• 更新日 : 2026年7月2日

ウェルビーイング経営とは?メリット・デメリットや導入の流れをわかりやすく解説

Pointウェルビーイング経営とは何を目指す取り組みなのか?

従業員の身体的・精神的・社会的な幸福を重視し、企業の持続的な成長を目指す経営手法です。

  • 健康経営より幅広く、やりがいや人間関係、経済的安定まで含めて追求する
  • 生産性向上や人材定着につながり、採用ブランドの強化にも寄与する
  • 現状把握から効果測定まで4ステップで段階的に導入を進める

まずは従業員満足度調査など社内でできる低コストの施策から始めましょう。

「ウェルビーイング経営って一体何だろう?」「中小企業にも関係あるのかな?」といった疑問をお持ちの経営者や、人事担当者の方は少なくありません。

ウェルビーイング経営とは、従業員の身体的・精神的・社会的な幸福を重視し、企業の持続的な成長を目指す新しい経営のあり方です。人材不足や働き方の多様化が進む現代において、従業員の幸福(ウェルビーイング)は、生産性の向上や人材定着に直結する重要な経営課題です。

本記事では、ウェルビーイング経営の基礎知識から、企業が取り組むメリット・デメリット、具体的な導入の流れまで網羅的に解説します。

ウェルビーイング経営とは?

まず、ウェルビーイング経営の基本的な考え方や、似た言葉である「健康経営」との違い、注目される背景を解説します。

ウェルビーイング経営の定義

ウェルビーイング経営とは、従業員の「ウェルビーイング(Well-being)」を企業の成長における重要な要素と位置づけ、戦略的に取り組む経営手法を指します。

そもそも「ウェルビーイング」とは、身体的、精神的、そして社会的にすべてが満たされた、持続的な幸福の状態を意味します。

単に病気ではないという健康な状態だけでなく、従業員一人ひとりが仕事にやりがいを感じ、良好な人間関係を築き、私生活も充実している状態を目指すのが特徴です。

ウェルビーイング経営と健康経営との違い

ウェルビーイング経営とよく比較されるのが「健康経営」です。

健康経営は、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、企業の生産性向上などを目指す取り組みで、主に身体的・精神的な健康維持に焦点を当てています。

一方、ウェルビーイング経営は、健康の概念をさらに広げ、仕事のやりがい、人間関係、経済的な安定など、より包括的な幸福を追求します。

健康経営が「守り」の側面が強いのに対し、ウェルビーイング経営は従業員のエンゲージメントを高める「攻め」の経営と言えるでしょう。

ウェルビーイング経営が注目される背景

ウェルビーイング経営が注目される背景には、社会の大きな変化があります。

近年、終身雇用が当たり前ではなくなり、働きがいや自己実現を重視する人が増えました。

特に中小企業では深刻な人手不足が続いており、従業員に長く活躍してもらうための魅力的な労働環境づくりが不可欠です。

また、ESG投資(環境・社会・ガバナンスを重視する投資)の広がりに伴い、企業が従業員をどれだけ大切にしているかという人的資本への関心も高まっています。

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ウェルビーイング経営に取り組むメリット

ウェルビーイング経営は、単なる社会貢献活動ではありません。

企業にとって明確なメリットをもたらす、戦略的な「投資」です。

ここでは、企業が取り組むべき具体的な理由とメリットを3つの視点から解説します。

生産性の向上

従業員のウェルビーイングが高い状態にあると、仕事への意欲や集中力、いわゆる「従業員エンゲージメント」が向上します。

また、心身の不調による欠勤や、出社していても生産性が上がらない状態(プレゼンティーズム)の防止につながる点もメリットのひとつです。

心身ともに満たされた従業員は、自律的に業務改善に取り組んだり、新しいアイデアを生み出したりと創造性を発揮しやすく、組織の生産性向上や業績アップに直結します。

人材の定着と採用力の強化

「従業員を大切にする会社」という評判は、既存の従業員の定着はもちろん、採用活動においても大きな強みです。

ウェルビーイング経営への取り組みを社外へ発信しておくと、企業の採用ブランドを高め、優秀な人材の確保に寄与します。

特に若手世代は、給与などの条件だけでなく、「この会社で働き続けたいか」「自分らしくいられるか」といった点を重視します。

そのため、従業員が長く働きたいと思える環境づくりは、人材の定着だけでなく企業の持続的な成長にもつながる取り組みです。

企業イメージの向上

ウェルビーイング経営に積極的に取り組む姿勢は、顧客や取引先、金融機関といったステークホルダーからの信頼につながります。

従業員を大切にする企業文化は、製品やサービスの質の向上にも寄与し、結果として顧客満足度を高める点も大きなメリットです。

ウェルビーイング経営によって「ホワイト企業」としての認知が広がると、社会的な評価が高まり、企業のブランドイメージ向上に大きく貢献します。

ウェルビーイング経営に取り組むデメリット

ウェルビーイング経営には多くのメリットがある一方で、導入や運用にはコストや効果測定など事前に把握しておきたい課題もあります。

ここでは、ウェルビーイング経営に取り組む際に注意したい3つのデメリットを解説します。

導入・運用コストが発生する

ウェルビーイング経営では、従業員アンケートの実施や施策の設計、効果測定など、導入初期から継続的なコストと工数が発生します。

特に福利厚生の拡充や制度整備、研修の実施に伴う費用は固定費化しやすく、業績が悪化した場合でも削減しにくいため、長期的に継続できるかどうかを試算しておきましょう。

さらに、外部の専門家やツールを活用する場合には追加費用が発生する点もデメリットのひとつです。

まずは従業員満足度調査やストレスチェックなど、社内で実施できる低コストの施策から始めて、導入のハードルを下げながら取り組みましょう。

また、既存の研修制度や健康診断をウェルビーイングの視点で見直すと、新たな制度を一から導入するよりも費用を抑えられます。

投資対効果が見えにくい段階では経営層の理解を得にくいため、離職率や有給取得率、生産性などの指標とあわせてコストの妥当性を説明できる体制を整えておきましょう。

効果を定量的に測定しにくい

ウェルビーイング経営では、「幸福度」や「エンゲージメント」など定性的な指標を扱う場面が多く、施策の効果を数値で示しにくいという課題があります。

そのため、経営層への説明や継続的な予算確保が難しくなるケースも少なくありません。

効果を可視化するためには、離職率、有給取得率、欠勤率、従業員サーベイのスコアなど、測定可能な指標を事前に設定しておきましょう。

また、施策の効果が現れるまでには時間がかかる場合が多いため、短期的な数値だけで判断せず、中長期的な視点で取り組みを継続する意識も重要です。

定期的な従業員サーベイを実施し、施策前後のスコアを比較すると、感覚ではなくデータに基づいた改善判断につながり、経営層への説明資料としても活用できます。

効果測定の方法に迷う場合は、内閣府の「Well-beingダッシュボード」などの公的指標を参考にすると、自社に適した評価基準を設定しやすくなります。

参考:満足度・生活の質を表す指標群(Well-beingダッシュボード)|内閣府

形骸化しやすい

職場環境や評価制度が変わらないまま運用すると、「制度はあるが利用しづらい」という状態に陥りやすく、従業員の不満につながる可能性があります。

全社的な取り組みとして定着させるためには、経営トップが率先して行動し、「本気で取り組んでいる」というメッセージの発信が欠かせません。

また、目的が曖昧な場合、施策が本来の方向性からずれてしまう可能性があるため、導入前にウェルビーイング経営の目標や目的を全社で共有しておきましょう。

さらに、定期的な効果測定や施策の見直しを組み込んだPDCAサイクルを設計しておかなければ、導入当初の熱量が低下するにつれて運用が停滞しやすくなります。

制度を実際に活用してもらうためには、申請フローの簡素化や上司による利用促進、利用事例の社内共有など、利用しやすい環境を整えておくと形骸化の防止につながります。

ウェルビーイング経営の導入の流れ

「ウェルビーイング経営の重要性はわかったけれど、何から手をつければいいのかわからない」という方も少なくありません。

ここでは、中小企業でも実践できる、具体的な導入の流れを4つのステップでご紹介します。

ステップ1:現状の把握

まずは、自社の従業員がどのような状態にあるのかを客観的に把握する取り組みから始めます。

従業員満足度調査やストレスチェックなどのアンケートを実施したり、上司と部下による1on1ミーティングの機会を設けたりして、現場の生の声を集めましょう。

現状の把握により、人間関係、労働時間、評価制度など、自社が抱えるウェルビーイングに関する課題が明確化します。

データに基づいた課題の可視化が、効果的な施策を打つための第一歩です。

ステップ2:方針の決定と体制構築

次に、収集したデータをもとに、自社が目指すウェルビーイングのあり方や具体的な目標を設定します。

方針決定の際に重要なのが、経営トップが「ウェルビーイング経営を推進する」という強い意志を社内外に明確に発信する姿勢(トップコミットメント)です。

その上で、人事部などを中心とした推進チームを立ち上げ、全社的に取り組むための体制を整えましょう。

経営層の本気度が、従業員の意識を変える原動力となります。

ステップ3:施策の実行

設定した方針と目標に基づき、具体的な施策を計画し、実行に移します。

例えば、長時間労働が課題であれば、「フレックスタイム制やテレワークの導入」、コミュニケーション不足であれば、「社内SNSや定期イベントの企画」といった具合です。

最初から完璧を目指す必要はありません。

従業員の意見も取り入れながら、自社でできる取り組みからスモールスタートで始めていく意識が成功の鍵です。

ステップ4:効果測定と改善

施策を実行したら、必ずその効果を測定し、振り返りを行いましょう。

定期的に従業員サーベイを実施して施策実施前後の数値を比較したり、離職率や有給休暇取得率の変化を確認したりします。

思うような効果が出ていない場合は、その原因を探り、施策の内容を見直しましょう。

「計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)」のPDCAサイクルによってウェルビーイング経営の形骸化を防ぎ、自社に合った経営を実現できます。

ウェルビーイング経営を構成する5つの要素

ウェルビーイングは多角的な概念です。

米国の調査会社ギャラップ社は、ウェルビーイングを5つの要素で定義しており、これらをバランスよく満たす意識が重要だと提唱しています。

自社の取り組みを考えるうえでの参考にしてください。

キャリアの幸福

日々の仕事に対して、やりがいや誇り、楽しみを感じている状態です。

単に業務をこなすだけでなく、自分の仕事が誰かの役に立っている実感や、自身の成長を感じられるかどうかが重要です。

公平な評価制度や、スキルアップを支援する研修制度、挑戦できる機会の提供などが、キャリアの幸福につながります。

社会的な幸福

「社会的な幸福」とは、職場において、信頼できる上司や同僚がいて、良好な人間関係を築けている状態を指します。

お互いに尊重し、困ったときには助け合える関係性は、働く上での安心感につながります。

感謝を伝え合う文化の醸成や、チームビルディングを目的としたイベントの実施などが有効です。

経済的な幸福

「経済的な幸福」とは、自分の収入や資産に満足し、将来に対する経済的な不安が少ない状態を指します。

経済的に不安の少ない状態は、生活を安定させ、安心して働き続けるための基盤です。

単に給与水準が高いだけでなく、納得感のある評価・報酬制度や、金融リテラシー向上のための教育機会の提供も必要です。

身体的な幸福

心身ともに健康で、日々の業務をエネルギッシュに行える状態を指す「身体的な幸福」も重要な要素のひとつです。

取り組みとしては、健康診断の徹底や長時間労働の適正化はもちろん、食生活や運動習慣の改善サポート、メンタルヘルス不調を防ぐ相談窓口の設置などが含まれます。

地域社会の幸福

「地域社会の幸福」とは、自分が所属するコミュニティ(地域社会)とのつながりに満足している状態を指します。

会社周辺の清掃活動や地域イベントへの参加、ボランティア活動を支援する制度などを通じて、従業員が地域社会へ貢献する機会の創出も、「地域社会の幸福」につながります。

ウェルビーイング経営とSDGsの関連性

ウェルビーイング経営への取り組みは、企業の成長だけでなく、社会全体の持続可能性にも貢献します。

特に、国連が掲げる「SDGs(持続可能な開発目標)」との関連性が深い点も特徴的です。

例えば、従業員の心身の健康増進はSDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」に、働きがいのある人間らしい雇用の促進は目標8「働きがいも経済成長も」に直結します。

ウェルビーイング経営の推進は、企業の社会的責任(CSR)を果たし、社会から信頼され、選ばれ続ける企業になるための重要なステップです。

ウェルビーイング経営で持続可能な企業成長を実現する

ウェルビーイング経営は、単なる福利厚生ではなく、企業の未来を創るための重要な経営戦略です。

従業員一人ひとりの幸福を追求する姿勢が、組織全体の生産性や創造性を高め、結果として企業の持続的な成長につながります。

本記事で紹介した導入の流れや5つの構成要素を参考に、まずは自社の現状把握から始めてみてください。

従業員と企業が共に成長できる労働環境を整える意識が、これからの時代に選ばれる企業になるための第一歩です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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