• 更新日 : 2024年12月13日

休職中のボーナス・賞与は?1~3カ月休職したときの目安は?

賞与を支給する場合には就業規則にあらかじめ定めておく必要があります。休職中の賞与の支給は、賞与査定対象期間中の勤務実績及び支給日の在職の有無によって決定され、ノーワーク・ノーペイの原則に従って支給するのが一般的です。

本記事では、休職中のボーナスがどのような基準で支給されるか、よくある質問を交えて解説します。

一般企業の場合、休職中の従業員に賞与(ボーナス)はある?

休職制度を導入するか否か、導入する場合の賃金や賞与の支給の有無は、事業主の判断によって決定されます。多くの場合、ノーワーク・ノーペイの原則に従って支給しないと定めています。

賞与の支給方式と支給要件とは?

賞与の決定方法はいくつかのパターンがありますが、一般的には何らかのかたちで算定対象期間中の業績評価を反映させます。したがって、賞与の支給額の算定には次の計算式が使われます。

賞与額=基準額×支給月数×業績評価による係数

この「業績評価による係数」に関わるのが支給要件です。

通常は、①賞与の支給対象期間に勤務実績があること、②賞与支給日に在籍していることの2つが要件となります。

賞与の算定対象期間の一部で休職している場合

賞与の算定期間中に休職期間があれば、その期間は支給の対象から控除されます。言い換えれば、勤務している期間については業績評価に応じた係数によって賞与が計算されるのです。

支給日の在職要件については、休職は労働契約を維持しているため、支給日に休職中であっても賞与は支給されると考えることができます。賞与の支給は就業規則の相対的必要記載事項ですから、運用に疑義が生じないよう規定を整理しておくとよいでしょう。

賞与の算定対象期間のすべてが休職している場合

全算定期間において休職中なのであれば、支給要件に定める「勤務実績」がないので、賞与額の算出式により賞与の支給はありません。ノーワーク・ノーペイの原則によって休職期間中は無給とするのが一般的です。就業の事実がない場合に賞与を支給しないのは合理的と考えられます。

産休・育休で取得している場合

産休や育休を理由として賞与が支払われないということはありません。就業規則にそのような規定があったとしても、不平等・不利益な取扱いとなり労働基準法違反となり、この規定は無効となります。

しかし、賞与算定対象期間と産休・育休の取得期間との関係で、賞与額が減額されたり、支給されなかったりすることは考えられます。この点は、先述のケースと同様です。

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公務員の場合、休職中の職員に賞与(ボーナス)はある?

国家公務員の休職や賞与については国家公務員法及び人事院規則11-4(職員の身分保障)に定められており、地方公務員の場合は地方公務員法と各自治体の条例で定められています。条例には自治体ごとの相違点がありますが、国家公務員との大きな違いはないと考えられます。

公務員の休職制度はどうなっている?

一般職の国家公務員がケガや病気の療養で勤務できないときは病気休暇を取ります。この期間は最長90日とされており、この期間が過ぎても職場復帰できないときは休職となります。

国家公務員が「心身の故障のため、長期の休養を要する場合」には、国家公務員法第79条の規定により本人の意に反して休職を命じられることになります。

その期間は同一の休職の事由に該当する状態が存続する限り「3年を超えない範囲」とされています。

休職中の公務員は賞与をもらえる?

公務員の場合、6月と12月に賞与が支給されることになっており、それぞれの査定期間は次の通りです。

6月の賞与:前年の12月2日から支給年の6月1日まで

12月の賞与:支給年の6月2日から12月1日まで

この査定期間中に勤務実績があれば賞与が支給されます。支給額の算出にあたっては、査定期間中の勤務日数に応じて支給割合が定められています。査定期間中に休職している期間がある場合は、その休職日数分だけ勤務日数が少なくなるので支給割合も下がります。

休職中の従業員は給料をもらえる?

休職制度は法律上のものではないので、休職中の賃金を支給するか否かは就業規則などの規定によります。賃金は労働の対価として支給されるものですので、多くの場合、休職中の賃金は支給されません。

賃金支給の原則とは?

休職は法令に基づく制度ではないので、休職制度を設けるかどうかは会社の判断となります。休職制度を設ける場合は、相対的必要記載事項のため、就業規則に定め、休職事由や期間、賃金の支給などについて記載します。

休職期間中の賃金については、ノーワーク・ノーペイの原則に従って支給しないと定める会社が多く見られます。

休職中賞与を支給した際に、傷病手当金や労働者災害補償保険に影響はある?

休職中の生活を保障するために健康保険の傷病手当金や、労災保険の休業(補償)給付などの制度があります。就業規則の定めによって給与の一定割合を支給する企業もありますが、それが通常の月例給与である場合は保険給付の支給に影響します。しかし、賞与の扱いは異なります。

そもそも傷病手当金とはどんな制度?

傷病手当金は、業務以外の原因による病気やケガの療養のために休職している場合に、原則として健康保険に加入している被保険者に対して、1年6カ月を上限として支給されます。

傷病手当金の支給要件は次の通りです。

  1. 業務以外の原因による病気やケガによる療養で休職していること
  2. 仕事に就けないこと
  3. 連続する3日間を含み4日以上仕事を休んでいること
  4. 休職中の給与の支給がないこと(給与があっても傷病手当金より少ない場合は差額を支給)

賞与の支給があったら傷病手当金はどうなる?

健康保険法第108条1項は、傷病手当金について「報酬」を受けることができる者には支給しないと定めています。

また、同法第3条6項は、「賞与」について3カ月を超える期間ごとに支給される労働の対価と定義しており、賞与と報酬は区別されています。したがって、賞与の支給があっても傷病手当金の額には影響しません。

そもそも労働者災害補償保険とはどんな制度?

労働基準法では、雇用する労働者が業務災害で傷病、障害、死亡した場合に事業主に過失がなくても被災労働者に対して補償義務があることを定めています。労働者災害補償保険(労災保険)は、それを肩代わりする強制保険であり、事業主が保険料全額を負担して加入するものです。労災保険には、主となる保険給付事業のほかに、それを補填する社会復帰促進等事業があります。

労災保険は、原則として 一人でも労働者を使用する事業であれば、規模に関係なくすべての事業に適用されます。

賞与と労災保険給付の関係は?

労災保険の社会復帰促進等事業のひとつに労災保険の保険給付の上乗せとなる特別支給金制度があります。月例給与に基づく通常の保険給付にプラスする特別支給金のほか、賞与が支払われた場合に支給されるボーナス特別支給金もあります。

ボーナス特別支給金は、傷病補償年金、障害補償年金、障害補償一時金、遺族補償年金、遺族補償一時金、障害補償年金差額一時金に上乗せされます。支給額は、被災日以前1年間に支払いを受けた賞与に基づき支給されます。

休職とボーナスにおけるよくある質問

休職中の収入は気になるものです。ここでは賞与に関するよくある質問について説明をします。ただし、勤務先の就業規則の規定の仕方によって詳細が異なる場合があることをあらかじめご了承ください。

1カ月休職したときのボーナスはどうなりますか?どれくらいもらえますか?

多くの会社が年間のボーナスの支給回数を3回以下と定めています。また、支給時期の間隔は、通常3カ月を超えています。

賞与査定対象期間は1年を基準と考えた場合、年3回ボーナスの支給がある場合でも4カ月と見込まれます。したがって、ある査定期間中に1カ月の休職があった場合でも、3カ月は勤務実績があるので、ボーナスが支給されると考えられます。

支給額については、質問者の基本給と適用される賞与算定評価係数(多くの場合、業績評価や勤務実績期間などにより会社が決定)によって計算されます。

3カ月休職したときのボーナスはどうなりますか?どれくらいもらえますか?

先の質問と同様に考えると、賞与査定対象期間は4カ月と見込まれますので、3カ月の休職があったとしても1カ月の勤務実績があります。この勤務実績に基づきボーナスが支給されると考えられます。

支給額については、質問者の基本給と適用される賞与算定評価係数(多くの場合、業績評価や勤務実績期間などにより会社が決定)によって計算されます。

ボーナスをもらってから休職することは可能ですか?

可能です。ボーナスは労働に対する対価として就業規則の規定に基づいて支給されるものです。休職することによって職場に迷惑をかけるといった気持ちがあるかと思いますが、ボーナスはこれまでに働いたことに対する対価ですから切り離して考えましょう。休職は会社の発令によるものです。本人の判断だけではありません。

教員ですが、休職中にボーナスはもらえますか?

教育公務員の場合は、ケガや病気の療養のために90日を超えない範囲で病気休暇を取ることができます。この期間が過ぎても治癒しない場合には休職を命じられます。

休職期間中でもボーナスは支給されますが、休職の期間に応じて減額されます。例えば、6月のボーナスについては、前年の12月から支給年の5月までの出勤日数によって算出されます。休職期間が長くなれば勤務実績が減るので、その分減額されます。


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