• 作成日 : 2022年2月15日

国民年金保険料の前納制度とは?年末調整での控除方法とともに解説!

年末調整では、社会保険料が所得控除されることはご存じの方は多いでしょう。具体的には、公的年金では厚生年金保険料が該当しますが、国民年金保険料が控除対象となるケースもあります。国民年金は、厚生年金と異なり、保険料を前納すれば、保険料を割引してもらうことが可能です。今回は、国民年金保険料を前納している会社員の方の年末調整について、書類の書き方や控除証明書について解説します。

国民年金保険料の前納制度とは?

会社の方は、年末調整で公的年金の厚生年金保険料が所得控除されますが、国民年金保険料が控除対象となるケースもあり、保険料を前納すれば保険料を減額してもらうことができます。

その際に、ポイントとなるのが、一定期間の国民年金保険料をまとめて納める制度です。この制度を利用し、保険料をまとめて納めることにより保険料が割引となります。

原則の納付方法

基本的に会社員の方は、国民年金保険料を支払うことはなく、年末調整でも所得控除を考慮する必要はありませんが、国民年金保険料を支払うケースはいくつか考えられます。

そのなかで、会社員の方にとって一般的な、扶養親族の国民年金保険料を支払うケースについてみていきましょう。

配偶者の場合、会社員に扶養されている場合は国民年金の第3号被保険者として保険料の納付義務がありませんが、加入期間は60歳になるまでです。それ以降は65歳になるまで任意加入して国民年金保険料を納付すれば、老齢基礎年金の受給額を増やすことができます。

また、子どもであれば、20歳以上の学生は第1号被保険者として保険料の納付義務が生じます。

会社員の納税者が、こうした家族の国民年金保険料を納付すれば、年末調整の際に所得控除することができます。では、国民年金保険料は、どのように納付するのでしょうか。まず、原則の納付方法について説明します。

国民年金保険料は、全国の銀行、農協、漁協、信用組合、信用金庫、郵便局のほか、コンビニエンスストアやインターネットなどでも納めることができます。

納付する際は、日本年金機構から送られてくる「納付書(国民年金保険料納付案内書)」を使用し、その年度の所定の納付月ごとに納付しますが、預金口座から保険料を毎月自動的に引き落とす口座振替とすることも可能です。

なお、前述の配偶者が任意加入する場合は、原則口座振替となっています。

前納の納付方法

毎月の所定の納付期限までに納付する通常の納付方法のほかに前納することも可能です。国民年金保険料を前納した場合も、年末調整の際にその年分の控除対象となります。

前納の場合の納付方法は、「前納用納付書」を添えて全国の銀行、農協、漁協、信用組合、信用金庫、郵便局のほか、コンビニエンスストアやインターネットなどで納付します。

「前納用納付書」は、日本年金機構から4月上旬に送付されてきます。1年度分・6カ月分前納用の納付書となっており、どちらかを選んで納付することになります。クレジットカードによる納付も可能ですが、事前に年金事務所に申込みが必要です。

1年度(12カ月分)や6カ月分だけではなく、任意の月分から当年度末または翌年度末までの分を前納することもできます。この場合は、専用の納付書が必要となりますので、年金事務所に問い合わせてください。

なお、平成29年4月より、2年度分の保険料をまとめて納める「2年前納」制度が実施されています。単年度だけでなく、2年度分を前納した場合も年末調整の際に全額、控除の対象となります。

申込みをすることで2年度分前納用の納付書が送付されますが、コンビニエンスストアでは使用できません。1年度分・6カ月分前納と同様に口座振替、クレジットカードによる納付もできます。

納付期間については、納付しようとする月の末日までとなっています。2年前納、1年前納や上期6カ月(4月分から9月分)前納は4月末日、下期6カ月(10月分から翌年3月分)前納は10月末日が納付期限になります。

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国民年金保険料における前納制度のメリット

前納制度を利用した場合、 国民年金保険料が割引されるというメリットがあります。割引額は年率4%で複利計算した額であり、年平均では、約1.8%の割引率となります。ただし割引額は、納付方法によって異なってくるので注意が必要です。

現金およびクレジットカード納付2年前納の場合

令和3年度を例に挙げると、国民年金保険料は月額16,610円です。「前納用納付書」で現金納付およびクレジットカードで納付した場合、次のような割引額になります。

  • 6カ月分前納:810円の割引
    6カ月分の保険料額99,660円→98,850円
  • 1年度分前納:3,540円の割引
    1年度分の保険料額199,320円→195,780円
  • 2年度分前納:14,590円の割引
    2年度分の保険料額398,400円→383,810円

口座振替2年前納の場合

しかし、現金納付やクレジット納付ではなく、口座振替にした場合、さらに割引額が増えます。

  • 6カ月分前納:1,130円の割引
    6カ月分の保険料額99,660円→98,530円
  • 1年度分前納:4,180円の割引
    1年度分の保険料額199,320円→195,140円
  • 2年度分前納:15,850円の割引
    2年度分の保険料額398,400円→382,550円

前納の期間が増えれば割引は大きくなりますが、一度の出費が大きくなります。お財布と相談して納付方法を選ぶよいでしょう。

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前納した場合の年末調整における控除手続き

国民年金保険料を前納した場合、年末調整ではその年分の控除対象とすることが可能です。13カ月以上分の前納の場合は、全額をその年に控除できますが、各年分の保険料に相当する額を複数年で控除することもできます。

前納した場合の年末調整の手続きについてみていきましょう。

① 控除証明書を受け取る

年末調整の手続きには、後述の「給与所得者の保険料控除申告書」を記入後、会社に提出することになりますが、その際、「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」を添付する必要があります。

この控除証明書は、日本年金機構から送付されてきますが、ハガキ版とA4版の2種類がありますが、13月以上の前納により国民年金保険料を納付した場合は、A4版の書類です。

送付時期は、その年の1月から9月までに納付した場合は10月下旬から11月上旬にかけて、その年の10月から年内に納付した場合は翌年2月上旬です。
「令和3年」社会保険料控除証明書
引用:令和3年 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書(ハガキ)の見方|日本年金機構
「令和3年」社会保険料控除証明書 本人控え
引用:令和3年 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書(A4)の見方|日本年金機構

13カ月以上の前納により国民年金保険料を納付したときのA4版の控除証明書については、複数年分に分けて申告する場合、注意が必要です。

下部にある3年分3枚の証明書のうち、本年分の1枚を切り離して申告に使用します。残りの2枚の証明書は、2022年、2023年の申告時に使用するため、大切に保管しておきましょう。

➁ 控除証明書を年末調整時に提出する

「給与所得者の保険料控除申告書」は、通常、11月頃に勤務先から配布されます。納税者本人は、必要事項を記入し、上記の「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」と一緒に会社に提出します。

控除を申告する「給与所得者の保険料控除申告書」の「社会保険料控除」欄に、必要事項を記載します。
【令和3年】保険料控除申告書
引用:令和3年分給与所得者の保険料控除申告書|国税庁

具体例として、親である会社員が子の国民年金保険料を1年分前納した場合の書き方を挙げておきましょう。
【令和3年】保険料控除申告書
引用:令和3年分給与所得者の保険料控除申告書|国税庁

「保険料の支払先の名称」は、国民年金の運営事業を行っている「日本年金機構」と記載します。

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国民年金保険料を前納した場合は年末調整での控除を行おう!

国民年金保険料の前納制度と、年末調整での控除方法について解説してきました。前納制度は、一度の出費としては負担になりますが、割引のメリットがあるだけでなく、年末調整の際に控除対象にもなります。

学生の国民年金保険料は本人に納付義務があり、滞納となっているケースが少なくありません。親として前納制度を利用するのも選択肢のひとつなので、検討してみてはいかがでしょうか。

よくある質問

国民年金保険料の前納制度とはなんですか?

一定期間の国民年金保険料をまとめて納める制度です。 詳しくはこちらをご覧ください。

国民年金保険料の前納制度のメリットはなんですか?

まとめて納めることにより保険料が割引となります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:坪 義生(社会保険労務士)

じんじ労務経営研究所代表(社会保険労務士登録)、労働保険事務組合 鎌ヶ谷経営労務管理協会会長、清和大学法学部非常勤講師、「月刊人事マネジメント」(㈱ビジネスパブリッシング)取材記者。社会保険診療報酬支払基金、衆議院議員秘書、㈱矢野経済研究所、等を経て、91年、じんじ労務経営研究所を開設。同年より、企業のトップ・人事担当者を中心に人事制度を取材・執筆するほか、中小企業の労働社会保険業務、自治体管理職研修の講師など広範に活動。著書に『社会保険・労働保険の実務 疑問解決マニュアル』(三修社)、『管理者のための労務管理のしくみと実務マニュアル』(三修社)、『リーダー部課長のための最新ビジネス法律常識ハンドブック』(日本実業出版社、共著)などがある。

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