- 更新日 : 2024年10月30日
スキルマップとは?例を用いて作り方を解説!
スキルマップとは、従業員ごとに自社の業務に求められるスキルの保有状況を見える化した表のことです。この記事ではスキルマップとは何かを説明し、作成目的、作成方法、作成例などについて紹介します。スキルマップを人事評価や人材育成などに活用することを通じて、自社のレベルアップにつなげるための参考にしてください。
目次
スキルマップとは?
スキルマップとは、組織単位あるいは業務単位で必要とされるスキルを洗い出し、所属する従業員ごとにスキルの保有状況を一覧化した表のことです。力量表、スキルマトリクスなどと呼ぶこともあります。各スキルを従業員がどの程度のレベルでできるかを数値などで評価した上で一覧表にするのが一般的です。
そもそもスキルとは?
スキルとは「訓練によって得られる特殊な技能や技術」の意味で、ビジネスシーンではよく使われる用語です。この場合のスキルは、生まれながらに持つ先天的な能力ではなく、訓練などで得られる後天的な能力のことを指します。スキルマップの「スキル」もこの意味にあたります。
スキルマップを作る目的
スキルマップを作成する目的は、従業員のスキルを可視化した上で、人材育成や人事異動等に活用することにあります。以下で具体的に紹介します。
従業員の能力・スキルの可視化
スキルマップにより、組織内の従業員のスキル保有状況の全体像や、従業員ごとのスキル保有状況を可視化できます。組織内で不足するスキルや、スキルが特定の従業員に偏っていないかなどを確認し、組織をどのように強化していくかを明らかにできます。
従業員の能力・スキルの向上
スキルマップにより、各役職や担当業務で求められるスキルとそれに対する各従業員の到達度を確認できます。求められるスキルに到達していない従業員の育成ポイントを正確に把握し、従業員の能力やスキルを向上させることができます。
スキルマップに応じて人事異動等を検討
スキルマップによる従業員のスキル保有状況の可視化を通じて、組織や業務ごとに最適な人材の配置方法をシミュレーションすることができます。それに基づき適材適所の人材の配置につなげる人事異動等を検討できます。
スキルマップがあることのメリット
スキルマップは、従業員のスキル保有状況を可視化できるため、人事の業務に様々なメリットをもたらします。以下ではスキルマップがあることの代表的なメリットを紹介します。
従業員に足りていないスキルが可視化できる
組織や業務ごとに必要なスキルに対して、各従業員のスキルの保有状況を明らかにできるため、不足するスキルが可視化できます。これを組織単位で集計すると、組織内のスキル不足の状況も明らかになります。
従業員のスキル向上の効率化
従業員ごとに不足するスキルを可視化することで、スキル向上のポイントを把握できます。これに基づき従業員を教育することで、効率的にスキルを向上させることができるのです。従業員各人にあわせて精度の高い教育を行うことで、組織全体のレベルアップにつながります。
人材の適切なアサイン
組織や業務ごとに必要なスキルが明確になるため、人事異動等を検討する際にはそのスキルにマッチした人材を適切にアサインできます。適材適所の人事により生産性の向上につながります。
評価基準の明確化
スキルマップにより、従業員が自らの評価理由を客観的に知ることができます。どのようなスキルが評価につながるかも確認できるため、従業員自身のスキル向上意欲を高めることになります。また評価を行う上司にとっては評価基準が明確になるため、公平な人事評価につながるでしょう。
従業員のモチベーション向上
スキルマップは従業員自身に求められるスキルとその達成状況の評価が明確になるため、従業員のモチベーションの向上につながります。また、他の従業員のスキル保有状況が明らかになることで、従業員間の競争意識が芽生え、組織全体のスキルの底上げも期待できます。
スキルマップに記載する項目
スキルマップには主に以下の4項目を記載します。順に記載内容を紹介します。
業務に必要なスキル
業務に必要なスキルを記載します。職種や役職などによっても求められるスキルが異なるため、分類した上で記載しましょう。
スキルがあると判断する基準
スキルごとに、そのスキルを保有しているかどうかを判断するための基準を記載します。単に「できる/できない」ではなく、「どの程度」できるのかなど、到達度や習熟度などを測る基準を具体的に明記します。評価した結果は数値で入力します。
自己評価数値
従業員がスキルの各項目について評価基準に基づき自己評価した数値を入力します。
他者評価数値
上司など、対象となる従業員の評価を行うべき者が、スキルの各項目について評価基準に基づき評価した数値を入力します。
スキルマップの作り方・作成方法
ここでは、スキルマップの作り方や作成方法をご紹介します。なお、スキルマップのフォーマットはExcelシートで作成することもできますし、インターネット上でテンプレートをダウンロードすることもできます。
また、厚生労働省が提供する「職業能力評価シート」もあります。このようなテンプレートを基に、自社の業務特性にあった形でアレンジするのがよいでしょう。厚生労働省「職業能力評価シート」について詳しく知りたい方は、以下のURLをご確認ください。
参考:キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード|厚生労働省
作成目的の明確化
最初に作成目的を明確化することが重要です。作成目的によりスキルマップに記載すべきスキルの項目が変わるためです。また、目的が決まっていないとスキル項目の策定に時間を要したり、関係のない項目が盛り込まれたりすることにもなりかねません。
目的を決定する場合には業務スキルの全体像を理解している管理職以上に関与してもらうと作成の成果を高められます。
作成責任者の決定
人事担当者などが、各部門を管理する管理職等にヒアリングを行い、最終的な取りまとめを行う形が一般的です。スキルマップを全社的に展開し、作成の成果を人材評価や育成などに活用するため、一元的に取りまとめる作成責任者を決定する必要があります。
スキルの洗い出しと分類・階層の決定
業務内容を調査し、必要なスキルを洗い出します。実務に携わる部門の管理職をはじめ、製造業などでは現場を管理する担当者にもヒアリングする形で進めると作業手順を抜け漏れなく反映できます。
厚生労働省の「職業能力評価シート」などのテンプレートを参考に、自社の業務実態に合わせて加筆修正などを行う形で進める方法もあります。また、管理しやすいように分類や階層などを決めて、洗い出したスキルの各項目を分類します。
各スキルの評価基準の決定
「できる/できない」という評価では大雑把なものになる一方、基準が細かすぎるのも運用が難しくなります。一般的には3〜5段階で評価することが多いです。なお、厚生労働省の「職業能力評価シート」は4段階評価です。
評価を数値で表す形にすると、合計点や平均点なども計算でき、分析を深められます。
各評価数値に対しては評価者によるブレが生じないよう具体的な評価基準を設けましょう。
(例:「1:指導を受ければできる」「2:一人でできる」「3:他の社員を指導できる」な ど)
スキルの評価者の明確化
各従業員による自己評価と、従業員の上司による評価の二段階評価が一般的です。
スキルマップのマニュアル作成
スキルマップの作成目的、使い方、評価方法などを記載したマニュアルを作成し、組織内で共有します。
スキルマップの試験的運用
本格的な運用開始の前に試験的に運用し、マニュアルに基づき実際に評価を行うことなどを通じて、問題点などを明らかにします。必要によりスキルマップの修正を行います。
運用開始とアップデート
本運用開始後も、利用者の意見を反映させながらアップデートすることが重要です。
スキルマップを可視化するテンプレート-無料ダウンロード
スキルマトリックスシートを活用すると効果的にスキルを可視化することができます。従業員のスキルがどの程度習得されているかを一目で把握することができます。
以下のリンクから、テンプレートを無料でダウンロードいただけます。自社に合わせてカスタマイズし業務にお役立てください。
スキルマップの具体例
スキルマップの具体的な作成事例を紹介します。いずれも厚生労働省「職業能力評価シート」を基に、自社にあわせてカスタマイズする形での作成事例です。
扶桑電通株式会社
扶桑電通株式会社は、東京都に本社を置く通信工事やサーバ設置工事等を手掛ける企業です。会社として人材育成に力を入れていたものの、若年層の技能習熟レベルのばらつきや、中堅層の自己研鑽に課題を感じていました。
そこで、職業能力評価シートを活用して技術、技能レベルをチェックし、今後の課題を明確化することにしたのです。職業能力評価シートの内容のうち、自社で使用している用語の文言にマッチしないものは適宜修正して活用しました。
導入の結果、各従業員の能力向上に向けた課題、中堅層の技能レベルと性格などを加味する形での人事運用の方向性の検討材料を見出すことができています。
株式会社明神館
株式会社明神館は、長野県の老舗温泉旅館「明神館」を運営している企業です。職業能力評価シートを活用した全社的な人材育成システムの導入前には、従業員のサービス提供レベルを確認するための能力チェックの仕組みがありませんでした。担当者の該当レベル判断が難しかったフロント部門と接客部門の従業員を対象に、職業能力評価シートを用いた能力チェックを実施。職業能力評価シートは自社の業務に合わせて能力細目の追加、削除を行いました。
導入の結果、各従業員の自己研鑽やサービス向上への意欲が高まりました。また全社的な課題も明確になり社内における人材育成や、従業員への資格取得の推奨にも活用できているそうです。
参考:「キャリアマップ」、「職業能力評価シート」を活用した企業の取り組み事例について|厚生労働省
スキルマップによる従業員のスキル可視化で自社のレベルアップを!
スキルマップを作成することで、従業員ごと、及び組織全体のスキル保有状況を可視化することが可能です。スキル保有状況の可視化により、人事評価、人事異動や人材育成の方針を効率的に見出せるため、自社の更なるレベルアップにつながります。この記事がスキルマップの作成検討の一助になれば幸いです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
ジョブ・クラフティングとは?意味やメリット・デメリット、やり方を解説
従業員の主体性を尊重し、モチベーションを高める新しい働き方として注目されているのが、「ジョブ・クラフティング」です。 単に任された業務をこなすのではなく、自分の強みや適性、価値観に合わせて仕事のやり方を見直し、よりよい働き方を実現することが…
詳しくみるアンコンシャスバイアスとは?定義や対策方法を学ぼう
「アンコンシャスバイアス」とは、無意識の思い込み、偏見を意味する言葉です。アンコンシャスバイアスは、日常生活や会社など、さまざまな場面で発生するとされています。 この記事では、アンコンシャスバイアスの意味や種類、企業に及ぼす影響、アンコンシ…
詳しくみるシャドーITとは?セキュリティリスクや原因、企業の対策について解説
シャドーITとは、企業内での利用が認められていないITサービスやIT機器を無断で使用することです。これらのサービスやIT機器は適切に管理されない傾向にあり、セキュリティ上のリスクになることがあります。シャドーITの利用で想定されるリスクや、…
詳しくみる診断書はパワハラの証拠になる?診断書が必要になる手続きやもらい方を解説
職場で発生したパワハラ行為は、加害者から受けた身体的な攻撃や精神的な攻撃により被害を受けたことを証明する必要があります。パワハラ被害の証明として、医療機関が作成した診断書は、行為による被害の重大性を示す要素になるでしょう。 本記事では、診断…
詳しくみる正常性バイアスとは?意味や具体例、企業のリスク、対処法を解説
人は物事を判断するときに、思い込みや先入観などに支配されてしまうことがあります。目の前で起こった事象を過小評価してしまい、的確な対応を行えなくなる「正常性バイアス」が企業の活動に悪影響を及ぼすこともあるでしょう。本記事では、正常性バイアスが…
詳しくみるマネジメント経験とは?求められる基準や役職経験がない場合のアピール方法を解説!
企業が求める人材の中で、マネジメント能力は重要な要素の一つです。しかし、「マネジメント経験」という言葉の意味は必ずしも明確ではありません。単に管理職を経験したことだけでなく、プロジェクトの統括や部下の育成なども含まれます。本記事では、マネジ…
詳しくみる