• 更新日 : 2025年1月28日

男性・パパ育休の社会保険料免除の期間は?賞与の場合も解説

育休中の社会保険料免除は、育休開始月から終了日の翌日が属する日の前月まで適用されます。また、2022年10月からは月内14日以上の育休取得でも、その月の保険料が免除されるようになりました。

育休をいつから取得すべきか、月末と月初のどちらが得なのかなど、疑問を抱える方もいるでしょう。

本記事では、男性の育休における社会保険料免除の期間や条件などを解説します。

男性の育休も社会保険料が免除される

育児休業中の社会保険料免除制度は、3歳未満の子を養育するための育児休業期間中に適用される制度です。この制度により、健康保険料と厚生年金保険料が事業主負担分・被保険者負担分ともに免除されます。

育休取得者の経済的負担を軽減し、育児に専念できる環境を整えるのが目的です。以下では、男性の育休の期間や社会保険料の種類について解説します。

男性の育休とは?期間や給付金

育児休業(育休)は、育児・介護休業法で導入が義務づけられている制度のことです。子どもが1歳になるまでの期間中、親が仕事を休んで子育てに専念できます。

特例として、保育園に入れない場合や配偶者が子を養育できない状況では、1歳6ヶ月または2歳まで延長可能です。

育休には、産後パパ育休(出生時育児休業)と育児休業の2種類があります。

種類特徴
産後パパ育休配偶者の出産後8週間以内に最大4週間取得できる
育児休業原則として子が1歳になるまで取得できる

参考:厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」

育休期間中は、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。給付金は非課税で、社会保険料免除のメリットも相まって、実質的に手取り額の約8割が維持されるのが特徴です。

  • 育休開始から180日以内:賃金の67%支給
  • 181日以降:賃金の50%支給

月収30万円の場合、育休開始から6ヶ月間は20万円程度が支給されます。

育休で免除される社会保険料の種類

育児休業期間中に免除されるのは以下の保険料です。

  • 健康保険料:病院受診や出産に関連する費用をカバーする保険料
  • 厚生年金保険料:老後の年金額に影響する保険料

また、雇用保険料や所得税は、給与が支給されない場合は発生しません。一方で、住民税は前年の所得を基に算定されるため、育休中も支払いが必要です。

給与から社会保険料はどのくらい引かれているのか

月収40万円のケースでは次のような社会保険料が引かれています。

  • 健康保険料:約2万円
  • 厚生年金保険料:約3万円
  • 雇用保険料:約1,000円

合計で約5万円が毎月控除される計算です。この金額が育休中に免除されるため、家計の負担軽減につながります。

社会保険料が免除されると年金は減る?

育休中に社会保険料が免除されても、将来の年金額に影響はありません。標準報酬月額にもとづく被保険者記録は継続され、免除期間も保険料納付済期間としてカウントされます。

そのため、育休を取得しても老後の生活設計に不安を感じる必要はありません。

男性の育休で社会保険料が免除される月のルール

育児休業期間中の社会保険料免除は、月末に育児休業期間が含まれていることや、同月内に14日以上の育児休業を取得していることを基準に決定されます。

ここでは、男性の育休で社会保険料が免除される月のルールを具体例を交えて解説します。

男性の育休開始日が月末日の場合

月末日に育休を開始すると、その月の社会保険料が免除されます。月末を含むことで、免除条件が満たされるためです。

また、翌月も育休が続く場合、その月の保険料も免除対象となります。具体例は、下記のとおりです。

ケース詳細
開始日が4月30日、終了日が5月31日の場合4月と5月の両方の保険料が免除される
開始日が4月30日、終了日が5月10日の場合4月分は免除対象、5月分は免除対象外となる

なお、令和4年10月の改正により、月末を含まなくても同月内に14日以上育休を取得していれば保険料が免除されるようになりました。

そのため2つ目の具体例では、5月に14日以上の取得があれば免除対象となるでしょう。免除期間を最大化するためには、計画的なスケジュールが大切です。

参考:日本年金機構|令和4年10月から育児休業等期間中における社会保険料の免除要件が改正されました

男性の育休開始日が月初日の場合

月初から育休を開始した場合は、同月内に14日以上育休を取得していれば保険料が免除されます。

具体例は、下記のとおりです。

ケース詳細
開始日が4月1日、終了日が4月14日の場合(14日未満)免除対象外となる
開始日が4月1日、終了日が4月16日の場合(14日以上)4月分の保険料が免除される

これまでは「14日以上取得していても月末を含まない場合は免除対象外」とされていました。しかし、令和4年10月以降の法改正により、月末にこだわらなくても免除を受けられる可能性が広がりました。

参考:日本年金機構|令和4年10月から育児休業等期間中における社会保険料の免除要件が改正されました

男性の育休を2回に分割する場合

育児休業は分割取得が可能です。免除条件を満たせば各期間の保険料が免除されます。育児休業期間が月末を含む場合は、その月の保険料は免除されます。

また、令和4年10月の法改正により、月末を含まなくても同月内に14日以上の育児休業を取得していれば免除の対象です。ただし、この14日には事前調整で労働した日は含まれません。

具体例は、下記のとおりです。

ケース詳細
1回目の育休を4月15日~4月30日、2回目を5月15日~5月31日に設定した場合どちらも月末を含むため、4月と5月の保険料が免除される
1回目を4月1日~4月14日、2回目を4月15日~4月28日に分けた場合どちらの期間も月末を含まず、14日未満のため免除されない

分割取得時は各期間が月末を含むか、14日以上になるように計画すれば免除期間を最大化できます。

参考:日本年金機構|令和4年10月から育児休業等期間中における社会保険料の免除要件が改正されました

男性の育休中に月末日のみ就労した場合

育休中に月末日のみ就労した場合の社会保険料免除は、2022年10月の法改正により要件が明確化されました。

基本的に、月末時点で育休中であるか、月内に14日以上の育休取得があれば、その月の社会保険料は免除されます。

ケース詳細
11月1日から29日まで育休を取得して30日に就労した場合29日間の育休期間があるため、月末日の就労があっても11月分の保険料は免除される

ただし、就労時間の計算には注意が必要です。時間単位での就労は、合計時間を1日あたりの所定労働時間で除した日数(1未満切捨て)が就労日数としてカウントされます。

なお、土日祝日は育休期間に含められますが、就労日は除外して計算します。

参考:日本年金機構|令和4年10月から育児休業等期間中における社会保険料の免除要件が改正されました

男性の育休を10日間のみ取得した場合

10日間のみの育休取得では、原則として社会保険料の免除対象外となります。ただし、月末を含む場合や、14日以上取得する場合には免除対象となる可能性があります。

具体例は、下記のとおりです。

ケース詳細
10日間の育休が4月15日~4月24日の場合月末を含まないため、免除対象外となる
10日間の育休が4月21日~4月30日の場合月末を含むため、4月分の保険料が免除される

短期間の育休でも、月末を含むように計画することで免除を受けられるでしょう。

参考:日本年金機構|令和4年10月から育児休業等期間中における社会保険料の免除要件が改正されました

男性の育休中の賞与(ボーナス)にかかる社会保険料免除の要件

男性の育休中の賞与にかかる社会保険料は、賞与の支給月の末日を含む連続1ヶ月を超える育児休業を取得している場合に限り、免除の対象となります。

具体例は、下記のとおりです。

ケース詳細
6月1日から7月15日までの1ヶ月半の育休を取得し、6月に賞与が支給される場合1ヶ月を超える期間の要件を満たすため、免除対象となる

一方、6月15日から7月5日までの3週間の育休取得では、1ヶ月を超えないため、6月の賞与に対する保険料は免除されません。ボーナス月に育休を取得しても、1ヶ月未満の場合は保険料が免除されない点に注意が必要です。

参考:日本年金機構|令和4年10月から育児休業等期間中における社会保険料の免除要件が改正されました

男性の育休中に就労した場合は社会保険料が免除される?

育休中の就労に関する社会保険料免除は、産後パパ育休と通常の育児休業で異なるルールが適用されます。

産後パパ育休では、労使協定の締結により計画的な就業が可能です。一方、通常の育児休業では、一時的・臨時的な就業のみ認められます。

いずれの場合も月内の就業は「10日以下かつ80時間以下」の制限があり、これを超えると育児休業給付金の受給にも影響します。

具体例は、下記のとおりです。

【免除されるケース】

ケース詳細
4月1日~4月30日の育休期間中、4月15日のみ就業就業日を除いても29日間の育休があるため免除となる
4月1日~4月20日の育休期間中、4月10日に就業就業日を除いて19日間の育休があり、14日以上の要件を満たすため免除となる
4月25日~5月31日の育休で、4月30日のみ就業4月は就業日を除いて5日間の育休だが、5月は全額免除となる

【免除されないケース】

ケース詳細
4月1日~4月15日の育休期間中、4月5日と10日に就業就業日を除くと13日間となり、14日以上の要件を満たさないため無効となる
4月1日~4月30日の育休期間中、週3日ずつ計12日間就業就業日数が10日を超えるため、育休自体が無効となる

制度を適切に利用するためには、就業日の設定に注意を払い、免除要件を満たす育休期間を確保することが大切です。

男性の育休に伴う社会保険料免除の手続きの仕方

社会保険料免除の手続きは、通常、会社の人事部門が行います。しかし、自身で手続きを行う場合もあるため、基本的な流れを理解しておくとよいでしょう。

手続き方法は、下記のとおりです。

タイミング従業員側の対応会社側の対応提出書類・必要書類
育休開始前
  • 育休取得の意向を申し出る
  • 取得期間を明確にする
  • 必要書類を準備する
  • 申出書を作成する
  • 書類を確認する
  • 年金事務所へ提出する
  • 育児休業等取得者申出書
  • 育児休業申請書
申請受理後内容を確認する
  • 確認通知書を受領する
  • 内容を確認する
  • 従業員へ通知する
育児休業等取得者確認通知書
育休期間中
  • 社会保険料免除の管理を行う
育休終了時復職する
  • 育休終了後5日以内に終了届を提出する
  • 保険料の徴収を再開する
育児休業等終了届

育児休業等の開始年月日と終了年月日の翌日が同月内の場合は、育児休業等取得者申出書には育児休業等の日数を記載します。

また、予定より早期に復帰する場合は、変更内容を記載した「育児休業等取得者終了届」の提出も必要です。これにより、翌月から社会保険料の徴収が再開されます。

育休を分割する場合

育休を分割して取得する場合は、それぞれの期間について個別に申請手続きが必要です。

1回目の育休取得時に「育児休業等取得者申出書」を提出し、終了時に「育児休業等終了届」を提出します。2回目以降も同様の手続きを繰り返します。

ただし2022年10月からの法改正によって、同一月内に複数回育休を取得する際は、最後の育休取得時にまとめて申請が可能になりました。

事業主が育児休業等取得者申出書を年金事務所へ提出し、問題なければ社会保険料が免除されます。

パパ・ママ育休プラスも社会保険料は免除される?

パパ・ママ育休プラスは、両親で協力して育児に取り組めるように設計された制度です。子が1歳2ヶ月に達するまでの間、育児休業を取得でき、社会保険料免除も適用されます。

父母それぞれの取得可能期間は1年が上限となっています。取得例は、下記のとおりです。

【母親が出産直後から1年間取得、父親が1歳から1歳2ヶ月まで取得した場合】

  • 母親:産後休業(8週)+育休(10ヶ月)
  • 父親:子が1歳~1歳2ヶ月(2ヶ月)

【両親で交代しながら取得した場合】

  • 母親:産後休業(8週)+育休(8ヶ月)
  • 父親:子が10ヶ月~1歳2ヶ月(4ヶ月)

社会保険料の免除期間は、育児休業を開始した月から終了日の翌日が属する月の前月までです。

同月内に育休開始日と終了日がある場合は、14日以上の休業で保険料が免除されます。なお、賞与に関する保険料免除は、賞与支給月の末日を含む連続1ヶ月超えの育児休業取得が条件です。

父親が12月の賞与月に育休を取得する際は、11月15日から12月31日までのように、1ヶ月を超える期間の取得が必要です。それより短いと、賞与の保険料は免除されません。

免除対象は健康保険料と厚生年金保険料となり、住民税は免除対象外なので注意が必要です。育休中は育児休業給付金も受け取れるため、経済的な支援を受けながら育児に専念できるでしょう。

参考:日本年金機構|育児休業等期間中の社会保険料免除要件が見直されます。

法改正【2025年4月~】育休手当の給付額が実質10割に

2025年4月から、従来の育児休業給付金に加えて、新たに「出生後休業支援給付」が創設されます。これによって、実質的に休業前の手取り額と同程度の給付が受けられるようになります。

この金額は税金や社会保険料が控除されません。そのため、育休手当の給付額が実質10割相当となるものです。

  • 現行制度:育児休業給付金(67%)+社会保険料免除
  • 新制度:育児休業給付金(67%)+出生後休業支援給付(13%)+社会保険料免除

この制度は、計画的に育休を活用し、家庭の負担を減らす大きなメリットがあります。以下では、出生後休業支援給付について解説します。

出生後休業支援給付

出生後休業支援給付は、2025年4月から新設される給付金制度です。育児休業給付金に上乗せされる形となり、休業前賃金の13%相当額が給付されます。支給期間は、最長28日間です。

従来の育児休業給付金(67%)に加えて、夫婦がそれぞれ14日以上の育児休業を取得すると賃金の13%が上乗せされ、合計80%となります。

税金や社会保険料が非課税になるため、実質的に手取り10割相当となるでしょう。

たとえば月収30万円の場合、28日間の育休を取得すると、現行制度では約18.8万円の支給でした。しかし、新制度では約22.4万円となり、約3.6万円の増額となります。

ただし、この手取り10割相当の給付を受けるには、夫婦ともに14日以上の育児休業を取得する必要があります。対象期間は、下記のとおりです。

  • 父親の場合:「産後パパ育休」の期間内
  • 母親の場合:出産後8週間以内(育休開始後8週間以内)

なお、配偶者が自営業者や専業主婦(夫)、またはひとり親家庭の場合は、夫婦同時取得の要件は適用されません。

申請方法は従来の育児休業給付金と同様に、勤務先を通じて行います。具体的な手続きや必要書類は、施行までに労働局から詳細が示される予定です。

産休・育休に関わる申請書類のテンプレート

育児休業や産前産後休業の取得には、申請書類の作成が必要です。これらの書類は、テンプレートの活用で効率的に作成でき、記載漏れを防げます。

以下に、「マネーフォワード クラウド給与」が提供する各種テンプレートを紹介します。

産休申請書テンプレート

産前産後休業を取得するためには、産休申請書を提出する必要があります。

産休申請書には、出産予定日や休業予定期間などの記載が必要です。テンプレートを利用することで、記載内容が統一され、スムーズに申請手続きを進められます。

産休申請書テンプレート

育児休業申請書テンプレート

育児休業の取得には、育児休業申請書の提出が求められます。育児休業申請書では、休業予定期間や子の情報などを記載できます。

テンプレートを活用すれば、必要項目を正確に記載でき、手続きの時間を減らせるのでぜひ活用してみてください。

育児休業申請書テンプレート

育児と仕事を両立するために免除制度を使いこなそう

男性の育児休業中の社会保険料免除は、月末や14日以上の取得期間がポイントです。令和4年10月の法改正により柔軟な条件が導入され、分割取得でも計画的に条件を満たせば免除を受けられます。

また、育休中の賞与は1ヶ月以上の育休取得で免除可能です。2025年4月からは手取り10割の育休手当も開始されるため、家計への負担が軽減される環境が整いつつあります。

本記事を参考に、経済的な不安を軽減しながら、育児と仕事の両立を目指しましょう。


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