが、住民税を個人で地方自治体に直接納税することをいいます。転職後に継続して特別徴収を選択しない場合や、退職日が6月1日から12月31日で住民税の一括徴収を選択しなかった場合は、特別徴収から普通徴収に切り替わります。
退職の際に普通徴収を行う旨(一括徴収を選択しない旨)を伝えると、会社側が手続きをしてくれ、納税時期になると地方自治体から案内が届きます。
普通徴収では、6月、8月、10月、翌年1月の4回に分割して住民税を支払うため、12分割して毎月支払う特別徴収とは金額が異なります。 また、普通徴収を選択した場合でも、その後転職先で「普通徴収から特別徴収への切替届出書」を提出することにより、普通徴収から特別徴収へ変更できます。
転職時は正しく住民税の手続きを行いましょう
このように、転職時は住民税の適切な手続きが必要になります。特に一括徴収の場合は、最後の給与から多くの金額が徴収されることになるので、資金的な観点で問題がないか確認するとともに、特別徴収を継続する余地の有無なども検討しておきましょう。
また、届出書は会社を通して提出するので、新旧の職場とよく相談して書類の不備や理解不足による住民税延滞にならないよう気をつけましょう。
よくある質問
特別徴収とは?
従業員の住民税を、会社が毎月の給与から天引きし、各市町村に納付する方式です。 詳しくはこちらをご覧ください。
住民税の一括徴収とは?
1月1日以降に退職する従業員の住民税について、年税額のうち未徴収分を、会社が従業員から一括徴収し各市町村に納付する方式です。詳しくはこちらをご覧ください。
退職時の手続きにはどのような選択肢がある?
1.異動届で転職先に特別徴収を引き継ぐ、2.未徴収分を一括徴収、3.普通徴収に切り替え、の3つがありますが、退職理由や退職日によって選択肢が限られます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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