- 更新日 : 2026年4月8日
育休中に扶養に入るとどうなる?控除額や手続きの流れを解説
育児休業は、労働者が安心して育児に専念するために欠かせない制度です。しかし、育児休業中は、どうしても収入が低下してしまいます。そこで活用したい制度が扶養です。
当記事では、育児休業中の扶養について解説します。扶養の条件や手続きの流れ、扶養手当などをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
扶養とは
「扶養」とは、自分自身では生計を維持することが困難な親族等に対する経済的な援助を意味します。扶養する側の収入によって、扶養される側を養います。その際に扶養する側を「扶養者」と呼び、扶養される側は「扶養親族」や「被扶養者」と呼ばれます。
扶養には、「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2つの種類が存在します。扶養という言葉自体は同様ですが、内容は大きく異なるため、混同しないようにしなければなりません。
税制上の扶養
税制上の扶養親族は、扶養控除の対象となります。対象となるためには、16歳以上で、かつ以下のような条件を満たすことが必要です。
税制上、配偶者は後述する「配偶者(特別)控除」の対象となります。そのため、扶養控除の対象となる扶養親族とは区別されています。育児休業中の扶養に関係するのは、主にこちらの扶養です。
社会保険上の扶養
社会保険には広義と狭義の2種類が存在し、扶養に関係するのは健康保険(介護保険含む)と厚生年金保険からなる狭義の社会保険となります。社会保険上の扶養に該当する場合には、自らが保険料を納付することなく、健康保険の保険給付を受けることが可能です。被扶養者として、社会保険上の扶養の対象となるためには、原則として日本国内に住所を有していることが必要です。また、以下の要件も満たさなければなりません。
- 被保険者の直系尊属(両親や祖父母等)、配偶者(事実婚状態の者を含む)、子、孫、および兄弟姉妹
- 被保険者の3親等以内の親族に該当する被保険者と同一の世帯に属している者(1に該当する者を除く)
- 被保険者の事実婚の配偶者の父母および子であって、被保険者と同一の世帯に属する者
- 3の配偶者の死後における被保険者と同一の世帯に属するその父母および子
上記1から4のすべてにおいて、主として被保険者により、生計を維持されていることが必要です。生計維持の判断は、認定の対象者が同一世帯か否かで基準が異なります。
同一世帯の場合であれば、認定対象者の年間における収入が130万円未満であり、かつ被保険者の年間収入の2分の1未満であれば、要件を満たすとされています。また、認定対象者が、同一の世帯に属していない場合には、年間収入が130万円未満であって、かつ被保険者からの援助による収入よりも少なければ、要件を満たすとされます。
なお、認定の対象者が60歳以上、または一定の条件に該当する障害者である場合、130万円未満を180万円未満に読み替えて判断することが必要です。
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育休中に扶養に入れば節税できる
育児休業中は、収入が低下するのが一般的です。低下した収入が一定の条件を満たすものであれば、配偶者は税制上の所得控除である「配偶者控除」を受けることができます。詳細は後述しますが、配偶者控除は最大38万円(老人控除対象配偶者の場合は48万円)の控除を受けることができます。そのため、条件を満たすことができれば、配偶者の所得税を減額することが可能です。また、「配偶者特別控除」と呼ばれる所得控除も存在し、こちらも最大38万円の控除が受けられます。
扶養に入る条件と控除額
配偶者控除や配偶者特別控除の対象となって、控除を受けるためには収入をはじめとする一定の条件を満たさなければなりません。また、納税者本人や配偶者の所得に応じて控除額は変動します。配偶者控除と配偶者特別控除の場合に分けて、解説を行います。
配偶者控除の場合
配偶者控除の対象として、控除対象配偶者となるためには、以下の条件を満たさなければなりません。なお、以下の条件はその年の12月31日時点で満たすことが必要です。
- 民法が規定する配偶者である(内縁関係は対象外)
- 納税者との生計が一である
- 年間における所得の合計金額が48万円以下
- 青色申告者の事業のおける専従者として、その年を通じ、一度も給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業における専従者でないこと
配偶者控除における控除額は以下のとおりです。
| 控除を受けるべき 納税者本人の合計所得金額 |
控除額 | |
|---|---|---|
| 控除対象配偶者(一般) | 老人控除対象配偶者※ となる配偶者 |
|
| 900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
| 900万円超 950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
| 950万円超 1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
※その年12月31日における年齢が70歳以上の控除対象配偶者
上記表のように、控除対象配偶者となる場合には、13万円(16万円)から38万円(48万円)までの控除を受けることが可能です。ただし、控除を受けることになる配偶者の年間における合計の所得金額が1,000万円を超える場合には、配偶者控除の適用を受けることはできません。
配偶者特別控除の場合
配偶者特別控除の対象となるためには、以下の条件を満たさなければなりません。なお、配偶者控除と同様に、条件はその年の12月31日時点で満たすことが必要です。また、控除を受けることになる配偶者の年間における合計の所得金額が1,000万円を超える場合には、控除の適用を受けられないことも、配偶者控除と同様となります。
配偶者特別控除における控除額は、以下のとおりです。
| 控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 900万円以下 | 900万円超 950万円以下 |
950万円超 1,000万円以下 |
||
| 配偶者の合計所得金額 | 48万円超 95万円以下 |
38万円 | 26万円 | 13万円 |
| 95万円超 100万円以下 |
36万円 | 24万円 | 12万円 | |
| 100万円超 105万円以下 |
31万円 | 21万円 | 11万円 | |
| 105万円超 110万円以下 |
26万円 | 18万円 | 9万円 | |
| 110万円超 115万円以下 |
21万円 | 14万円 | 7万円 | |
| 115万円超 120万円以下 |
16万円 | 11万円 | 6万円 | |
| 120万円超 125万円以下 |
11万円 | 8万円 | 4万円 | |
| 125万円超 130万円以下 |
6万円 | 4万円 | 2万円 | |
| 130万円超 133万円以下 |
3万円 | 2万円 | 1万円 | |
配偶者控除とは異なり、控除を受けることになる納税者本人だけでなく、配偶者の所得合計によっても控除額が変動することが特徴です。
育休中に給付金を受けたら扶養はどうなる?
条件を満たしたうえで、育児休業期間に入っている場合には、「育児休業給付金」を受けることが可能です。育児休業給付金は、原則として子どもが1歳となる誕生日の前々日まで、休業開始時賃金日額の67%(休業開始から181日目以降は50%)が支給されます。
育児休業給付金は非課税となるため、受給したとしても扶養について影響を及ぼすことはありません。育児休業給付金は、配偶者控除における控除対象配偶者の判定上、合計所得金額に含まれないわけです。これは民間企業だけでなく、公務員が受ける育児休業給付金についても同様です。なお、育児休業給付金の支給期間に事業主から賃金が支払われた場合には、その額に応じて支給額の減額調整がなされます。
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育休中の扶養手続きの流れ
育休中に扶養に入るには、年末調整や確定申告での手続きが必要です。年末調整と確定申告に分けて解説を行います。
納税者が年末調整する場合
納税者本人が勤務先企業に対して、申告書を提出すれば年末調整において、控除を受けることが可能です。その際の手続きの流れは以下の通りです。
1.必要書類(配偶者控除申告書等)の準備
配偶者控除を受けるためには、配偶者控除申告書を提出しなければなりません。配偶者控除申告書は基礎控除申告書や所得金額調整控除申告書とセットになっています。必要な申告書等は、通常10月中旬から11月上旬にかけて、勤務先から配布されます。
2.申告書への必要事項の記入
必要な書類が配布されたら、必要事項を記入していきます。どのように記入すればよいか分からない場合には、国税庁のHPや勤務先の担当者へ問い合わせてください。記入ミスがあると、控除を受けられない場合があるため、ミスのないように記入しましょう。
3.勤務先企業へ提出
記入を終えたら、勤務先企業へ必要書類を提出します。企業は年末調整書類を翌年の1月31日までに税務署などに提出しなければならないため、遅れないようにしましょう。通常は11月中に企業に提出することになります。
確定申告する場合
自営業者であったり、勤務先となる企業で年末調整を行えなかったりした場合には、確定申告で控除を受けなければなりません。その際の流れは以下の通りです。
1.確定申告書類の準備
確定申告に必要となる書類は、税務署や相談会場などで直接入手するほかに、郵送してもらうこともできます。また、e-Taxを用いた電子申告も可能です。利便性の高い方法を選びましょう。
2.控除額の計算
配偶者控除と配偶者特別控除のどちらに該当するかを確認したうえで、控除額を計算します。国税庁のHPなどを参考に正確な額を計算しましょう。配偶者のマイナンバー等の情報も必要となります。
3.提出
年末調整は、例年2月16日から3月15日までに行わなければなりません。期限に間に合うように書類の記入などを済ませましょう。配偶者控除を申告し忘れた場合であっても、申告期限内であれば、再度申告書を提出することで修正できます。法定となる申告期限より5年以内であれば、更正の請求を行うことで還付を受けることも可能です。
育休中は扶養手当を受けられる可能性も
独自の福利厚生として扶養手当を支給している企業も存在します。また、公務員にも扶養手当の制度が存在します。
会社員の場合
福利厚生は、健康保険や厚生年金保険などの法定福利厚生以外にも企業が独自に設ける法定外福利厚生が存在し、扶養手当も法定外福利厚生に該当します。扶養手当は法定の福利厚生ではないため、すべての企業に存在するわけではありません。しかし、勤務先の企業が扶養手当の制度を設けている場合には、育児休業中であっても支給されることがあります。ただし、収入制限が設けられている場合もあるため、勤務先企業に確認することが必要です。
公務員の場合
公務員の場合であれば、制度としての扶養手当が存在します。国家公務員の場合、扶養親族である配偶者や子、父母等を対象として支給され、地方公務員の場合には、自治体ごとの条例や規定で条件が定められています。しかし、公務員の扶養手当も支給に当たっての条件が課されており、配偶者や子がいればすべての場合で支給されるわけではありません。たとえば、年間の所得が130万円以上である場合には、扶養手当の対象親族とはなりません。
育休中の扶養や手続きに関する実態
マネーフォワード クラウドでは、自社において従業員の産休・育休に関する実務に携わっている担当者を対象に、産休・育休に関する調査を実施しました。
調査によると、育児休業に関する一連の手続きの中で特に工数がかかる、または判断が難しい業務として最も回答が多かったのは「育児休業給付金の申請書類作成と提出」で、43.2%でした。次いで「社会保険料免除(産休・育休中)に関する手続き」が42.3%、「育休中の社会保険料や給付金の見込額の試算・説明」が29.8%、「従業員への個別周知および休業意向の確認」が29.1%と続いています。
育休中の扶養に伴う社会保険料の免除手続きや、給付金に関する業務は、企業側にとっても多くの工数や判断を要することがデータから読み取れます。育休を取得して扶養に入る従業員自身が、制度の仕組みや控除額の条件などをあらかじめ正しく把握しておくことは、担当者の負担を軽減し、社内の手続きをスムーズに進めるうえでも重要です。
出典:マネーフォワード クラウド、特に工数がかかる、または判断が難しい業務【産休・育休に関する調査データ】(回答者:産休・育休の実務に関与している回答者674名、集計期間:2026年3月)
育休中は扶養制度の活用を
育児休業期間中は、収入が低下してしまう場合が多くなっています。育児には手間や時間だけでなく、多くの金銭的負担も伴うため、収入の低下は避けたい事態となるでしょう。そのような場合に、活用できるのが扶養制度です。当記事を参考として、扶養制度を活用することで、節税を図ってください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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