• 更新日 : 2023年11月10日

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは?意味や各要素の違いを解説!

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは?意味や各要素の違いを解説!

MVVとは、ミッション・ビジョン・バリューのそれぞれの英語の頭文字をとったものです。企業の存在意義や果たすべき使命、目指すべき方向性、行動指針を言語化したものであり、多くの企業でこの考え方を取り入れています。

ここでは、ミッション、ビジョン、バリューのそれぞれの違いや意味を解説するとともに、具体的な企業例を紹介します。

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは?

MVVとは、「Mission(ミッション)」「Vision(ビジョン)」「Value(バリュー)」の頭文字をとった言葉です。経営学者のピーター・F・ドラッカー氏によって提唱され、現在では多くの企業でこの考え方を取り入れています。

ミッション(Mission)は企業が社会で実現したいこと、ビジョン(Vision)は企業のミッションが実現したときの状態、バリュー(Value)は大切にする価値観や行動指針を意味します。

一見するとどれも同じに見えるかもしれませんが、企業が目指す方向や実現したいことなど、それぞれに違いがあります。ここでは、MVVの目的や、似た言葉との違いについて説明します。

企業理念および経営理念との違い

企業が掲げる指針で思いつくものといえば、「企業理念」や「経営理念」ではないでしょうか。この2つは、どちらも企業としてのあり方を示す、なくてはならないものです。企業理念には不変性があり、経営者や時代が変わったとしても、企業の存在価値、存在理由、存在目的といった、その企業が大切にするべき価値観は変わりません。

一方、経営理念は、経営方針が大きく転換するタイミングで刷新されることがあります。企業の根本的な活動方針を言語化したもので、企業が実現したいゴールを明確に示したものです。

企業理念と経営理念には、こうした違いがある一方、企業によって位置づけが異なります。MVVでいえば、ミッションとビジョンに近しいものといえるでしょう。

ミッションとは

ミッションとは、企業が社会で実現したいことを言語化したものです。会社の使命感や、社会で存在する意義を表しています。ミッションを通じて、企業が目指す社会の中での価値を社外・社内に浸透させる効果があります。

ビジョンとは

ビジョンとは、企業のミッションが実現したときの状態、つまり、将来像や理想像を表したものです。具体的な状態や数値目標を設定する場合もありますが、中長期的な企業目標としてビジョンが策定されるケースも少なくありません。

バリューとは

バリューとは、ミッションやビジョンの実現のために大切にする価値観や行動指針を言語化したものです。ビジョンを達成しミッションを実現するためには「このように行動しなければならない」などと、何が求められるのかを表しています。バリューは、従業員が行動・判断する際に基準となる価値観としての意味合いもあります。

3つの要素の違い

MVVは、どれも企業の想いを表したものです。ミッションを上位概念とし、段階構造があると理解すると、3つの要素の違いが明確になります。

  • ミッション:企業が果たすべき使命や役割
  • ビジョン:中長期的に達成したい目標
  • バリュー:達成の手段、行動指針

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)が注目されている背景

MVVを企業が設定するのは、企業の存在価値を明確にするためです。近年、企業は経済的な利益を上げるだけではなく、社会的な貢献が重要視される傾向が高まっています。企業の社会的な貢献には、事業活動を通じた環境保護や、働きやすい職場作り、組織の多様性の確保などさまざまなものが含まれます。

環境や社会に配慮した事業を行う企業に投資する「ESG投資」や、自社の人材育成や社内環境整備方針を社外に向けて開示する「人的資本の情報開示」の流れは、まさに消費者や株主が企業の社会的な在り方について注目していることのあらわれともいえます。

MVVがあることで、「どのような企業か」「何を目指している企業か」を対外的に発信することができます。また、ミッションやビジョンは、組織の在り方や事業方針を見直すきっかけにもなります。確固としたMVVがあることは、ブレない組織作りにつながるのです。

MVV(ミッション・ビジョン・カルチャー)を策定するメリット

MVVを設定するメリットについて、以下で見てみましょう。

従業員のエンゲージメント向上・離職率の低下

MVVは、従業員のエンゲージメントを向上させ、離職率を低下させる効果が期待できます。すべきことや目指す方向性を組織として共有でき、一体感が生まれるとともに、「自分の日々の仕事がなんのためにあるのか」といった意義や目的が明確になり、仕事へのモチベーションが向上するのです。

採用のミスマッチ防止・魅力の発信

採用活動でもMVVは効果を発揮します。ミッションやバリューを発信し、そこに共感する人々が集まれば、入社後に「こんなはずじゃなかった」というミスマッチを減らすことができるでしょう。また、「どのような会社なのか」が言語化されており、採用活動での自社の魅力の発信もしやすくなります。

広報的な一貫性を担保できる

MVVは、会社の根幹をなすものです。ミッションやバリューに基づき広報、マーケティングを設定することで、会社としての一貫性を担保できます。環境の変化とともに、事業活動で求められることは変わります。また、日々の技術の進化によって、会社の売上に影響が出ることもあるでしょう。そのようなときに、ミッションやバリューに立ち返ることで、会社としてのあるべき姿を見直すことができるのです。

意思決定がスピーディーになる

企業活動ではさまざまな状況で意思決定を行いますが、マネージャーや現場が、バラバラな方向性で意思決定をしていては、意思疎通が図れず齟齬が生じてしまいます。MVVが1つの指針となることで、目的を共有でき、意思決定をスピーディーに行えるようになります。素早い意思決定は、変化の激しい現代において、企業の競争力を高める1つの要素にもなるでしょう。

MVVを策定する方法

企業や組織のあり方を言語化するMVVですが、どのようなステップで策定すればいいのでしょうか。ここでは、基本的な流れを解説します。

① 自社の事業や根本思想を整理する

自社事業の経営方針や、何のために事業活動を行っているのかについて、経営に関わるメンバーで内容を整理します。MVVの策定の第一段階は、事業に対して理解の深いメンバーで話し合うことが重要です。創業の想いや事業の目的について、代表者にヒアリングする方法も有効でしょう。

➁ 内容をシンプルかつ具体的にまとめる

ヒアリングした内容を、シンプルな言葉でまとめます。ミッションやビジョンは、長すぎてはいけません。短いフレーズで的確に表現することが重要です。そのとき、ミッションは目指すべき方向として主観的に語ることができます。ビジョンは、ミッションが実現したときの姿を表すため、「〇〇のトップカンパニー」「〇〇を代表するプラットフォーム」など、具体的かつ客観的に表現できるとよいでしょう。

③ 社内の人の合意を得る

策定したMVVを社内に発表し、意見を募りましょう。MVVは、社内の人の共感が重要です。フィードバックをもとに、再考することも検討事項の1つに入れましょう。

④ 社外への影響を考慮する

策定したMVVをすぐに発表するのではなく、社外の人の意見を聞いてみることも大切です。たとえば、新しくしたMVVが市場にどのような影響を与えるのか、株主や投資家の反応を想定してみましょう。企業に対してポジティブな印象が少ない、ネガティブなリスクが高まるなどといった影響を検討します。昨今では、発信のあり方ひとつで企業への信頼を大きく損ねるような事態に発展することがあります。第三者の意見を取り入れてみるのもよいでしょう。

⑤ 表彰・評価制度への反映

MVVは、評価制度等へ反映させることもできます。とくに、バリューは行動指針として社員に共有することが可能です。行動指針に沿った実績を上げた社員を評価することで、ビジョン、ミッションの実現に近づきます。

⑥ 経営者からの発信

策定したMVVについて経営者から発信します。ウェブサイトを刷新するのも有効です。株主総会など、経営方針に重要な影響を与えるタイミングで公開するのもよいでしょう。

MVVの企業事例

最後に、企業の具体的なミッション、ビジョン、バリューについて紹介します。

デジタル庁

2021年に設置されたデジタル庁は、日本の行政におけるIT化やDX化を推進させる目的で設置されました。行政機関として、日々の手続きややり取りをITの力で便利にすることを掲げ、かつ、年齢や性別、所属などに関係なく、すべての人が暮らしやすい社会を目指すことを、MVVに反映させています。

  • ミッション:誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を
  • ビジョン:Government as a Service、Government as a Startup
  • バリュー:
    ・一人ひとりのために
    ・常に目的を問い
    ・あらゆる立場を超えて
    ・成果への挑戦を続けます

出典:ミッション・ビジョン・バリュー|デジタル庁

キリンフォールディングス

飲料品を展開するキリンフォールディングスでは、企業の在り方と存在意義をミッションに反映し、どのような企業になりたいかという具体的な理想像をビジョンに落とし込んでいます。食品という多様な展開が想定できる事業に関わるなかで、社員が重視するべきバリューもシンプルにまとまっており、大企業のなかで浸透しやすいMVVといえるでしょう。

  • ミッション:キリングループは、自然と人を見つめるものづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献します
  • ビジョン:食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる
  • バリュー:熱意、誠意、多様性(Passion. Integrity. Diversity.)

出典:企業方針 | 企業情報 | キリンホールディングス

マネーフォワード

法人のバックオフィスSaaSや、個人向けの家計簿アプリなどを提供するマネーフォワードでは、「お金」が人生や社会に与える影響に対して、企業がどのように関わるかをMVVで言語化しています。

  • ミッション:お金を前へ。人生をもっと前へ。
  • ビジョン:すべての人の、「お金のプラットフォーム」になる。
  • バリュー:User Focus

一貫性のあるミッションとビジョン、そして「私たちは、いかなる制約があったとしても、

常にユーザーを見つめ続け、本質的な課題を理解し、ユーザーの期待や想像を超えた価値を提供します」というユーザーフォーカスのバリューは、社員の行動に大きな影響を与えるでしょう。

出典:Money Forward Culture Deck|株式会社マネーフォワード

MVVは企業のあり方や方向性を決める重要なもの

MVVで企業の存在価値、目的が言語化されていることで、どのような企業であるかが明確になります。変化の激しい昨今では、企業は事業活動を行うだけではなく、その事業が何のために存在するのかを常に問われます。

明確なMVVは、消費者、株主といった対外的な存在はもちろん、社内に対してもイメージアップやモチベーション向上といったプラスの効果をもたらすことでしょう。


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