• 更新日 : 2024年12月13日

休職手当とは?主な種類6つ!傷病手当金の条件も解説

病気などで休職する場合、休職手当の支給の手続きをすることで、気がかりな休職期間中の経済的な困窮を回避することができます。この記事では休職手当の概要や支給条件、金額、申請方法について解説し、休職期間中に支給される手当の種類についてもご紹介します。

休職手当とは「傷病手当金」を指すケースが多い

厳密に言えば「休職手当」と呼ばれる手当はありません。ただ、一般的には協会けんぽや健康保険組合から支給される「傷病手当金」を休職手当と呼ぶケースが多いようです。ほかにも、休職中に会社から支給されるさまざまな手当を休職手当と呼ぶ場合があります。なお、本記事では、『休職手当』を傷病手当金のこととして解説します。

そもそも「傷病手当金」とは?

傷病手当金とは、協会けんぽや健康保険組合の加入者が病気や怪我などで、休職をせざるを得ない場合に支給される健康保険の保険給付の一つです。基本的に休職中の従業員に対して企業は給料を支払う義務はありません。しかし、給料が支払われないと、その人の生活が立ち行かなくなってしまいます。

病気や怪我により働けなくなってしまい、会社から給料が支払われない労働者やその家族の生活を支援する目的で傷病手当金が支給されます。

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傷病手当金(休職手当)の支給条件

傷病手当金受給のためには一定の要件をクリアしなければなりません。例えば協会けんぽの傷病手当金を受け取るためには、以下のような条件をすべて満たしている必要があります。

健康保険に加入していること

傷病手当金は健康保険に加入していることが大前提となります。当然のことながら未加入者は対象外となってしまうので注意しましょう。

業務外の事由によって病気や怪我をしてその療養のために休職する

傷病手当金は職場以外で病気に罹患した、あるいは業務時間外に事故などで負傷して、その療養のために休職する必要があるや労務不能な場合に支給されます。なお、業務災害と通勤災害を原因とする怪我や病気で休業する場合は、労災保険が適用され、休業補償給付や休業給付が支給されます。また、美容整形など自らが希望して治療を受けるケースは傷病手当金の支給対象外です。

仕事に就くことが困難である

傷病手当金は病気や怪我によって仕事を就くことができない人を支援するための制度です。医師などの意見や加入者の業務の内容などによって就業できるかできないかが判断されます。

4日間以上就業できなかったとき(連続3日間を含む)

傷病手当金を受給するには、連続する3日間の待期期間が満了していることが必要です。例えば、初日に休業しても2日目に出勤すると、そこで断続し、3日目に休業した場合、そこから起算し直すことになります。

会社から休業期間中に給料が出ないこと

傷病手当金は休職中に収入がなくなってしまった労働者を支援するという目的で支給されます。そのため、休職期間中に会社から給与が支給される場合は、以上の条件を満たしていても対象外となります。なお、会社から支給される手当などが傷病手当金を下回る場合、その差額分のみ傷病手当が支給されます。

傷病手当金(休職手当)でもらえる金額・計算方法

傷病手当金の1日あたりの金額は以下のような計算式で求められます。

支給開始日以前の継続した12カ月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3

おおむね月給の3分の2が支給されます。なお、最初に要件を満たした日が支給開始日です。例えば、標準報酬月額が30万円の場合、1日あたりの支給額は以下のようになります。

300,000÷30×2/3=6,667円

つまり、休職中に傷病手当を受給する場合、1日あたり6,667円が支給されます。

昇給した場合はどうなる?

例えば12カ月間の間に昇給した場合に関しても、その期間の平均月額報酬を算出すれば問題ありません。例えば3カ月間は28万円、昇給してそれ以降の9カ月間は30万円だったとしましょう。

(280,000×3+300,000×9)÷12÷30×2/3=6,556円

このケースでは1日あたり6,556円の傷病手当が受給できます。

支給開始日以前の期間が12カ月に満たない場合はどうなる?

健康保険の加入期間が12カ月に満たない場合、「支給開始日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額の平均」か「標準報酬月額の平均値」のいずれか低い方で計算します。

傷病手当金(休職手当)はいつまでもらえる?期間は?

傷病手当金は支給を開始した日から通算して1年6カ月間受給することが可能です。通算なので、例えば一旦出勤して給与を受け取ったとしても、受給できるのは受給開始日から1年6カ月です。

なお、支給開始日が2020年7月2日までの場合、支給開始日から最長1年6カ月受給でき、出勤期間はそれに含まれません。

傷病手当金(休職手当)の申請方法

傷病手当金は本人が申請することも、会社が手続きを行うことも可能です。ここからはそれぞれのパターンで手続きの流れを見ていきましょう。

従業員の手続き

まず傷病手当金を受給するためには、働けない状態であることを証明しなければなりません。医師の診断を受けて診断書をもらいましょう。その後、傷病手当金支給申請書を記載します。用紙は協会けんぽの公式ホームページでダウンロードできるほか、協会けんぽ窓口でも入手できます。

申請書を作成したら診断書を添えてご自身の居住地を所管している協会けんぽの窓口に提出するか郵送します。

事業主の手続き

傷病手当金の手続きは会社で代行してもらうことも可能です。その場合も流れは同じで、医師の診断書をもらった上で申請書を作成し、会社から協会けんぽの窓口に提出してもらいます。

【傷病手当金以外】休職中の手当・給付金の種類

傷病手当金のほかにも休職中にもらえる手当や給付金には以下のようなものがあります。

会社の規定による手当

会社は基本的に休職者に対しては給与やボーナスを支払う義務はありません。これをノーワーク・ノーペイの原則といい、民法第624条が根拠となっています。しかし、従業員の生活を補償することを目的として、独自に休職手当や休職保障を支給している会社もあります。支給額はその会社の就業規則によります。

休業補償給付・休業給付

労働者が業務災害や通勤災害による傷病で休業した場合、労災保険の保険給付事業から休業補償給付(業務災害)や休業給付(通勤災害)が支給されます。このほか、社会復帰促進等事業から休業特別支給金も支給されるため、労災保険からは休業1日あたり概ね賃金の80%(保険給付60%、特別支給金20%)の支給されることになります。

なお、健康保険の傷病手当金と異なり、1年6カ月での打ち切りはなく、支給要件を満たしている限り継続的に支給されます。

出産手当金

出産手当金とは健康保険の被保険者が出産のために休業し、かつ給料が支給されない場合に支給されます。出産の日以前42日から出産の翌日以降56日目までの範囲で、支給額は以下の計算式で算出されます。

支給開始日以前の継続した12カ月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3

例えば標準報酬月額が27万円の場合、

270,000÷30×2/3=6,000円

つまり、1日あたり6,000円が支給されることになります。

育児休業給付金

育児休業給付金とは雇用保険の被保険者を対象とし、1歳未満の子を養育するために育児休暇を取得した場合に受け取れる給付金です。支給額は以下の計算式で求められます。

休業開始時賃金日額×支給日数×67%(育児休業開始から181日目以降は50%)

休業開始時賃金日額とは、育児休業を取得する前の6カ月間の賃金を180で割った金額です。例えば休業開始時賃金日額が10,000円、支給日数が100日の場合、

10,000×100×67%=670,000円

つまり67万円が受け取れることになります。

なお、雇用保険に加入していることに加え、「1歳未満の子を養育するために、育児休業を取得した被保険者であること(2回まで分割取得可)」「休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上の)完全月が12カ月以上あること」「一支給単位期間中の就業日数が10日以下または就業した時間数が80時間以下であること」という条件を満たす必要があります。

介護休業給付金

介護休業給付金とは家族の介護のために休業する人を支援するための制度で、雇用保険の被保険者が対象です。配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫が対象家族で、受給期間は93日が上限です。介護給付金の受給額は以下の計算式で求めることができます。

休業開始時賃金日額×支給日数×67%

例えば休業開始時賃金日額が10,000円で、93日受給する場合は、

(10,000×93)×67%=623,100円

62万3,100円受給することができます。

なお、雇用保険に加入していることに加え、「介護休業を開始した日の前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上勤務した月が通算して12カ月以上あること」「同一事業主のもとで1年以上雇用が継続していること」「同一事業主のもとで介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6カ月を経過する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでないこと」のすべての条件を満たす必要があります。

企業として「休職手当」を用意すべき?

企業が独自に休職手当を支給するかどうかは任意となっています。ただ、福利厚生の一環として休職手当あるいは補償金制度を用意している会社もあるようです。休職手当を支給することで従業員のモチベーション維持につながる、離職率の低下につながる、優秀な人材が集まりやすくなるなどのメリットがあります。

ただし、原則は「ノーワーク・ノーペイ(働いている人に賃金を支給し、働いていない人には賃金を支給しない)」です。働いていない人に対しても賃金を支給することで、今度は真面目に働いている従業員が不満を持つケースもあるため、支給額に差をつける、条件を設けるなど、平等性を考慮して制度設計しましょう。

休職手当に関するよくある質問集

最後に、休職手当に関して皆さんが疑問を持ちやすい点に対してQ&A形式で回答していきます。

うつ病や適応障害で休職手当は出ますか?

出ます。傷病手当金はうつ病や適応障害などの精神疾患も対象となります。なお、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントなど、業務に起因して精神疾患に罹患した場合は、労働災害に該当し、8割の休業補償が受けられる可能性があります。

「産休前に休職すると、育児休業給付金が減る」って本当?

場合によっては減額される可能性があります。育児介護休業法による育児休業給付金は休業開始時賃金日額をもとに計算され、 これは育児休業を開始する前6か月間の賃金がもとになります。

この6カ月間に休業した場合で、かつその期間中が無給だった場合や減額された場合は、育休手当が減る可能性があります。

妊娠中ずっと休職する場合、育児休業給付金は出ますか?

育休開始日の2年前から育休開始日までの間に11日以上勤務した月が12カ月以上あれば休職していたとしても育児休業給付金を受給することは可能です。ただし、場合によっては支給額が減額してしまう可能性もあります。

休職中に転職活動をしても大丈夫ですか?

特に問題はありません。会社に籍を置いた状態で働きながら転職活動をされる方もいらっしゃいます。ただし、休職期間中であればまずは疾患や怪我の治療を最優先させましょう。また、会社によっては休職期間中あるいは在籍中の転職活動を禁止している場合もあります。就業規則をしっかりと確認しておきましょう。


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