• 更新日 : 2022年4月13日

2022年開始の雇用保険マルチジョブホルダー制度とは?取得方法や書類の書き方を解説

2022年開始の雇用保険マルチジョブホルダー制度とは?取得方法や書類の書き方を解説

2022年1月1日から「雇用保険マルチジョブホルダー制度」がスタートします。複数の事業所に雇用されている65歳以上の労働者について、雇用保険の加入要件を事業所ごとではなく2つの事業所を合わせて判断する制度です。この記事では、雇用保険マルチジョブホルダー制度の内容や取得方法について解説します。

雇用保険マルチジョブホルダー制度とは

「雇用保険マルチジョブホルダー制度」は、2022年1月1日よりスタートする新しい制度です。雇用保険は通常、所定労働時間が1週間あたり20時間以上の労働者が被保険者となりますが、マルチジョブホルダー制度では、所定労働時間が1週間あたり20時間に満たない高年齢労働者でも被保険者になることができます。

雇用保険についてはこちらの記事を参照してください。具体的にどのような労働者が適用対象者となるのか、高年齢求職者給付金との関係については以下の通りです。

雇用保険マルチジョブホルダー制度の適用対象者

雇用保険マルチジョブホルダー制度は、65歳以上の高年齢労働者を対象にしています。複数の事業所に雇用されている高年齢労働者が事業所ごとでは雇用保険加入要件を満たさなくても、2つの事業所の労働時間を合わせると1週間あたり20時間以上になる場合に雇用保険被保険者になることができます。

【雇用保険マルチジョブホルダーの適用対象者】

  • 年齢 65歳以上
  • 1つの事業所の労働時間:1週間あたり5時間以上20時間未満
  • 2つの事業所での合計労働時間:1週間あたり20時間以上

上記条件のほか、通常の雇用保険加入要件と同じように、雇用されているそれぞれの事業所において31日以上継続して雇用が見込まれること、雇用されている事業所は事業主がそれぞれ異なっていることも必要です。

マルチジョブホルダーの適用対象者だからといって雇用保険へ加入しなければならないわけではありません。ただし強制ではなく任意ですが、加入後はほかの被保険者と同じように取り扱われるため任意脱退はできません。

また、3つ以上の事業所に雇用されているときは、高年齢労働者が選んだ2つの事業所で雇用保険に加入することになります。選んだ事業所のうち1つを退職する場合は、それまで選ばなかったほかの事業所を新たに選んでマルチジョブホルダー制度の適用を受けることが可能です。しかし、切り替えは退職しない事業所でもいったん資格喪失の手続を行い、新たに選んだ事業所での資格取得手続とともに再取得の手続をする必要があります。

雇用保険マルチジョブホルダー制度と高年齢求職者給付金

雇用保険マルチジョブホルダー制度の適用を受けて雇用保険の被保険者となった高年齢労働者は、「マルチ高年齢被保険者」と呼ばれます。マルチ高年齢被保険者が会社を退職した際には、高年齢求職者給付金を受け取ることができます。受給するための要件は、マルチ高年齢被保険者でない高年齢被保険者と同じで、手続方法、金額は以下の通りです。

高年齢求職者給付金の受給要件

・離職日以前の1年間のうち、被保険者であった期間が6ヵ月以上あること

6ヵ月は通算です。離職日から1ヵ月ごとに区切り、賃金支払の基礎となった日が11日以上ある月が期間算定の対象になります。離職日が2020年8月1日以降で賃金支払基礎日数11日以上の月が6ヵ月以上ない場合は、賃金の支払の基礎となった時間が80時間以上ある月が1ヵ月とみなされます。

・失業の状態にあること

新しい就職先を探し、再び雇用されようとしていることが必要です。就職する意思や能力がない場合は、「失業状態ではない」と判断され、高年齢求職者給付金を受給することはできません。

高年齢求職者給付金の手続方法

  • 手続先:ハローワーク
  • 手続期間:離職の日の翌日から1年以内
  • 提出書類:離職票、写真1枚
  • 持参する物:マイナンバーカードか個人番号と身元確認書類、
    預金通帳かキャッシュカード

高年齢求職者給付金の金額

  • 被保険者であった期間が1年未満:基本手当日額の30日分
  • 被保険者であった期間が1年以上:基本手当日額の50日分

基本手当日額の計算式は以下の通りです。

(離職日以前6ヵ月の間に支払われた賃金の合計額)÷180×50~80%

雇用保険マルチジョブホルダー制度の取得手続

雇用保険マルチジョブホルダー制度を活用する際の資格取得手続は、以下の流れで行われます。基本的には労働者自身で行いますが、会社も必要書類の記載などを行う必要があります。

労働者が行うこと会社が行うこと
・3つ以上で雇用されている場合は2つを選択する
・会社へ伝える
必要書類に記載する必要書類に記載する
住所を管轄するハローワークに提出する

マルチジョブホルダー雇入・資格取得届の書き方

雇用保険マルチジョブホルダー制度の適用を受けようとする労働者の「雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届」の書き方は以下の通りです。
雇用保険マルチジョブホルダー制度の適用を受けようとする労働者の「雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届」の書き方

引用:【重要】雇用保険マルチジョブホルダー制度について|厚生労働省

①過去の雇用保険被保険者番号がある場合に、「0」を省略せずに記入します。わからない場合は記入しなくても構いません。
②被保険者書がある場合は、その記載の通りに記入します。カタカナ記入欄は、姓と名前の間を1つあけます。
③該当する番号を記入します。
④月日が一桁のときは「0」を入れて記入します。(例:1月→01月)
⑤該当する番号を記入します。
⑥郵便番号・住所・名前・電話番号と、記入した日付を書きます。

事業主への注意点

雇用保険マルチジョブホルダー制度で事業主は、以下のような注意点に気をつける必要があります。

事業主の注意点①書類作成の拒否は禁止されている

マルチジョブホルダー制度の適用対象者が実際に受けるかどうかは、高年齢労働者の意思に任され、対象者であってもマルチ高年齢被保険者として雇用保険に加入しないことも可能です。しかし高年齢労働者が希望する場合は、事業者が手続を拒否することはできません。

また高年齢労働者がマルチジョブホルダー制度の適用を望んだことを理由に不利益な取り扱いをすることも禁止されています。解雇や雇い止め、不利な労働条件への変更などを行うことは認められません。

事業主の注意点②迅速な処理が求められる

一般の被保険者は、入社日が雇用保険資格取得日になりますが、マルチ高年齢被保険者の場合は申し出た日に資格を取得します。入社日や適用対象者になった日ではなく、高年齢労働者の住所を管轄するハローワークに届け出た日が資格取得日になり、さかのぼることはできません。高年齢求職者給付金を受給する際に不都合が起きないよう、迅速な処理が求められます。

被保険者への注意点

雇用保険マルチジョブホルダー制度で被保険者が気をつけなければならない注意点は、以下の通りです。

被保険者の注意点①任意脱退はできない

マルチジョブホルダー制度は任意で適用を受ける制度です。申し出によってマルチ高年齢被保険者となり、申し出なければ雇用保険加入になりません。高年齢労働者の希望で適用を受ける制度ですが、加入後は任意脱退できません。また別の事業所に雇用された場合でも変更は認められていません。

被保険者の注意点②事業主の同意がなくても手続できる

マルチジョブホルダー制度の適用を受けてマルチ高年齢被保険者となるには、手続が必要です。マルチ高年齢被保険者資格取得届に事業主による記載が必要になりますが、同意が得られず協力してもらえない場合でも届出は可能です。自身の記載欄に必要事項を記入して提出することで、手続できます。

雇用保険マルチジョブホルダー制度を理解しよう

2022年1月1日スタートの雇用保険マルチジョブホルダー制度は、複数の事業所に雇用される65歳以上の高年齢労働者を対象にした雇用保険制度です。2つの事業所の労働時間が1週間あたり20時間以上となる高年齢労働者は、任意でマルチ高年齢被保険者として雇用保険に加入できます。マルチ高年齢被保険者が会社を退職する際に支給条件を満たす場合には、高年齢求職者給付金を受け取ることができます。

資格取得の手続は、高年齢労自らが行います。マルチ高年齢被保険者資格取得届の書き方を確認し、希望者は届出を申請するようにしましょう。

よくある質問

雇用保険マルチジョブホルダー制度とは何ですか?

複数の事業所に雇用される高年齢労働者が、2つの事業所の労働時間が1週間あたり20時間以上となる場合に、雇用保険に加入する制度です。詳しくはこちらをご覧ください。

雇用保険マルチジョブホルダー制度の取得手続はどうすればよいですか?

マルチジョブホルダー資格取得届に必要事項を記入して、労働者が自らハローワークに提出します。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:坪 義生(社会保険労務士)

じんじ労務経営研究所代表(社会保険労務士登録)、労働保険事務組合 鎌ヶ谷経営労務管理協会会長、清和大学法学部非常勤講師、「月刊人事マネジメント」(㈱ビジネスパブリッシング)取材記者。社会保険診療報酬支払基金、衆議院議員秘書、㈱矢野経済研究所、等を経て、91年、じんじ労務経営研究所を開設。同年より、企業のトップ・人事担当者を中心に人事制度を取材・執筆するほか、中小企業の労働社会保険業務、自治体管理職研修の講師など広範に活動。著書に『社会保険・労働保険の実務 疑問解決マニュアル』(三修社)、『管理者のための労務管理のしくみと実務マニュアル』(三修社)、『リーダー部課長のための最新ビジネス法律常識ハンドブック』(日本実業出版社、共著)などがある。

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