- 更新日 : 2024年10月21日
住民税決定通知書とは?入手方法や用途について解説
地方税である住民税では、自治体から「住民税決定通知書」が交付されます。決定した税額を通知する文書ということはわかっても、その用途など、詳しいことについては意外と知らないものです。今回は、住民税決定通知書が必要となるケースや文書中で確認すべき事項について、また紛失した場合の対処法などについても解説していきます。
目次
住民税決定通知書とは
「住民税決定通知書」とは、住所地の自治体が前年の所得をもとに算出し、決定した住民税の税額を通知する書類のことです。住民税決定通知書という名称が一般的に使用されることが多いようですが、単に「税額通知書」とする自治体もあります。
実は、厳密には住民税の納付方法によって名称が異なり、通知書の交付先も納付方法によって違ってきます。そこで、文書の説明の前に、まずは住民税とは何か、そして、その納付方法について説明しておきましょう。
住民税とは?
住民税とは、地方税のひとつで、都道府県が課税する道府県民税(東京都は都民税)と、市区町村が課税する市町村民税(区市町村民税)を総称したものです。1月1日に住所がある都道府県、市町村に納付します。
住民税の金額は、前年の所得に応じて計算する「所得割」と、一律に定額で課税される「均等割」の合計額です。所得割の税率は10%(道府県民税・都民税4%+区市町村民税6%)で、均等割は4,000円です。
住民税は、自治体が教育、社会福祉のほか、道路、公園、住宅の建設や管理など、さまざまな行政サービスをするための財源です。個人だけでなく、法人も納税義務があり、個人の場合は「個人住民税」、法人の場合は「法人住民税」と呼ばれています。
住民税の納付方法
今回のテーマで扱うのは、個人住民税ですが、納付方法には次の2種類があります。
普通徴収は、個人事業主が行う納付方法です。毎年、個人事業主が確定申告すると、税務署から確定申告書に記載された情報が市町村に送付され、納税額が決定されたのち、個人宛に住民税決定通知書と納付書が送付されます。通知書は、一般的に「市民税・県民税 税額決定・納税通知書」といった名称です。
納付は、送られてきた納付書により、金融機関やコンビニで一括または4期分割で支払います。一括の納付期限は6月末まで、4期分割の納付期限は第1期が6月末、第2期が8月末、第3期が10月末、第4期が翌年1月末までとなっています。
特別徴収は、給与所得者である会社員に適用される納付方法です。毎年、1月末を期限とし、勤務先から前年の給与支払報告書が市町村に送付されます。そこで税額を決定後、5月頃に特別徴収税額決定通知書と納付書が勤務先へ送付され、6月より給与から源泉徴収が行われます。
特別徴収の住民税決定通知書は「給与所得等に係る特別市民税・県民税 特別徴収税額の決定通知書」という名称で、勤務先に送付されます。
文書の名称が、厳密には普通徴収と特別徴収で異なることは、おわかりいただけたと思います。ここでは、煩雑を避けるため、住民税決定通知書で統一して説明していきます。
住民税決定通知書はいつ届く?
住民税決定通知書は、毎年5〜6月頃に届きます。普通徴収は納税者の自宅宛に、特別徴収は納税者が勤める会社宛に、納付書と合わせて送付されます。
住民税決定通知書が届かない場合に考えられるのは、非課税か申告が行われていない場合です。それ以外は遅くとも6月中には送付されるため、確認しておきましょう。
住民税決定通知書が必要になる場面
住民税決定通知書は、自分がいくら住民税を支払っているのかを確認するのが本来の用途です。
それ以外にも、住宅ローンの申込手続きや、ふるさと納税による控除額の確認で必要になります。
詳しくみていきましょう。
1.住宅ローンの申込手続き
住民税は前年度の所得をもとに算出されているため、年収を概算することが可能です。そのため、住民税決定通知書は自治体という公的機関が年収を証明する書類になり、金融機関に住宅ローンの申込をする際は提出を求められることがあります。個人事業主の場合は自治体から直接本人宛に送付されるため、このようなケースを想定して保存しておくとよいでしょう。
会社員の場合、住民税決定通知書は勤務先に送付されるため、必要な場合は会社から本人に交付することになります。
また、夫婦の収入を合算して住宅ローンを組む場合は、2人の住民税課税決定通知書が必要です。
なお、住民税決定通知書を紛失した場合、再発行はできません。その場合、自治体で住民税の課税証明書を発行してもらい、代用することは可能です。
2.ふるさと納税による控除額の確認
ふるさと納税では、寄付金から2,000円を差引いた額が住民税から控除されますが、この控除が正しく行われているか、住民税決定通知書で確認できます。
ふるさと納税で控除を受けるためには「確定申告」と「ワンストップ特例制度」の2つの方法があり、どちらの手続きで行ったかによって控除の確認方法が異なります。
具体的な確認方法については、このあとの項目で説明します。
住民税決定通知書の入手方法
おさらいになりますが、住民税決定通知書は、個人事業主と会社員では住民税の納付方法が異なるため、その入手方法が異なります。
個人事業主の場合は、住民税を普通徴収として納付するため、住民税決定通知書は直接、送付されてきます。一方、会社員の場合は、住民税は特別徴収です。住民税決定通知書は、本人ではなく、住民税を源泉徴収する勤務先に送付されます。会社から配布されない場合は、請求して入手することになります。
なお、会社員であっても、住民税決定通知書が直接、本人に送付されてくる場合があります。例えば、休職等で給与から源泉徴収できない状態になった場合のほか、勤務形態によって特別徴収ができない場合などが考えられるでしょう。
住民税決定通知書の見方
次に住民税決定通知書の見方について説明していきましょう。ここでは、会社員の場合の「給与所得等に係る特別市民税・県民税 特別徴収税額の決定通知書」を取り上げます。
通知書で確認すべき項目は、次の5つです。
- 所得
- 所得控除
- 課税標準
- 適用
- 税額
それぞれ、詳しくみていきましょう。
引用:納税義務者用の特別徴収税額決定通知書の記載内容の秘匿|総務省
「所得」欄
では、①の「所得」欄からみていきます。
引用:納税義務者用の特別徴収税額決定通知書の記載内容の秘匿|総務省
「所得」欄に記載されている項目とその内容は、次のとおりです。
- 給与収入:前年の1月1日から12月31日に受け取った年収の金額
- 給与所得:給与収入から給与所得控除を差引いた金額
- その他の所得計:給与所得以外に所得がある場合の合計金額
- 主たる給与以外の合算所得区分:給与以外の所得がある場合に所得区分が表示される
- 総所得金額①:給与所得とその他の所得計の合計、税金の計算のもとになる
給与収入と給与所得の金額が正しいかは、年末調整の翌年1月頃に渡される源泉徴収票の支払金額と、給与所得控除後の金額で確認してください。
給与所得は、給与収入から必要経費に相当する額を差引いて計算します。会社員のような給与所得者の場合、必要経費に代わるものとして、収入金額に応じた給与所得控除を差引いて算出しますが、この給与所得控除額は、給与等の収入金額に応じて決められています。
「所得控除」欄
次に、②の「所得控除」欄について説明します。
引用:納税義務者用の特別徴収税額決定通知書の記載内容の秘匿|総務省
所得控除欄には、前年の所得から控除された各種所得控除および控除金額金額が記載されます。
雑損 | 災害や盗難などで資産に損害を受けた場合の控除 |
---|---|
医療費 | 一定以上の医療費を支払ったときに受けられる控除 |
社会保険料 | 健康保険や国民年金、厚生年金の保険料など、定められた保険料は全額控除される |
小規模企業共済 | iDeCoの拠出金など、小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金の控除 |
生命保険料 | 支払った生命保険料額に応じて受けられる控除 |
地震保険料 | 支払った地震保険料額に応じて受けられる控除 |
障・寡・勤 | 障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除など、該当する場合に受けられる控除 |
配偶者 | 所得税法上の控除対象配偶者がいるときに受けられる控除 |
配偶者特別 | 配偶者に48万円以上の所得があっても、その所得が一定額以下の場合に受けられる控除 |
扶養 | 所得税法上の控除対象扶養親族に当てはまる人がいるときに受けられる控除 |
基礎 | 納税者本人の合計所得金額に応じて受けられる控除。合計所得金額が2,400万円以下の場合は一律43万円 |
控除内容や金額が正しいかどうかは、源泉徴収票や確定申告の内容で確認してください。「所得控除合計②」に所得控除の合計金額が記載されています。こちらの金額が正しいかについても確認しておきましょう。
「課税標準」欄
引用:納税義務者用の特別徴収税額決定通知書の記載内容の秘匿|総務省
③の「課税標準」欄には、①所得欄の「総所得金額①」から②所得控除欄の「所得控除合計②」を差引いた「総所得③」が記載されています。これが税額計算の基礎となる額です。
「課税標準」欄にあるほかの所得(山林所得、分離短期譲渡など)がある場合、これを「総所得③」に加算して税額を計算します。
「適用」欄
引用:納税義務者用の特別徴収税額決定通知書の記載内容の秘匿|総務省
④の「摘要」欄は、主に納税額から控除される控除について記載されます。ふるさと納税をした場合に確認が必要です。
ふるさと納税は、「ワンストップ特例制度」を利用した場合と確定申告をした場合で確認方法が異なります。
(「ワンストップ特例制度」を利用した場合)
「寄附金税額控除 市民税○○円 県民税○○円」という記載があります。控除されている市民税と道府県民税(東京都は都民税)の合計金額が「寄附金額-2,000円」となっていることを確認しましょう。間違いなければ、控除により自己負担は2,000円のみということになります。
(確定申告した場合)
ふるさと納税の控除は「住民税」と「所得税」の双方で行われます。自己負担が2,000円のみであることを確認するには、住民税決定通知書だけでなく、前年の確定申告書の控えも必要です。
所得税の税率については、確定申告書の「課税される所得金額」の金額が当てはまる「税率」を次の所得税の速算表でみつけます。
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
所得税からの控除額を計算します。
③「摘要」欄の「寄附金税額控除 市民税○○円 県民税○○円」という記載を確認します。
控除されている市民税と道府県民税の合計金額を計算し、「寄附金額―2,000円」となっていれば、控除により自己負担は2,000円だけだったことになります。
「税額」欄
最後に⑤の「税額」欄についてみていきます。
引用:納税義務者用の特別徴収税額決定通知書の記載内容の秘匿|総務省
課税標準で計算した課税所得に対して、住民税と道府県民税のそれぞれについて、所定の税率を乗じた額が「市町村・税額控除前所得割額④」「道府県・税額控除前所得割額④」として記載されています。
住民税は課税所得から合計10%が課税され、市町村民税と道府県民税はそれぞれ以下の割合で課税されます。
- 市町村民税:6%
- 道府県民税:4%
ふるさと納税や住宅ローンでの控除はそれぞれの税額控除前所得割額④から差引かれて、「⑥所得割額」に記載されています。
住民税決定通知書が手元にない場合
住民税決定通知書をどのように入手するかはすでに述べてきた通りです。しかし、個人事業者で住民税決定通知書が届いていないケースがまったくないとは言い切れません。会社員の場合も勤務先からもらっていないことも考えられます。また、紛失してしまったということもあるかもしれません。
住民税決定通知書が必要な場合、どうすればよいのでしょうか。
住民税決定通知書が届いていないときは?
個人事業主であれば、本当に届いていないのか、しっかり確かめたうえで市町村の税務課等の担当部署に確認する必要があります。
普通徴収は、本人が手続きをするため、住民税決定通知書と一緒に送付される納付書が手元にない状態を放置していると、納税し忘れてしまう可能性があります。確認を怠らないようにすることが大切です。何らかの手違いで送付されていなければ、手続きをとってもらえるでしょう。送付済みということであれば、後述する再発行の問題となります。
会社員の場合は、勤務先が送付すことを失念している可能性が高いと思われます。市民税の担当部署に問い合わせてみましょう。
住民税決定通知書をなくした場合の再発行は可能?
では、紛失してしまったことが明らかな場合はどうすべきなのでしょうか。結論からいえば、残念ながら住民税決定通知書は再発行してもらえません。
住宅ローンの手続きでは、金融機関は「所得・課税証明書」で前年の収入は証明されますので代用で支障はないと思われます。
また、「所得・課税証明書」には、住民税決定通知書に記載されている項目のすべてが証明事項となっていますので、ふるさと納税の控除の確認もできます。発行の申請は、市民税の担当部署になりますが、手数料がかかります。
住民税決定通知書の内容を確認しましょう
住民税決定通知書がどのような文書なのか、詳しく解説してきました。個人事業主の場合は、納付書と一緒に送付される大切な書類です。紛失することのないように保管しましょう。会社員の方も勤務先まかせにせず、手渡されたら、内容をしっかりと確認することを心がけてください。
よくある質問
住民税決定通知書とは何ですか?
住所地の自治体が前年の所得をもとに算出し、決定した住民税の税額を通知する書類のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
住民税決定通知書は、どのようなときに必要になりますか?
住宅ローンの借入の手続やふるさと納税の控除を確認する際に必要となります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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