• 更新日 : 2026年10月5日

年末調整のペーパーレス化は義務になる?やり方・メリット・おすすめシステムを解説

Point年末調整ペーパーレス化は義務?

年末調整のペーパーレス化は現時点で義務ではありませんが、法定調書の電子提出義務が2027年に拡大され、早期対応が実務リスクの回避につながります。

  • 2027年から電子提出義務の基準が30枚以上に拡大
  • 専用システムか国税庁の年調ソフトで電子化できる
  • 電子データ保存は電子帳簿保存法の要件を満たす必要あり

Q. 年末調整のペーパーレス化は義務化されていますか?

A. 2026年9月時点で一律の義務化はされていません。ただし2027年1月以降、法定調書の電子提出義務の対象が30枚以上に拡大されるため、対象企業は早めの対応が必要です。

年末調整を紙で運用すると、書類の回収や手書きミスの確認、印刷・保管コストなど多くの負担がかかります。こうした負担を軽減する方法として注目されているのが、年末調整のペーパーレス化(電子化)です。本記事では、年末調整電子化の概要から進め方、スマホ対応、最新の制度動向、注意点までわかりやすく解説します。

年末調整のペーパーレス化とは?

年末調整のペーパーレス化とは、従業員が提出する扶養控除申告書や保険料控除申告書などの各種書類を、紙ではなく電子データで作成・提出し、企業もそれを電子的に処理・管理する仕組みのことです。

これにより紙のやり取りが不要となり、年末調整業務全体の効率化と精度向上を図ることができます。

毎年12月に行われる年末調整は、企業が従業員に代わって年間の所得税額を確定し、月々の給与から源泉徴収された税額との過不足を精算する重要な税務手続きです。たとえば、扶養親族の増減、保険料の支払い、住宅ローンの借入などに応じた控除情報をもとに、正確な納税額を再計算します。

この電子化の動きは、2020年(令和2年)から国税庁が本格的に推進しており、事務作業の簡素化とヒューマンエラーの防止を目的として、各社に導入が促されています。従業員の手書き作業や、書類の配布・回収・保管といった事務負担を軽減できる一方で、企業側には一定の準備とシステム対応が求められます。

紙の手続きと電子化との違い

従来の紙による年末調整では、次のような作業が発生していました。

  • 紙の申告書の印刷・配布
  • 従業員の手書き記入と押印
  • 書類の提出・回収
  • 記入ミスや不備の確認・差し戻し
  • 書類のファイリングと長期保管

一方、ペーパーレス化された年末調整では、これらの作業の多くが電子的に完結します。

従業員はPCやスマートフォンからWeb上のフォームに必要事項を入力し、電子データで発行された控除証明書やマイナポータルを通じて取得したものに限り電子データで添付します。

システムが入力内容を自動チェックすることで、多くの不備はその場で修正でき、再提出のやり取りを大幅に削減できます。

企業側は、提出されたデータを一元管理し、税額の再計算や給与計算システムとの連携、e-Taxでの法定調書提出などもスムーズに対応できます。これにより、作業時間の短縮だけでなく、入力ミスや確認漏れを防ぐことができ、業務の正確性も向上します。

国税庁が提供する「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア」(以下、年調ソフト)などを活用すれば、一定の要件を満たすことで控除証明書の電子提出も可能になります。年調ソフトは毎年10月頃に最新年度版が公開されており、令和7年分は2025年10月15日に正式版が公開されました。令和7年12月1日以後に行われる年末調整に対応しており、令和8年分の年調ソフトについては、2026年8月7日にプロトタイプが公開されています。なお、正式版は2026年10月に公開予定とされています。

参考:年末調整手続の電子化に向けた取組について|国税庁

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年末調整のペーパーレス化は義務になる?

年末調整のペーパーレス化は、2026年9月時点でも企業に一律で義務化されていません。ただし、関連する法定調書の電子提出義務の対象は年々拡大しており、電子化への移行を後押しする動きは今後も続くと考えられます。

2020年(令和2年)から、従業員が「電子化された控除証明書等データ」を勤務先に提出できるようになり、企業側もそのデータを活用して年末調整を行うことが可能になりました。これは、ペーパーレス化を促進するための重要な一歩であり、今後もさらに電子化が進められると予想されます。現状、年末調整の電子化そのものに明確な義務化の期日は定められていません。

法定調書のe-Tax等提出義務は基準引き下げへ

年末調整と直接連動する法定調書(給与所得の源泉徴収票など)については、e-Taxまたは光ディスク等による提出義務の対象が拡大する点に注意が必要です。

現行制度では、法定調書の種類ごとに前々年の提出枚数が100枚以上の場合にe-Tax等での提出が義務付けられていますが、令和9年(2027年)1月1日以後に提出する分からは、この基準が30枚以上へと引き下げられます。つまり、令和7年(2025年)中に提出すべきであった枚数が30枚以上であれば、令和9年提出分から電子提出が義務化されます。

対象企業が大幅に増えるため、年末調整データを電子的に管理し、法定調書の作成・提出までを一気通貫でシステム化しておくことが、実務上のリスク回避にもつながります。

参考:No.7455 法定調書の提出枚数が100枚以上の場合のe-Tax、光ディスク等又はクラウド等による提出義務|国税庁

電子化の対象範囲を確認する

年末調整の電子化の対象となるのは、主に以下の書類です。

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • 給与所得者の保険料控除申告書
  • 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書
  • 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書(住宅ローン控除申告書)

令和7年度税制改正により「特定親族特別控除」が新設されたことに伴い、基礎控除・配偶者控除・所得金額調整控除の申告書には特定親族特別控除申告書が加わり、4つの内容が一体となった様式に変更されています。これらの申告書は、従業員が専用のウェブシステムや年調ソフトを利用して作成し、電子データとして提出できます。生命保険料控除証明書や地震保険料控除証明書なども、保険会社から発行される電子データを利用することで、ペーパーレスでの提出が可能です。

参考:控除証明書等の電子的交付について|国税庁

年末調整をペーパーレス化するメリット・デメリットは?

年末調整のペーパーレス化は、業務効率や利便性の向上など多くのメリットをもたらしますが、導入にはコストや運用上の注意点もあります。

企業と従業員の両面から利点と課題を理解し、自社に合った対応を検討することが大切です。とくに令和8年度税制改正では基礎控除額の引き上げなど年末調整の計算に直結する変更が予定されており、電子化による正確な控除額の反映がこれまで以上に重要になります。

企業にとってのメリット

企業にとっての一番のメリットは、業務のシステム化により、仕事の手間が大きく減ることです。紙の書類を配ったり回収したり、中身を確認したり、パソコンに入力したりする作業がいらなくなります。これにより、人事や労務の担当者の負担が大きく減ります。

また、手作業による入力ミスや記入のぬけも少なくなり、内容の正しさも上がります。紙の書類を保管する場所も必要なくなるため、保管にかかる費用も減らせます。

従業員にとってのメリット

従業員にとっても、ペーパーレス化には大きな利点があります。パソコンやスマートフォンから、いつでもどこでも申告書を作成して送ることができるため、紙に書く手間がなくなり、出し忘れも防ぎやすくなります。

使うシステムによっては、前の年に入力した内容が自動で引き継がれることもあり、入力の手間がさらに少なくなります。

また、保険会社などからもらう控除証明書が電子データで受け取れるケースもあり、書類をなくす心配も少なくなります。

導入コストやセキュリティの懸念も

ペーパーレス化にはいくつかの注意点もあります。

電子化のためのシステムを使うには、その購入費や利用料が必要になります。また、従業員への説明や使い方の案内にも時間とお金がかかるでしょう。

次に、パソコンやスマートフォンの使い方に慣れていない人もいるため、サポート体制を用意する必要があります。

さらに、システムが止まってしまうトラブルや、データが外部にもれてしまうセキュリティに関する危険もゼロではありません。こうしたリスクをふせぐためにも、しっかりとした対策が必要です。

年末調整のペーパーレス化のやり方は?

年末調整をペーパーレス化するには、大きく分けて「専用システムの導入」と「国税庁のツール活用」の2つの方法があります。それぞれのやり方を理解し、自社に合った方法を選びましょう。

専用システムを導入する

本格的にペーパーレス化を進めたい企業には、年末調整に対応した専用システムの導入が最も効率的です。勤怠管理や給与計算ソフトと連携できるクラウド型の年末調整システムが多数提供されています。

これらのシステムでは、従業員がWeb上で申告書を入力・提出でき、企業側はそのデータを一元管理し、自動で税額計算・集計・ファイル生成などを行えます。

システムを選ぶ際は、以下のような点を比較検討しましょう。

  • 自社の従業員数や拠点数に合っているか
  • 既存システムと連携できるか(給与・勤怠など)
  • セキュリティ機能が整っているか
  • サポート体制や操作性が十分か

国税庁のツールを活用する

国税庁は、年末調整手続きの電子化を推進するため、年調ソフトを無料で提供しています。

このソフトウェアは、従業員がPCやスマートフォンにダウンロードして利用し、控除申告書を作成できます。作成された年末調整申告書データは、勤務先に電子データで提供します。勤務先は、提供されたデータを給与システム等に取り込み、年税額を計算します。無料で利用できるため、システム導入のコストを抑えたい場合に有効です。

ただし、企業側でのデータ連携や管理については、別途手作業や工夫が必要になる場合があります。

参考:年末調整控除申告書作成用ソフトウェア 操作マニュアル|国税庁

マイナンバーカードの取得とカードリーダーの準備

控除証明書をマイナポータル経由で取得する場合には、マイナンバーカードが必要となります。控除証明書の発行主体となる各保険会社がマイナポータル連携に対応しているかも確認しましょう。

マイナポータルを通じて控除証明書等を取得する場合には、マイナンバーカード等を利用した本人確認が必要となります。利用する端末や方法によって必要な機器が異なるため、事前に利用環境を確認しましょう。

従業員がマイナポータルを通じて取得した各種控除証明書データには、各保険会社の電子署名と電子証明書が付与されています。多くの年末調整システムは、この電子証明書を読み取り、検証する機能を備えています。

社内で操作方法を周知する

新しいシステムやツールを導入する際は、従業員が迷わず操作できるよう、しっかりとした案内とサポート体制を整えることが欠かせません。

利用マニュアルの作成、説明会の開催、問い合わせ窓口の設置などを通じて、従業員がスムーズに電子申請できるようサポート体制を整えましょう。

特に、ITリテラシーに自信がない従業員にも安心して利用してもらえるよう、きめ細やかな配慮が必要です。事前にテスト運用を行うことで、潜在的な課題を洗い出し、本番稼働時の混乱を避けることが可能です。

スマホでの年末調整のやり方は?

スマートフォンの普及に伴い、年末調整の手続きもスマホから行えるようになっています。

多くの年末調整システムは、スマートフォンに対応したウェブブラウザ版や専用アプリを提供しています。

これにより、従業員は通勤時間や休憩時間など、場所を選ばずに年末調整の手続きを進めることができます。

国税庁が提供する年調ソフトはパソコン向けとスマートフォン向けの両方が提供されており、スマホアプリは直感的な操作が可能で、PC操作に不慣れな従業員でも利用しやすい設計になっています。

プッシュ通知機能などを活用すれば、提出期限のリマインドも行え、提出忘れを防ぐことにもつながります。

スマホでのオンライン申請の手順

スマホでのオンライン申請の手順は、基本的に以下のとおりです。

  1. システムにログインする:企業が指定したURLまたはアプリからアクセスし、IDとパスワードでログインします。
  2. 申告書を選ぶ:提出する書類(扶養控除申告書、保険料控除申告書など)を選択します。
  3. 情報を入力する:氏名、住所、家族構成、保険料などの情報を入力します。前年のデータが反映されている場合は、変更点のみ修正すれば済みます。
  4. 証明書データをインポートする:保険会社などから発行された証明書のデータをインポートします。マイナポータルからインポートすることも可能です。
  5. 内容を確認して提出する:入力内容に誤りがないか確認し、問題がなければそのまま送信して完了です。

これらの手順を従業員にわかりやすく伝えることで、スムーズな申請を促しましょう。

参考:令和7年分 年末調整控除申告書作成用ソフトウェア|Apple 、令和7年分 年末調整控除申告書作成用ソフトウェア|Google Play

個人情報のセキュリティ対策を徹底する

スマートフォンからのアクセスは手軽である反面、個人情報が漏洩するリスクも考慮しなければなりません。システム側では、SSL暗号化通信の採用や、多要素認証の導入など、セキュリティ対策を徹底しましょう。

従業員に対しても、公共のWi-Fi環境での利用を避ける、端末のパスコードロックを設定する、不審なメールやアプリには注意するなどのセキュリティ意識向上を促すことが大切です。定期的なパスワード変更の推奨も有効です。

年末調整のペーパーレス化によるデータの保管は?

年末調整をペーパーレス化しても、税法上の書類保存義務はなくなりません。電子データであっても、法律に基づいた適切な保管と管理が必要です。

保存方法を誤ると、法令違反や税務調査時のトラブルにつながるため、要件を満たす仕組みを整えましょう。

年末調整関係書類は7年間保存する

年末調整をペーパーレス化しても、年末調整関係書類の保存義務がなくなるわけではありません。従業員から電子データで提供を受けた年末調整関係書類についても、書面で提出を受けた場合と同様に、原則として7年間保存する必要があります。

電子データで保存する場合は、適切なアクセス権限を設定するなど、個人情報やマイナンバーを含むデータを適切に管理することも重要です。参考:電子帳簿保存法の概要|国税庁

クラウドストレージを活用する

年末調整の電子データを保管する方法として、クラウドストレージサービスの利用も選択肢の一つです。

クラウドストレージは、インターネット経由でデータにアクセスできるため、場所を選ばずにデータを管理できます。また、災害時のデータ消失リスクが少ないという点もメリットです。ただし、以下の点を事前に確認することが重要です。

  • 電子帳簿保存法の要件に対応しているか
  • アクセス権限設定や通信暗号化などのセキュリティ対策がされているか
  • 保存容量やコストが自社に見合っているか

安価で手軽なサービスもありますが、税務書類の保存という目的に合ったサービスを選ぶ必要があります。

バックアップ体制を整備する

システム化が進んでも、データの消失リスクはゼロではありません。システム障害、人的ミス、操作トラブルなどに備えて、定期的なバックアップを行う体制を整えておくことが不可欠です。

特に重要なのは以下の点です。

  • 異なる物理拠点に複数のバックアップを取る
  • 自動バックアップの設定と、手動による二重確認を行う
  • 定期的にバックアップデータの復元テストを実施する

このようにしておくことで、もしもの際にも迅速に業務を再開でき、情報の信頼性を保つことができます。

年末調整のペーパーレス化におすすめのシステムは?

年末調整のペーパーレス化には、自社のニーズに合ったシステムを選定しましょう。ここでは、おすすめのシステムタイプとその選定ポイントを紹介します。

給与計算ソフト連携型を選ぶ

すでに給与計算ソフトを導入している企業の場合、その給与計算ソフトと連携できる年末調整システムを選ぶと、データ連携がスムーズに行え、二重入力の手間を省けます。

API連携やデータインポート機能があると、年末調整で計算された控除額や還付額を、給与データに自動で反映させることができ、業務の効率が大幅に向上します。とくに令和8年分の年末調整では基礎控除額の見直しにより例年より計算が複雑になる見込みのため、自動計算に対応したシステムの活用が有効です。

クラウド型システムを活用する

クラウド型の年末調整システムは、インターネット環境があればどこからでもアクセスできるため、テレワーク環境下での業務にも適しています。

サーバーの管理やシステムのバージョンアップはベンダー側が行うため、企業側でのITリソースの負担が軽減されます。初期導入費用を抑えやすいというメリットもあります。

一方で、インターネット環境に依存するため、安定した接続が必須です。選定時には、ベンダーのセキュリティ対策やサポート体制を十分に確認しましょう。

費用対効果で比較する

年末調整システムを選ぶ際は、料金の安さだけでなく、「導入に見合う効果があるかどうか」を総合的に判断することが大切です。

チェックすべき主なポイントは以下のとおりです。

  • 試用期間(トライアル期間)があるか
  • 月額費用・初期費用・更新費用の内訳
  • 自社の従業員数に合ったプランか
  • 操作性やUIが現場で使いやすいか
  • 効率化できる業務の範囲(入力、集計、提出など)

無料トライアル期間を利用して、実際の操作感や導入後の負担軽減効果を検証しましょう。そのうえで、社内の課題に最も合致する製品を選定するのが現実的です。

年末調整のペーパーレス化はシステムで効率化

年末調整のペーパーレス化は、2026年9月時点でも義務化されていませんが、国税庁が推進している取り組みであり、法定調書の電子提出義務の対象拡大とあわせて、その流れは今後さらに加速するでしょう。

企業にとって、ペーパーレス化は人事・労務担当者の業務負担軽減、ヒューマンエラーの削減、コスト削減など、多くのメリットをもたらします。

従業員にとっても、オンラインでの手軽な申請が可能になり、利便性が大きく向上します。システム導入には初期費用や従業員への周知・教育が必要ですが、電子帳簿保存法への対応やセキュリティ対策を考慮しつつ、適切なシステムを選定することで、年末調整業務を大きく効率化できます。

令和8年度税制改正による控除額の見直しなど制度変更が続くなかで、今後も電子化の流れは進むため、早めの対応を検討し、デジタル化による業務革新を実現しましょう。


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