• 作成日 : 2021年12月3日

試用期間とは?給与に関する疑問を解決!

正社員として採用後、「試用期間」を設けている会社は少なくありません。「正式な採用ではないの?」「簡単に解雇させられることがあるの?」「その間の給料は低いの?」といった疑問を持っている人もいるのではないでしょうか。会社にとってのメリット・デメリットも含め、試用期間について詳しく解説していきます。

試用期間とは?どんな制度?

試用期間とは、文字通り、“お試しの期間”といえるでしょう。採用した社員の能力や適性を評価し、本採用するかどうか会社側が判断するための期間と定義することができます。

本採用の決定が留保されているため、本採用しないとなれば、解雇ということになります。こうしたことから試用期間は、労働基準法等に規定がないものの、法律的には、解約権留保付労働契約と解釈されています。

ただし、試用期間について法律に規定がないため、就業規則などによって会社が制度として試用期間を設けるかどうかを決めることができます。期間も特に決まっていませんが、1カ月から3カ月程度とするのが一般的です。

試用期間を設けるメリットは?

多くの会社が試用期間を設けるのは、会社にとってメリットがあるからです。

例えば、新卒社員であれば、筆記試験、面接など、複数の試験を行い、人材を見極めたうえで採用を決定します。その後、研修などを経て配属となりますが、研修期間中に能力や適性において何らかの問題点が発覚することもあります。入念な採用試験を経ても、限られた時間とオーソドックスな方法では、こうした事態が起こりうるわけです。

研修で解決できるのであれば、そのまま雇用を続けることになりますが、そうでない場合は当人を雇い続けることが会社にとって悪影響を及ぼすことも考えられます。

こうしたことを想定して、試用期間を設け、問題があった場合に本採用しないという内容の労働契約をしておくのです。

採用される側も納得しておく必要がありますので、契約の際に交付が義務付けられている労働条件通知書にも、試用期間がある旨を記載しておく必要があります

試用期間中の給与は?

試用期間については、前述の通り、法的な規定があるわけではありません。解約権が留保された労働契約ということで双方が合意して締結しているため、給与などの労働条件も、契約時で決められた内容になります

試用期間だけ給与が低いケース

就業規則などに規定があり、労働契約締結時に本人が合意していれば、本採用後と比べて試用期間だけ低い給与とすることは可能です。

ただし、原則として最低賃金法により、毎年10月1日に改定される都道府県別の最低賃金を下回ることはできません。例外的に最低賃金の減額の特例措置がありますが、許可申請が義務付けられており、最低賃金額未満とすることに合理性がある場合に限られます。

その場合でも、減額できる率の上限は20%です(最低賃金法施行規則第5条)。

参考:最低賃金法施行規則|e-GOV法令検索

試用期間と期間後の給与が変わらないケース

新卒採用をする場合、試用期間中は研修期間と位置付けられるケースが一般的です。こうした場合、本採用後よりも低い賃金とすることに明確な合理性があります。

一方、経験者採用の場合、すでに十分なスキルを習得している人材を採用しているはずです。改めて研修のために時間を割くよりも、即戦力として業務に従事させるのが普通です。試用期間を通して、能力と適性を確認するにしても、給与については試用期間後と変わらないというケースが多いようです

こんなときどうする?試用期間で気になること

試用期間中の給与について説明してきましたが、これ以外にも知っておくべきことがいくつかあります。「イメージと違っていたら、簡単に退職できるのか」、逆に「会社は簡単に解雇できるか」「社会保険に入れるのか」など、試用期間をめぐって気になる問題について考えていきましょう。

試用期間に退職したら?

入社してから、会社や仕事に違和感を感じることはあります。試用期間の労働契約は通常、「解約権留保付労働契約」という条件で、会社は解約する権利がありますが、労働者側も労働契約を解約する権利を留保しています。本人から会社に申し出ることで解約、つまり退職することができます。ただし、即日で退職できるわけではありません。

正社員で入社したような無期雇用契約の場合、いつでも解約の申し入れはできますが、終了は申し入れの日から2週間を経過した日となります(民法第627条)。したがって、退職希望日の2週間前までに上司に口頭で退職の意思を伝え、その後、書面(退職届)を提出するのが一般的な流れです。

なかには、試用期間中が研修期間であったとして「働いていなかったんだから、給料は払わないよ」という会社もあるようですが、この主張は明らかに違法です。すでに本採用となっている正社員も含めて、会社によって参加が強制されている研修は労働に該当するからです。

労働契約で所定労働日とされ、実際に出勤した日については日数分の給与が支払われます。所定時間外の残業や休日労働があった場合は、その分についても支払い義務があり、割増賃金も発生します。

参考:民法|e-GOV法令検索

試用期間中に解雇されたら

労働契約法第16条では、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が認められなければ、試用期間中に解雇することは権利の濫用として無効になると定めています

最高裁判所の判例では、試用期間満了時に本採用を拒否した事例について、通常の本採用後の解雇よりは広い会社側の裁量を認めました。

本来、試用期間はその間に会社が新入社員の適性を見極める期間で、満了時を待って本採用するかどうかを判断するべきものです。したがって、試用期間の途中で労働者を解雇する場合には、試用期間満了後の解雇の場合よりも高度な合理性と相当性が求められます。

労働者側に明らかに能力、適性に問題があって解雇された場合については、それが試用期間開始後14日間経過後であれば、会社は、通常の解雇と同様に30日前に解雇予告するか、解雇予告手当として30日分以上の平均賃金(直近3カ月間の賃金総額を平均した1日分の賃金)を支払うことが義務付けられています。(労働基準法第20条)

試用期間契約を締結してから14日間以内であれば、労働者を解雇予告なしに即時解雇することができ、それに伴う解雇予告手当も発生しません。(労働基準法第21条第4号)

参考:労働基準法|e-GOV法令検索

試用期間の給与に税金はかかる?

試用期間中の税金は、本採用後と同様、所得税と住民税が発生します。いずれも会社が、給与から源泉徴収するのが原則です。

ただし、住民税については、本来は納税義務者が自ら申告して納税する「普通徴収」の方式であり、給与から源泉徴収する「特別徴収」とするには、会社が自治体に手続きをする必要があります。

自治体は、特別徴収での納付方法を周知、推進しているものの、実施していない会社もあるので、確認しておくことが大切です。

試用期間中の社会保険は?

社会保険についても、被保険者としての要件を満たしていれば、会社は試用期間開始とともに資格取得手続きをしなければなりません。一般に正社員であれば、健康保険、介護保険、厚生年金保険雇用保険の被保険者としての資格要件は満たしているはずです。

健康保険、介護保険、厚生年金保険は採用から5日以内に事務所の所在地を管轄する年金事務所に、雇用保険は被保険者となった日の属する月の翌月10日までに事務所の所在地を管轄するハローワークに、それぞれ「資格取得届」を提出します。

被保険者となることで、当然、保険料の納付義務が発生しますから、毎月の給与から源泉徴収されることになります。

試用期間の詳細については必ず確認しておこう

試用期間について知っておくべきことについて解説してきました。会社の事業主、担当者の方でも誤解しているケースがあります。試用期間であっても労働契約が締結されているということを理解しておくことが大切です。また、これから就職する方やまさに試用期間中の方も、現状をしっかり確認しておくことをおすすめします。

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よくある質問

試用期間とは?

採用した従業員の能力や適性を評価し、本採用するかどうか会社側が判断するための期間です。詳しくはこちらをご覧ください。詳しくはこちらをご覧ください。

試用期間中の社会保険は?

被保険者の要件を満たしていれば資格取得の手続きが必要です。詳しくはこちらをご覧ください。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:坪 義生(社会保険労務士)

じんじ労務経営研究所代表(社会保険労務士登録)、労働保険事務組合 鎌ヶ谷経営労務管理協会会長、清和大学法学部非常勤講師、「月刊人事マネジメント」(㈱ビジネスパブリッシング)取材記者。社会保険診療報酬支払基金、衆議院議員秘書、㈱矢野経済研究所、等を経て、91年、じんじ労務経営研究所を開設。同年より、企業のトップ・人事担当者を中心に人事制度を取材・執筆するほか、中小企業の労働社会保険業務、自治体管理職研修の講師など広範に活動。著書に『社会保険・労働保険の実務 疑問解決マニュアル』(三修社)、『管理者のための労務管理のしくみと実務マニュアル』(三修社)、『リーダー部課長のための最新ビジネス法律常識ハンドブック』(日本実業出版社、共著)などがある。

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