• 更新日 : 2023年11月2日

ジョブ型雇用とは?メンバーシップ型との違いやメリットを解説

ジョブ型雇用とは?メンバーシップ型との違いやメリットを解説

近年グローバル化に伴いジョブ型雇用を導入する企業が増えています。メンバーシップ型雇用と異なり職務内容が決まっているジョブ型雇用は、人材の専門性を高められることなどがメリットです。しかし、転職されやすかったり維持にコストがかかったりするというデメリットもあるため、慌てて導入せずに自社に適しているか吟味しましょう。

ジョブ型雇用とは?

ジョブ型雇用とは、職務内容を明確に定義して職務記述書などで具体的に示し、その職務を遂行するのに適しているスキルや資格、実務経験を持つ人を、職務内容などを限定して採用する雇用方法です。契約で決められた範囲内で働くため、基本的に異動や転勤などがなく、昇進や降格もありません。

メンバーシップ型雇用との違い

ジョブ型雇用とメンバーシップ雇用には3つの違いがあります。

1つ目は仕事についてです。メンバーシップ型雇用は仕事内容や勤務時間、勤務地などを限定せずに会社にマッチする人を先に雇ってから仕事を割り振ります。そのため部署の異動や転勤、残業を命じることが可能です。一方ジョブ型雇用は仕事内容や勤務時間、勤務地、ポジションがあらかじめ定められているので、仕事の内容が限定的で専門性が求められます。

2つ目は給与についてです。メンバーシップ型雇用は職務遂行能力によって給与が決まる職能給を採用していますが、仕事を遂行する力を数値化するのは難しいでしょう。そのため、仕事の成果よりも所持している資格や勤続年数の長さ、役職で給与が決まる傾向があります。

ジョブ型雇用は担当する仕事の内容や専門性の高さ、責任の度合いが同じであれば同額の給与を得られる職務給を採用しているため、勤続年数は関係ありません。高い能力やスキルがあれば若い人材でも高い収入を得られる可能性があります。

3つ目は採用についてです。メンバーシップ型雇用は専門性の高い能力が評価される場合もあるものの、コミュニケーション能力や人柄がジョブ型雇用より重視されやすくなります。しかしジョブ型雇用は職務内容を明確にして、それに対応できるスキルや経験があるかを重視するので、専門性の高さが求められるのです。

成果主義との違い

ジョブ型雇用と成果主義には2つの違いがあります。

1つ目は採用についてです。ジョブ型雇用は任せたい業務に対応できるスキルや経験がある人を採用しますが、成果主義はスキルや経験重視の採用だけでなく、人柄やコミュニケーション能力重視で採用する場合もあります。

2つ目は評価についてです。ジョブ型雇用はあらかじめ仕事内容や報酬が決まっていますが、成果主義は仕事の質や成果などで評価され、それをもとに給与が決まります。

ジョブ型が注目されている背景

近年のグローバル化に伴い、欧米圏との人材獲得競争のために導入されているのがジョブ型雇用です。2020年に経団連がジョブ型雇用を推進したり、新型コロナウイルス感染症の影響でジョブ型雇用と相性が良いテレワークが普及したりしたことで一層注目されるようになりました。

経団連による推進

一般社団法人日本経済団体連合会は2020年に、メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の組み合わせで自社の経営戦略に最適なものを見出し、自社型の雇用システムを確立して社員に才能を最大限に発揮させ、エンゲージメントを高めることが企業のグローバルな競争力の強化に繋がると提言しました。

そして2021年にジョブ型雇用を総合的に検討するのは有益であると推奨し、それ以降1部の大手企業がジョブ型雇用を導入したことも踏まえ、2022年には自社に合った形でジョブ型雇用を導入し活用することを検討する必要があると提唱したのです。一般社団法人日本経済団体連合会は年々踏み込んだ表現へと改めながら、ジョブ型雇用を推進しています。

参考:ー自社型雇用システムと自律的キャリア形成へー| 一般社団法人日本経済団体連合会

テレワークの普及・働き方の多様性

テレワークはもともと働き方改革の推進のために提唱されていましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い急速に普及しました。これまで直接職場で会って会話しながら仕事を進めていた場合、急にテレワークに切り替えると誰がどのような業務をすれば良いのかはっきりしておらず、作業が停滞してしまうことがあるかもしれません。しかしジョブ型雇用であれば仕事内容が明確になっているため、スムーズに業務に取り組むことが可能です。

さらにジョブ型雇用は成果を重視するので、成果さえ出すことができれば仕事をするのは職場でも在宅でもよく、勤務態度や労働時間が曖昧で把握が難しいテレワークでも評価を適切に行うことができます。そのためジョブ型雇用はテレワークとの相性が良いのです。

欧米圏からの影響

近年はグローバル化が進み、優秀な人材を獲得するための国境を越えた競争が激化しています。そして同じ仕事をしているのならば同額の給料を得られるようにするべきであり、そこに性別や人種は関係ないという考えが世界中に浸透し、ジョブ型雇用がグローバルスタンダードになりました。そのため海外進出している企業は、優秀な人材を獲得するためにジョブ型雇用に切り替える傾向が高くなっているのです。

ジョブ型雇用の導入方法

ジョブ型雇用はメンバーシップ型雇用と異なる点が多いため、いくつかの手順を踏んで導入を進めていく必要があります。

ジョブ型雇用にする職種を決める

自社にどのような役職や職務が存在するのかを把握し、雇用したいのはどのような人材なのかを明確にしたうえで、ジョブ型雇用を適用する職種を決めます。1度に全ての職種をジョブ型雇用に切り替えると混乱してしまうため、ジョブ型雇用に適しているクリエイティブ系やエンジニアのような個人のスキルが重要な職種などから少しずつジョブ型雇用を導入していくと良いでしょう。またジョブ型雇用は子育てや介護などと両立するために、在宅勤務や時短勤務など様々な方法を選べる職種にも向いています。

職務記述書(ジョブディスクリプション)を作る

ジョブ型雇用にする職種ごとに職務記述書を作ります。企業は職務記述書の内容を求職者に事前に提示するため、職務記述書を作ることはミスマッチを防ぐのに効果的です。そのため求めている人材を見つけてジョブ型雇用を成功させるには、職務記述書を簡潔かつ明確に作成する必要があります。求職者が自分に合った仕事がどうかを判断しやすいように、様々な情報を記載しておきましょう。

まず職種や職務名、仕事の難易度や内容を基準とした職務価値の大きさの序列である職務等級を記載します。そして事務か営業かなど具体的な職務内容を記載するのに加え、責任や権限の範囲、業務に部下の育成などを含むのか、どこまでが業務の範囲なのかを明記することも重要です。

さらに一括りに事務と言っても一般事務と営業事務では仕事内容が違うなど、業務によっては認識の相違が発生する可能性があるので、どのようなことを目的として業務に取り組んでほしいかをきちんと記載しておきましょう。

課長、部長などのポジションや、直属の上司や部下などのレポートラインに関する部分についても明記しておくのが望ましいです。雇用形態や勤務地、勤務時間、所属人数やリモートワークの有無のような働くイメージを抱きやすくなる情報に加え、給与や賞与、年収、福利厚生などの情報も欠かせません。契約期間がある場合は更新についても含めて記載し、資格や経験、知識などの求職者に求めるスキルがある場合はそれも明記しておきましょう。

このように様々な情報を明記しておけば、求めている人材が見つかりやすくなります。

採用基準・評価基準を明記する

ジョブ型雇用の採用活動は職務記述書をもとに行うため、職務内容や資格、スキルや経験などの採用基準を明記しておくことが大切です。採用基準がわかりやすければ、求職者の応募が増えるかもしれません。

さらに職務評価基準も明記することで、社員がスキルアップやキャリアアップを目指しやすくなるでしょう。厚生労働省は1対1で職務の大きさが同じか異なるかを比較する単純比較法や、社内の職務で基準となるものを選んで職務分析を行い、それをもとに職務レベル定義書を作成して職務のレベルを判断し評価する分類法などの職務評価の手法を複数紹介しています。職務評価の手法を明記することで、上司の好き嫌いで評価が決まり適切な評価が行われないといったことを防ぎ、社員のモチベーションを上げることができるのです。

参考:職務評価の手法|職務分析・職務評価 | 正社員との不合理な待遇差の解消|厚生労働省

職務価値を等級・グレードに設定する

職務価値は学歴や能力、勤続年数では評価せず、職務内容を比較することで職務の相対的な価値を決めます。職務価値を算出して序列をつくり、いくつかの等級に分けますが、等級の設定が大雑把だと評価が正当になりづらく、細かすぎると手間がかかるので注意しましょう。

職務と賃金を決める

職務価値を算出して等級に分けたら、それに応じた賃金を決めます。ジョブ型雇用は同じ仕事をしていれば同じ賃金をもらえるのが特徴なので、自社の待遇が悪いと同じ仕事でより良い待遇の他社に転職されてしまうかもしれません。そのため市場の相場に合わせて賃金を決めると良いでしょう。

採用募集を進める – ジョブ型であることを明記する

メンバーシップ型雇用と異なりジョブ型雇用には異動や転勤、昇給や降格、残業がないので、ジョブ型雇用で採用募集を進める際はトラブルを防ぐために、雇用契約書にジョブ型雇用であることを明記しておきましょう。

採用後も評価指標や職務記述書の改善を行う

職務内容や職務価値は、事業の拡大など様々な理由で変化していきます。そのため職務記述書を作成したらそれをずっと使いまわすのではなく、半期もしくは1年に1度を目安に職務記述書や職務価値を見直し、改善しましょう。現状に合った職務記述書を用いて適切な人事評価を行うことで、社員の不満を軽減することができます。

ジョブ型雇用のメリット

仕事内容や範囲が決まっており、成果を重視するジョブ型雇用には様々なメリットがあります。

即戦力を採用できる可能性

ジョブ型雇用は仕事内容や範囲などが決まっているので、採用活動を行う際に職務に必要なスキルや資格を既に持っていることを条件にすれば、即戦力を採用することができます。そのため教育投資を抑えることも可能です。

専門的な人材の採用

ジョブ型雇用は職務の内容や範囲などを明確にし、それを遂行できる力のある人材を採用するので、既にスキルを持っている専門性の高い人材を雇用することが可能です。

そしてあらかじめ決められた職務以外の負担が軽くなる分、自分の職務に集中することができるので、採用後も人材の専門性をより高めることができるでしょう。

生産性の向上・業務効率化・役割分担の明確化

ジョブ型雇用では職務範囲が定められてしっかりと役割分担ができるので、無駄な作業を見つけて省くことができるようになり効率的に業務を行うことができます。さらに専門性の高い人材を雇用することで仕事の質が高まるため、生産性の向上が期待できるでしょう。

リモートワークと相性が良い

リモートワークだと働いている様子を確認できません。しかしジョブ型雇用は成果を重視するので公平に評価することができるのです。

ジョブ型雇用のデメリット

ジョブ型雇用は職務が固定されることによるデメリットがあります。

役職・職務が固定化されやすい(キャリアアップが難しい)

従業員は同じ職務に取り組み続けるため、専門性が高くなるかわりに職務や役職が固定されてしまい、特定の分野でしか活躍できなくなってしまいます。キャリアアップのために転職を視野に入れても、自分に合う特定の職務の募集が少なく転職自体が難しいことがあるかもしれません。

条件の良い他企業に転職してしまう可能性

ジョブ型雇用の場合、企業ではなく職務にマッチして入社しているので、企業に対する帰属意識や忠誠心が薄れてしまいがちです。そのため同じ職務で自社より良い条件で人材を募集している企業があると転職されやすくなってしまうでしょう。

ジョブ型雇用を維持するための運用コスト

ジョブ型雇用は導入している職種ごとに職務内容を確認したり評価基準を設定したりしなければなりません。また職務が固定されるので、職務記述書をしっかりと作成する必要があります。さらに職務記述書は1度作成して終わりではなく、定期的な確認と改善が求められるでしょう。そのためジョブ型雇用の維持には人件費と手間がかかるのです。

ジョブが無くなった場合に解雇になりやすい

ジョブ型雇用と聞くと、仕事がなくなったら解雇されるというイメージを持つ方が多いでしょう。しかし、実際にはジョブ型雇用だから解雇されやすいとは言い切れません。

現在日本には解雇規制があり、解雇するには正当な理由が必要です。そのため整理解雇では配置換えなどの雇用を維持する方法を模索し、解雇しないための努力をしたかなどが争点になります。これはメンバーシップ型雇用・ジョブ型雇用に関わらず、整理解雇自体が妥当なものであるかを判断する基準として定められているため、「ジョブ型雇用が解雇になりやすい」とは一概には言えないのが現状です。

一方ジョブ型雇用が一般的である海外は日本と雇用契約の内容自体が異なる場合が多く、整理解雇をしやすいという特徴があります。日本には「正社員」という雇用形態があり、これには職務の限定がありません。正社員は原則として、社内の全ての職務に従事する義務と権利を持つのです。しかし海外では社内の職務を種類ごとに区切り、採用した人を特定の職務にのみ従事させるという内容の雇用契約を締結します。もし特定の職務に必要な人数が減っても、その職務にのみ従事するという契約になっている以上他の労働をさせることができないため、整理解雇が成立しやすいのです。

参考:労働契約の終了に関するルール|厚生労働省

日本でもジョブ型雇用は成功できる?導入事例

富士通はグローバル化に伴い、幹部社員を中心に2020年4月からジョブ型雇用を導入しました。売上だけでなく専門性や難易度、影響力、多様性、レポートラインなどの様々な観点から職責を格付けして給与が決まる仕組みとなっており、業績を上げた社員の給与を上げることを明確にすることで社員がより高度な業務に挑戦するのを促しています。

資生堂は日本支社の人材の専門スキルが低く、グローバル展開している競合他社と比べて生産性が低い現状を打破するためにジョブ型雇用を導入しました。最初は国内の一部の管理職である約1,700名を対象としていましたが、2021年以降は国内の一般社員にも範囲を広げています。ジョブファミリーを20以上設けてそれぞれの職務定義書を用意し、決められたジョブファミリーで専門性を高めて昇進したり、必要なときにはジョブファミリーの中でスムーズに異動したりすることができるようになりました。

他にも日立製作所やKDDI、カゴメのような大手企業を中心にジョブ型雇用を導入する動きが広まっています。

ジョブ型雇用は職務内容が固定されている

ジョブ型雇用は職務内容が決まっているので、即戦力となる人材を採用したり人材の専門性を高めたりすることができるというメリットがありますが、維持にコストがかかるほか、転職されやすいといったデメリットもあります。ジョブ型雇用を導入する動きが広まっているからと焦ってすぐに導入しようとするのではなく、しっかりと自社の状況を把握し、メンバーシップ型雇用などの他の方法とも比較しながら、自社に適した雇用方法を選びましょう。


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