- 更新日 : 2024年12月26日
給与所得者の基礎控除申告書とは?書類の書き方や記入例を紹介
給与所得者の基礎控除申告書は、年末調整書類の中でも特に記入の仕方に迷うものです。収入金額とは何か、所得金額とどう違うのか、給与明細のどこを見て計算すればよいのか等、わからないことが多いのではないでしょうか。
本記事では、基礎控除の概要や所得金額の計算方法、基礎控除申告書の書き方等について、記入例を交えて解説します。

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目次
給与所得者の基礎控除申告書とは?
「給与所得者の基礎控除申告書」とは、給与所得者が年末調整で基礎控除を受けるための書類です。
令和元年分以前は基礎控除申告書が存在せず、誰でも一律に38万円の基礎控除を受けられました。しかし法改正により、令和2年分以降、基礎控除を受けるためには基礎控除申告書の提出が必須です。
そもそも基礎控除とは?
基礎控除とは所得控除の1つで、合計所得金額が2,500万円以下の場合に、最大48万円が控除されるものです。
所得控除とは、所得税を課税する際に、個々の納税者の事情を加味するためのものです。例えば、被扶養配偶者がいるときは「配偶者控除」が所得金額から差し引かれ、その結果、所得税が抑えられます。
所得控除は2023年現在15種類があり、基礎控除もその1つです。よく使われる所得控除としては「配偶者控除」「配偶者特別控除」「扶養控除」「社会保険料控除」「生命保険料控除」「地震保険料控除」などが挙げられます。
令和元年分までの基礎控除は、合計所得金額にかかわらず一律38万円でした。しかし法改正により令和2年分からは、下表のように合計総所得金額に応じた金額となりました。
合計所得金額が2,400万円以下の場合は、48万円の基礎控除を受けられます。ただし、合計所得金額の増加とともに基礎控除額は減少し、2,500万円を超えた場合は基礎控除額は0円となるため注意が必要です。
なお、基礎控除の詳細は、以下の記事でご確認ください。
給与所得者の基礎控除申告書の書き方
給与所得者の基礎控除申告書は「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の用紙左側部分にあります。
出典:国税庁 各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)
「令和5年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」を加工して作成
給与所得者の基礎控除申告書の記載項目
「給与所得者の基礎控除申告書」に記載する項目は、次のとおりです。
- 給与所得の収入金額
- 給与所得の所得金額
- 給与所得以外の所得の合計額
- あなたの本年中の合計所得金額の見積額
- 控除額の計算と区分、基礎控除の額
1から5までの項目の場所は、下の図のとおりです。
出典:国税庁 各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)
「令和5年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」を加工して作成
記入項目は給与明細のどこを見ればよい?
給与明細は「基本給」「通勤手当」「健康保険料」「所得税」など、さまざまな項目で構成されていますが、その中に「課税合計額」または「課税支給合計額」といった名称の項目があります。
基礎控除申告書の作成に使うのは、この「課税合計額」または「課税支給合計額」です。
なお、賞与が支払われている場合は、賞与も合算します。
そして、もし給与明細に「課税合計額」や「課税支給合計額」などの項目が見当たらない場合は「総支給額」から通勤手当などの非課税の手当を差し引いて、課税合計額を算出します。
なお基礎控除申告書に使う項目は「総支給額」や「差引支給額」「課税対象額」ではありません。間違えやすいので注意しましょう。
1.給与所得に関する収入金額
ここからは「年間の給与収入480万円(課税分のみ・賞与なし・他の所得なし)」の場合を想定して、記入例を挙げながら説明していきます。
「給与所得の収入金額」には、その年の1月以降に受けた給与(非課税部分を除く)をすべて合算した額を書きます。
出典:国税庁 各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)
「令和5年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」を加工して作成
年末調整用紙が配布され、基礎控除申告書を記入するのは概ね11月から12月上旬頃で、まだ12月支払分給与が確定していないかもしれません。その場合は、確定していない分については額を見積もり、それまでの給与と合算して「1年分の見積額」を出します。
「給与所得に関する収入金額」を記入するとき、注意が必要なケースを挙げておきます。
- 勤め先が2ヶ所以上あるときは、すべての会社から受けた収入を合算した額を書きます
- 年の途中で転職した場合は、転職前と転職後の収入を合算します
- パートやアルバイトの収入も合算します
2.給与所得に関する所得金額
「給与所得の所得金額」は、給与所得の収入金額の右の欄に記入します。ただし、ここに記入するものは「所得」であり、収入ではないことに注意しましょう。
給与所得に関する所得金額の計算方法
「給与所得の所得金額」は、自分で計算しなければなりません。この計算が、基礎控除申告書のもっともわかりにくい部分かもしれません。
所得金額を算出する計算式は、次のとおりです。
給与所得の収入金額(総収入金額)から給与所得控除を差し引き、給与所得の金額を出します。なお、給与所得控除を求める場合は、次の表の計算式を使用しましょう。
「給与収入’(課税分)が4,800,000円の給与所得者」を例として、計算してみましょう。
4,800,000円×20%+440,000=1,400,000円(給与所得控除)
4,800,000円(給与収入)-1,400,000円(給与所得控除)=3,400,000円(給与所得)
上の計算式により、給与所得は3,400,000円と算出されるため、基礎控除申告書の「所得金額」の欄に下の図のように記入します。
出典:国税庁 各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)
「令和5年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」を加工して作成
3.給与所得以外の所得の合計額
この欄は、給与所得以外の所得がある人のみが記入します。例えば会社員をしながら、副業で個人事業をしている人などが該当します。
なお、この欄に記入する金額は「所得」です。売上高から必要経費を差し引いた額を記入します。
4.あなたの本年中の合計所得金額の見積額
「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」には「給与所得」と「給与所得以外の合計額」を合算した額を記入します。
出典:国税庁 各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)
「令和5年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」を加工して作成
「(1)給与所得」と「(2)給与所得以外の所得の合計額」の所得金額を合計します。上の例の場合は、給与所得以外の所得がゼロであるため、給与所得の金額をそのまま記入します。
5.控除額の計算と区分
「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」で求めた合計額を「控除額の計算」の表に当てはめ、該当箇所にチェックを入れます。
そして(A)(B)(C)のいずれかに当てはまる場合は、「区分1」に、AからCのうち該当するアルファベットを記入します。
出典:国税庁 各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)
「令和5年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」を加工して作成
上の例では、給与所得が340万円です。この金額は「900万円以下」に該当するため、その欄のチェックボックスにチェックを入れます。またA~CのうちAに当てはまるため、区分1に「A」と記入します。
最後に「基礎控除の額」の欄に、「控除額の計算」の表から求めた基礎控除額を転記します。
基礎控除申告書は提出後に修正できる?
基礎控除申告書に誤った内容を記載してしまった場合でも、後から訂正できます。
ただし訂正には期限があります。年末調整関係書類の税務署への提出期限は1月31日であるため、それに間に合うよう訂正する必要があります。
また会社によっては、早めの訂正期限を設けることもあります。もし記載間違いに気づいたときは、すぐに会社の年末調整担当者に伝えましょう。
なお基礎控除申告書を訂正するときは、訂正箇所に二重線を引き、二重線の近くに訂正した内容を記入します。
基礎控除申告書の提出を忘れてしまった場合
基礎控除申告書の提出がない場合は、年末調整で基礎控除が受けられません。しかし実際は、基礎控除申告書の提出漏れは起きにくいでしょう。
なぜなら会社は従業員から回収した年末調整書類について、提出漏れや記入ミスがないか確認し、未回収の書類や必要なデータがあれば督促するためです。
ただし、基礎控除申告書の提出漏れがあった場合でも、自分で確定申告することによって基礎控除を受けられます。
基礎控除申告書は所得金額の計算が重要
給与所得者の基礎控除申告書は、年末調整で基礎控除を受けるために提出する書類です。基礎控除申告書を作成するには、その年の収入金額を元に、自分で所得金額の計算をしなければなりません。
所得金額を正確に算出し基礎控除額を導き出さないと、後から訂正が必要になることもあり得るため、基礎控除申告書は慎重に記入しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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