- 更新日 : 2024年6月28日
職場環境とは?良い・悪い環境の特徴や原因、改善方法、具体例を解説
職場環境は、従業員の生産性やモチベーション、メンタルヘルスに大きな影響を与えます。良好な職場環境は、企業の成長と発展に不可欠な要素です。しかし、職場環境が悪い場合には、従業員のストレス度を高め、離職率の上昇や優秀な人材の流出につながる恐れがあります。
本記事では、職場環境の意味と構成要素、良い環境と悪い環境の特徴、悪い環境になる原因、そして改善方法や助成金制度について詳しく解説します。
目次
職場環境とは?
職場環境とは、従業員が仕事を行う際に取り巻く物理的、社会的、心理的な環境の総称です。具体的には、オフィスのレイアウトや設備、照明や温度などの物理的条件、上司や同僚との人間関係、職場の文化や雰囲気、さらには労働条件や福利厚生などが含まれます。職場環境は、従業員のモチベーションや生産性、メンタルヘルスに大きな影響を与えるため、企業にとって重要な要素です。
職場環境を構成する要素
職場環境には複数の要素があります。これらの要素を総合的に考慮し、職場環境を整えることで、従業員が快適に働ける環境を提供し、企業全体のパフォーマンスを向上させることができます。
物理的な環境
物理的な環境は、職場環境の基盤を形成する重要な要素です。これには、オフィスのレイアウトのほか、照明、温度、湿度、騒音レベル、空気の質などが含まれます。適切な物理的環境は、従業員の快適さと生産性に直接影響を与えます。
仕事の負荷
仕事の負荷は、従業員のストレスレベルやモチベーションに大きな影響を与えます。適切な仕事の負荷は、従業員が効率的に働き、バランスの取れた生活を送るために重要です。
人間関係
職場の人間関係は、従業員の満足度や生産性に大きな影響を与えます。良好な人間関係は、職場の雰囲気をよくし、従業員が安心して働ける環境を提供します。
労働条件
賃金、労働時間などの労働条件は、従業員の働きやすさやモチベーションに直接影響を与えます。適切な労働条件を整えることで、従業員の満足度を高め、離職率を低下させることができます。
良好な職場環境の特徴
職場環境を整えることで、従業員の満足度と生産性を向上させ、企業全体のパフォーマンスを高めることができます。ここでは、良好な職場環境の特徴を7つ挙げてみます。
社内のコミュニケーションが活発
まず、良好な職場環境の特徴として、社内のコミュニケーションが活発に行われていることを挙げることができます。定期的なミーティングやチャットツールの活用により、従業員同士が気軽に意見交換するほか、業務の進捗や問題点を迅速に共有し、協力して解決することができます。
意見が言いやすい雰囲気
意見が言いやすい雰囲気も大切でしょう。こうした職場では、役職や立場に関係なく、誰もが自由に意見を述べることができます。上司が部下の意見を積極的に聞き入れ、フィードバックを行うことで、従業員の主体性と創造性が高まります。
情報共有がスムーズ
情報共有がスムーズであることも良好な職場環境の特徴として挙げられます。社内ポータルサイトやチャットツールを活用して、プロジェクトの進捗状況や重要な連絡事項を全員が確認できるようにすることで、業務の効率化が図ることができます。
仕事の負荷が適切
従業員が過度なストレスを感じることなく、効率的に業務を遂行するためには、仕事の負荷が適切な職場であることが大切です。業務量を定期的に見直し、必要に応じてタスクを分担することで、従業員一人ひとりの負担を軽減します。
働き方の選択肢が多い
働き方改革が叫ばれるようになって、働き方の選択肢が多い職場は良好な職場環境として不可欠な要素となったといえるでしょう。従業員が自分のライフスタイルに合わせて柔軟に働くことができることが当たり前になりつつあります。
公正な評価制度がある
従業員の努力や成果が適切に評価される公正な評価制度も重要な要素です。360度評価や定期的なパフォーマンスレビューを導入することで、従業員のモチベーションを高め、成長を促進する企業も少なくありません。
福利厚生が充実している
企業を選ぶ際、福利厚生がいかに充実しているかは、働く側にとって最も関心度が高いポイントの一つです。社会保険などの法定福利厚生だけでなく、企業独自の福利厚生が整備されていることも重要です。
悪い職場環境の特徴
悪い職場環境は、従業員の満足度や生産性に悪影響をおよぼし、企業全体のパフォーマンスを低下させる可能性があります。具体的には、以下のような特徴があります。
会話が少ない
職場でのコミュニケーションが少ないと、チームワークが損なわれ、仕事の効率が低下する可能性があるでしょう。また、社員間の人間関係が希薄になり、孤立感を感じる人も出てきやすくなります。自分が何か新しいアイデアを提案したとき、周囲から反応がないと、自分の意見が評価されていないと感じることもあるでしょう。
情報共有ができていない
情報共有が不十分な職場では、業務の効率性が低下し、コミュニケーションミスや重複作業が発生します。例えば、プロジェクトの進捗状況や重要な変更が適切に伝達されず、メンバー間で不一致が生じる可能性があるでしょう。
若手社員の意見が通らない
若手社員の意見が通らない職場では、イノベーションが停滞し、モチベーションが低下します。若手社員が提案した改善案が上司に無視されることで、意欲を失い、積極的に意見を出さなくなりがちです。
ノルマが厳しい
過度に厳しいノルマが設定されていると、社員のストレスや過労が増加し、生産性が低下します。営業職の場合、個々の社員に対して達成困難な数字が設定され、結果的に無理な営業活動によって顧客との関係悪化が生じるリスクがあります。
パワハラが蔓延している
職場でパワハラが蔓延している場合、従業員のメンタルヘルスが悪化し、離職率が高まります。上司が部下に対して過度な叱責や侮辱を繰り返すことで、部下が精神的に追い詰められ、退職を余儀なくされることもあるでしょう。
努力が正当に評価されない
努力が正当に評価されない職場では、従業員のモチベーションが低下し、生産性が落ちやすいです。成果をあげても上司からの評価が低く、昇進や昇給が見合わない場合、従業員はやる気を失い、仕事に対する意欲が減少します。
悪い職場環境になる原因
悪い職場環境になる原因は、特徴とも重なります。いずれにしてもこれらを理解し、適切な対策を講じることで、状況を改善し、従業員の満足度と生産性を向上させることができます。5つの原因を挙げてみましょう。
コミュニケーション不足
コミュニケーション不足は、職場の連携を阻害し、誤解やミスを引き起こします。プロジェクトの進捗状況が共有されず、チームメンバーが異なる方向に進んでしまうことで、納期遅延や品質低下が発生するでしょう。
過重労働
過重労働は、従業員の健康を損ない、モチベーションを低下させます。長時間労働や休日出勤が常態化している職場では、従業員が疲弊し、病気やメンタルヘルスの問題が増加しやすいです。
トップダウンが強い
トップダウンが強い職場では、従業員の意見が反映されず、モチベーションが低下しがちです。上司が一方的に指示を出し、部下の意見や提案を無視することで、従業員が主体性を失い、業務効率が低下します。
無理な目標設定
無理な目標設定は、従業員に過度なプレッシャーを与え、ストレスを増大させるでしょう。達成不可能な売上目標を設定することで、従業員が過度なストレスを感じ、結果としてモチベーションが低下し、離職率が高まります。
雰囲気を悪くする人がいる
職場に雰囲気を悪くする人がいると、全体の士気が低下し、働きにくい環境が生まれます。常に不機嫌な態度を取る上司や同僚がいることで、周囲の従業員が萎縮し、コミュニケーションが減少し、職場の雰囲気が悪化しやすくなります。
職場環境を改善する方法
悪い職場環境の特徴と原因をみてきましたが、では、こうした状況を改善するには、どうすればよいのでしょうか。ここでは、5つの方法を紹介します。
快適なオフィスを作る
快適なオフィス環境を整備することで、従業員の生産性や満足度が向上するでしょう。例えば、適切な照明、温度管理、防音対策などにより、集中しやすい環境を作ることができます。また、エルゴノミクス(人間工学)に配慮したオフィス家具の導入で、長時間の作業による疲労を軽減できます。さらに、リフレッシュスペースを設けたり、室内に緑を取り入れたりすることで、リラックスした雰囲気を演出できるでしょう。
業務負担・働き方を改善する
過度な業務負担は従業員のストレスを高め、生産性の低下や離職につながる恐れがあります。そこで、業務の効率化や適切な人員配置を行い、従業員一人ひとりの負担を適正化することが重要です。また、フレックスタイム制やテレワークなど、多様な働き方を導入することで、ワークライフバランスの実現を図ることができます。
スキルアップ、資格取得を支援する
従業員のスキルアップを支援することで、モチベーションの向上や生産性の向上が期待できます。具体的には、社内研修の実施、外部セミナーへの参加支援、資格取得費用の補助などが考えられます。また、ジョブローテーションなどを導入し、従業員に様々な経験を積ませることも有効です。
コミュニケーションを促進する
良好なコミュニケーションは、業務の効率化や風通しのよい職場環境づくりに役立ちます。そのためには、定期的な社内ミーティングの開催や、コミュニケーションツールの導入を検討するとよいでしょう。社内イベントの開催なども、従業員間の交流を深め、コミュニケーションを活性化する一助となります。
社内アンケートを実施する
従業員の本音を把握するためには、社内アンケートを実施するのが有効です。例えば、職場環境や人事制度、福利厚生などについて、匿名で意見を求めることができます。アンケート結果を分析し、課題を洗い出したうえで、具体的な改善策を検討することが重要です。定期的な実施で、継続的な改善につなげましょう。
職場環境の改善で助成金が出る場合も
職場環境の改善を図るためには、企業が積極的に取り組むことが重要ですが、費用がかかることも少なくありません。助成金を活用することで、企業の負担を軽減し、効果的な改善を実現することができます。以下に、代表的な助成金を紹介します。
働き方改革推進支援助成金
働き方改革推進支援助成金は、企業が働き方改革に取り組む際に必要な費用を支援する助成金です。具体的には、労働時間の短縮や多様な働き方の導入、職場環境の改善などに対して助成金が支給されます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/index.html#h2_free3
① 対象となる取り組み
業種別課題対応コース、労働時間短縮・年休促進支援コース、勤務間インターバル導入コース、団体推進コースの4つのコースがあります。基本的に中小企業における労働時間の設定の改善の促進を目的としていますが、対象となる取り組みは、多岐にわたります。
② 助成金の額
助成金の額は、コース、取り組み内容、企業の規模によって異なりますが、最大で数百万円の助成が受けられる場合があります。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者のキャリアアップを支援するための助成金です。職場環境の改善に関連した制度であるといえます。
https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001239298.pdf
①対象となる取り組み
正社員化コース、賃金規定等改定コース、賃金規定等共通化コース、賞与・退職金制度導入コース、社会保険適用時処遇改善コースの5つのコースがあります。正社員化や多様な働き方の導入、職場定着のための取り組みが対象となります。
② 助成金の額
助成金の額は、取り組み内容や企業の規模によって異なりますが、正社員化の場合は1人当たり最大80万円の助成が受けられる場合があります。
団体経由産業保健活動推進助成金
この助成金は、直接、企業に助成するのではなく、中小企業などの事業主団体、労災保険の特別加入団体を通じて、中小企業の産業保健活動の支援を行う制度です。
https://www.mhlw.go.jp/content/001151913.pdf
① 対象となる取り組み
医師等による健康診断結果の意見聴取、保健指導、面接指導・意見聴取、健康相談対応、治療と仕事の両立支援、職場環境改善支援、健康教育研修・事業者と管理者向けの産業保健に関する周知啓発といった取り組みが対象となります。
② 助成金の額
申請主体となるのは、事業主団体などで、産業保健サービスを提供する費用・事務の一部を委託する費用の総額の90%(上限500万円。ただし、一定の要件を満たした団体は1,000万円)が助成されます。
人材確保等支援助成金(テレワークコース)
この助成金は、良質なテレワークを制度として導入・実施し、労働者の人材確保や雇用管理改善等の観点から効果をあげた中小企業事業主を支援する制度です。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/telework_zyosei_R3.html
① 対象となる取り組み
就業規則・労働協約・労使協定の作成・変更、外部専門家によるコンサルティング、テレワーク用通信機器等の導入・運用、労務管理担当者に対する研修、労働者に対する研修の実施に要した費用が支給対象となります。
② 助成金の額
機器等導入助成と目標達成助成の2つがあります。前者は1企業当たり、支給対象となる経費の50%であり、後者は1企業当たり、支給対象となる経費の15%となっています。ただし、どちらも1企業当たり100万円またはテレワーク実施対象労働者1人当たり20万円のいずれか低い方の金額が上限となります。
職場環境の改善に注力し、従業員が活き活きと働ける環境を整えよう!
職場環境は、物理的な環境、人間関係、労働条件など、多くの要素から構成されています。良好な職場環境は、活発なコミュニケーションや公正な評価制度、適切な業務負荷など、従業員が快適に働ける環境を提供します。
一方、悪い職場環境は、コミュニケーション不足や過重労働、不当な評価など、従業員のストレス度を高め、離職率の上昇や生産性の低下を招く恐れがあります。企業は、職場環境の改善に積極的に取り組み、従業員のニーズに配慮することが重要です。助成金制度を有効に活用し、職場環境改善に取り組みましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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