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  • 作成日 : 2019年10月29日

2020年版(令和2年)の年末調整の仕方を解説!変更点や注意点はある?

2019年_年末調整

2020年(令和2年)の年末調整に関する主な改正事項は、給与所得控除額の引き下げ、基礎控除額の引き上げ、所得金額調整控除の創設、扶養控除配偶者控除の合計所得金額要件の変更及び、ひとり親控除の創設など、例年に比べ改正事項が多くなっております。さらに2020年の年末調整から年末調整手続きの電子化に向けた施策が実施されます。具体的には、生命保険料控除証明書など書面でやり取りしていたものを、従業員が提出した電子データで年末調整を行うことが可能になります。
以下、税制改正事項と年末調整手続きの電子化について解説します。

   

2020年(令和2年)の年末調整の変更点や注意点は?

給与所得控除額の引き下げ

サラリーマンなどで給与所得がある人は勤務先からの収入金額に応じて一定の給与所得控除がありますが、2020年の改正により、給与所得控除額が一律10万円引き下げられます。さらに、上限額が適用される給与等の収入金額は850万円(改正前:1,000万円)となり、給与所得控除額の上限は195万円(改正前:220万円)に引き下げられることとされました。
例えば、年収1,000万円の人の給与所得控除額は195万円(改正前は220万円)であるため、給与所得は805万円となります。したがって、年収1,000万円の人の給与所得は25万円(220万円-195万円)増加することとなります。

基礎控除額の引き上げ

基礎控除は所得に関係なく、一律38万円の控除額でしたが、今回の改正により原則48万円の控除額となります。ただし、合計所得金額が2,400万円を超える人は基礎控除額が次第に減少し、合計所得金額が2,500万円を超える場合は適用できないことになりました。所得ごとの控除額は次のとおりです。

<合計所得金額>       <控除額>    
2,400万円以下         48万円
2,400万円超2,450万円以下   32万円
2,450万円超2,500万円以下   16万円
2,500万円超            0円

所得金額調整控除の創設

2020年の改正により所得金額調整控除が創設されました。所得金額調整控除のうち年末調整に係る部分は次のとおりです。
その年の給与等の収入金額が850万円を超える居住者で、特別障害者に該当する者。又は年齢23歳未満の扶養親族を有する者。もしくは特別障害者である同一生計配偶者や扶養親族を有する者の総所得金額を計算する場合には、給与等の収入金額(その給与等の収入金額が1,000万円を超える場合には、1,000万円)から850万円を控除した金額の10%相当額を給与所得の金額から控除します。
今回の給与所得控除の改正により、給与収入が 850 万円を超える場合の給与所得控除額が引き下げられましたが、子育て世帯などに対する税負担の軽減措置として所得金額調整控除が創設されております。

例えば、年収1,000万円の人の給与所得控除額は上述したとおり、昨年より25万円増加しますが、23歳未満の子供を扶養している場合には、所得金額調整控除により15万円(1,000万円-850万円×10%)が給与所得の金額から控除されます。
また、基礎控除額が38万円から原則48万円に増額されておりますので、23歳未満の扶養親族などがいる人については、結果として課税される所得金額は昨年と変わらないことになります。

配偶者控除や扶養控除の合計所得金額要件の変更

同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件が48 万円以下(改正前:38 万円以下)に引き上げられました。
また、源泉控除対象配偶者の合計所得金額要件が95 万円以下(改正前:85 万円以下)に引き上げられ、配偶者特別控除については、対象となる配偶者の合計所得金額要件が 48 万円超133万円以下(改正前:38 万円超 123 万円以下)となり、その控除額の算定の基礎となる配偶者の合計所得金額の区分が、それぞれ 10 万円引き上げられました。

ひとり親控除の創設及び寡婦控除の改正

  1. 婚姻歴や性別にかかわらず、生計を一にする子(総所得金額等の合計額が48万円以下)を有する単身者について、ひとり親控除(控除額35万円)が創設されました。
  2. 上記以外の寡婦については、引き続き寡婦控除として、控除額27万円を適用することとし、子以外の扶養親族をもつ寡婦についても、男性の寡夫と同様の所得制限(合計所得金額500万円以下)が設けられました。なお寡婦控除の特例は廃止されました。
    ※ひとり親控除、寡婦控除のいずれについても、住民票の続柄に「夫(未届)」「妻(未届)」の記載がある者は対象外となります

申告書様式の創設

基礎控除の改正にともない年末調整時において基礎控除申告書と所得金額調整控除申告書が創設されました。

年末調整手続きの電子化について

年末調整手続き概要

平成30年度税制改正により、2020年分の年末調整から、生命保険料控除、地震保険料控除及び住宅借入金等特別控除に係る控除証明書等について、勤務先へ電子データによる提供ができるよう手当されたことなどを受けて、年末調整手続の電子化に向けた施策が実施されます。

年末調整手続きが電子化された場合は、次のような手順となります。

  1. 従業員が保険会社から控除証明書などを電子データで受領します
  2. 従業員が国税庁ホームページなどからダンウンロードした年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(2020年10月リリース予定)に住所氏名などの項目を入力し、保険会社などから受領した電子データをインポート(自動入力、控除額の自動計算)して年末調整申告書の電子データを作成します
    ※年末調整申告書データは国税庁から提供するソフトウェア以外に民間のソフトウェアでも作成できます
  3. 従業員は上記2の年末調整申告書データおよび上記1の控除証明書データを勤務先に提供します
  4. 勤務先が上記3で提供された電子データを給与システムなどにインポートして年税額を計算します

年末調整手続きの電子化は、以上のような流れとなっております。なお、従来の年末調整手続きは次のとおりです。

  1. 従業員が保険会社、金融機関などから保険料控除証明書などの書面を受領します
  2. 従業員が保険料控除申告書や住宅ローン控除申告書に受領した書面に記載された内容を転記の上、控除額を計算し記入します
  3. 従業員が保険料控除申告書や住宅ローン控除申告書など、年末調整の際に作成する各種申告書(年末調整申告書)を作成して控除証明書などとともに勤務先に提出します
  4. 勤務先は、提出された年末調整申告書に記載された控除額の検算や控除証明書などの確認を行った上で、年税額を計算します

年末調整手続の電子化へ向けた準備

まず勤務先で電子化を実施するか否かを検討する必要があります。電子化を実施するのであれば、従業員への周知、給与システムの改修、事前に所轄の税務署長へ「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を提出(申請書を提出した月の翌月末日までに承認通知又は承認しないことの決定通知がなければ提出した月の翌月末日に承認があったものとみなされます)するなどの事前準備が必要となります。
また、従業員においても、保険会社などから書面ではなく控除証明書をデータで取得する必要があるため、各保険会社などへ確認する必要があります。なお、控除証明書データの取得方法としてマイナポータル連携により取得することもできます。

電子化のメリット

<勤務先のメリット>

  1. 年末調整申告書の記載内容・控除額のチェック、給与システムへの入力、年税額の計算等が自動化されることによる事務コストの削減
  2. 年末調整申告書(書面)の保管が不要(ペーパーレス化)となり保管コストが削減
  3. 従業員が作成する年末調整申告書の記載誤りが減り、従業員への問合せ事務が削減
  4. コロナ禍におけるテレワーク時の業務効率向上に期待

<従業員のメリット>

  1. 手書きによる作業の省略(年末調整申告書への記入、控除額の計算)とシステムによる自動計算のため計算間違い防止
  2. 作成した年末調整申告書データを翌年度以降も利用することにより、翌年度以降の入力事務が軽減

年末調整とは?

年末調整とは、1年間に源泉徴収により従業員から徴収した所得税(復興特別所得税を含む)の過不足を1年の終わりに精算する手続きです。

年末調整をする目的

会社員などの給与所得者は、源泉徴収として毎月の給料から所得税を天引きされています。しかし、所得税は1年間に得た所得の合計額をもとに計算されておりますので、1年が終わってみないと所得税の額は確定しません。

源泉徴収された金額は概算額ですので、年間の所得税額と一致しないのが普通です。そのため、1年の終わりに年末調整という形で、所得税の過不足を精算することになります。

年末調整の対象となる人

年末調整の対象となるのは、年末まで会社に在籍している人です。ただし、12月に支給されるべき給与等の支払い後に退職した人や死亡退職した人、心身の障害で退職後再就職できない人などは、年末に在籍していなくても年末調整の対象になります。
ただし、年間の給与収入が2,000万円を超える従業員などについては、年末調整の対象とはなりません。本人が確定申告する必要があります。

なお、年末調整をするためには、給与所得者の扶養控除等申告書を提出していることが条件になります。給与所得者の扶養控除等申告書は、扶養控除などの諸控除を受けるために必要になる書類です。

2020年の年末調整のスケジュール

年間の年末調整のスケジュールは、以下のようになります。

  1. 申告書用紙等の準備(11月中旬頃)
  2. 年末調整に必要な源泉徴収簿、法定調書、申告書用紙等の書類は、税務署から手引き(「年末調整のしかた」)と一緒に会社宛に郵送されます。書類が届いたら内容を確認しましょう。

    ※年末調整手続きの電子化を実施する場合には、事前に税務署長に承認申請書を提出する必要がありますので、早めに準備しましょう。例えば、9月中に申請書を提出して承認通知が来なかった場合には10月末に自動承認があったものとみなされます。したがって承認通知が来なかった場合は11月から適用されることになります。

  3. 申告書用紙を従業員に配布(11月中旬~下旬頃)
  4. 給与所得者の扶養控除等申告書、保険料控除申告書、配偶者控除等申告書、基礎控除申告書及び所得金額調整控除申告書を必要に応じて従業員に配布し、記入して提出するよう指示します。
    ※年年末調整手続きの電子化の適用を受けている場合は各種申告書の書面での提出は不要となります

  5. 申告書用紙を従業員から回収(11月下旬頃)
  6. 従業員から申告書用紙を回収し、記載内容のチェックを行います。
    ※年末調整手続きの電子化の適用を受けている場合には従業員から提出されたデータをもとに内容の確認を行います

  7. 所得税の計算(12月上旬~中旬頃)
  8. 12月の給与が確定すると、年間の給与額や賞与額、社会保険料、源泉徴収額も確定します。確定した年間の給与等の総額をもとに正しい所得税額を計算し、差額を精算します。

  9. 税務署や役所に提出する書類の作成(翌年1月)
  10. 税務署に法定調書(源泉徴収票支払調書)を、従業員の住所地の市町村に給与支払報告書を提出します。

年末調整の必要書類や作成書類

年末調整の際には、さまざまな書類が必要になります。年末調整で使う書類や税務署等に提出しなければならない書類は、以下のとおりです。

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(マル扶)
  • 従業員が年末調整において配偶者控除、扶養控除、障害者控除、ひとり親控除、寡婦控除、勤労学生控除などの適用を受けるために必要な書類です。マル扶を提出しないと年末調整が受けられませんので配偶者や扶養親族がいない人なども含め、年末調整の対象になる人は全員提出しなければなりません。

  • 保険料控除申告書(マル保)
  • 従業員が年末調整において生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除小規模企業共済等掛金控除の適用を受けるために必要な書類です。

    基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書(創設)
    昨年は配偶者控除等申告書として単独の1枚の用紙でしたが、2020年分は基礎控除申告書及び所得金額調整控除申告書と合わせての3つの控除を1枚の用紙に記載する仕様となっております。

  • 住宅借入金等特別控除申告書
  • 年末調整において住宅ローン控除を受ける従業員が提出する書類です。住宅ローン控除を受ける場合、初年度については本人の確定申告が必要ですが、2年目以降は勤務先の年末調整により控除が受けられます。
    ※年末調整手続きの電子化の適用を受けている場合には従業員から提出されたデータをもとに内容の確認を行います

  • 源泉徴収票
  • 会社が従業員に支払った年間の給与に関して、支払金額、給与所得控除後の金額、所得控除の合計額、源泉徴収税額などを記載する書類です。従業員に交付するほか、一定の場合、税務署にも提出する必要があります。

  • 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
  • 弁護士や税理士に支払った報酬、外部に支払った原稿料や講演料などについて作成する書類です。支払調書を支払先に交付する義務はありませんが、一定額以上支払った場合、税務署に提出しなければなりません。

  • 法定調書合計表
  • 源泉徴収票や支払調書の内容を集計した書類です。税務署に提出するために作成が必要です。

  • 給与支払報告書
  • 源泉徴収票と同様の内容を記載する書類で、従業員が住んでいる市区町村ごとに作成が必要です。

まとめ

上述したとおり、2020年は年末調整の変更点が多数ありますので、年末調整の担当部署の方は改正項目を早めに把握して従業員に周知しましょう。また、コロナ禍におけるテレワークの促進及び業務効率のためにも年末調整手続きの電子化を検討してみてはいかがでしょうか。

【参考資料】
国税庁HP「令和2年度 所得税の改正のあらまし
国税庁HP「令和2年分 給与所得の源泉徴収票の記載の仕方
国税庁HP「ひとり親控除及び寡婦控除に関するFAQ
国税庁HP「所得金額調整控除に関するFAQ(源泉所得税関係)
国税庁HP「年末調整手続の電子化に向けた取組について(令和2年分以降)
国税庁HP「マイナポータルを活用した年末調整及び所得税確定申告の簡便化
総務省HP「令和2年度税制改正(案)のポイント
大蔵財務協会『令和2年度 税制改正早わかり』 中村慈美 他


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:並木 一真(税理士/1級FP技能士/相続診断士/事業承継・M&Aエキスパート)

並木一真税理士事務所所長
会計事務所勤務を経て2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・節税対策・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等を中心に幅広く税理士業務に取り組んでいる。