• 更新日 : 2024年12月24日

賃金台帳の不正はバレる?罰則や不正の防止方法を解説

賃金台帳の不正は、税務調査や労働基準監督署の確認で発覚する可能性が高く、発覚した場合は厳しい罰則が科されます。

不正を防ぐためには、正確な記録と適切な管理が不可欠です。

本記事では、不正がどのように発覚するかに加えて、違反時の具体的な罰則や、不正を防ぐための対策について解説します。不正のリスクを防ぐためにも、ぜひ参考にしてみてください。

賃金台帳の不正とは

賃金台帳の不正は、従業員の賃金に関する記録を意図的または過失で誤魔化す行為のことです。具体的には、記載事項の改ざんや助成金などの不正受給に利用するなどです。

賃金台帳の不正を防ぐためにも、下記では不正に当たる行為を解説します。

記載事項を改ざんする

賃金台帳の記載事項の改ざんが労働基準監督署の確認で発覚した場合、労働基準法第120条により30万円以下の罰金が科せられます。

参考:労働基準法 | e-Gov 法令検索

そのため、賃金台帳を作成する際は必要事項の記入が重要です。

賃金台帳には、下記の記入事項を記載する必要があります。

  • 氏名
  • 性別
  • 賃金計算期間
  • 労働日数
  • 労働時間数
  • 時間外労働時間数
  • 基本給やその他賃金
  • 法令および労使協定にもとづいて、賃金の一部を控除した額

上記の項目を記入する際に、本来正確に記録すべき情報を意図的に変更するのは、労働基準法違反です。

たとえば、残業時間を短く記録して支払うべき残業代を削減したり、支給額を少なく記載したりして税負担を軽減する目的で行われます。しかし、賃金台帳の不正は税務調査や労働基準監督署の監査で発覚するリスクが高く、事業主に対して罰則が科せられます。

助成金等の不正受給に利用する

賃金台帳の不正は、助成金や補助金の不正受給への利用も挙げられます。たとえば、従業員数や給与額を偽装して助成金の申請条件を満たしているように見せかけたり、実際に支払っていない賃金を支払ったと装ったりする行為などです。

助成金の不正受給に利用する不正は、監査や調査で発覚すれば、受給した助成金の全額返還が必要です。また、支給申請中の助成金は不支給となります。

さらに、受給した助成金だけでなく、違約金の約20%の額に相当する延滞金を追加で返還しなければいけません。

賃金台帳の不正や不備が発覚するケース

賃金台帳の不正や不備は、労働基準監督署や労働局の監査や従業員からの申告などで発覚するケースがほとんどです。具体的には、賃金額の不一致や未記載の労働時間が確認される場合、不備や不正が疑われ、発覚します。

下記では、賃金台帳の不正や不備が発覚する2つのケースを紹介します。

労働基準監督署の立ち入りや検査

賃金台帳の不正や不備が発覚するのは、労働基準監督署の立ち入りや検査です。

労働基準監督署とは、労働基準法や労働安全衛生法などの労働関係法令を企業が守っているか監督する機関です。

立ち入り調査の多くは、労働基準監督署からの電話連絡または訪問により始まります。一般的には電話連絡があるか、または連絡なく突然来訪するかです。調査対象になったと連絡を受け、監督官により確認に必要な書類の準備を促されます。

勧告を受けた場合、従わなければ6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となるため注意が必要です。

労働局の助成金申請に関する調査

厚生労働省の助成金を受給する際は、労働局から調査が入ることがあります。

また、厚生労働省から公表されている各雇用関係助成金の案内文書では「関係帳簿類の確認調査を行うために、事前連絡をせず、事業所を訪問する場合があります」との記載があるように、賃金台帳を含めた労働関係帳簿類のチェックは年々厳しくなっています。

故意に支給申請書に虚偽の記載をしたり、偽りの証明を行ったりすると不正受給とみなされるため注意が必要です。自主申告ではない不正受給事案については、刑法第246条の詐欺罪に問われる可能性があり、例外なく事業主名を公表して対策しています。

調査に応じない場合、正当な理由がなければ助成金を返還しなければいけないため、注意が必要です。

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賃金台帳の不正や不備が発覚した場合のリスク

賃金台帳の不正や不備が発覚した場合には、リスクが2つあります。具体的には、罰則が科されるほか、労働基準監督署から是正勧告書が交付されるなどです。

不正や不備が発覚すれば、企業の信用が損なわれるだけでなく、罰金や従業員への未払い賃金の支払い義務が生じる場合があります。

下記では、賃金台帳の不正や不備が発覚した際のリスクについて解説します。

罰則

賃金台帳に不正や不備がある場合や、賃金台帳を含めた労働関係の重要書類の保存(5年間、当分の間3年間)を怠った場合などは、労働基準法違反となり、30万円以下の罰金を科される可能性があります。

賃金台帳は、労働基準監督署や年金事務所などの調査で必要な書類です。そのため、提出を求められた際はいつでも提出できるよう、日頃から不備や不正がないように、先に触れた必要項目をもれなく記載する必要があります。

罰則を受けないためにも、賃金台帳を作成する際は、必ず不備がないよう気をつけましょう。

是正勧告書の交付

賃金台帳に不備があったり不正したりした場合、悪質でないと判断されれば、労働基準監督署から是正勧告書が交付されます。

是正勧告書とは、労働基準監督署の立入検査後に、法令違反や改善項目が発見された際に交付される書面です。是正勧告に応じなければ、罰則を科せられる可能性もあるため注意が必要です。

罰則につながらないためにも、期日までに賃金台帳を作成し、是正報告書と一緒に労働基準監督署に提出してください。

賃金台帳の不正を防止する方法

賃金台帳の不正を防止するためには、勤怠管理システムの導入がおすすめです。

勤怠管理システムは、従業員の出退勤時間や休暇情報を正確に記録し、賃金の算出に必要なデータを自動的に収集・管理する方法です。

勤怠管理システムを給与計算のソフトと連携させると、賃金台帳の記入や集計を自動化でき、ヒューマンエラーのリスクも軽減できます。さらに、勤怠管理システムはデータベースで管理するため、記録の検索や統計・分析が容易で、ペーパーレス化も可能です。

また、給与計算等の効率化のみならず、集計された労務データなどをもとに、労務環境の改善・向上にもつなげられます。

賃金台帳は不正や不備がないように作成しよう

賃金台帳の不正は、企業の信用や法的リスクに直結する重大な問題です。賃金台帳の不正や不備が発覚すれば、罰則を受けるだけでなく、人材の流出といった労働環境そのものが低下しかねません。

正確な賃金台帳を管理するためにも、エラーを防ぐために勤怠管理システムを導入し、適切に情報管理することが重要です。

透明性のある労務管理により、より正確性の高い賃金台帳を作成できます。


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