• 更新日 : 2026年7月3日

出張手当の支給は必須?相場・税金・導入手順を企業向けに解説

Point出張手当は非課税にできる?

出張手当は、旅費規程で金額の妥当性を示せば所得税の課税対象になりません。

  • 所得税の非課税上限額は法律で定められていない
  • 国内日帰りの相場は2,000円程度に設定される
  • 旅費規程に定めれば会社に支給義務が生じる

支給額が高すぎると税務調査で指摘されるため、相場を踏まえた設定が必要です。

出張手当は、従業員が出張中に負担する食事代や通信費、雑費などを補填するために支給される手当です。適切に制度設計すれば、従業員の負担軽減だけでなく、経費精算の効率化や手取り額の向上にもつながります。

一方で、支給額や運用方法を誤ると、給与課税や税務調査での指摘、従業員とのトラブルにつながるおそれがあります。

本記事では、出張手当の基本から相場、税金のルール、支給なしの違法性、制度導入の手順まで、企業担当者向けに実務視点で解説します。

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出張手当とは?

出張手当とは、従業員が出張中に負担する食事代・通信費・雑費などを補うために、会社が支給する手当です。「出張日当」と呼ばれる場合もあります。

交通費や宿泊費は、領収書や利用明細をもとに、実費精算するのが一般的です。一方、出張手当は「1日あたり2,000円」のように、社内規程にもとづいて定額で支給します。

制度を設ける際は、出張に伴う従業員の負担を補う手当として、使途の指定が必須です。給与の上乗せではなく、業務上必要な出張費用を補填する目的であることを、就業規則に明記しましょう。

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出張手当に関わる税金のルール

出張手当に関する税金は、所得税と消費税の扱いを分けて管理しましょう。非課税で扱える範囲や国内出張と海外出張の違い、消費税の処理について解説します。

非課税上限がある

出張手当に、法律で一律に定められた非課税上限額はありません。所得税で非課税になるかは、金額が通常必要と認められる範囲内に収まっているかで判断します。

たとえば、一般社員の日帰り出張に毎回10,000円を支給すると、実態に対して高額とみなされるでしょう。反対に、宿泊を伴う出張や海外出張では、移動時間や現地物価を踏まえた、適切な金額設定が必要です。

非課税で処理したい場合は、旅費規程に支給対象・支給条件・支給額を明記し、金額の妥当性を証明しましょう。出張申請書や出張報告書も保管し、出張の実態を確認できるようにすることも重要です。

参考:通達目次/所得税基本通達|国税庁

消費税の対象になる

国内出張に伴う出張手当は、通常必要と認められる範囲であれば、消費税の課税仕入れとして扱えます。

ただし、交通費や宿泊費の実費精算と、定額の出張手当では、確認に必要な資料が異なります。実費精算では、領収書や利用明細をもとにした処理が一般的です。一方、出張手当は、旅費規程や出張申請書を根拠に処理する必要があります。

また、インボイス制度における、出張旅費等特例の確認も必須です。特例に該当すれば、適格請求書(インボイス)の保存がない場合も、帳簿への記載のみで仕入税額控除を受けられます。

海外は課税仕入れの対象外になる

海外出張に関する出張手当は、原則として消費税の課税仕入れに該当しません。海外で行われる取引は国外取引となるため、国内出張と同じ消費税処理は不可能です。

国内出張の日当を課税仕入れとして処理している会社でも、海外出張の日当は区分を分けましょう。また、現地の宿泊費・交通費・通信費も考慮して、手当の金額を設定する必要があります。

海外出張がある企業は、国内出張と海外出張で、勘定科目や税区分を分けて管理しましょう。精算書のフォーマットを分け、視覚的な違いを作ることで、経理担当の処理ミスや確認漏れを防げます。

出張手当の相場

出張手当の相場は、行先や宿泊の有無、役職などによって変わります。相場は参考値として使い、自社の出張実態にあわせて決めましょう。

参考:民間企業における出張旅費規程等に関するアンケート 報告書|財務省

国内出張

国内出張の出張手当は、日帰りと宿泊ありで分けて設定するのが一般的です。目安として、日帰りは2,000円程度、宿泊を伴う出張は3,000円程度に設定する例がありました。

ただし、同じ国内出張でも、従業員の負担が一律とは限りません。片道50km程度の近距離移動と、飛行機や新幹線を使う遠方出張では、移動時間や食事代の負担が変わるためです。

支給額を決める際は、距離・移動時間・宿泊の有無を基準にしましょう。日帰りや宿泊、前泊・後泊の扱いを分けると、従業員の不公平感を減らせます。

海外出張

海外出張の出張手当は、国内出張より高めに設定される傾向があります。移動時間が長く、現地の物価や通信費、両替手数料などの負担が増えるためです。目安として、一般社員の海外出張では1日10,000円程度、管理職では15,000円程度を設定する例がありました。

ただし、北米・欧州とアジア間など、地域によって物価水準は異なります。海外出張の支給額は、金額を一律に設定せず、渡航先の地域別に分けるのが適切です。また、為替や物価は変動するため、一定期間で金額を見直しましょう。

役職別・企業規模別

役職によって、出張手当の金額に差をつける場合もあります。一般社員・管理職・役員では、出張中の会食・通信環境・移動中の業務対応などの負担が異なるためです。

国内の宿泊出張では、一般社員3,000円程度、管理職5,000円程度、役員10,000円以上を目安にする例があります。海外出張では、一般社員10,000円程度、管理職15,000円程度、役員20,000円以上を設定する例もみられました。

ただし、役職が高ければ、手当の金額を自由に設定できるわけではありません。役員だけを大きく優遇すると、給与や役員報酬と判断されます。

出張手当の支給なしは違法になる?

出張手当は、法律で支給が義務付けられていません。ただし、就業規則や旅費規程に定めた場合は、会社に支給義務が発生します。

参考:No.6459 出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い|国税庁

法律上の支給義務

出張手当は、労働基準法などで支給が義務付けられているものではなく、あくまで会社の判断で支給するものです。そのため、出張手当がない会社でも、直ちに違法とはなりません。

支給するかどうかは、会社の就業規則や賃金規程、旅費規程の記載内容によって決まります。制度として設けない場合は、出張手当を支給しないことも可能です。

ただし、業務命令による出張で、必要な交通費や宿泊費まで従業員に負担させるのは避けましょう。業務遂行に必要な費用は、会社負担として実費精算するのが一般的です。

規程に定めた場合は支給義務がある

就業規則・賃金規程・旅費規程などに出張手当の支給を定めた場合、会社は規程に従って出張手当を支給する必要があります。

たとえば、規程に「宿泊出張は1日3,000円を支給する」と記載していれば、条件を満たす従業員には、手当の支給が必須です。

制度を変更・廃止する場合は、従業員への説明と規程改定の手続きを行いましょう。過去の運用実態も確認し、急な不利益変更にならないよう配慮が必要です。

実費負担はトラブルに発展しやすい

出張手当がない場合でも、交通費や宿泊費などの実費精算は、別途設ける必要があります。

出張手当がなくても、新幹線代やホテル代を会社が精算する場合は、従業員の負担は限定的です。一方、食事代や通信費の自己負担が続くと、不満につながりかねません。

また、手当の有無に限らず、以下のような出張費に関するルール設定も必要です。

  • 実費精算の対象
  • 領収書の要否
  • 上限額

条件を決めておくことで、対応の属人化を防げます。

出張手当を設けるメリット

出張手当を設けると、出張時の負担軽減が可能です。定額支給により1件ごとの精算作業も減るため、人事労務や経理部門の業務効率化にもつながります。

経費精算の効率化

出張手当を定額支給にすると、食事代や雑費の精算を簡略化できます。従業員の領収書収集や、経理担当者の確認作業も削減可能です。

たとえば、宿泊出張1日あたり3,000円と決めておけば、出張中の通信費や食事代を個別に精算する必要がありません。経理担当者側も、領収書の不備確認や差し戻しにかかる時間を削減できるため、業務負担を減らせます。

ただし、定額支給にした場合も、管理は必要です。出張申請や上長承認、出張報告書などの記録が必要です。

従業員の手取り額アップ

出張手当を支給すれば、出張時の金銭負担を軽減できます。手当が非課税になる範囲の金額であれば、給与として同額を受け取るより、手取り額が増えるでしょう。

たとえば、出張手当分の金額を給与として支給すると、所得税や社会保険料の対象になるケースがあります。一方、出張費用を補う手当として適切な金額を支給すれば、課税対象になりません。

月の半分以上を出張する営業職や現場担当者にとって、手当の有無は満足度にもつながります。また、会社が出張時の負担を考慮し、従業員を大切に思う姿勢も伝わるでしょう。

出張手当のデメリット

出張手当には、会社側の支出増加や、規程整備の負担などのデメリットもあります。導入時は、金額設定や運用ルール、税務調査への準備などの視点から、導入可否を検討しましょう。

企業の支出が増加する

出張手当を新設すると、実費精算と比べて、会社の支出が増えるケースがあります。食事代・通信費・雑費などを1件ずつ精算する代わりに、一定額の日当を支給するため、余分な支出が出かねないためです。

たとえば、毎月のべ100日の宿泊出張があり、1日3,000円を支給する場合、支給総額は月300,000円です。年間では3,600,000円になるため、導入前に対象者数・出張回数・平均出張日数を確認します。

ただし、出張手当には、領収書の確認や差し戻しなどの精算業務を減らせる利点もあります。人件費や処理時間の削減にもつながるため、支出額だけでは制度の有効性を判断できません。

規程整備の工数がかかる

出張手当制度を適切に運用するには、旅費規程や申請フローの整備が不可欠です。以下の要件が曖昧だと、不公平感や支給漏れが生じかねません。

  • 支給対象
  • 支給額
  • 支給条件

とくに支給条件に関しては、以下の各ケースに対して、支給額や条件を設定する必要があります。

  • 日帰り出張
  • 宿泊出張
  • 前泊
  • 休日移動
  • 海外出張

担当者ごとの判断が分かれないよう、導入時の精査が必要です。ただし、制度の条件を細かく決めすぎると、担当者の負担が重くなります。主要な出張区分から規程化し、問い合わせが多い項目を後から見直しましょう。

税務調査のリスクがある

出張手当の支給額・条件が不適切と判断された場合、税務調査で指摘を受けるリスクがあります。とくに、支給額が高すぎたり、役員だけを優遇したりする制度は、指摘の対象になりやすいでしょう。

また、出張実態を示す申請書や報告書がないと、旅費としての妥当性を証明できません。たとえば、規程では1日3,000円と定めているのに、実際は上長判断で5,000円を支給した場合、妥当性がないとみなされます。

指摘リスクを抑えるため、以下の書類を揃え、規程と実際の支給内容を一致させましょう。

  • 旅費規程
  • 出張申請書
  • 承認記録
  • 出張報告書

出張手当制度の導入手順

出張手当制度を導入するには、対象者や支給条件・支給額の設定、申請・承認フローの策定が必要です。最後に旅費規程として明文化し、従業員に周知してから運用をはじめましょう。

1.支給対象者の定義

最初に、出張手当の支給対象者を決めましょう。対象者は、職種・職位・業務範囲・出張頻度をもとに設定すると、実態に合った支給が可能です。

たとえば、業務範囲が広く出張頻度の高い役員や正社員には、定額の出張手当を支給する方法があります。一方、出張頻度が低いアルバイトや非正規雇用者には、出張手当ではなく実費精算で対応する方法が有効でしょう。

定額支給と実費精算を使い分けることで、各従業員が必要な分の手当を受け取れます。ただし、担当者間の対応差を防ぐため、手当の支給対象者や条件の明文化は必須です。

2.支給条件と支給額の設定

支給対象となる出張の区分と、各ケースにおける支給金額を決める工程です。たとえば、支給条件ごとに出張内容を分類すると、以下のようになります。

  • 日帰りか宿泊か
  • 国内か海外か
  • 距離はどの程度か
  • 交通手段はバス・新幹線・飛行機のいずれか

支給条件は、距離や時間、宿泊の有無、地域差をもとに設定しましょう。たとえば「勤務地から片道100km以上」「宿泊を伴う出張」など、客観的に判定できる基準が必要です。

支給額は、相場や社会通念を踏まえ、税務上説明できる水準にする必要があります。高すぎる金額は避け、一般社員・管理職・役員の区分も合理的な範囲に収めましょう。

3.申請・承認フローの整備

出張手当を支給するには、申請から精算までの流れを整える必要があります。決めるべき工程は、以下のとおりです。

  • 出張前の申請
  • 上長承認
  • 出張後の報告
  • 経理確認

不正受給や二重精算を防ぐには、証憑や出張報告書の管理が必須です。交通費や宿泊費を実費精算する制度なら、領収書や利用明細の提出ルールも整備しましょう。

申請・承認フローの効率化には、経費精算システムが有効です。支給条件をシステムに登録することで、金額の入力ミスや規程違反の申請を防げます。

4.規程の作成・運用開始

最後に、決定したルールを旅費規程や社内規程として明記します。口頭の運用では、担当者や部署によって判断が変わり、属人化の原因となりかねません。

規程には、以下の項目を記載しましょう。

  • 支給対象者
  • 支給条件
  • 支給額
  • 申請方法
  • 地域区分
  • 為替変動時の見直し方法(海外)

手当制度を導入する際は、従業員へ支給条件や申請方法を周知します。導入後も、出張実態・税制・物価変動に応じて、制度内容を定期的に見直しましょう。

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社宅制度の導入・運用を整えることで、従業員の生活面を支援しながら、バックオフィス業務の負担軽減にもつなげられます。手当を見直す際は、検討してみてはいかがでしょうか。


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