- 更新日 : 2024年9月13日
最低賃金を下回ってない?確認するための計算方法を紹介
最低賃金とは、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の最低額です。最低賃金以上であることを確認する計算方法は、時給制、日給制、月給制など、給与形態によって異なります。また、夜勤手当やみなし残業による固定残業代は、最低賃金に算入されない点に注意しましょう。今回は、最低賃金以上の賃金か確認する方法、注意点について解説します。
目次
最低賃金の計算方法
最低賃金とは、使用者が雇用する労働者に対して支払わなければならない、賃金の最低ライン、つまり最低額のことです。春闘の時期になると、テレビなどでその名を耳にすることが多いでしょう。
最低賃金には都道府県ごとに決められている「地域別最低賃金」と、特定の産業で設定されている「特定最低賃金」があります。最低賃金は基本的に「時間」が単位です。しかし、特定最低賃金の中には、1日の最低賃金が定められているケースも散見されます。
賃金が最低賃金額を下回っている場合、使用者は最低賃金額との差額を支払わなければなりません。対応を怠ると罰金が科せられます。
賃金が最低ラインをクリアしているかチェックする計算のしかたは、給与形態ごとに異なる点に留意しましょう。給与形態などは、勤め先の就業規則などで確認します。
なお、就業規則の概要については、以下の記事も参考にしてください。
最低賃金は時間が単位であるため、「時給」がベースになっています。そのため、時給制についてはそのまま比較すれば、チェックが可能です。時給制以外は賃金を時給換算したうえで比較するというのが基本の考え方となります。一見難しそうに思えるかもしれませんが、やるべきことはシンプルです。
最低賃金の概要をおさえたところで、賃金が最低ラインをクリアしているかどうかをチェックしましょう。ここからは、次の5パターンの計算方法を解説します。
- 時給制の場合
- 日給制の場合
- 月給制の場合
- 出来高払いや請負制の場合
- 上記1〜4が組み合わさった場合
1.時給制の場合
前述のとおり、最低賃金額は時間を単位として決められています。そのため時給制の場合は、時給換算するプロセスは不要です。単純に時給額が最低ラインをクリアしているかを確認することで、こと足りるといえます。
このように、これといった計算式にあてはめる必要はなく、最低賃金と照らし合わせることで確認できます。
2.日給制の場合
日給制の場合、支払われる日額の賃金を1日の所定労働時間で割って時給を計算し、最低ラインをクリアしているかチェックします。計算方法は次のとおりです。
所定労働時間とは、労働者が働く時間のことです。就業規則などに定められている始業から終業までの時間から、休憩時間を引いたものです。例えば、勤務時間が9時から17時の会社で休憩時間が1時間ある場合、所定労働時間は7時間となります。ただし、休憩時間を引くのを忘れないようにしましょう。
特定最低賃金が定められている就業先であって、かつ日額が定められている場合には、時間給ではなく日額がベースになります。下記のように、そのまま日給を日額の最低賃金額と比較しましょう。
3.月給制の場合
月給制の場合は、月給を1ヵ月の平均所定労働時間で割って時給換算し、最低賃金額と比べます。計算方法は次のとおりです。
月給制においては基本給に職務手当や時間外手当など、各種手当がついていることが一般的です。会社によって、また従業員によってついている手当は異なります。手当によって、計算に入れるものと除外するものがあることに気をつけましょう。
時給換算する前に、最低賃金の対象とならない手当を除くことがポイントです。手当に関する詳しい内容については後述します。
4.出来高払いや請負制の場合
出来高払いあるいは請負制の場合は、賃金総額を総労働時間で割る計算方法によって時給あたりの金額になおし、最低ラインをクリアしているかを見ます。
出来高払い制や請負制は、会社によっては歩合制などと呼ばれていることもあります。簡単にいうと労働時間に対してではなく、実際の成果内容などに応じて賃金が支払われることが特徴です。出来高払い制はタクシーの運転手、請負制は土木工事などをイメージしていただくとわかりやすいでしょう。
5.上記1~4が組み合わさった場合
基本給が日給で、職務手当などの各種手当が月給制のしくみで決められているというように、上記1〜4の組み合わせとなっているケースです。
この場合、上記2、3の計算式を使ってそれぞれ時給換算し、合算した金額と最低賃金額を比較します。一見複雑に思えるかもしれませんが、基本的な考え方はここまでご紹介したケースと同じです。
こんな時どうする?最低賃金についてよくある疑問
賃金が最低賃金以上であるか確認する際、賃金とするのは「毎月支払われる基本的な賃金」です。
例えば、みなし残業による固定残業代などが支払われている人もいます。そのほか、基本給のほかに支払われる手当には、資格手当や夜勤手当、通勤手当などさまざまな種類があります。これらすべてを賃金に含めて、前述の計算式と同じように計算するわけではありません。
ここからは、最低賃金についてよくある疑問として次の2点を解説していきます。
- みなし残業の場合、最低賃金の計算はどうなる?
- 各種手当は、最低賃金の計算に含まれる?
みなし残業の場合、最低賃金の計算はどうなる?
みなし残業とは、企業があらかじめ一定時間の残業を想定し、月給に固定して残業代を加え、固定残業代として支払われるものです。
所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金は、最低賃金の対象とはなりません。そのため、月給に固定残業代が含まれている場合は、月給から固定残業代を除外し、固定残業代を除いた月給を時間給換算し、最低賃金と比較します。
さらに、固定残業代自体が最低賃金を下回っても違法になるため、固定残業代が最低賃金以上かを確認する必要があります。固定残業時間が1日8時間、週40時間までの法定労働時間外とすると割増賃金率が適用されるため、下記のような計算で確認しましょう。
例えば、固定残業代が3万円(固定残業時間30時間)と設定されているようなケースでは、30,000÷(30×1.25)=800円となり、800円が最低賃金以上であるかをチェックする必要があります。
各種手当は、最低賃金の計算に含まれる?
賃金が最低賃金以上かどうか確認する際の計算において、次の手当は計算から除外します。
- 臨時に支給される賃金(例:結婚手当)
- 1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(例:賞与)
- 所定労働時間を超える労働について支払われる賃金(例:時間外割増賃金)
- 所定労働日以外の労働について支払われる賃金(例:休日割増賃金)
- 午後10時〜午前5時までの時間帯の労働のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(例:深夜割増賃金)
- 通勤手当や家族手当、精勤手当など
上記の内容を踏まえると、たとえば毎月の給料と合わせて支給される資格手当は基本的な賃金とみなされるため、チェックする際の計算に含みます。
しかし、夜勤手当は計算から除外しなければならないことに注意してください。
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最低ラインを下回っていないか、今一度確認しよう
最低賃金制度は、労働者に対する不当に低い賃金を是正し、労働条件の改善や労働者の生活の安定などを図るものです。賃金が最低ラインを下回っていないか、この機会に確認しましょう。
計算方法は、時給制や月給制など給与形態によって違います。基本給と一緒に支払われている手当場合、計算に入れるものと除外するものがあるので注意しましょう。ぜひ本記事を参考に、チェックしてみてくださいね。
よくある質問
最低賃金以上かどうかチェックする方法とは?
時給制の場合はそのまま最低賃金以上かであるか確認し、月給制や日給制などは時給換算して最低賃金と比較します。詳しくはこちらをご覧ください。
各種手当は、最低賃金以上かチェックするための計算に含まれますか?
職務手当や資格手当など、「毎月基本的に支払われる賃金」以外は計算の際に除外することに注意しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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