• 作成日 : 2022年11月18日

社会保険と年金の関わり – 厚生年金と同じ?

社会保険における年金は、生活を送るうえでの万が一のリスクに備えるための保険です。厚生年金や国民年金を支払うことで老後だけでなく、就労が困難になってしまった場合も年金受給者としてお金を受け取れます。

この記事では、社会保険における年金の概要や、強制加入の有無、社会保険の拡大について解説します。

社会保険における年金とは?

そもそも社会保険とは、病気やけが、失業、障害、老後の資金不足、死亡などに対して必要なお金を受け取れる公的な保険制度のことです。社会保険は「広義の社会保険」と「被用者保険」に大別できます。広義の社会保険は「国民健康保険」と「国民年金」です。

対して、被用者保険は「狭義の社会保険」と「労働保険」に分けられます。狭義の社会保険は「厚生年金保険」「健康保険」「介護保険」これら3つです。労働保険は「雇用保険」と「労災保険」を指します。

このように、社会保険は「国民健康保険」「国民年金」「厚生年金保険」「健康保険」「介護保険」の5種類に分かれているのです。ここでは、社会保険における年金の扱いについて見ていきましょう。

厚生年金は社会保険に含まれる?

厚生年金(正式には「厚生年金保険」)は狭義の社会保険に含まれています。なぜ狭義になるかというと、国民年金は20歳以上60歳未満のすべての人が加入しているのに対し、厚生年金は会社員や公務員のみが加入する年金だからです。厚生年金の加入者は「第二号被保険者」と呼ばれます。

第二号被保険者は国民年金と厚生年金の両方に加入するため「2階建ての年金保険」と言われていることも覚えておくと良いでしょう。厚生年金を支払うことで、被保険者である労働者が高齢になり一定の年齢に達したときや、障害者になったとき、被保険者や遺族に必要な年金または一時金が支払われるようになります。

保険料は健康保険と同様に被保険者と事業主が折半して被保険者分の保険料を給与から控除する仕組みです。事業主は当月分の被保険者分の保険料と事業主負担分の保険料を翌月末に支払います。会社員や公務員は国民年金に上乗せして厚生年金に加入しているため、基本よりも多くの年金を受け取れるのです。

国民年金は社会保険に含まれる?

国民年金は広義の社会保険に含まれます。前述のとおり、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する年金となるためです。国民年金の加入者は、個人で保険料を納める第一号被保険者と給料から天引きされる第二号被保険者、届出をすれば個人で納める必要がない第三号被保険者の3種類となっています。

第一号保険者は自営業や農林漁業、フリーター、学生、無職の人などです。第三号被保険者は会社員や公務員の扶養されている配偶者が該当します。国民年金の場合、保険料はすべて自分で負担しなければなりません。

20歳以上の人は、原則として毎月、国民年金保険料の納付が義務付けられています。しかし、一定の所得基準以下の学生や20歳から50歳未満の人で本人・配偶者の前年所得が一定額以下の場合は、申請すれば保険料の納付が猶予されます。

2004年に、国民年金を始めとする年金制度は、賃金や物価による年金額の改定率を調整して緩やかに年金の給付水準を調整する「マクロ経済スライド」が導入されました。そのときの状況によって、給付される年金額が変動する可能性があることに留意しましょう。

参考:学生のみなさまへ|日本年金機構
参考:国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度等について|中央区

社会保険と厚生年金はセット?いずれも強制加入?

社会保険すなわち健康保険と厚生年金はセットで強制加入することが原則となっています。これは、健康保険と厚生年金の加入要件が同一に設定されており、セットでしか手続きできないためです。健康保険と厚生年金のいずれかのみ加入することはできません。

ただし、厚生年金は現在70歳未満の方のみが加入できるため、70歳以上の方は会社員であっても健康保険のみに加入することになります。また、健康保険は75歳以上になると後期高齢者医療制度の対象となるため、個人で保険料を納めなければならない点に注意しましょう。

健康保険と厚生年金は一般的な会社に勤務し、条件を満たせば正社員やアルバイト、契約社員など雇用形態問わず強制加入となっています。個人事業主に雇われている場合も条件を満たせば加入しなければなりません。厚生年金や健康保険に入りたくない場合は、個人事業主や業務委託、フリーランスなどの働き方を選びましょう。

確かに、健康保険や厚生年金に加入すると給与の手取り額が減ってしまいますが、加入することで以下のメリットが得られます。

  • 保険料を会社と折半できる
  • 老後に受け取れる年金額が増える
  • 手厚い保険制度を受けられる(障害年金や遺族年金、健康保険の給付など)

事業所が社会保険に加入するためには事業主による届出が必要です。届出用紙は日本年金機構のホームページからダウンロードするか、管轄の年金事務所に問い合わせをしましょう。年金事務所から繰り返し加入指導を受けているにもかかわらず、加入手続きを行わない事業主に対しては、必要に応じて立入検査を実施し、さかのぼって加入手続きを行い、保険料を決定します。社会保険の加入義務がある事業所は速やかに手続きを済ませておきましょう。

参考:社会保険(厚生年金・健康保険)への加入手続きはお済みですか?|厚生労働省 日本年金機構
参考:求人票にある「加入保険等」とは?|大阪マザーズハローワーク

社会保険の適用拡大について – 2022年10月から

2022年10月から段階的に一部のパート・アルバイトの方の社会保険加入が適用拡大されます。新たな加入対象者は以下のすべての要件を満たすパート・アルバイトの方です。

  • 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
    週の所定労働時間が40時間の企業における契約上の所定労働時間であり、臨時に生じた残業時間は含みません。なお、契約上20時間に満たない場合でも、実労働時間が2ヶ月連続で週20時間以上となり、これからも継続が見込まれる場合には、3ヶ月目から保険加入とします。
  • 月額賃金が8.8万円以上
    基本給および諸手当を指しますが、残業代・賞与・臨時的な賃金等は含みません。以下が月額賃金に含まない項目例です。

    • 賞与など1月を超える期間ごとに支払われる賃金
    • 時間外労働や休日労働、深夜労働に対して支払われる割増賃金
    • 精皆勤手当や通勤手当、家族手当など最低賃金に参入しないことが定められている賃金
  • 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない
    休学中や夜間学生は加入対象となります。

対象となる企業は以下のように段階的に変更されます。

  • 現在:従業員501人以上の企業
  • 2022年10月~:従業員101人以上の企業
  • 2024年10月~:従業員51人以上の企業

従業員数は以下の①と②を合計した「現在の厚生年金保険の適用対象者」となります。

①フルタイムの従業員数
②週労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員数(パート・アルバイト含む)

社内準備は以下の4ステップです。

  1. 加入対象者の把握
    まずは社内の加入対象者を把握します。
  2. 社内通知
    社内の加入対象者に周知します。
  3. 従業員とのコミュニケーション
    必要に応じて説明会や個人面談を実施し、従業員に社会保険の適用や手続きについて説明をします。
  4. 書類の作成・届出
    厚生年金保険の「被保険者資格取得届」を作成し、オンラインで届け出をします。

会社が負担する社会保険料が気になる事業主の方は、厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイトの「社会保険料かんたんシミュレーター」でおおよその金額を試算してみましょう。必要項目を入力することで社会保険料の事業主負担分(年)の概算を確認できます。

参考:厚生労働省から法律改正のお知らせ|厚生労働省 社会保険適用拡大サイト

厚生年金は社会保険のひとつで、加入によってさまざまなメリットがある

厚生年金は会社員や公務員のみが加入する年金で、社会保険に含まれます。厚生年金は健康保険とセットで加入することが原則です。手取り額は減ってしまうものの、「保険料を会社と折半できる」「老後に受け取れる年金額が増える」「手厚い保険制度を受けられる」などさまざまなメリットがあります。2022年から社会保険が適用拡大されるため、事業主の方は加入対象者を把握し、必要な準備を進めましょう。

よくある質問

社会保険における年金について教えてください。

広義の社会保険は「国民年金」、狭義の社会保険は「厚生年金」となります。詳しくはこちらをご覧ください。

社会保険と厚生年金はセットで強制加入ですか?

基本的に社会保険と厚生年金はセットでの加入が原則です。詳しくはこちらをご覧ください。


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