- 更新日 : 2024年10月21日
休暇とは?意味や種類、休日との違い、特別休暇の事例を解説!
働いている方は日頃から「休暇」や「休日」という言葉をよく聞くと思います。「休暇」と「休日」はどちらも休みという意味ですが、それぞれ定義が異なります。あなたはその違いについてどの程度正しく理解できていますか?
今回は、休暇と休日の定義の違いや休暇の分類や種類、休暇を取得することの重要性などについて解説していきます。
目次
休暇とは?
休暇は、労働する義務が免除される日という意味です。ここでは、休暇と休日の意味の違い、休暇の種類について見ていきます。
休暇と休日の違い
休暇とは、労働者が労働する義務のある日に会社がその労働義務を免除する日のことを言います。休暇の種類には、法定休暇と法定外休暇があります。
法定休暇には、年次有給休暇、育児休業、介護休業、看護休暇などがあり、法定外休暇には慶弔休暇やリフレッシュ休暇などがあります。
休日は労働者が労働する義務を負わない日のことを言い、原則として、0:00から24:00までの24時間(暦日)で与えます。休日には、労働基準法で定められた1週間に1日、または、4週間に4日の休日である法定休日と、会社が法定休日以外に労働者に与える所定休日があります。
法定休暇と法定外休暇の違い
法定休暇は、法律上で一定の要件を満たす場合に必ず付与する必要のある休暇です。それに対して、法定外休暇は、就業規則等に基づいて会社のルールとして独自に付与する休暇です。法律に定められて付与されるか、会社の任意で付与されるかが違いになります。
法定休暇の種類
法定休暇とは、労働基準法や育児介護休業法によって定められている休暇のことです。法定休暇には年次有給休暇、介護休暇、生理休暇などがあります。例をあげて説明していきます。
年次有給休暇
年次有給休暇は、労働者が本来働く日に休んでも、その日は出勤したことにして給与がもらえる権利のある休暇です。一定期間勤続し、かつ定められた出勤率を達成した労働者に対して、心身をリフレッシュしゆとりある生活を保障するために付与されます。
年次有給休暇は、労働者の都合によりいつ取得してもよいもので、有給で休むことができます。
年次有給休暇が付与されるためには、次の2点の条件を満たす労働者であることが必要です。
- 6ヶ月以上継続して雇用されている
- 所定労働日の8割以上出勤している
有給休暇の具体的な付与日数は、次の表のように定められています。日数の基準は、継続勤務年数と1週間の所定労働日数になります。
通常の労働者の付与日数
継続勤務年数(年) | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数(日) | 10 | 11 | 12 | 14 | 16 | 18 | 20 |
週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数は、次の表のとおりです。
週所定労働日数 | 1年間の所定労働日数 | 継続勤務年数(年) | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 | |||
付与日数(日) | 4日 | 169日~216日 | 7 | 8 | 9 | 10 | 12 | 13 | 15 |
3日 | 121日~168日 | 5 | 6 | 6 | 8 | 9 | 10 | 11 | |
2日 | 73日~120日 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 | 6 | 7 | |
1日 | 48日~72日 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 |
参考:厚生労働省 年次年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています
産前産後休業
産前産後休業とは、いわゆる産休のことです。産休は、「産前休業」と「産後休業」の2つがあります。産前休業は取得が任意のため、希望する場合は事前の申請が必要です。出産予定日の6週間前(42日前)が産前休業期間となります。
一方の産後休業は、出産を終えた母体の保護を目的とした休みのことです。産後休暇の取得は義務になり、出産の翌日から8週間は原則として就業できません。
育児休業
育児休業は、原則1歳未満の子どもを養育するための休暇制度のことです。いわゆる育休のことを指します。育児休業の対象者は、1歳未満の子どもを養育している労働者で、期間は原則として子どもが1歳になるまでです。
介護休暇
介護休暇は、介護休業とは異なり、要介護状態になった家族を介護する労働者から申し出があった場合に、対象家族が1人の場合は年に5日、2人以上の場合は年に10日の休暇を取得できる制度です。なお、1日単位だけではなく、時間単位で請求があった場合は、その範囲で与えるようにしなければなりません。
時間単位の取得上限は、1日の就業時間×日数で計算します。就業時間が8時間で対象が1名の場合は40時間、2名以上の場合は80時間まで取得可能です。
対象家族となるのは、次のとおりです。
- 配偶者(事実婚の場合を含む)
- 父母(養子母を含む)
- 子(養子を含む)
- 兄弟姉妹及び孫
- 配偶者の父母
要介護者が範囲外の場合は介護休暇を取得できませんので、注意しましょう。
子の看護休暇
子の看護休暇は、子どもが病気やケガなどの際の世話、健康診断や予防接種時の付添いなどが必要な小学校就学前の子を養育する労働者から申し出があったときに取得できる休暇です。
子どもが1人の場合は年に5日、2人の場合は年に10日の休暇を取得できます。なお、1日単位だけではなく、時間単位で請求があった場合は、その範囲で与えるようにしなければなりません。
生理休暇
生理休暇は、生理日に働くことがつらくてどうしても勤務するのが難しい女性のために設けられている休暇です。
請求があった場合は必ず取得させなければなりません。出勤を強制したり、請求を認めなかったりした場合は違法となります。
生理休暇を取得できる日数に上限がなく、企業側による日数の限定もできません。
裁判員休暇
裁判員休暇とは、従業員が裁判員制度によって裁判員に選任された場合にその職務を果たすための期間、取得が許可される休暇のことです。裁判員の職務は、国によって選任されるため公の職務に当たります。したがって、裁判員等に選ばれた従業員から請求を受けた場合には、会社は裁判員休暇を付与しなければなりません。
なお、要する日数は、裁判員として正式に選任されるか、裁判員候補のみかによって、異なります。裁判員候補で終わった場合は、選任手続き当日のみで終了するため、半日~1日程度の休暇となるでしょう。
一方、裁判員として選任された場合は、事件の内容によって変わりますが、5日前後必要です。
法定外休暇の種類
法定外休暇は会社が独自で定めた休暇のことです。法定外休暇には、慶弔休暇などがあります。例をあげて説明していきます。
慶弔休暇
慶弔休暇は、慶事や弔事の際に特別に休暇を与える制度のことです。法定外の休暇であるため、制度を設けるか設けないかは会社ごとに自由に決めることができます。また、制度を設けた場合でも、会社が独自にルールを規定できるため、付与条件、付与日数などが会社ごとに異なります。
夏季休暇
夏季休暇は、会社ごとに制度を設けて「夏季に取得させる休暇」です。労働基準法では夏季休暇も法定外休暇のため、会社に夏季休暇の制度がなくても法律違反にはなりません。
年末年始休暇
年末年始休暇も会社ごとに制度を設けて「年末年始の時季に取得させる休暇」です。年末年始休暇は、一般的には、年末の大晦日あたりから年始の正月三が日までの休みのことを言います。行政機関は法律で12月29日〜1月3日と決まっています。
病気休暇
病気休暇とは、通常の年次有給休暇とは別にケガや病気の療養目的で取得できる休暇です。治療が必要な疾病を抱えている人や、療養しながら就労する人をサポートするための制度といえます。
病気休暇を取得できるのは、業務と因果関係のない病気によって就業不能となり、療養が長期におよぶ場合です。法律に規定されている制度ではないため、要件や日数は会社が任意に決められます。目安としては、傷病手当金の支給要件である連続4日以上の休業というのが1つの基準といえるでしょう。
リフレッシュ休暇
リフレッシュ休暇は、企業へ長年勤務した社員に対する永年勤続表彰として与えられる休暇です。日数や条件は、企業が独自に決められます。
休暇を取ることの重要性
労働者には年次有給休暇を取る権利があります。しかし「職場の周囲の人に迷惑をかけてしまいそう」「休暇の前後が忙しくなるから」などの理由でなかなか取得ができていないという声も少なくありません。
しかし、周囲の目や多忙な仕事を理由にして休暇を取らずに長時間労働をしていると、疲労が蓄積して逆に生産性が落ちることが心配されます。状況によっては健康に支障が出て欠勤することも考えられるのではないでしょうか。
会社の方でも休暇に関する意識改革や休暇を取りやすい環境づくりを心がけることが重要です。労働者が休暇の取得で心身をリフレッシュさせて、良いパフォーマンスを発揮し、仕事で求める成果を出せるように考えていきましょう。
特別な休暇を導入している企業の事例
労働者のワーク・ライフ・バランスを進めるために、年次有給休暇に加えて、休暇の目的や取得方法を柔軟に設定できる特別な休暇制度を設け、労働者の健康と生活に配慮する必要があります。それに取り組むために多くの会社がさまざまな休暇制度を導入しています。
参考:特別な休暇制度とは|厚生労働省「働き方・休み方導入サポートサイト」
では、特別な休暇を導入している会社の具体例を見てみましょう。
三菱ガス化学株式会社では、ドナー休暇、ボランティア休暇、裁判員休暇などの休暇制度を導入しています。
ドナー休暇
骨髄ドナーへの登録、検査、入院する場合に、年間3日まで有給で取得可能
ボランティア休暇
災害時緊急支援のためのボランティア活動に参加する場合、年間3日まで有給で取得可能
裁判員休暇
従業員が裁判員に選定されたら、公務に参加する日数を出勤扱いとして運用
参考:三菱ガス化学株式会社|厚生労働省「働き方・休み方導入サポートサイト」
他の会社の事例については、働き方・休み方導入サポートサイトの「特別な休暇制度導入事例」を参照してください。
参考:特別な休暇制度導入事例|厚生労働省「働き方・休み方導入サポートサイト」
休暇届のテンプレート-無料ダウンロード
休暇を取る際には、事前に休暇届を提出しましょう。自身の不在を周囲に知らせ、業務の進行をスムーズにするために必要な手続きです。
以下より、休暇届のテンプレートを無料でダウンロードいただけます。必要に応じてカスタマイズしてご活用ください。
厚生労働省による新たな特別休暇への取り組み
厚生労働省が運営する「働き方・休み方改善ポータルサイト」の中に、新たに「更年期休暇」を設け、更年期の症状によって心身の不調をきたし業務が困難な場合に取れる特別休暇制度の創設を促進させるために情報発信を強化する方向であることがニュースで伝えられました。
厚生労働省の狙いとしては、女性だけでなく、男性の更年期障害の医学的な説明も掲載しつつ、男女の更年期にまつわる不調への理解浸透を目指すことが目的とされています。
実際に、厚生労働省が行った「『仕事と生活の調和』の実現及び特別な休暇制度の普及促進に関する意識調査」によると、健康に関してどのような特別休暇(有給)がほしいかを尋ねた問いにおいて、「更年期症状の治療や通院の際に取得できる休暇」と男性28・9%、女性35・4%が回答しているのが現状です。
また、同調査で、特別休暇の導入状況を企業に対して調べたところ、更年期症状で取得できる休暇を導入している企業はわずか0・9%でした。導入予定や導入を検討している企業も1割ほどにとどまっています。
厚生労働省は、204年秋中にポータルサイトで男女の更年期症状や更年期休暇を求める従業員の声、更年期休暇を導入した事例などの情報発信を強化するとしています。
参考:厚生労働省 令和5年度「仕事と生活の調和」の実現及び特別な休暇制度の普及促進に関する意識調査報告書
企業で特別休暇制度を導入するには?
会社で特別休暇を導入する際は、取得条件などの規則を定めたうえで就業規則に記載する必要があります。ここでは、特別休暇制度を導入する際の手順を紹介します。
特別休暇の目的・取得条件、申請フローの決定
特別休暇を導入するにあたり、どのような目的で特別休暇を設定するのか、目的を明確にします。従業員に事前に聞き取りを行い、どのような内容の休暇が求められているのかを把握しておくとよいでしょう。
就業規則への追加、労働基準監督署への届出
休暇の目的が決まったら、特別休暇の内容や名称、取り決めなどを就業規則に規定する必要があります。規定内容としては、取得対象者や取得日数、取得制限、取得期限、賃金支払の有無などです。
なお、就業規則は、労働者が10人以上の場合は作成義務があるため注意しましょう。就業規則を改定した場合は、労働基準監督署への届け出も忘れずに行ってください。「就業規則」「就業規則(変更)届」「意見書(労働者代表の意見)」の3点を労働基準監督署の窓口に訪問または郵送にて提出すればOKです。
実際に運用してみて実態と就業規則とに乖離が見られる場合や、法律が変わったタイミングなどで定期的に就業規則を見直すようにしましょう。
就業規則は、一定のテンプレートのもとで作成すると混乱が生じません。以下で、就業規則のテンプレートを紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
社内周知
就業規則に記載していても、社員が理解して取得しなければ設けた意味がありません。新たに休暇ができた旨、就業規則に詳細が記載されている旨を社員に周知しましょう。
休暇を理解して、適切な勤怠管理を行いましょう!
今回は、休暇の意味、休暇の種類や休暇を取ることの重要性について説明しました。また、最後に特別な休暇制度を導入している企業の事例を紹介しています。休暇について正しい理解を深め、適切な休暇管理を含む勤怠管理ができるようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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