• 作成日 : 2022年11月4日

厚生年金の加入条件とは?加入義務のある対象企業や加入手続きを解説

厚生年金の加入条件とは?加入義務のある対象企業や加入手続きを解説

法人と常時5人以上の従業員がいる個人事業者には、厚生年金に加入する義務があります。また個人事業者は、適用業種で常時5人未満の場合および適用業種以外の場合は、任意適用事業となります。厚生年金への加入は、健康保険・厚生年金保険新規適用届を提出することで手続きします。

厚生年金とは

厚生年金は、企業で働く会社員などが加入する年金制度です。公的年金制度の1つで、老齢・障害・死亡を対象にした給付を行います。かつては厚生年金とは別に共済年金という、公務員が加入する年金制度がありましたが、2015年(平成27年)10月1日より被用者年金は一元化され、現在、共済年金は厚生年金にまとめられています。このため、厚生年金の加入者には会社員だけでなく公務員も含まれます。

厚生年金保険について詳しくは、こちらの記事で説明しています。参考にしてください。

厚生年金と国民年金の違い

公的年金制度は2階建ての仕組みになっています。1階部分は全国民共通の国民年金(基礎年金)、2階部分は会社員・公務員の上乗せである厚生年金です。加入年齢は、国民年金では20歳以上60歳未満、厚生年金は下限年齢はなく、70歳未満となっています。厚生年金加入者は、国民年金では第2号被保険者として取り扱われます。

【国民年金の被保険者の種類】

  • 第1号被保険者:自営業者・学生・無職の人
  • 第2号被保険者:厚生年金の加入者
  • 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者

国民年金保険料は、第1号被保険者のみに負担義務があります。会社員・公務員とその被扶養配偶者については、直接、国民年金保険料を納めるのではなく、厚生年金制度から国民年金制度に拠出する仕組みになっています。

国民年金保険料を支払わなければならない第1号被保険者は全額を負担しなければならないのに対し、厚生年金加入者が支払う厚生年金保険料は、事業主と1/2ずつを支払います。また国民年金保険料は一律の金額が定められているのに対し、厚生年金保険料は給料の金額をもとに計算されるため一律ではない点も異なっています。

厚生年金加入のメリット

厚生年金の加入には、福利厚生の充実につながるというメリットがあります。福利厚生とは、会社が従業員に対して給料や賞与といった報酬以外に、利益を供与することです。

従業員の生活の質の向上、健康の維持・増進などに結びつき、モチベーションが向上し、会社としての生産性向上を期待して福利厚生の充実が図られます。法律で定められている法定福利の1つに、厚生年金は該当します。厚生年金に加入することで法律に定められている福利厚生を備えることになり、会社の社会的責任を果たすことにもなります。

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厚生年金の対象となる適用事業所

厚生年金は基本的に、本店(本社)・支店(支社)・出張所・営業所・工場といった事業所単位で適用されます。適用を受ける得事業所を適用事業所といい、適用事業所には強制適用事業所と任意適用事業所の2種類があります。

加入義務のある強制適用事業所

強制適用事業所とは、厚生年金が強制的に適用になる事業所のことです。次のような事業所が強制適用事業所に該当します。

  1. 法人
    会社などの法人は、1人でも従業員がいれば強制適用事業所になります。
  2. 従業員5人以上の一定の業種の個人事業者
    個人事業者の場合は、5人以上の従業員がいる製造業など法定16業種は強制適用事業所に該当します。ただしサービス業の一部(クリーニング業や旅館、飲食店、理容店、ビル清掃業など)、農業、林業などの非適用業種は除かれます。
  3. 船員が乗り組む一定の条件を備えた汽船や漁船などの船舶

加入することができる任意適用事業所

強制適用事業所でなくても厚生年金に加入することは可能です。強制適用事業所以外の事業所が任意でなった適用事業所を、任意適用事業所といいます。任意適用事業所になるためには次の要件を満たす必要があります。

  • 従業員の半数以上が厚生年金の適用事業所となることに同意していること
  • 事業主の申請により厚生労働大臣の認可を受けること

任意適用事業所の認可を受けた場合、保険給付や保険料の徴収は、強制適用事業所と同様に扱われます。適用事業所となることに同意しなかった従業員も含めて、全員が厚生年金に加入しなければなりません。

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被保険者の加入条件

厚生年金には加入が義務付けられている従業員や、一定以上働くパート・アルバイトなどが加入します。社会保険の適用拡大により、パート・アルバイトの加入条件が変更されているので、注意が必要です。

加入義務のある従業員

強制適用事業所であるか任意適用事業所であるかを問わず、厚生年金が適用されている会社・工場・商店・船舶などの70歳未満の従業員は、厚生年金へ加入しなければなりません。常時使用されていれば雇用契約書の有無などとは関係なく、厚生年金への加入が義務付けられています。試用期間中であっても報酬が支払われていれば厚生年金加入が必要です。

加入条件に該当しない人

以下の労働者は、厚生年金の加入条件には該当しません。

  • 日々雇い入れられる労働者(ただし1カ月を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から厚生年金に加入します)
  • 2カ月以内の期間を定めて使用される労働者(ただし所定の期間を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から厚生年金に加入します)
  • 所在地が一定しない事業所に使用される労働者
  • 季節的業務(4カ月以内)に使用される労働者(ただし継続して4カ月を超える予定で使用される場合は、当初から厚生年金に加入します)
  • 臨時的事業の事業所(6カ月以内)に使用される労働者(ただし継続して6カ月を超える予定で使用される場合は、当初から厚生年金に加入します)

アルバイトやパートの場合の加入条件

アルバイトやパートでも、1週間の所定労働時間と1カ月の所定労働日数が通常の従業員の3/4以上の場合は、厚生年金に加入します。

また社会保険の適用拡大により、1週間の所定労働時間が通常の労働者の3/4未満、1カ月の所定労働日数が通常の労働者の3/4未満、またはその両方の場合であっても次の要件をすべて満たすアルバイトやパートは厚生年金へ加入することになりました。

  • 1週の所定労働時間が20時間以上あること
  • 雇用期間が1年以上見込まれること(この要件は2022年10月から、なくなります)
  • 賃金の月額が8.8万円以上であること
  • 学生でないこと
  • 特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤めていること
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厚生年金の加入手続き

厚生年金の加入手続きは以下の方法で行います。

  1. 強制適用事業所の場合
    提出書類:健康保険・厚生年金保険新規適用届
    提出期限:事実発生から5日以内
    添付書類:

    • 法人の場合は法人(商業)登記簿謄本(コピーは不可)
    • 個人事業所の場合事業主世帯全員の住民票(コピーは不可・個人番号の記載がないもの)
  2. 任意適用事業所の場合
    提出書類:健康保険・厚生年金保険新規適用届、任意適用申請書
    提出期限:従業員の1/2同意後、速やかに
    添付書類:

    • 任意適用同意書、個人事業所の場合は事業主世帯全員の住民票(コピーは不可・個人番号の記載がないもの)、公租公課の領収書(コピーでも可)
    • 提出先はいずれも持参する場合は事業所の所在地を管轄する年金事務所、郵送する場合は事務センターです。持参・郵送以外に電子申請で提出することもできます。
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厚生年金に加入する手続きを怠らないようにしよう

厚生年金に加入している会社員は、将来において老齢基礎年金に上乗せして老齢厚生年金を受け取ることができます。老齢基礎年金は国民年金から、老齢厚生年金は厚生年金から支払われる年金です。厚生年金に加入している会社員は、国民年金のみに加入している自営業者よりも、老後の保障が手厚くなっています。

法人、および常時5人以上の労働者がいる個人事業者は強制適用事業所に該当し、厚生年金に加入する義務があります。健康保険・厚生年金保険新規適用届の提出が必要なため、手続きを怠らないようにしましょう。

よくある質問

厚生年金に加入すると、どんなメリットがありますか?

従業員の福利厚生になり、モチベーションアップによる生産性向上が期待できます。詳しくはこちらをご覧ください。

任意適用に同意しなかった労働者も、厚生年金に加入しなければなりませんか?

任意適用であっても適用を受けた場合には強制適用と同じように扱われるため、同意したかどうかにかかわらず厚生年金に加入しなければなりません。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:坪 義生(社会保険労務士)

じんじ労務経営研究所代表(社会保険労務士登録)、労働保険事務組合 鎌ヶ谷経営労務管理協会会長、清和大学法学部非常勤講師、「月刊人事マネジメント」(㈱ビジネスパブリッシング)取材記者。社会保険診療報酬支払基金、衆議院議員秘書、㈱矢野経済研究所、等を経て、91年、じんじ労務経営研究所を開設。同年より、企業のトップ・人事担当者を中心に人事制度を取材・執筆するほか、中小企業の労働社会保険業務、自治体管理職研修の講師など広範に活動。著書に『社会保険・労働保険の実務 疑問解決マニュアル』(三修社)、『管理者のための労務管理のしくみと実務マニュアル』(三修社)、『リーダー部課長のための最新ビジネス法律常識ハンドブック』(日本実業出版社、共著)などがある。

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