• 更新日 : 2026年3月31日

退職金制度のメリット・デメリットは?前払い退職金制度についても解説【規定テンプレート付】

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Point退職金制度のメリット・デメリットまとめ

退職金制度は、従業員の老後資金を「退職所得控除」による高い節税効果で確保しつつ、企業の採用力と定着率を向上させる戦略的な報酬制度です。

  • 従業員: 退職所得控除と分離課税で手取り額が最大化
  • 企業: 掛金の損金算入による法人税社会保険料の削減
  • 組織: 長期勤続のインセンティブによる離職率の低下

Q:前払い退職金との大きな違いは何ですか?
A:通常の退職金は支払時に強力な税制優遇(退職所得控除)がありますが、前払い制は給与扱いのため所得税や社会保険料の負担が増える点が異なります。

退職金制度とは、従業員が退職時に一定額の金銭を受け取る制度です。企業が積立金や計画的な運用を行い、従業員の長期的な貢献に報いる仕組みとして広く採用されています。

従業員にとって退職後の生活を支える大切な仕組みであると同時に、企業にとっても優秀な人材確保や勤続意欲向上につながる制度です。一方で、導入や運用にコストがかかるといった課題もあります。近年では、制度の見直しや廃止を検討する動きが広がってきています。

本記事では、退職金制度のメリット・デメリットを解説するので、参考にしてみてください。

企業が退職金制度を設けるメリットは?

企業が退職金制度を導入する最大のメリットは、採用力の強化、節税・コスト削減、そして従業員の定着率(リテンション)向上に直結することです。 2026年現在、人的資本への投資が企業価値を左右する中で、退職金は単なる後払い給与ではなく、戦略的な福利厚生としての役割を担っています。

求職者へアピールし良い人材を確保できる

退職金制度の存在は、企業の財務基盤の安定性と従業員を大切にする姿勢の象徴となり、採用市場での競合優位性を生み出します。 求職者にとって、将来の資産形成を支援してくれる企業は「長く安心して働ける職場」と認識されるためです。

  • 安心感の醸成: 特に長期的なキャリア形成を望む層に対し、福利厚生の充実度を具体的に示す強力なツールとなります。
  • 経営の安定性: 制度を維持できる資金力があることを証明し、入社後のミスマッチや早期離職を防ぐ信頼の指標となります。
  • ブランディング: 退職金(または企業型DC)を完備していることは、2026年の採用市場においても依然として強力な差別化要因です。

従業員のモチベーションが上がる

勤続年数や貢献度(役職等)に応じて支給額が増える仕組みにより、従業員の長期勤続意欲を高め、離職率を低下させる効果があります。 「長く働くほど報われる」という期待感が、帰属意識(エンゲージメント)の向上に寄与するためです。

  • 目標の明確化: 昇進や昇格が将来の受取額に直結するため、日々の業務に対する向上心を刺激します。
  • 生活の不安解消: 「将来の生活保障」が可視化されることで、従業員が目の前の仕事に集中できる環境が整います。
  • 業績への貢献: 優秀な人材が定着することで、教育コストの削減だけでなく、社内ノウハウの蓄積と生産性向上が期待できます。

節税や社会保険料の削減効果がある

企業型DCや中退共(中小企業退職金共済)を活用することで、掛金を全額損金として算入可能となり、法人税負担を軽減できる財務上のメリットがあります。 

また、退職金は通常の給与や賞与とは異なり、原則として社会保険料の算定基礎に含まれないため、労使双方の負担を抑えることが可能です。

参考:中小企業退職金共済事業本部|Q&A(よくあるご質問)
参考:厚生労働省|確定拠出年金制度の概要

横領など従業員の不正行為を防止する

退職金規定に「不支給条項(退職金没収規定)」を設けることで、業務上の不正行為や規律違反に対する強力な心理的抑止力として機能します。

重大な不祥事が将来の資産を失うリスクに直結するため、コンプライアンス(法令遵守)意識を自然と高める効果があります。

  • リスク管理: 金銭を扱う部署や管理職において、不正を未然に防ぐブレーキとなります。
  • 職場秩序の維持: 万が一の事態に備えた制裁措置を明確にすることで、健全な職場環境を維持し、企業の社会的信用を守ります。

退職勧奨時のトラブルを防止する

退職金制度が整備されていると、早期退職の募集や退職交渉において、従業員の再就職までの生活を保障する原資となり、円満な合意形成を助けます。 金銭的な補償が明確であることで、退職後の生活不安に伴う紛争や訴訟リスクを大幅に軽減できるためです。

  • 円滑な交渉: 経営環境の変化による人員整理が必要な際、退職金の上乗せなどが交渉の切り札となります。
  • 企業イメージの保護: 納得感のある形で送り出すことで、SNS等での悪評やブランド棄損を防ぎ、円満退職を実現します。
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企業が退職金制度を設けるデメリットは?

退職金制度の導入は、長期的な固定費の増大やキャッシュフローの不安定化を招き、経営の柔軟性を損なうリスクを内包しています。 

一度導入した制度は「労働条件」として保護されるため、業績悪化時でも簡単に廃止や減額ができず、企業の財務基盤を圧迫する要因となり得ます。

制度の導入・運用にコストがかかる

退職金制度は、長期にわたる積み立てや毎月の掛金拠出が必要となり、企業の自由な資金運用を制限する大きなコスト要因となります。

特に社内準備型(内部留保)の場合、将来の支払い義務(退職給付債務)が貸借対照表上の負債として重くのしかかります。

  • 継続的な資金負担: 企業年金や退職金共済を利用する場合、従業員数に応じた掛金が毎月発生し、景気後退期であっても支払いを止めることは困難です。
  • 制度変更のハードル(不利益変更): 日本の労働法体系では、退職金規定の廃止や減額は「労働条件の不利益変更」とみなされるため、従業員の個別合意や高度な合理性が必要となり、経営判断によるコストカットが非常に難しくなります。
  • 管理工数の増大: 制度の設計、計算事務、金融機関との調整など、人事労務担当者の業務負荷が増えることも目に見えないデメリットの一つです。

中途退職者が増えると経営を圧迫する

退職時期や人数を正確に予測することは困難であり、短期間に退職者が集中した場合、一時のキャッシュアウト(現金の流出)が事業継続を脅かすリスクがあります。

  • キャッシュフローの不安定化: 優秀な人材が同時期に転職した場合、退職金の支払額が数千万〜数億円単位にのぼるケースもあり、設備投資や新規事業への資金を削らざるを得ない事態も想定されます。
  • 短期離職によるコスト負け: 短期間で退職する従業員に対しても、規定に基づき一定額を支払わなければならない場合、採用・教育コストに加えて退職金コストまで重なり、投資対効果(ROI)が著しく低下します。
  • リスク対策の必要性: こうした流動性リスクを回避するためには、中退共(中小企業退職金共済)のような外部積立型を活用し、支払いを平準化するなどの財務戦略が不可欠です。

退職金制度をめぐる現状と課題は?

退職金制度とは、従業員が退職時に一定額の金銭を受け取る制度です。企業が積立金や計画的な運用を行い、従業員の長期的な貢献に報いる仕組みとして広く採用されています。

日本の退職金制度(退職給付制度)は、導入率が約75%まで低下する一方で、企業型DC(確定拠出年金)への移行やジョブ型雇用に合わせた制度再編が急務となっています。 終身雇用を前提とした従来の一時金制度が、雇用の流動化や企業の運用リスク増大によって限界を迎えているためです。

退職金制度の導入率

厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によると、退職一時金制度がある企業の割合は74.9%です。制度の形態別の企業割合は以下のとおりです。

  • 退職一時金制度のみ:69.0%
  • 退職年金制度のみ:9.6%
  • 両制度併用:21.4%

参考:令和5年就労条件総合調査

企業規模別にみると、1,000人以上の大企業では90.1%が導入している一方、30~99人規模の企業では70.1%にとどまります。

2018年の調査では退職金制度のある企業が80.5%でしたが、5年間で約5.6%減少しました。つまり、退職金制度を見直す企業が増えている傾向があります。

参考:平成30年就労条件総合調査

退職金制度の見直しが進んでいる背景

退職金制度の見直しが進む背景には、働き方の変化があります。

かつては「ひとつの会社で長く働く」ことが当たり前でした。しかし、今では転職を通じたキャリアアップが一般的になっています。そのため、長期勤続を前提とした従来の退職金制度が、現代の働き方に合わなくなってきています。

そこで注目されているのが、運用責任を従業員がもつ「企業型確定拠出年金(企業型DC)」です。導入企業は2025年3月時点で約58,000社、加入者は約860万人に達しており、従来の退職金制度に代わる選択肢として広がりを見せています。

参考:確定拠出年金統計資料|厚生労働省

さらに、コスト削減や雇用の流動化対応のため、退職金を前払いする仕組みや制度廃止を選ぶ企業も増えてきています。

このような変化を受け、従来型の退職金制度をもつ企業の割合は、2018年の80.5%から2023年には74.9%まで低下してきました。一方で、老後の生活資金としての重要性から、従来の制度を維持する企業も依然として多く存在しています。

参考:令和5年就労条件総合調査|厚生労働省

従業員が退職金制度のある会社を選ぶメリット・デメリットは?

従業員にとって退職金制度のある会社を選ぶ最大の利点は、老後の生活資金を「税制優遇」を受けながら効率的に蓄えられる点にあります。

一方で、支給条件によっては早期転職の足かせ(ロックイン効果)になったり、現役世代の手取り額が抑えられたりする側面も考慮する必要があります。

メリット

退職金制度のある会社を選ぶことで、従業員は将来の経済的な安心感を得られます。とくに退職後の生活資金や住宅ローンの返済など、まとまった資金が必要な場面での強い味方となるでしょう。

また、退職金を受け取る際には税制の優遇措置が適用され、税負担が軽くなります。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数
20年超 800万円+70万円×(勤続年数ー20年)

※勤続年数に1年未満の端数があるときは、1日でも1年として計算します

※上記の算式によって計算した金額が80万円未満の場合は、退職所得控除額は80万円になります

参考:国税庁|退職金と税

退職金に対する税金は、通常の給与とは異なる優遇された計算方法が適用されるのが特徴です。退職金額から退職所得控除額を差し引き、控除後に残った金額の1/2が課税対象となるため、手取り額を大きく確保できます。

さらに、退職金を年金形式で受け取る場合は、公的年金等控除の対象となる点も大きなメリットです。このように、退職金には手取り額を増やす工夫が施されており、退職金制度のある会社を選ぶ大きな理由のひとつとなっています。

参考:国税庁|退職金を受け取ったとき(退職所得)
参考:国税庁|退職金と税
参考:企業年金連合会|公的年金等控除

デメリット

退職金制度には基本的に大きなデメリットはありませんが、制約を感じる場合があります。

たとえば、自己都合による中途退職では、退職金の支給額が減額される可能性があるのがデメリットです。減額の影響を考えると、中途退職のハードルが上がることがあります。

また、退職金は給与の後払いとしての性質も持ちます。若いうちから資金を活用したい従業員にとっては、給与として受け取れない点がデメリットに感じるでしょう。

在職中の給与や賞与に反映してほしい従業員にとっては、前払い退職金制度のほうが適している場合もあります。

前払い退職金制度とは?

前払い退職金制度は、従来の退職金のように退職時に一括で支払うのではなく、毎月の給与や賞与に退職金分を上乗せして支給する仕組みです。

近年、退職金制度の多様化が進む中、前払い退職金制度が注目を集めています。ここでは、前払い退職金制度の仕組みや導入のメリット・デメリットを詳しく解説します。

仕組み

前払い退職金制度は、退職金相当額を在職期間中に、毎月の給与に上乗せして支払う仕組みです。この制度における退職金は、給与所得として扱われ、税金や社会保険料の対象になります。

従業員は毎月の収入が増えるため、生活費やキャリアアップへの投資などに活用できるのが魅力です。一方、従来の退職所得控除は適用されず、全額が所得税・住民税の課税対象となります。

勤続年数を基準とする従来の退職金制度が時代にそぐわないとされ、柔軟な報酬体系として注目されています。

メリット

前払い退職金制度は、従来の退職金制度のように退職時にまとまった金額を用意する必要がありません。毎月少しずつ支払うため、資金管理が効率的になるメリットがあります。

また、人材の流動化が進む中、従来の退職金制度では中途入社の社員と新卒社員との間で処遇の差が生じやすい課題がありました。しかし、前払い制度ではこうした不公平を解消できるでしょう。

また、成果に応じた報酬を重視する企業にとっても、前払い制度は効果的です。従業員の働きに応じて即時的な報酬提供が可能になるため、従業員のモチベーション向上や定着率の改善につながります。

このように、財務面と運用面の双方でメリットがあります。

デメリット

前払い退職金制度を導入することで、企業側は社会保険料の負担が増すデメリットがあります。

従来の退職金は社会保険料の算定対象外でした。しかし、前払い退職金は給与として扱われるため、企業負担の社会保険料が増加します。

また、従業員の定着率が低下するリスクもあります。従来の退職金制度には長期勤続を促す効果がありました。しかし、前払い制度ではすでに退職金が支給済みとなるため、従業員の退職を抑止する効果が弱まる可能性があります。

制度導入時には従業員との合意形成や、過去の退職金の精算方法など、複雑な調整が必要です。導入すると元の制度に戻すことも難しく、長期的な視点での慎重な判断が求められます。

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退職金制度のメリット・デメリットを踏まえた退職時の課題

退職金制度の導入には、従業員のモチベーション向上や定着率を高められるメリットがある一方で、運用コストがかかるなどのデメリットも存在します。こうした退職金制度の設計とともに企業が目を向けたいのが、退職時に発生する人事労務の手続き負担です。

マネーフォワードが独自に実施した調査で、退職手続きにおいて特にトラブルや苦労が発生しやすい項目について尋ねました。その結果、最もトラブルが発生しやすいのは「離職票の発行手続き(賃金台帳の集計等)」で、31.7%でした。次いで「健康保険証の回収」が29.1%、「退職届の受理と退職日の合意」が26.8%という結果になっています。

退職時のトラブルを防ぐ社内体制の構築

調査結果から、退職者との連絡ややり取りに関する業務が、人事労務担当者の大きなネックになっていることがわかります。退職金制度は従業員の長期的な貢献に報いるための重要な仕組みですが、退職金の金額提示や支払い手続きを含め、退職時のフローはどうしても煩雑になりがちです。

企業が退職金規定を整備する際は、離職票の発行や保険証の回収といった実務手続きのルール化やシステム化も同時に進め、円滑に退職手続きが完了する体制を整えることが大切です。

出典:マネーフォワード クラウド、退職手続きにおいてトラブルが発生しやすい項目【入退社に関する調査データ】(回答者:入退社手続きの業務に関与した経験がある597名、集計期間:2026年2月)

従業員と企業が納得する退職金制度を選ぼう

退職金制度は、企業と従業員の双方にメリットとデメリットをもたらします。

企業側には人材確保や従業員の定着率向上といったメリットがある一方、財務負担が大きいデメリットがあります。従業員にとっては、退職後の生活資金が確保できる反面、転職時の不利益が課題となるでしょう。

こうした中、前払い退職金制度や確定拠出年金など、新しい選択肢も広がってきました。本記事を参考に、自社の状況や従業員のニーズを考慮しながら、最適な制度を選びましょう。

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