• 更新日 : 2023年12月27日

雇用保険の加入条件を解説!加入に必要な手続きや各種書類も紹介

雇用保険とは、事業主と労働者や労働者であった方へ適切な給付を行う公的保険制度です。パートやアルバイトといった名称に関係なく、従業員が雇用保険の加入要件に該当している場合、事業主は対象者を雇用保険に加入させないといけません。本記事では、雇用保険の加入に必要な書類や手続きの流れを解説します。

雇用保険とは?

雇用保険とは、労働者の生活と雇用の安定、就職の促進のために給付を行う公的な保険制度です。労働者に対して失業した際の手当や、育児・介護休業中の給付金を支給するほか、事業主に対しても助成金などの取り組みを行います。

雇用保険の被保険者の種類

雇用保険に加入している労働者のことを雇用保険の被保険者といいます。雇用保険の被保険者は、働き方や年齢によって次の4種類にわけられます。

一般被保険者

一般被保険者とは、次のいずれにも該当する労働者のうち、後に説明する「短期雇用特例被保険者」「日雇労働被保険者」および「高年齢被保険者」以外のことをいいます。

  • 31日以上雇用されることが見込まれる者
  • 1週間の所定労働時間が20時間以上である者

31日以上雇用されることが見込まれる者とは、具体的には次のいずれかに該当する場合をいいます。

  • 期間の定めがなく雇用される場合
  • 雇用期間が31日以上である場合
  • 雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
  • 雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合(注)

[(注)当初の雇入時には31日以上雇用されることが見込まれない場合であってもその後、31日以上雇用されることが見込まれることとなった場合には、その時点から雇用保険が適用されます。]

引用:雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか! |厚生労働省

なお、一般被保険者の要件である1週間の所定労働時間が20時間以上については、「2028年度中に週所定労働時間10時間以上」の労働者まで雇用保険の適用を拡大することが計画されています。

短期雇用特例被保険者

短期雇用特例被保険者とは、季節的または短期に雇用される労働者のうち、次のいずれにも該当しない労働者のことをいいます。

  • 4か月以内の期間を定めて雇用される者
  • 1週間の所定労働時間が30時間未満である者

引用:雇用保険事務手続きの手引きp.25|厚生労働省

なお、短期雇用特例被保険者が同一の事業主に引き続き雇用されて、期間が1年以上に至ったときは、その日以後は短期雇用特例被保険者でなくなります。65歳未満なら一般被保険者、65歳以上なら高年齢被保険者になります。

また、短期雇用特例被保険者であっても、極めて短期間の失業で入退社を繰り返し、その都度、短期雇用特例被保険者の失業手当にあたる特例一時金を受給している場合には、一般被保険者になります。

日雇労働被保険者

日雇労働被保険者とは、日々別の事業主の元で労働し、非常に不安定な就労状態にある労働者で次のいずれかに該当する者をいいます。

  • 雇用保険の適用事業に日々雇用される者
  • 雇用保険の適用事業に30 日以内の期間を定めて雇用される者
  • 上記以外で日々雇用される者あるいは30日以内の期間を定めて雇用される者であって、公共職業安定所長の認可を受けた者

ただし、次に該当する場合は一般被保険者もしくは短期雇用特例被保険者として取り扱われることとなります。

  • 連続する2月の各月において18日以上、同一事業主の雇用保険適用事業に雇用された場合
  • 同一の事業主の雇用保険適用事業に、継続して31日以上雇用された場合

高年齢被保険者

高年齢被保険者とは、次のいずれにも該当する労働者のうち、65歳以上の者であって「短期雇用特例被保険者」および「日雇労働被保険者」以外の労働者のことをいいます。

  • 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者
  • 1週間の所定労働時間が20時間以上である者

上記の要件のほか、2022年1月1日より「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が施行されており、次のいずれも満たす場合に特例的に高年齢被保険者となることができます。

  • 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
  • 2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して、1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること

引用:雇用保険事務手続きの手引きp.26|厚生労働省

雇用保険の加入に必要な書類

事業を開始して初めて従業員を雇用すると、労働保険の成立手続きと雇用保険の加入手続きが必要になります。それぞれ必要な書類を解説します。

保険関係成立届

「保険関係成立届」は、初めて従業員を雇用したときや、新しい事業所ができたときに労働保険関係を成立させるために作成する書類です。労働保険とは、労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険を総称した言葉です。

会社を雇用保険に加入させるには、まずこの書類で労災保険と雇用保険の適用を受けることを示します。

書面は下記画像のとおりです。事業所住所や成立(保険加入)年月日、事業の種類、賃金の見込額などを記入します。

保険関係成立届

引用:事業主のみなさまへ 労働保険の成立手続はおすみですか(パンフレット)p.10|厚生労働省

概算保険料申告書

労働保険では、その年度分の保険料を概算で申告・納付し、翌年度の申告の際に保険料の確定と清算を行います。保険関係が成立した初年度は「概算保険料申告書」という書類を作成し、当年度分の概算保険料の申告と納付を行います。

書面は下記画像のとおりです。保険関係が成立した日から翌年の3月末までに支払う賃金を記入し、事業の種類に対応した保険料率を乗じて概算保険料を計算して記入します。

概算保険料申告書

引用:事業主のみなさまへ 労働保険の成立手続はおすみですか(パンフレット)p.11|厚生労働省

翌年度以降は、前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を併せて申告・納付することになります。

作成した書類は会社を所轄する労働基準監督署、都道府県労働局、日本銀行(代理店・歳入代理店(全国の銀行・信用金庫の本店・支店・郵便局)でも可)に提出します。新しく保険関係が成立したときは、保険関係成立届と併せて労働基準監督署へ提出するケースが多いです。

雇用保険適用事業所設置届

「雇用保険適用事業所設置届」は、雇用保険に加入する従業員がいる事業所について作成します。書面は下記画像のとおりです。

雇用保険適用事業所設置届

引用:事業主のみなさまへ 労働保険の成立手続はおすみですか(パンフレット)p.12|厚生労働省

雇用保険では、育児休業給付金や失業手当(求職者給付)など、賃金計算期間が給付金の計算に使われることが多く、賃金支払関係として賃金締切日と賃金支払日を記入する欄があります。

雇用保険被保険者資格取得届

「雇用保険被保険者資格取得届」は、雇用保険に加入する従業員の人数分作成します。書面は下記画像のとおりです。個人番号や賃金などを記入します。

雇用保険被保険者資格取得届

引用:事業主のみなさまへ 労働保険の成立手続はおすみですか(パンフレット)p.13|厚生労働省

雇用保険の加入手続き

雇用保険の加入手続きに必要な書類と提出先、提出期限をまとめたのが下の表です。

書類名提出先提出期限
保険関係成立届・労働基準監督署保険関係が成立した日の翌日から10日以内
概算保険料申告書次のいずれか

  • 労働基準監督署
  • 都道府県労働局
  • 歳入代理店(全国の銀行、信用金庫、郵便局)
保険関係が成立した日の翌日から50日以内
雇用保険適用事業所設置届・ハローワーク(公共職業安定所)設置の日の翌日から起算して10日以内
雇用保険被保険者資格取得届・ハローワーク(公共職業安定所)資格取得した日の翌月10日まで

参考:労働保険の成立手続|厚生労働省

雇用保険の加入手続きの流れを詳しく解説していきます。

保険関係成立届を労働基準監督署に提出

従業員を初めて雇用したときは、まずはじめに「保険関係成立届」を事業所を所轄する労働基準監督署に提出します。この書類を提出することにより、労働保険番号が割り当てられます。この労働保険番号は、「概算保険料申告書」「雇用保険適用事業所設置届」にも記入が必要です。「保険関係成立届」を提出して労働保険番号がわかったら、他の書類に転記します。

「概算保険料申告書」は労働基準監督署、都道府県労働局、歳入代理店(全国の銀行、信用金庫、郵便局)のいずれかに提出しますが、「保険関係成立届」と併せて労働基準監督署に提出するケースが多いです。

「保険関係成立届」は、従業員を初めて雇入れた日など保険関係が成立した日の翌日から10日以内に提出します。「概算保険料申告書」は保険関係が成立した日の翌日から50日以内です。

成立手続きを怠った場合には、遡って労働保険料を納めるほか、追徴金を徴収される可能性もありますので、忘れないように手続きしましょう。

雇用保険適用事業所設置届と従業員人数分の雇用保険被保険者資格取得届をハローワークに提出

保険関係が成立したら、次は「雇用保険適用事業所設置届」「雇用保険資格取得届」を所轄のハローワーク(公共職業安定所)へ提出します。「雇用保険適用事業所設置届」は1事業所につき、1回の提出となりますが、「雇用保険資格取得届」は従業員を雇用するたびにハローワークへ提出します。

「雇用保険適用事業所設置届」は、従業員を初めて雇用した日などの雇用保険の被保険者がいる事業所を設置した日の翌日から10日以内に提出します。「雇用保険資格取得届」は雇用した日の翌月10日までに提出します。たとえば、4月1日に雇用したときは5月10日までが提出期限となります。

交付書類を保管する

初めて雇用保険の加入手続きを行うと次の書類が交付されます。

  1. 保険関係成立届の事業主控
  2. 労働保険料の領収済通知書
  3. 雇用保険適用事業所設置届の事業主控
  4. 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)
  5. 雇用保険被保険者証
  6. 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)
  7. 雇用保険被保険者資格喪失届

(4.から7.は1枚もしくは2枚に印字されます)

4.「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」と5.「雇用保険被保険者証」以外は、事業主が保管します。雇用保険の被保険者に関する書類(離職票、雇用保険被保険者資格取得確認通知書など)はその被保険者が退職してから4年間は保管しておくことが必要です。

3.「雇用保険適用事業所設置届の事業主控」は保険関係が消滅した日から2年間は保管することが求められています。

参考:雇用保険法施行規則第143条 | e-Gov法令検索

1.「保険関係成立届の事業主控」と2.「労働保険料の領収済通知書」は、3年間の保管が必要とされています。

参考:労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則第72条 | e-Gov法令検索

いずれも、事業所の保険関係や従業員の雇用保険資格を証明するものですので紛失しないよう保管しておきましょう。

雇用保険の加入手続きでの注意点

最後に、雇用保険の加入手続きに関する注意点を解説します。

雇用保険加入対象の従業員が加入していない場合

雇用保険の加入対象となるはずの従業員が加入していない場合には、遡って雇用保険の加入手続きを行います。遡れる期間は雇用保険料を従業員から徴収していたかどうかで異なります。

  • 雇用保険料を徴収していたとき:徴収が確認できる日まで遡れる
  • 雇用保険料を徴収していなかったとき:2年以内で遡れる

また、遡って加入する場合には、「雇用保険被保険者資格取得届」のほか、雇用されていた事実が確認できる書類(労働者名簿や出勤簿、雇用契約書、賃金台帳など)を添えて加入手続きをおこないます。

雇用形態や就業条件が途中で変わる場合

雇用形態や就業条件が変更された場合、ハローワークへの提出が必要な変更と不要な変更があります。

必要な変更:雇用保険の加入要件に関わる変更

例1 勤務日や勤務時間の変更で週の労働時間が20時間未満になった

例2 勤務日や勤務時間の変更で週の労働時間が20時間以上になった

例1の場合は雇用保険の資格喪失を行うこととなります(高年齢被保険者のマルチジョブホルダーを除く)。雇用保険資格喪失届をハローワークに提出します。一方で例2の場合は雇用資格取得届をハローワークに提出します。

不要な変更:雇用形態の名称が変わった

例1 アルバイトパート従業員が短時間正社員になった

例2 有期契約社員が無期契約の正社員になった

雇用形態の名称が変わっても、雇用されていることに変わりなければハローワークへの届出は不要です。ただし、途中で変更があった場合の就業(労働)条件通知書は保管しておき、該当の被保険者が退職した際には「雇用保険資格喪失届」と併せて提出できるようにしておくとよいでしょう。

雇用保険は事業主・従業員どちらにも身近な保険制度

雇用保険は、介護や育児をしている従業員への給付金や、雇用改善に関する助成金など、事業主にとっても従業員にとっても身近な保険制度です。従業員を雇入れた際には、雇用保険の被保険者となる要件に該当していないか必ず確認し、該当していれば速やかに加入手続きを行いましょう。


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